勝手な妄想で2人を書いてみました。
pixivにも投稿してあります。
僕が友利と付き合い始めてから数日がたった。
告白したのは僕から。僕はいつからだったのか分からないが友利の事が好きになっていた。
こことは違う世界線、歩未が崩壊の能力を暴走させて死んでしまった世界。そこでは友利は僕が人の道を踏みはずさないようにしてくれた。この時から彼女の事が好きになっていたのかもしれない。
この記憶は僕の中にしか存在しないのだがそれでも僕が覚えている。それが重要なのだ。
話は戻って僕はどうあれ友利と付き合っているのだ。
しかし付き合っているからと言っても前と何ら変わった事はない。それこそ今現在生徒会室で2人だからと言っても別段何も起こらない。
何かが起こるのを期待してないと言えば嘘になる。少しでもいい、友利が少しでも僕に甘えてくれたら。
そうすればこんな考えだってなくなるのだろう。
ーーーもしかしたら友利は僕の事なんか好きではないのかもしれないという考えが。
ーーーーー
「なあ友利」
さっきまで考えていた事はとりあえず頭の隅に置いておき、友利との会話に入る。
「何でしょうか?」
「お前、今日って暇か?」
「どうしたんですか急に」
「いや、ただ暇ならどこか遊びにでも行こうかなと思って」
僕たちは付き合っているからと言っても、何処かに2人で遊びに行ったりなどという事はしていない。僕たちが付き合っているという事を知らない人達から見たらとてもカップルには見えないのだろう。
だからこそ少しでもカップルらしい事をしたいと僕は思っているのだが、友利は少しも考える事なく答える。
「すみません、今日は兄の見舞いに行こうかと思っているので」
「あ、ああそうか。なら仕方ないな」
「はい、申し訳ないです」
「いや、気にしないでくれ」
本当はものすごく気にしている。
確かに友利のお兄さんは病院に入院しているのだが、僕が何かと誘うとお見舞いにと言って断られてしまう。
仕方がないと思っている反面やっぱり嫌だとも思う。少しくらい2人の時間を作ってくれたらいいなと思うのに。
「お兄さんのお見舞い僕も行っていいか?」
「はぁ、別にいいですけど」
「ありがとう。いつぐらいに行くんだ?」
「今の時間はバス混んでますからね。もう少しここで時間を潰してから行こうかなと思ってます」
「そうか……」
友利は今時間を潰すと言った。
ここで僕はついに今まで考えてきた事の答えを見つけてしまう。
あぁそうか、友利にとって僕は所謂彼氏とかではなく只の暇つぶし相手なんだな。
もしかしたら友利は僕をフッたりしたら能力で何かをやらかすとか考えて彼女の振りをしてくれていたのかもしれない。好きなんかじゃない僕のために、周りの人のために。
「ははっ」
そんなかわいた笑いが口から溢れる。
「ど、どうしたんっすか急に?」
突然笑った僕に彼女は不審がる。
それなら僕はもう友利に迷惑はかけられないな。いい加減僕のわがままに付き合わせるのは彼女がかわいそうだ。
「なあ友利」
「は、はい?」
「……別れようか」
「……え?」
これでいい、これでいいんだ。これで友利は僕から解放されるんだ。これで友利と僕の関係は前と同じに戻るんだ。
「な、なんでですか……?」
そんな質問をしてくる。
なぜそんな質問をしてくるのだろうか。ここは友利が分かりましたって言って終了でいいじゃないか。
しかし僕がその質問に答える前にまたも彼女は話し出す。
「や、やっぱり私なんかじゃダメだったんですよね。あ、あはは……。告白されて少し現実を見れてなかったようッす。私なんかじゃ……」
その言葉の続きが出る前に泣き出してしまう。
友利は何を言っているんだ?自分なんか?それになぜ泣いているんだ。
僕か、僕なのか?友利を泣かせたのは。なぜなんだ?
「と、友利、なんで泣いてるんだよ……?」
「何でって、それは、そんなの……」
どうしてなんだ?
「好きな人に振られたら悲しくないわけないじゃないですか!」
「なっ!?」
友利は今好きな人って言ったのか?それって僕のことなのか?友利は僕の事を好いてくれていたのか?
「と、友利。お前、僕の事好きなのか?」
「当たり前じゃないですかっ!なんなんっすか、もういいじゃないっすか!!」
「いや、てっきりお前は僕の事なんて好きじゃないかと思ってたから……」
「好きじゃないのに付き合うわけないじゃないっすか!」
そうか、友利は僕の事を好いてくれていたんだな。僕はただ勘違いしていただけだったのか。
「ははっ」
再度乾いた笑いが溢れる。
同じような笑いでもさっきとは意味が違う。さっきとは違って今回のは自分の勘違いに対する笑い。そんな笑いが口から溢れてしまう。
「な、なんなんですかさっきから」
そんな笑いにまたも聞いてくれる友利。まるでデジャブというやつみたいだ。
だけどそんなことはどうでもいい。そんなことよりも僕は友利にこの誤解を解いてもらわ無ければ。友利が僕のことを好きって言ってくれたように僕は友利のことが好きなのだから。
「なあ友利」
「はい」
「ありがとう」
ーーーーー
「それじゃあ私が乙坂さんになかなか甘えないから好きじゃないかと思っていたと」
「まあ、そんな感じかな」
「はぁ」
あの後友利が泣き止んでから僕たちは2人で横に座って話している。
それから何であんな事言ったのかと聞かれたので答えたのだが友利から返ってきたのはため息だった。
「な、何でため息なんだよ……」
「何でってそりゃあため息くらい吐きたいですよ。こっちがどれだけ貴方に甘えたくてそれでも嫌われたくなくて我慢していと思ってるんですか……」
「なんだよそれ」
本当になんだよそれ。友利は僕に甘えたかったけど嫌われたくなくて我慢していたと。
全く、僕たちはどうやらものすごいネガティブで意気地なしなカップルなんだ。まあそんなような態度を取っていたかもしれない僕にも責任はあるかもしれないが。
「まあそんな事はいいので甘えてもいいですか乙坂さん?」
「あぁ、もちろん」
「それでは甘えさせてもらいます」
そう言って友利は僕の膝の上に頭を乗せてくる。所謂膝枕と言うやつを実行してきた。
初めて彼女が甘えている、それはいいんだが膝枕と言うのはなんというか。
「恥ずかしな、これ」
「ええ、恥ずかしですね」
どうやら恥ずかしいのは彼女も同じようだ。
「なら、やめるか?」
「いえ、恥ずかしいですけどなかなか気持ちが良いので続けさせてもらいます」
そう言う友利の顔は赤くなっているのだが、それでも気持ち良さそうである。それならばやっている方としても悪くはない。今度は僕が友利にしてもらおうかな。
「ん、そういえばお兄さんのお見舞い良いのか?」
ふと僕は思い出して聞いてみる。元々友利のお兄さんお見舞いに行くという話題が上がっていたのだがすっかりと忘れていた。時間というならそろそろ行ってもいいくらいだろう。
「んー、今日は見舞いの方はやめておきます、兄には悪いですが」
「いいのか?」
「はい、いいんです。今日は乙坂さんにこれまでの分甘え尽くす事にしましたので」
そう言って友利はこっちを見ながら笑う。その笑顔はとても眩しくて綺麗だった。
こうして僕たちはようやく本当の意味で付き合い始めたのである。