CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER 作:アマネモ
サポートカーの交通規制もあって、卯月と美世は大井PAにクルマを停める事が出来た。
「ブラックとブラック、どっちが良いかな。
て、聞いてましたか島村さん?」
「あ、ブラックで・・・両方ともブラックじゃないですか。
それに、私の事は卯月でいいですよ、原田さん。」
美世は左手に持っていたブラックコーヒーを卯月に渡す。
「私も美世でいいよ。
じゃあ卯月ちゃんて呼んで良いかな?」
「はい」
「何か悩み事かな、私の予想だけど。
流石にあの運転を続けられちゃ、色々とマズイからね」
「はい・・・」
「で、どうしちゃったの?」
「・・・」
卯月は口を閉じて俯いてしまった。
美世としては十分に柔らかい物腰で話を切り出した筈だったが、とても成功とは思えない状態である。だが、そこで退く美世ではない。
「私はね、悩み事がある時はその悩んでいる事を口に出す様にしているんだ」
「はぁ」
「そう。
私おバカだからさ、ただ「うーん」てしていると何で悩んでいたか思い出せなくなったりするのよね。しかもそう言うのに限って大事な事だったりするから、なるたけ悩んだ時はその事を口に出す様にしているの。
自分で言葉にした「悩んでいる事」を自分の耳で聞き直すって言うのかな?」
「あ、ぁはは・・・」
今度は卯月が若干引き攣っている。
クルマ同士の駆け引きの様にはいかないと悟った美世だが、卯月にとっては少し思う所があった様で、ポツリ、ポツリと自分の「悩んでいる事」を話し始めた。
「まぁ、隣に居るのが壁とでも思って!?」
「・・・私、346プロの12部署でアイドルをやっているんです」
「確か「シンデレラ・プロジェクト」だっけ?」
「他に2人、最初からプロジェクトに居た本田未央ちゃんと、ちょっと後から入って来た渋谷 凛ちゃんの3人で「ニュージェネレーションズ」っていうユニットをやっているんです」
「あれ、順番そうなの?
私的に卯月ちゃん凛ちゃん未央ちゃんの順だと思ってたんだけどな・・・」
「最初は3人で何とか頑張ろうって雰囲気だったんですけど、レッスンでも本番でも振り付けとかタイミングとかが合わなかったり、そうした失敗が続く内に私と凛ちゃんとの間に”溝”みたいなのが出来ちゃったんです。
未央ちゃんも、私達を仲直りさせようと色々してくれたんです。けどあんまり巧く行かなくて、遂に3人で集まる時間も無くなっちゃって・・・」
「なるほど・・・」
「・・・私、いつも遅れちゃうっていうか、一人になっちゃうんです・・・。
首都高も、最初は学校の友達が誘ってきて7人位で始めたのに誰も居なくなっちゃいましたし、アイドル養成所の11人居た同期の子も、オーディションに受かったり、スカウトされたりあと辞めちゃったりで最後は私だけ・・・」
「なるほどなるほ・・・あれ?」
美世は聞き手を放り出して卯月に確認する。
「未央ちゃんが首都高を走っているのは知っているんだよね?」
「はい、でもドコを走っているのかまでは・・・」
「凛ちゃんも首都高走っているんだけど」
「え、そうなんですか?」
「・・・3人でいられる時間と場所、どっちもあるじゃん」
@
「ふ~ぁ」
ほぼ同時刻、辰巳PAで未央は背伸びをしていた。
「やっぱ・・・物足りないな」
ぽつりとそんな事を呟いた時の横顔は、とても普段の未央と同一人物とは思えない、少なくとも普段の彼女なら到底する事は無いであろう、そんな表情だった。
未央自身、美世のガレージを出てから直で首都高に入り、休憩を兼ねてPAで情報交換をしていた時間を抜いても3時間、首都高を走り続けていれば多少は焦るかもしれない。
(同じ場所に居るはずなんだからさ・・・逢えるんだよね、ダチャーン・・・)
背伸びをしたまま数度身体を前後左右に反らし、マイナスの思考を吹き飛ばす。
(いや、逢う、逢ってみせる。
首都高(ココ)が本当に、それを出来る場所なら・・・!)
EK9に乗り込んだ時の未央の顔は、先程よりは幾分か普段の彼女でもしそうな表情だった。
@
何時も、独りになっていた。
学校も、友達っぽい人はいるけどなんか違う。少なくとも話には入れていない。
「あぁ」とか「うん、そうだね」だけで会話というのは、本当は成立していないと思う。
部活はやっていない。やる気が起きなかったし、仲良しゴッコとか、そういうのに見えた。
それが嫌だった。そんな中に入りたくは無かった。
でも多分、別の理由がある。
例えば、そういう風に見てしまった自分に、嫌になったのかもしれない。
(本当は、どうなんだろう・・・)
独りになる事に嫌悪感は無い。
好きか嫌いかで問われたら、すぐに答えは出せないけど。
実家が花屋をやっていて、それなりに客がいる事は自分でも手伝っているから解る。
そして、客がいるから、案外一人の夕食が多かった事は納得出来る。
もしかして、それで独りに慣れてしまっていたのかもしれない。
原因にはしたくないけど。
(・・・親のせいにする気は、無い)
兎にも角にも、私、渋谷 凛という人間は、「独りになる事」が多いというのが事実だ。
(首都高だって、最初はクラスのアイツが誘って、たしか5人は居たな・・・。
結局私だけがハマって、アイツに至っては学校からも消えたんだっけ・・・)
独り、独り、独り・・・。
これまでが独りなら、これからも独りなの・・・?
(誰か、答えてよ――――――――)
葛藤の中で、凛の操るHCR32は更に加速してゆく。
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「ええと、大井Uターンから羽田線を上って、C1を外回りですね?」
「うん、たぶん今夜はこのルートだと思う」
卯月は愛車であるST202のドライバーズシートで、美世のアドバイスを聞いていた。
既にエンジンはかかっており、4気筒ノンターボのアイドリングが2人の間に響く。
「でも・・・本当に逢えるんですか・・・?」
疑問を持たない筈が無い。
「首都高サーキット」と名前にこそサーキットと入ってはいるが、その実態はやはり公道に限りなく近いのだ。分岐、合流、オリジナルのルートは幾らでも創る事が出来る唯一のサーキット。
だが、そう言われた美世はやけに自信気だった。彼女は知っているからだ。
「逢えるよ。
逢いたいって言う気持ちが本当なら、ね」
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「ここは首都高、そういう事が起こる魔法の場所」
Main EPISODE story movie
「ストーリームービー」が記録されました
NEXT…
@
「ストーリーモード」第1章前半のメインエピソード
「A NEW GENERATION'S」
このストーリーの所謂「本番」の前に流れるムービー。
このムービーの後、メインでは卯月を操作し、大井→羽田→C1外回りを走る。
「ストーリーリプレイ」では凛、未央側のプレイが可能。
凛は渋谷線から、未央は湾岸→深川線上り経由でC1外回りに合流する。
レースゲームとしてはムービーの多さと長さが指摘される事もあった
(それどころかムービー+レースシーン新規製作のみでビデオ化した事もある)
首都高バトルm@sterシリーズだが、今回もその部分は継承されている。
ただし1度目からでもムービーのスキップが可能な他、「ストーリーリプレイ」では逆にムービーのみの視聴を可能にする等対策が取られている。
(流石に「”金属の歯車”賞」は獲得し飽きたらしい。)
346プロダクション第12部署の担当Pと所属アイドル(候補生)
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。
島村卯月:ダメ元で受けたオーディションに合格してこの部署へ。愛車はST202。
渋谷 凛:Pの勧誘姿勢に負け、スカウトを承諾してこの部署へ。愛車はHCR32。
本田未央:Pと共にこの部署を設立し、仲間を心待ちにしていた。愛車はEK9R。
弐内雄輔:この部署のP。強面だが、真面目なだけの優しい男。愛車はER34D4