斬撃増やそうぜ!お前TSUBAMEな!   作:モブ@眼鏡

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 おひさ(吐血)

 プロット失くしてモチベが下がったり、リアルが忙しくなったり、空いた僅かな時間にFGOしたりしてたら、2月末になってました。今回も大急ぎで仕上げたから、多分ガバが広がって凄いことになってる(確信)

 改めて、投稿が遅れてすまない、本当にすまない……。



無双出来ると思った? 残念、皆インフレしてるんだ(キレ気味)

 

 アサシンは鞘に納まった長刀を山門の脇に立て掛け、尽きることのない空を仰いだ。その中を、揺れて流れる白雲は、そよ風と共に星の輪郭を滑っている。

 

 腕を組み、ふとぼんやりした瞳を古びた石階段の下に持っていくと、あたかもランサーとの激戦が無かったかのように、完璧な修繕が施されている。そのことに、少しばかりの驚きと敬意を抱きながら、よっこらせと大げさな動きで石段に座り込んだ。

 

 さて、昨日の宵に突如として発生した神秘の大激突を受けて、ついにキャスターが重い腰を上げたことについてである。

 

『アサシン、そろそろあなたの依り代を宗一郎様に移すわ。もちろん、魔力の供給は私の神殿が受け持ちますけれどね』

 

 翻って、アサシンの単独行動が可能になる他、縮地及び圏境などの暗殺スキルを最大限活用出来るようになることである。

 

 尤も、お世辞にも頭がいいとは言えないアサシンは、彼女の打ち出した方針について、イマイチこれらの意図が掴めずにいるようだが。

 

 前日の雨や霧とは打って変わって、快晴としか言いようのない天気に頬を緩めつつも、麗らかな日輪にはそぐわない疑念やら何やらが付き纏う。

 

「………門番から昇格、などと気軽に判断できれば良かったのだがなぁ。この早期に私を山門から解放するなど。女狐め、何を考えている」

 

 呟かれた言葉は、間違いなく此度の聖杯戦争の運行を左右するに相応しい重みを持っていた。

 

 鬼手、しかしながら拙手。そう呼ぶ他にないだろう。延々とした策を幾重にも張り巡らせる印象の多いキャスタークラスからは想定し難い事であるのは確かだ。

 

 とはいえ、兵は神速を尊ぶというのもまた事実。逆に考えれば、『勝ちに来た』という事だろう。ここまで来て準備段階を脱していない雑多なサーヴァントなどはサラッと蹴散らしてしまえ、というわけだ。

 

 それに、元々アサシンの魔力消費は(アサシンのクセに)大きく、戦闘行動も含め存在維持に十二分の魔力が集まるまでは山門を依代にして拠点防衛に努めるということで納得していた。

 

 そして、キャスターが十全な工房神殿を造り上げ、魔力の供給も安定した時点で、その目標も達成されている。ならば、後は前述の通り山門から解放して元の暗殺者として動かすのが道理というもの。

 

 しかし、しかし、だ。

 

 あのランサーを認知していながら(・・・・・・・・・・・・・・・)門の護り役を外すのか?

 

 その一点だけが気になる。まぁ、確かに、太陽神の威光を示す規格外のランサーとて、『神殿の門』を突破するには5秒ほど掛かるのは間違いない。

 

 キャスターの連絡さえあれば、例え別世界に居たとしても、ノータイムで迎撃することも可能だろう。偽物の偽者とはいえ、その程度の実力はあると自負している。

 

 しかし、そこは百戦錬磨の大英雄クーフーリン。見越した上で何かしらの策を打ってくるだろう。

 

─────ならばどうする?

 

 そこまで考えて、はたと気付く。

 

「………頭脳労働は私の仕事ではないというのに。どうにもこの霊基(からだ)は考え事が好きらしいな」

 

 考える役回りはキャスターに預けているというのに。

 

 武人、と一概に言ってもタイプがある事は間違いない。今のアサシンの容姿は(彼の主観で)本来の第五次聖杯戦争にて召喚された『佐々木小次郎』そのものではあるが、中身が彼であるせいか、若干人相が違う。

 

 ぶっちゃけたところ目つきが悪い。悪人面という程ではないものの、人目につく場所でつっ立っていれば通行人が訝しむ程度のそれであろう。故に、『人々の想う佐々木小次郎』として顕れた彼は、本体(アホ)由来の感性を持ちつつも、その殻に意識が引っ張られるというわけだ。

 

「さて、最初の命令は協会の監督役から令呪を奪うことか」

 

 如何にも残念そうな声色で、嘆くかのようにため息をつく。

 

 早速怪しい任務である。早々に監督役を殺して、混乱の中で色々暗躍しておきたい、ということなのだろう。が、益々もって祭りが台無しになってしまう。

 

 そう、祭りである。マスターとして冬木に赴く魔術師たちの思惑はさて置いて、呼び出されたサーヴァントが戦士の端くれであるならば、古今東西の英霊と覇を競うのは───ロマンがある。

 

 アーサーが、ヘラクレスが、ギルガメッシュが、世に名高き大英雄たちが集うこの戦争、武人として呼ばれた己が、奮い立たぬワケがない!

 

 手が震え、心が奮う。あぁ、素晴らしきかな、素晴らしきかな。口が吊り上がり、弧を描く。本体が見れば失笑間違いなしだが、武人としての己は、この状況にこれ以上ないほど興奮しているのだ。

 

「く、はは、うむ。滾るとはこういうことよな。おぉ、物干し竿も一層鼓動(ふる)えておるわ。主人があの女狐というのは気に入らんが、………さて。では開放次第襲撃を掛けにでも─────」

 

 

 

─────ほう、何処にだ?

 

 

 

 総身を衝く王気(オーラ)を感じ取り、立て掛けていた刀を即座に抜刀。展開した刃は都合六閃。柄に手を掛けた以外なんの動作もなく無拍子で放たれた斬刃は、無空すらも圧砕する大神秘たる超多段同時斬撃の一端である。

 

 チャチな防御宝具ならば、それこそ跡形もなく消し飛ばされる程の火力を持つ。

 

 その尽くが(・・・・・)黄金の波紋より生じた原初の武装群に押し止められた。

 

「─────ふむ、本調子ではないと見える。評価を改めるか?」

 

 いつの間に、というのは考えるだけ無駄だ。であれば、今、この瞬間、顕れた黄金を斬り伏せる一手を逡巡する。

 

─────………だが

 

 ほぼ無意識で発動していた圏境が、意味を成さぬと思い知ったのはこの二秒後である。

 

 斬撃によって崩れるように半壊した史上最古の宝具群、その隙間より、世界よりその紋様を抉り取る紅眼が見定める様に覗いている。

 

『あぁ、これはダメだ、この霊基(からだ)では半日保てば良い方だろう』

 

 初めに理解したのは、千里眼による圏境の看破。だがそれだけではない。それだけである筈がない。それだけで終わるワケがない。アサシンをしてそう確信せざるを得ない何かが、その黄金には確かにある。

 

「………原初の英雄王か。御自ら出張ってくるとは、何か愉快な事でもあったということか?」

 

 空に浮かぶ波紋が徐々に閉じていき、王の玉体が顕になる。逆立った黄金の髪、神性を示す紅眼、晒された上半身には朱の紋様が流れ、その威光を更に強めている。

 

「戯け、見ようと思えば貴様も見えるだろう。此度は(オレ)が出張らざるを得ん事態が起きているだけだ。人界の守護なぞ我の仕事ではないが、今この時に至っても現世(こちら)に降りようとする愚か者どもは誅さねばならん」

 

 これこそがギルガメッシュ、原初の英雄譚の主人公。未来を見通す千里眼を所持する遠見の一人にして、その頂点の一角たる『すべてを見た人』。

 

 アサシンは内心冷や汗を流しながら、刀を握る手を利き手に直す。不意に、凍りついたような無表情の英雄王が、その瞳に愉快気な色を灯した。

 

「フン、だがまぁ、随分と上手くヒトの皮を被ったものよな。(から)の異形、いやさ蒼穹の天魔」

 

「さて、この身は単なる亡霊。そのような物騒なものに心当たりはない」

 

 魂の本質を透徹されている。完全ではないことが救いだが、見透かされるのは時間の問題だ。

 

 もしギルガメッシュを倒すならば、縮地と無限斬撃でわからん殺しができる内だろう。しかし、それも見に徹した超抜級の千里眼保持者を封殺するには至らないことなど明白である。

 

「フン、よりにもよって王の御前で欺瞞を()かすか、畜生めが………」

 

 全ての人の欲望の芽を育んだ偉大なる男は、片手に粘土の目録を、もう片方に鎖を巻き付かせている。

 

 アサシンには知る由もなかったが、その目録こそは万象の運行と王権を司る神器にして、バビロンの蔵に渡った後に『史上全ての物的財宝』が記された、人類の叡智そのものを刻んだ宝物庫の管理権たる超抜級の魔術礼装である。

 

 元々はエンリル神の持ち物であり、その従者アンズー鳥が簒奪せんと目論んだ神造宝具。エンリル神の息子たるニヌルタ神によって取り返されたそれは、人類文明の興り、その頃にギルガメッシュの手に渡ることになったという。

 

 神と人とを整然とした理によって切り離し、結果として天神地人を分かつ王権(ちから)

 

 故に、その()を『天命標す万象目録(ウシュムルガルナンムカラング)』。

 

 ランクにして評価規格外(EX)。真なる王者であれば、その命と引き換えに、主神級の神霊すら滅ぼす権限をも所有する大宝物である。

 

 故に、神に認められた最大の王たるギルガメッシュがこれを扱うというのなら─────もはや語るまでもないだろう。

 

「………ふむ、普段の我ならばその虚言を赦すまいが、此度は別件だ(・・・・・・)。率直に言って我は忙しい。故に野鳥よ─────」

 

 

─────今は黙ってそこを退け。

 

 

「ヌッ!?」

 

 戦場で培われたアサシンの心眼が、自然と物干し竿の魔性を開放すると同時、眼前に30を超える魔杖が出現し爆炎を放出。的確に展開された魔性を砕く呪詛の焔、そして飛翔する翼を得た不敬者を地に叩き落とす神罰の具現たる白雷が上空から襲い来る。

 

「温い」

 

 そして、その尽くが飛沫の如く斬り伏せられた。魔を滅する焔雷も、日本における七割の神性を薙ぎ払った神秘の鋼を灼くに能わず。

 

 瞬時に突破した包囲殲滅陣が霧散するよりも先に、縮地にて背後に回り込む─────その瞬間、既に英雄王の背後には宝槍魔剣による刃の筵が設置されていた。一も二もなく刃の向こう側の空間ごと抉り抜くが、風穴の先に黄金の背中はない。

 

「ッ、なんとォ!?」

 

 その時、既に完全なる包囲網は完成。アサシンの縮地を絡め取るための『山門を山ごとブチ抜く光の柱』が墜ちてきた。

 

「─────グ、ゥォオアアア!!!」

 

 苦悶の雄叫び、縮地で跳べば依り代たる山門が消し飛び、しかし真正面から迎撃するには攻撃そのものがデカすぎる。せめてキャスターの支援が間に合ったなら話は別だったのだろうが、生憎とキャスターはギルガメッシュの侵入すら察知できていない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。この光柱によって漸く気づいたところである。

 

 しかし、これについてキャスターを責めることはできないだろう。ギルガメッシュの千里眼と宝物による全力隠蔽は、神代最高峰の魔女すら上回るのだ。人間が創り出した総ての叡智の結晶は、神殿外郭内部という悪条件でありながら、易々と工房の主を欺くに至った。

 

─────だが侮ることなかれ

 

 ここに在るは、日ノ本における神代の閉幕者(・・・・・・)。退屈な日々からの解放を願い、そして実現出来てしまった本物の怪物(バケモノ)。その陰、武人として武を振るう益荒男として喚ばれた一時代の武威の頂点。

 

─────重ね太刀、無限の一刀。

 

「邪魔だァッ!!!!」

 

 

 

 

 

          一閃!

 

 

 

 

 

 最果てを冠する光の塔、英雄王が持ち前のコレクター根性から世界に内緒でこっそり削り取っていたその一欠片が、大陸をも斬断する無限剣を前に脆くも砕け散った。

 

 斬撃を放った勢いのまま反転。アサシンは、腕を組み、仁王立ちを崩さないギルガメッシュの背後まで跳んだ。コンマ一秒のラグもなく、その頸に刃が掛かる。

 

「─────お覚悟召されよ」

 

 決まり文句のような処刑宣言。絶対の決定を前に、しかし異形の長刃が頸に喰い込んでなお、ギルガメッシュは冷淡な表情を崩すことはなかった。

 

「ハッ、この頸欲しくば祭りが終わるまで待つことだな。野鳥風情が」

 

─────オオォォァアア■■■■■■■■ッッッ!!!!

 

「ぐぅ、おお!?」

 

 轟音、衝撃。ギルガメッシュの背中に現れた人面の盾が、突如として獣の雄叫びが如き悲鳴を上げたのだ。その衝撃によって山門に続く石階段が諸共に剥がれ落ち、空中で砕け散った。

 

 きりもみしながら吹き飛んだアサシンも、刃を咄嗟に振り抜こうとしたが、刀身はギルガメッシュの頸を落とすことなく暴力的な音圧に弾き飛ばされた。

 

「そら、まだ底があるのだろう。遠慮なしでも構わんぞ?」

 

「─────」

 

 嘲るように嘯きながらも、英雄王に慢心の色は欠片もない。ギルガメッシュの規格外の千里眼を以ってしても、当然のようにアサシンの地力と行動、その一切が予測できなかったのだ。警戒のしすぎで損をすることはない。

 

 そして、ギルガメッシュの千里眼を以ってしても、完全にはアサシンを見抜けなかった(・・・・・・・)。ということはつまり。アサシンが星と世界の摂理からその身、その魂を外した証左に他ならない。

 

 外道畜生であるからこそ、己を取り巻くあらゆる運命から自分勝手に解脱した獣の意思は、見事に英雄王の慧眼を曇らせるに至ったのである。

 

「ならば黄金、その野鳥風情から手痛い一撃を受けてみるか?」

 

「ほう、言うではないか。ならば我に見せてみよ、貴様の底の底までなぁ………!」

 

 地響きのような玉音がアサシンの鼓膜を揺らす。間違いなく、ギルガメッシュは全力を出そうとしている。王権の力を用いて宝物庫を全力かつ最高効率で運用しようとしている。

 

─────それをさせてしまえば終わりだ。

 

 確信ではない。これは絶対に覆すことのできない決定である。アサシン単騎では、アサシン自身はともかく、山門に向かう宝物の対処が間に合わなくなる。それこそ無限斬撃を以ってしてもだ。そのうち打ち払った余波で山門が消し飛び、単独行動スキルを持たないアサシンは途端に消え去るだろう。

 

 どうすればいい。縮地で避ける? バカを言え、単に逃亡するならまだしも、ここは己の命綱だ。キャスターが山門から自分を解放するまで死守しなければならない『最後の砦』だ。

 

 縮地、縮地、縮地。縦横無尽に翔る刃が黄金の暴風雨を碧い残光と共に斬り払う。浪費される宝具、削られていく体力。終わりがあるとはいえ、半ば以上に千日手だが、しかし、その程度アサシンも、英雄王も承知の上。さて、ではどうするか?

 

 先に答えへ至ったのはギルガメッシュ。その解は実にシンプルであった。即ち、根から断つのが手っ取り早いというもの。

 

「さて、アレが有ったな。ではこうするとしよう」

 

「─────づぅォオ!?」

 

 音もなくアサシンの背後より展開された波紋から、黄金の大瀑布が山門を呑み込んだ(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────なるほど、切り離しは間に合ったということか。魔女風情が、存外決断は早いらしい」

 

「えぇ、こうでもしなければ詰むというなら、躊躇いなんてありませんわ」

 

 轟音と共に崩れ去った山門の瓦礫の上に、神代の魔女が降り立つ。その側にアサシンの姿はない。キャスターによる強制転移によって、彼女のマスターの下へ送られたのだ。

 

 先の時点で、英雄王は間違いなくアサシンを詰めていた。アサシンがまともにギルガメッシュと相対した時点で、必至は掛かっていたのだ。

 

 しかし、それはキャスターという合い駒が無いという前提の話である。

 

 最果ての塔、その欠片によって発生した膨大な神秘の奔流を認識したキャスターは、まず間違いなくヘラクレスに匹敵するかそれ以上の存在が工房の攻略に取り掛かったのだと確信した。

 

 この時点で、神殿の玄関内部にして、アサシンの依り代である山門は破壊されると確信があった。なにせ『あの』ヘラクレスをも上回る魂の質量が観測されたのだ。当然のことと言えよう。

 

「それで? 魔術師たる貴様が、態々(わざわざ)矢面にまで出てきたのだ。此度の我は寛大ゆえな、その蛮勇に免じて貴様の命乞い程度なら聞き届けてやるかもしれん」

 

「─────信じられない」

 

 それは、英雄王の言葉(おんじょう)についての反応ではない。キャスターは、『かもしれない』とは言えど、よりにもよってこの超越者が温情をかける判断すら選ぶということの重要性を正しく理解しつつあったからである。

 

 それは、危機か? もしや、詰めろは掛かっているのか?

 

 いやそもそも何故、この時代にそれ程の規模の異常が発生する?

 

 神代でもないというのに、現人類種の衰退すら始まっていないというのに、この超越者は一体何を予見したというのだ?

 

 疑問が土石流となって脳を駆け巡る中、慎重に、言葉を選んだ上で、キャスターは問いを投げ掛けた。

 

「名を知らぬ無礼、そして我が無知をお許しください、黄金の君。神代の魔術師たる私の千里眼を以ってしても、御身が危惧するであろうほどの異常を引き起こす未来は視え得なかった。─────御身の瞳には………何が、写ったというのですか?」

 

「─────たった今、確信が持てたぞ神代の魔女。その点については礼を言わねばなるまい」

 

 キャスターの問い掛けを受けて、何故か薄らと怒りを尊顔に浮かべたギルガメッシュは、一息をつくようにして腕を組んだ。神性を示す紅の瞳が、チラリとどこか遠くを見やる。

 

「正直な所、だ。キャスター、貴様は居ても居なくてもそれ程の影響を及ぼさぬ存在だった(・・・)。貴様がここで無様に命乞いをするのなら、それもまた良しと見逃す選択も十分にあり得ただろうよ。それは貴様の願いの矮小さ、そしてそれ以上に貴様自身が現世に非ざる亡霊として身の程を弁えているが故のことだ」

 

「…………」

 

「─────だが、まかり間違っても貴様を脱落させるわけにはいかなくなった。キャスター、神代最高峰の魔術師であると同時に、神代最高位の神官でもある(・・・・・・・・・・・・)貴様の腕が必要だ。貴様とその配下たるアサシンの無礼、特に赦す。これからは我の指示の下働くがよい」

 

─────これは決定だ。

 

 数多の王者傑物を欺いてきた魔女は直感した。逆らうことは出来ない。そうすれば、絶対的に良くないことが起こる。死など生ぬるい、永久無間の凍獄すら救いに思うほどの何かが起こる。漠然とした、それでいて確かな予知である。

 

 目の前の超越者が何を視たのか、それを彼自身が語るのは、恐らくまだまだ先だろう。つまり、それは現状誰にも知られてはいけない致命的な真実(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)が、この聖杯戦争に隠されていることを浮き彫りにしたことを意味するのだ。

 

 魔術史において五本指に入るであろう優れた見識と頭脳を持つキャスターだからこそ、その危険性を正しく理解出来てしまった。挑む存在が如何なるモノか、朧気にとはいえ突き当たってしまった。

 

 

─────我々が挑む異常とは、『聖杯』だ。

 

 

 キャスターは3つ、理解した。

 

 現時点で深く探れば、その奥に潜み聖杯の万能を振るう何モノかに喰われること。

 

 聖杯によって現世に繋ぎ止められているサーヴァントであれば、例外はないこと。

 

 そして、聖杯が誇る万能の規模は全人類に及ぶ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)こと。

 

 絶望に染まる意識の中、キャスターはこの戦いが終わった後に、己のマスターが無事であることを切に願った。この身はほぼ確実に消え去る故に。ならば、少なくともアフターケアが万全そうな雇い主が必要だ。

 

「─────は、王の御心(みこころ)のままに」

 

 返答など、元より一つしかあり得なかった。







 さて、今回は女神ヘカテー直伝コルキス式CQCを巧みに操るキャスター()こと型月屈指の正統派魔術師メディアさんのステータス公開です。神殿クラスの工房と、その維持が可能な魔力源がしっかりあるだけでこんだけインフレしますよっていう代表格だと思う。対魔力による相性ゲー? んなもん神殿に引き篭もれば解決じゃろ?(すっとぼけ)


真名:メディア
身長/体重:163cm / 51kg
出典:ギリシャ神話
地域:ギリシャ、コリントス
属性:中立・悪
性別:女性
特技:奸計、模型作り
好きなもの:寡黙で誠実な人・可愛らしい服と少女
苦手なもの:筋肉ダルマ
天敵:バーサーカー(ヘラクレス)

ステータス
筋力 E 耐久 D
敏捷 C 魔力 A++
幸運 A 宝具 C


クラススキル


陣地作成:A

 魔術師クラスの特典。魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作る能力。Aランクの彼女に掛かれば「工房」を上回る「神殿」レベルの陣地が作成可能。
 本作では完全な状態のそれとして、彼女の戦略を支える予定だった。
 ちなみに、彼女の手によって築かれた本作の工房の外殻は、一、二発ならばエクスカリバーの真名開放に耐えうるほどの堅牢さを保有し、深部に至っては神代に匹敵し得るエーテルの濃度と密度が流れ、その全てがキャスターの補助に充てられる。
 この聖杯戦争において、工房最奥に陣取った彼女を殺せるサーヴァントは、クーフーリン、ギルガメッシュ、ヘラクレス、NOUMINの四騎のみである。

道具作成:A

 魔術師クラスの特典。魔力を帯びた器具を作成可能。Aランクとなると、擬似的な不死の薬すら作成可能。


保有スキル


千里眼:A-

 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。遠方の標的捕捉に効果を発揮。というのは副産物的効力である。
メディアの千里眼は、魔術師として後天的に獲得した非常に習得者の少ない魔術としてのそれである。未来の予知すら可能とする魔術の深奥、彼女は最高位の魔術師として、その(きざはし)に脚をかけている。
 尤も、その精度は先天的にAランク以上の千里眼を所有する遠見たちには遠く及ばない。それでも、これほどの高ランクを評価されたのは、偏に彼女の才覚と、研鑽によるものである。

高速神言:A

 「高速詠唱」の最上位スキル。神代(神が治めていた神話時代)の言葉により、大魔術であろうと一工程(一言)で発動させることが出来るスキル。言うまでもなくぶっ壊れスキルである。

キルケーの教え:A

 ギリシャ神話最大の魔女・女神キルケーは彼女の伯母にして魔術の師に当たる。闇に染まる前の彼女は、キルケーから教わった魔術の中から、特に「修復」を重用していた。その力は当然失っていないが、悪役を自任して以降、使うことをやめていた。
 しかし、本作では英雄王に目を付けられたのが運の尽き………いや、ある意味での幸運だろう。この技能をフル活用する場が生まれたのもまた事実であるのだから。

金羊の皮(アルゴンコイン):EX

 コルキスの秘宝で「地に放ると竜が現れる」と言われている。
本来ならば、メディアに竜を召喚する能力はなく、また、召喚出来たとしても、コルキスの竜はそこまで強くないため、産廃スキルとされる。
 しかし、ここはインフレ戦争である。本作において、英雄王との邂逅後のメディアは『何者かから押し付けられた竜召喚』の能力に加え、『どう見てもコルキス産ではない中東の伝承風のドラゴン』を召喚することが出来る。召喚されたドラゴンは、一線級のサーヴァントと比肩し得るほどのステータスを持つ。敏捷にしてB+、耐久にして:A、筋力に至ってはA+に匹敵する凄まじい膂力を誇る。
 ドラゴン自体はメディアに対し反感や反発を示す様子は見られず、また、押し付けた何者かをなんとか突き止めたメディアは、その能力の規模に顔を引き攣らせつつ、とりあえずこのドラゴンとバックにいる何者かを信用することにした。
 ちなみに、バックにいる何者か曰く、「まー、今回は悪役のオレが出張っても仕方ない話だしなぁ。そういう点で理解のあるメディアの嬢ちゃんは同輩としても都合がよかったのさ。勝手に霊基を弄ったのは悪いとは思うがね。あぁ、似たような眼のよしみだし、英雄王によろしく言っといてくれよ」とのこと。魔術と竜、そして悪役。もはやバレバレだが、本作の本編において、その正体を現すことはないであろう捏造キャラである。


解説


 自身を召喚した魔術師に数日で見切りを付け、彼を殺害して逃亡した。
 本来なら2日はマスター抜きでも現界可能だが、マスターが自身より優れた魔術師であるキャスターへの嫉妬で魔力量を自身以下に制限していたため早々に消滅の危機に瀕する。そこへ偶然通りがかった男性・葛木宗一郎に助けられた。彼と出会い、葛木が居候している柳洞寺に転がり込む。
 その後、生前手に入らなかった束の間の日常を守るため、そしてマスターに聖杯を渡すため、明確なルール違反サーヴァントであるアサシンを召喚し、第五次聖杯戦争で暗躍し始める……つもりだった。目論見は聖杯戦争序盤に邂逅した二騎の(インフレ)サーヴァントによって御破産となる。是非もないネ!

 フードによって顔を隠した女性。
 冷酷・残忍、目的のためには手段を選ばず、奸計を得意とする正真正銘の悪女とされる。しかしこういった態度や性格は彼女に課せられた運命の反動である面もある。
 自身を「魔女」として祭り上げた者達への復讐の為に英霊となったが、自らを“魔女”に貶めた非道・悪辣な術を使っては意味がないとも解っているため、人が欲望によって自滅するだけの、自己に返る些細な呪いの魔術だけで災いを呼ぶ事を信条としており、一般人からの搾取や人柱などによる地脈の操作などの“魔女”と呼ばれる原因になった魔術は生前は一度も自分の意志では使わず、禁を破る気もない。だが、邪悪な道を歩もうとする場合であっても、本質的には良識を持ったお嬢様育ちな人物であるため、一般人から魔力を搾取はしても命までは奪わないなど、良くも悪くも最後の一線で完全には非情になり切れない一面がある。
 本来は清純な女性で、惚れた相手にはとことんまで尽くすが、惚れた相手に甘えようとすると逃げていったというトラウマを持つために、一歩引いた態度を貫く。必要であればどんなあくどい手段に訴えることも厭わない反面、必要でないのなら何もしない人物。
 かわいい女の子とかっこいい男を好む。筋肉マッチョとイケメンは嫌い。天敵はバーサーカー。バーサーカーが狂化しているので描かれないが、同じギリシャの英霊で面識があるため。

 魔術の女神ヘカテーより神秘を教授された巫女である神代の魔術師。魔術が日常であったギリシャ世界ですら"魔女"と言われたその腕前はおそらく世界でも五本の指に入り、現代の魔法使いをも凌ぐとされる。奈須氏いわく、「本気になったキャスターには、蒼崎青子ですら敵わない」とのこと。宝石翁? あれはバグだから……(震え声)
 クラススキルにより「工房」を上回る「神殿」を作り上げることが可能で、冬木における最大の霊地である柳洞寺を陣地として、霊脈を利用することで冬木全域から集めた魂によって莫大な魔力を蓄えている。神殿内ならAランクの大魔術や空間転移といった魔法域の魔術まで使いこなし、詠唱スキル「高速神言」を持つために長い詠唱を唱えずとも屋敷数件を吹き飛ばす大魔術をマシンガンの如く連射させることが可能。ローブを翼の様に広げて空を飛ぶことも出来る。
 しかし大抵のサーヴァントは高い魔術耐性スキルを有しているため、魔術は攻撃手段というより策謀を巡らす手段になり易い。
直接的な魔術に限らず、魔術道具の作成など、魔術の関わるものは万能にこなす。また、使い魔兼護衛用に竜の牙で製作した「竜牙兵」を多数使役する。
 固有結界は使用出来ないが、莫大な時間と費用を掛けて小さな魔術と大きな魔術を緻密に構築していく事で、同規模の「異界」を作り上げることは可能。

 ちなみに、本作ではインフレ要項として、『神殿級の工房(完全版)』と『黄羊の皮(アルゴンコイン)による上位の竜種の召喚能力』を追加されている。
 前者は、原作とは比べ物にならない堅牢な要塞と化しており、内部の構造も複雑化されている。また、単純な魔力運用装置としても進化を重ね、神殿の深部という限定条件下でならば、A++ランクの魔術を、術式その物を空間跳躍させながら並列展開、包囲殲滅射撃を可能とする。エグい(確信)
 後者に至っては、高ランクの対魔力を持つ三騎士クラスに比肩するほどの竜種を召喚することで、本来ならば手も足も出せない筈の相手を正面切って押し潰せる可能性すら持っている。実質的なキャスターとライダーの二重召喚(ダブルサモン)である。
 実は幸運がBからAに上がっていたりもする。


 というわけで、如何でしたでしょうか。原作から(一部のヤバイ人たちを除いた面々で)キャスター最強格を張るだけあって、インフレそのものは妥当な所だと思います。あと、テキストはだいたい型月wikiから抜粋していますので、原作のメディアさんについて詳しく知りたい方はそちらをどうぞ。

 総評として、神殿最奥だと複合神殿内オジマンディアスの五歩手前程度には強くなるキャスターと思って頂ければと思います。インフレしても太陽王には勝てなかったよ……。

 最後はほんの少しだけQ&Aをして終わりです。疑問点、矛盾点、多々あるとは思われますが、ここまでお読み頂き有難うございました。


Q.(ギルさん出てくんの)ちょっと遅かったんとちゃうん?

A.実は没ルートだと、最初にイケメンワカメと士郎くん陣営にお邪魔してから、外道神父と敵対するという可能性もありました。なんだかんだと、今書いてるルートの方が都合が良かったので、こっちにしましたが。

Q.結局どうしてメディアさんは丸腰()でギルさんの前に出てきたの?

A.その時点での心情↓
メディア「(生前に腐るほど権力者を相手にしてきたから分かるッ!コイツは容赦などしないし、まして『誠意』を示さぬ者になど、まともな対応を返すわけがない……! 魔女と呼ばれる屈辱はこの際我慢よ、私!)………どうも(震え声)」

ギルさん「……ほう(魔女らしく頭は回るらしい。やはり『必要』か……?)」

Q.NOUMIN負けとるやんけ!

A.実は、山門が破壊された時にキャスターが強制転移していなかった場合、敗北を悟ったNOUMINは、本作の慢心なしギルさんに相打ち上等の特攻を掛けて、実際相打ちになります。召喚してくれたキャスターへの義理立てというわけですね。気に入らないところはありましたが、NOUMINにとっては唯一の召喚者なので。地味に紙一重だった英雄王、後にNOUMINの正体(本体)を見破った時に冷や汗を流したとかなんとか。




Q.なんかメディアさんの紹介長くね?

A.私の中のお気に入り女性サーヴァント第一位です(迫真)

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