斬撃増やそうぜ!お前TSUBAMEな!   作:モブ@眼鏡

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※物干し竿は宝具ではありません。ソレっぽい何かです!

 

「───颪九連」

 

「────シッ!」

 

 激突。長刀より全く同時に現れた九つの剣閃は、首を始めとして、両肘、両腿の付け根、両膝、両足首を狙う驚異の九連続同時攻撃と化した。

 しかしランサーも然る者。下半身は最上級クラスの敏捷性からの足捌きでもって避け、肘と首元は朱槍で全て退けたのである。最速の英霊という看板に恥じることのない神業。

 その回避のコンマ一秒後、攻撃直後をアサシンの隙と見たランサーは朱槍を横薙ぎに叩きつけた。

 

 しかし、───外れる。必殺の意思を込めて頭部を砕かんと放った石突は空を斬った。よく見れば間合いが一歩ズレている。これは、とランサーの再びの疑念は確信へと変貌した。至った結論に思わず意識を眼前から外したランサーに、その隙を逃すまいとアサシンの斬撃が肉薄する。驚愕に目を見開いたランサーは槍を振り切った勢いのまま、独楽のように回りながら後退し、首元を狙う一閃を弾き返した。

 

 一瞬の空白。両者は距離をおき、それぞれの得物を構え直すと油断なく敵を視界に収めた。

 

 ニヤリ、とランサーが不敵に笑い不意にこう言う。

 

「驚いたぜアサシン。間合いのズレや複数の斬撃。そりゃあ魔法の一端と言っても過言じゃねぇ技術だ。この時代じゃ『多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)』とかいうらしいが、大方平行世界の自らを此方側に置換するってところか。それが一切の神秘に関係のない只の技ってえのが恐ろしいぜ」

 

「───フ、慧眼恐れ入る。まぁ、ソレだけではないが、単なる鉄の棒きれで神話の軍勢と果たし合うには斬撃(コレ)を増やすしかなかったのでな」

 

 アサシンの剣技はまさしく魔法であった。一人であるにも関わらず、攻撃時にはまるで分身でもしたかの様に何人も存在しているのだ。つまり、気配がダブるのである。宛ら乱視の様に存在が朧と化すということ。

 

 なんという絶技。千年に一度の天賦の才を得た者が、一生涯を修練に当ててなお届かぬ頂に、この暗殺者は至ったのだ。

 それは最早、狂気すら乗り越えた執念の剣と言えよう。

 

 ともかく、そういった殺気や気配に聡いランサーだからこそ辿りついた魔人の秘奥の一端。気配が朧気だった一因はこれか、とランサーは納得と同時に驚嘆する。ここまで来ると生前にて戦った万の軍勢と錯覚するような手数である。尤も、この程度ならばまだ問題なく捌けるが。

 

「────神話の軍勢、ねぇ。まぁいいさ。それの真偽もすぐに分かる事だ。こっからは遠慮無しで行くぜ!」

 

「無論だ。やはり闘争というのはそうでなくては斬り甲斐がない。精々殺し合うとしよう」

 

 静寂の中、両者が各々を睨みつける。そして、───交錯。アサシンの剣閃が呪いの朱槍と鎬を削り火花を散らす。その剣戟のあまりの迅さに狭い山道の石畳が粉砕されていく。

 ヒラリヒラリと宛ら燕が舞う様に駆けるアサシン、獣の如く最短最速で追いすがるランサー。双方共に後一歩の所まで迫る死の一撃を避け続け、闘いは千日手の様相を晒していた。

 

────だが、それもこれまで。大敵を仕留めるための一手を、アサシンは欠片の躊躇も無く解き放った。

 

「さて、そろそろ目覚めるがよい。『備中青江・空落(物干し竿)』よ」

 

「───『刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)』ッ!」

 

 ランサーが宝具の真名を解放したのは、半ば直感からであった。サーヴァントとして数値化されたスキルではなく、数多の戦場を駆け抜けたクー・フーリンの戦士としての経験が、自然と選ばせた切り札の一枚目。

 因果逆転の魔槍が開放され、その刺突がアサシンの心の臓腑を穿たんと迫る。こうなってはあらゆる回避行動は無意味であり、朱槍から生き延びるには、射程外まで逃げるか、

 

────真正面から迎撃する他に無い(・・・・・・・・・・・・・)

 

 (ゴウ)ッ、と風が吹き抜ければ、どういうわけかアサシンを包む様に球状に展開された鈍く耀く鋼の壁にランサーの槍は防がれていた。

 

「──────なッ!?」

 

 否、それは単なる鋼の巨壁ではなく、アサシンの長刀(・・・・・・・)である。刀身が肥大化した訳でもなければ、盾に変化したということでもない。

 

─────それは斬撃だ。

 

 1mm程の剣閃を、一閃、二閃、三閃と重ね続けた結果生まれた斬撃による鋼の防壁。淡い碧の光を纏った巨壁は、魔法(EXランク)という世界最高の神秘に至った剣技によって補強され、ランサーの因果逆転の魔槍を防ぎきったのである。

 

「─────テメェ、何だ?」

 

 火花を散らしながら弾かれたゲイボルクを構え直し、ランサーは困惑に満ちた言葉を発した。

 視線の先には碧に染まり、ドクリ、ドクリと脈動する長刃を携えたアサシンが挑発的にこちらを見据えている。

 

「ランサー。先程貴殿はこう言ったな。『遠慮無しで行くぜ』と。故に、私もこう言わせてもらおうではないか」

 

─────事ここに至って出し惜しみなど無粋が過ぎる。全霊でもって貴殿を斬り伏せようぞ。

 

 ランサーの問いに応える事無く、アサシンは再び構える。知らぬ内に、タラリと頬を流れ落ちた汗をランサーが認識した瞬間、アサシンはかき消え、全方位から蚊すら通さない百を超える斬撃の檻が襲い掛かった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 さて、アサシンとランサーの戦闘が激化する中、それを俯瞰している者が居るのを忘れてはならない。

 

「なぁにこれぇ………」

 

 言うまでもないがキャスターこと裏切りの魔女メディアである。

 

 現在拠点兼工房として柳洞寺の改造・改修作業を進めている彼女ではあるが、勿論の事外部状況の情報収集を怠ってはいない。そもそもそれを欠いたら即脱落がありえる脆弱なクラスである故、慢心など出来そうもなかった。

 故に、今回自らが呼び出したイレギュラーのサーヴァントがどの程度使えるのか、精々見てやるか。そんな軽い気持ちでランサーの襲撃を偵察がてら覗いたのだが、これがまぁ凄かった。

 

「嘘でしょう!? 因果逆転の槍とか神の権能そのものじゃないの……!」

 

 メディアが今回使用した魔術は、指定した空間内の物質的・霊的を問わない動体観測が主な用途であり、それにアレンジを加え、範囲内で発動した一定以上の神秘を自動解析する、という代物である。

 

 結果として、アサシンが分身したりランサーが神の権能クラスの神秘をブッパしていたりと、神代でもそうそう見ることのない怪獣大決戦もかくやというアホみたいな戦闘だった訳である。

 

 しっかり見ていくと、アルゴー船のメンバーも大概化物だったが、ランサーのサーヴァントも大分頭がおかしい。

 正規のマスターではないために、サーヴァントのステータスを見る事が出来ないメディアだが、軽く見積もってヘラクレスにも劣らぬ戦士である事が見受けられた。

 

─────そしてそれは、己の下僕であるアサシンにも言える事である。

 

「えぇと、現世だと第二魔法だったかしら。解析しても魔力を使ってないのだけど、どういうことなの………」

 

 魔法。現代の科学では再現不能の、未だ人の手の届かぬ神秘の境地。それを体言する男こそ、メディアが呼び出した『佐々木小次郎』という暗殺者であったのだ。

 

────暗殺者って何だっけ?

 

 本当にごもっともな考えである。まぁ、その勘違いはアサシンが暗殺者としての側面をまだ現していないがためなのだが。

 

 焦りつつも、冷静にアサシンの戦力を確認するメディア。流石は神代最高峰の魔術師といった所だろうか。とは言っても、第二魔法なんていうメディアが至る事の無かった神秘を、自らの下僕が、しかも暗殺者風情が手に入れていたのは彼女のプライドを大いに傷付けたようだ。

 

 しかし、皮肉な事に彼女の戦闘観測用の魔術が彼女の精神を更に追い詰めるなど、どうして想像出来ようか。

 

 というのも─────

 

「まぁ、戦略の幅が広がったと思えば、許容なんて────」

 

────アレ? あのアサシン次元跳躍とか世界と同化してね?

 

 あまりにも魔術師泣かせな絶技の数々に、今度こそ彼女はヒステリックな悲鳴を上げた。

 

 









兄貴(戦車で来れば良かったなコレ)


 なお戦車を取り出す暇も無い模様。


 いや、まぁ、その。(挨拶)

 というわけでとりあえずサーヴァントステータスをドン!


クラス:ランサー

真名:クー・フーリン
性別:男性
身長:185cm
体重:70kg
属性:秩序・中庸
マスター:バゼット・フラガ・マクレミッツ

パラメーター

筋力:A+
耐久:EX
敏捷:A++
魔力:B+
幸運:E
宝具:A+

クラス別スキル

対魔力:B

保有スキル

戦闘続行:A
仕切り直し:B+
不眠の加護:A
矢避けの加護:A
ルーン魔術:B
太陽神の加護:A
魔力放出(炎):A
神性:B

宝具一覧

『刺し穿つ死棘の槍』
種別:対人宝具
ランク:A
レンジ:2~4
最大捕捉:1人

 突けば必ず相手の心臓を穿つ呪いの槍。本来は投擲用であるゲイボルクを、ランサー(クー・フーリン)が自己流にアレンジした使用法。
 因果逆転により、『相手の心臓に命中した』という結果を作り出してから槍を放つという反則級の絶技。既に結果が世界に決定されているため、並大抵の防御は意味を為さない。

 また、槍その物に治癒阻害の呪詛を宿しており、槍を破壊しない限りは傷が治る事はない。

 なお、本国と同等の信仰を保持しているランサーによって、宝具その物がランクアップを果たしている。
 その結果、神の権能そのものと化した因果逆転によって、あらゆる回避は本当に無意味となり、未来予知クラスの直感や、回避特化の宝具でさえその一撃を避けることは不可能となっている。

『突き穿つ死翔の槍』
種別:対軍宝具
ランク:A+
レンジ:5~70
最大捕捉:100人

 『刺し穿つ死棘の槍』の投擲バージョン。ゲイボルクの本来の用途である投擲武具としての使用であり、投げた際に無数の鉄棘を放って敵軍を襲ったという逸話から対軍宝具としての側面を現した。

 こちらも同様にランクアップを果たしており、破壊力は勿論、範囲や速度なども上昇している。瞬間最高速度はマッハ9。アーチャークラスの宝具と遜色ない宝具であると言えよう。

『猛犬の牙城』
種別:対軍宝具
ランク:A
レンジ:20~100
最大捕捉:500人

 生前のクー・フーリンが過ごした城塞。中身は魔術工房としても機能しており、クー・フーリン及びその関係者(味方)に1~2ランクのステータス補正を与える。

 高ランク対軍・対城宝具を防ぐ防御力を誇り、鉄壁の陣地として機能する。また、内部にクー・フーリンが存在する場合に限り、彼に陣地作成:Aと道具作成:Bのスキルを与える。

 余談だが、実物は現代に現存している。

『御者王駆る不壊戦車』
種別:対軍宝具
ランク:B+
レンジ:10~500
最大捕捉:500

 クー・フーリンがコンホヴォル王より授かった御者王レーグが操る不懐の戦車。一突撃で500人を轢殺したという逸話の残るクー・フーリンの戦場での相棒。

 真名を開放すると、宛ら『騎英の手綱』の様に概念的な太陽光を纏った秒速700mの突撃が行われる。

 副産物として、御者王レーグや戦車を牽くマハとセングレンという馬を召喚することができる。




 防衛・殿・対人・対軍・対城戦闘や、斥候、非常に優れた魔術的な知識、その他諸々とあまりにも有能過ぎる兄貴。基本この作品では優遇対象なのです。

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