ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね

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どうもおはようございます!
今日はモンハンの発売日ですね!
私は朝から並びに行こうと思います笑
それでは今回もよろしくお願いします!


【Days2-2】波乱!バーベキュー!

43話【Days2-2】波乱!バーベキュー!

 

 

 

「よっと……絢瀬、これはここでいい?」

 

「ありがと、優真。重いもの運ばせてごめんなさいね」

 

「いやいや、一応男だしな。しかもお前ら練習のあとで疲れてるだろう?俺たちに任せとけよ」

 

「そうだぜ絵里さん!絵里さんのためなら百人力だぜ!」

 

時刻は午後6時、俺とサトシは別荘から野外コンロや炭を庭へと運んでいた。

なぜこんなことをしているのかというと……

まぁ言わなくてもわかると思うけど、バーベキューをするためだ。

先ほど皆で夕飯について話し合ったところ、穂乃果の“バーベキュー”という意見が賛成多数で可決された。ちなみに反対はいなかった。

今は真姫を筆頭に数名が買い物に行っており、俺、サトシ、絵里、花陽、ことりちゃんは残って設営の方をやることになった。

つまり買い物に行った面子は……

真姫、穂乃果、凛、希、海未、矢澤の6人。

怪しいのが何人かいるが、海未と希がいるから大丈夫だろう。

 

「ふう……まぁこんなもんか」

 

「なんとかみんなが帰ってくる前に終わったわね」

 

「しかしこの別荘……本当に準備いいよなぁ、倉庫に行けば欲しいもの大抵用意してあるし」

 

「真姫が小さい頃あれも欲しいこれも欲しいって大変だったらしくてな。真姫を満足させられるように大抵のものは備え付けるようになったんだぜ」

 

「なるほど……想像つくな……」

 

「それにしても真姫、よかったわね」

 

「そうだな」

 

先程真姫は穂乃果や凛に引っ張られる形で買い物に同行していたが……その顔は嬉しそうだった。

少しずつ皆に心を開いていってるみたいで、俺たちは安心した。

 

「……そのことなんだけど」

 

「ん?どうしたの?悟志くん」

 

 

「─────────礼を言わせてくれ。

 

真姫のこと、本当にありがとう」

 

突如サトシが俺たちに頭を下げた。

 

「何でサトシが頭下げるんだよ。俺たちが勝手に真姫におせっかい焼いただけだよ」

 

「……知ってると思うけど、真姫は本当はすごく良い子なんだ。優しくて、他人思いで……。

ガキの頃俺がケンカなんかで怪我して帰ってきたときは、真姫はいつも俺の怪我の手当てをしてくれたんだ。

 

そしてアイツ───────泣くんだよ。

 

痛かったでしょう、って。

危ないからもうこんなことしないで、って。

 

そんな真姫が中学校に入ってから、ますます自分の殻に閉じこもるようになった。あんなに優しかった真姫が、全然笑わなくなったんだ。

……でも昨日今日、久しぶりに見たぜ。

真姫があんなに楽しそうに笑うのは。

 

───真姫に居場所をくれて、本当にありがとう」

 

その言葉を聞いて、サトシにとって真姫がどんな存在なのか、少しだけわかった気がした。

友達以上恋人未満。そして親友よりももっと近い場所にいる、妹のように大切な存在。

 

「サトシが真姫のことそんな風に思ってたなんてな。少し意外だった」

 

「……悪いか?」

 

「んーや。その気持ちよくわかるから」

 

サトシにとっての真姫は────────

 

 

──────俺にとっての凛のような存在で。

 

「悟志くんにとって真姫は大切な存在なのね♪」

 

「からかわないでほしいぜ、絵里さん……」

 

「ふふふ♪」

 

絵里に言われると強く反抗できないようでサトシは顔をしかめてそっぽを向く。その様子を見て俺たち2人は笑った。

そんなことをしていると、別荘の中から俺を呼ぶ声が聞こえた。

 

「お兄ちゃーん!」

 

「ん、花陽か。そっちの準備終わった?」

 

「うん!ちゃんとご飯炊けたよ!!」

 

「……あれ、俺そんなこと頼んだっけ…」

 

花陽の後ろに立っていたことりちゃんの表情をうかがうと苦笑いを浮かべている。

花陽とことりちゃんには昨日残していた食材の下処理を頼んでいたのだが……この白米天使、どうやらバーベキューでも白米を食すようだ。

まぁ、あって困るものでもないけどな。

焼きおにぎりにしたりできるし。

 

「ちゃんと食材の準備も終わってるよ♪」

 

「そっか。2人ともありがとね」

 

「「うん!」」

 

そしてちょうどその時。

 

「ただいまー!」

 

買い出し組が帰ってきた。

 

「たくさん買ってきたにゃー!」

 

「はぁ〜〜にこにこんな重たいもの持たせるなんて、どうかしてるわ本当っ」

 

「お疲れ様、海未。大丈夫だったか?海未」

 

「はい。少々手こずりましたが、希と真姫の力添えもあって何とか無事買い物を終えることができました」

 

「そっか。真姫と東條もお疲れ様」

 

「別にどうってことないわよ」

 

「穂乃果ちゃん達も大人しかったしね、思ったよりは♪」

 

「……しれっと私たちの悪口言ってるよね?」

 

「不本意だにゃ……」

 

「……にこはもしかしてこっち側に含まれてるの?」

 

何やら3人がこちらを睨んできているが、あえて無視させていただこう。

 

「ユーマ、炭に火ぃ着いたぜ!」

 

「おっけ、ありがとなサトシ。

……よしみんな!バーベキューはじめるぞー!」

 

『おー!』

 

元気な声が別荘に木霊した。

……どうか平和に終わりますように、っと。

 

 

 

 

 

 

自分の分の肉を焼きながら、俺は周りのメンバーの様子を見渡していた。

 

「えへへー、これ私の串っ!」

 

「穂乃果、肉しか刺さってないではありませんか!ちゃんと野菜も食べないと許しませんよ!」

 

「ぶー、海未ちゃんのケチ!」

 

「全く穂乃果はもう……ってことり!その肉しか刺さってない串は何事ですか!?」

 

「え⁇だって穂乃果ちゃんがお肉食べたいって言うから……」

 

「供給源はあなたですかっ!穂乃果を甘やかしてはダメではありませんか!」

 

「えへへ〜♪」

 

「笑い事ではありませんっ!」

 

悪びれる様子もなく笑うことりちゃん、それを見て顔をしかめる海未……そして満面の笑みで肉を頬張る穂乃果。

2年生組は相変わらずいつも通りだな。

 

「真姫ちゃーんはいどうぞ!」

 

「……ありがと、凛。……ってこれなによ!ピーマンしか刺さってないじゃない!」

 

「だって真姫ちゃんピーマン好きでしょ?」

 

「どこ情報よ!あんたがピーマン好きじゃないだけでしょ!?」

 

「凛は別にピーマン食べられるもん!ただお肉が食べたいだけで……」

 

「2人とも〜〜!ご飯持ってきたよ〜〜!」

 

「ありがと花陽……ってお茶碗!?お茶碗で食べるの!?」

 

「凛ご飯はちょっと……せっかくのバーベキューだからお肉とか野菜とか……」

 

 

凛の言葉に、花陽の表情から笑顔が消える

 

 

 

「───────私の作ったご飯が

 

 

 

 

────────食べられないんですか?」

 

 

 

 

「「ありがたくいただきます」」

 

い、1年生もいつも通り(?)だな……。

真姫も楽しそうにしてるしよかったよかった。

……しかし花陽、アイドルだけじゃなくてお米でもそのモードに入れたんだな……

遠目に見ていただけでもこの威圧感。

対面していた2人にはさぞ恐怖に映っただろう。南無ー。

 

 

「さ、この串焼けたわよ。みんな食べて食べて」

 

「ありがと、えりち♪」

 

「悟志くん用に鳥のササミも焼いてるから、どうぞ」

 

「さっすが絵里さん!気がきくぜ!」

 

「ふふっ♪優真とにこもどうぞ?」

 

「おう、ありがとな絢瀬」

 

「えぇ〜、にこはぁ〜フルーツしか食べられないからぁ〜」

 

「絢瀬、こいつの分も寄越せ。俺が食べる」

 

「ちょっと!私が悪かったわよ!」

 

俺たち3年生も平和に、仲睦まじくバーベキューを楽しんでいる。今のところは平和。何も起きずに事は進んでいる。

……まぁそうだよな、普通にバーベキューしてて何も起こるわけが……

 

 

 

「きゃあああああああああ!!!!」

 

 

 

唐突に聞こえた叫び声。

その声の方を振り向くと、ことりちゃんがある一点を見つめて身体を強張らせていた。

 

「ことりちゃん!?」

 

俺は咄嗟にことりちゃんの方へと駆け寄った。

 

「どうしたの!?」

 

「あ……あそこに…………」

 

ことりちゃんが指をさしたそこには─────

 

 

巨大な蜘蛛がいた。

 

 

「………………………」

 

「優真!?どうしたの……ってきゃあ!?」

 

遅れて駆け寄ってきた絵里も巨大な蜘蛛を目の前にして悲鳴を上げた。

黄色と黒が混ざった、派手やかな蜘蛛。

周りの皆も何事かとこちらへと集まりだした。

 

「わぁ蜘蛛!大っきい!!」

 

「8センチくらいはありそうですね……」

 

「たかが蜘蛛ごときで何を驚いてるのよ」

 

「じゃあ真姫が片付けなさいよ!コイツ!」

 

「はわわぁ……ダレカタスケテェ〜」

 

「もう夏やからなぁ。蜘蛛さんもお肉食べたかったんかな?」

どうやら現時点でのμ'sメンバーの対蜘蛛能力はこんな感じだな。

 

 

【見るのはまだ大丈夫】穂乃果、海未、真姫、希

【見るのも耐えられない】花陽、ことり、にこ、絵里

 

 

ってところか。

 

「優真先輩やっつけちゃって!」

 

「頼りにしてるわよ!」

 

穂乃果と矢澤が俺に声をかける。

しかし俺は─────────

 

「…………………………」

 

「優真くん……⁇」

 

「どうしたの……?」

 

不審に思ったことりちゃんと絵里が怪訝な顔をして俺の様子を窺う。

そこで花陽が、この疑問への解を出した。

 

「あの…………」

 

「ん?どうしたのよ、花陽」

 

 

 

「──────お兄ちゃん、虫ダメなの。

見るだけで冷や汗かいて倒れそうになっちゃうくらい……」

 

 

 

『ええええええ!?』

 

驚愕の声が上がる。

 

「む、虫がダメ!?男なのに!?」

 

「昔からお兄ちゃん虫を怖がってて……」

 

「……優真にも苦手なものがあったのね…」

 

「……あの朝日が、虫が苦手……ぶふっ」

 

哀れみと失望が入り混じった苦笑いで俺を見る皆。

しかし矢澤だけは面白いおもちゃを見つけた子供のようにニヤニヤとしながらこちらを見ている。

それに気づいてはいたものの、俺は反撃する余裕がないくらい心が動揺していた。

 

 

こ、怖えええええええええ…!!

俺小さい頃から何故か虫がダメなんだよ!!

なんか気持ち悪いし……

ダメ、触るとか論外、見たくもない。

テレビ番組でもジャングル探検とかの企画だったらチャンネル変えるレベルで嫌い。

 

 

RANK IN!

【見るのはまだ大丈夫】穂乃果、海未、真姫、希

【見るのも嫌だ】花陽、ことり、にこ絵里

new!【本当にごめんなさい】優真

 

 

「仕方ないわね……悟志くん!ちょっといいかしら!」

 

絵里は俺を見限り、炭の炎番をしていたサトシへと声をかけた。タンクトップにハーフパンツ、頭に手ぬぐいを巻いたサトシの姿はまさに屈強な大工だ。

 

「……ど、どうしましたか、絵里さん」

 

「優真虫が苦手みたいで……ここにいる蜘蛛をどうにかしてくれないかしら?」

 

「ははは、ユーマのやつ、虫ダメなのかよ!とんだ軟弱者だぜ!」

 

「そうそう!だから悟志さん、お願いします!」

 

「しかし意外だな、あいつにも苦手なものがあったなんて。完璧に見えるやつほど、意外なものが弱点だってか?」

 

「……あのー、悟志くん?」

 

「まぁ仕方ないよな。ユーマは確かにインドア派っぽいし、普段から虫と戯れ慣れてないんだろう」

 

「…………悟志、さん……?」

 

「今後あいつをいじる時は虫のネタを使うことにしよう!そうだ、それがいいぜ!HA☆HA☆HA!」

 

「……もしかして、悟志くん…」

 

「……だいたいわかったと思うけど…」

 

皆が薄々感じていたことを、真姫がハッキリと口にした。

 

 

 

 

「─────悟志も虫は触れないわ」

 

 

 

 

「なんでうちらの男子は揃いも揃ってこんなに軟弱なのよ!」

 

「…………面目ないぜ…」

 

しょんぼりとした様子でサトシが言う。

それを俺以外の周りは失望の目で見つめていた。

 

 

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【見るのはまだ大丈夫】穂乃果、海未、真姫、希

【見るのも嫌だ】花陽、ことり、にこ、絵里

【本当にごめんなさい】優真 、new!“悟志”

 

 

 

「で、どうするの?このまま無視しても問題ないとは思うけど」

 

「でも真姫ちゃん、こんな毒々しい色してるんだよ?放っておいたら危ないよぉ……」

 

真姫の言葉に、花陽が弱々しく答えた。

 

そんな時、英雄は現れた。

 

「お待たせーー!」

 

「凛!」

 

「凛ちゃん!」

 

凛はトングとちりとりを持って俺たちの元へと現れた。そして蜘蛛をトングで掴み、ちりとりの上に乗せるとタターッと走って行って、蜘蛛を外へと逃がしてきた。

 

「これで大丈夫だにゃ!」

 

「凛ちゃんすごーい!!やるやんっ!」

 

「かっこいいよ!」

 

「ハラショー!♪」

 

皆が凛に駆け寄り、声をかけて崇めている。

その様子を俺とサトシはなんとも言えない表情で眺めていた。

 

 

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new!【駆除可能の英雄】凛

【見るのはまだ大丈夫】穂乃果、海未、真姫、希

【見るのも嫌だ】花陽、ことり、にこ、絵里

【本当にごめんなさい】優真、悟志

 

 

こうしてμ's+α内、虫強者カーストは完成した。

……ほんと情けねぇ。

 

 

 

 

 

「ひゃっほーい!」

 

「綺麗綺麗ー!」

 

バーベキューもあらかた終わり、日も暮れて暗くなってきたので俺たちは花火をすることになった。

皆が持つ手持ち花火から溢れる光は、彼女たちの元の容姿の端正さもあって一層輝いて見えた。

…あ、庭でやったら危ないから砂浜に移動したよ。

 

「優真くん、火貰ってもいい?」

 

「ん、ことりちゃん。どーぞ」

 

ことりちゃんが火の付いてない花火を持って俺の元へとやってきた。俺は自分の手元の燃えている花火を使って、ことりちゃんの花火を点火してあげた。

 

「ありがとう♪」

 

「いえいえ。……綺麗だね」

 

「うん、すごく綺麗」

 

 

最近ことりちゃんの顔をまともに直視できない。

理由はわかっている。

あの日……ことりちゃんと買い物に行った日の帰りに、俺はことりちゃんに後ろから抱きつかれた。

その時の心地よさや、柔らかさ、甘い匂いがどうしても頭から離れなくて……

 

「……優真くんっ」

 

「な、なにっ?」

 

「……最近どうして私のこと見てくれないの?」

 

「えっ……な、なんのことですかねぇ……」

 

「むぅ〜〜っ」

 

ことりちゃんはジト目で俺を見つめてぷくっと頬を膨らませている。……やばい、めっちゃかわいい。

俺は膨らませていた頬を、指でちょんとつついた。

 

「ぷしゅ〜」

 

奇妙な音を立てて頬が縮む。

それがなんともことりちゃんらしからぬ間抜けな顔で、俺は思わず爆笑してしまった。

 

「も、もう優真くん!何するんですかぁ!」

 

「あははは、ごめんごめん……」

 

「……ねぇ優真くん」

 

「ん?」

 

 

「私のこと……嫌い?」

 

 

「え、全く。何で?」

 

「……最近私と目を合わせてくれないよね…?」

 

「…………」

 

俺は見てしまった。

ことりちゃんは今、うつむいて悲しそうな表情を浮かべている。

俺の勝手な感情でやった行動でことりちゃんを傷つけたなら俺は。

 

 

いつものようにことりちゃんの頭に手を乗せようとして────────止める。

 

 

 

『その優しさ故に、誰かを傷つけることがあるんじゃないのか?』

 

 

 

ふと頭によぎる、昨日のサトシの言葉。

……何で急に。

だからどうした。

 

俺は再び腕を持ち上げ、ことりちゃんの頭に乗せた。

 

「……優真くん…?」

 

「……ごめんな。まさか君がそんなに傷ついてるなんて思ってもなかった。俺は全然君のことは嫌いじゃないし、むしろ好きだよ」

 

「────────!」

 

……あ。

今俺流れで何かとても恥ずかしいことを……?

ことりちゃんは驚きのあまり目を見開いて硬直してしまっている。

 

「と、友達として!友達としてだから!」

 

慌てて訂正したが……今度はしょんぼりとしてしまった。えぇー………

 

「……ほら、このあいだことりちゃんと…で、デート、行った時の帰り……あ、あんなことがあったから少し意識しちゃって……」

 

正直に打ち明けると、一転ことりちゃんは表情を輝かせた。コロコロと表情が変わって面白いと思ったのは内緒だ。

 

「……ホント…?」

 

「……うん」

 

するとことりちゃんはしばらく無言になり……

ふふっ、と笑った。

 

「─────私にもまだ勝機はあるかな♪」

 

「え?」

 

「なんでもなーい♪」

 

今何か囁いたように見えたんだけど……

ことりちゃんはなんでもないの一点張りで教えてくれなかった。

 

「優真くんっ」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「──────私も優真くんのこと、好きだよ?」

 

 

 

 

 

「……え…?」

 

「友達として、ね♪」

 

「……………………」

 

「あははっ♪」

 

してやられた。

にしてもあれは反則だろ。可愛すぎるわ。

 

「ことりちゃんっ!」

 

「仕返しでーす♪」

 

「はぁ……仕方ないなぁもう」

 

楽しそうに笑うことりちゃんを見てると、こちらも苦笑いを浮かべるしかない。

 

 

「おーい!みんなー!デカいの上げるぜー!」

 

 

声の方を向くと、サトシが地面に置く型の花火を点火しようとしている所だった。

 

「気をつけろよーー!」

 

「俺に任せとけーー!!」

 

導火線に無事着火し、火花は本体へと吸い込まれる。そして──────────

 

 

シーン……

 

 

「……あれ?」

 

花火は打ち上がらなかった。

 

「おっかしいなぁ……」

 

「あ、バカ!変に触るな!」

 

俺の注意は遅く、サトシが花火を持ち上げたその時──────────

 

 

ドカーン!!!

 

 

「あああああああああああ!!!!」

 

 

サトシの叫びはほとんどその音にかき消された。

サトシの手から大きくて、とても綺麗な打ち上げ花火が上げられた。

 

「わぁ〜〜!」

 

「綺麗……!」

 

皆がその美しさに見とれていた。

そしてその名残も消えた頃、改めてサトシへと目をやる。

 

「アッチィいいいいい!!!!腕がああああ!!」

 

不謹慎だけど、その声とサトシの様子が本当に面白くて────────

 

「あはははは!」

 

俺は声を上げて笑った。

みんなもサトシの様子を見て、心配よりも笑いが生まれたようで、皆で声を上げて笑った。

 

 

 

▼▽▼

 

 

 

花火も終わり、皆で片付けに入った。

私、絢瀬絵里も砂浜のゴミの片付けを終え、一足先に別荘へと戻って来た。

 

「ふう……」

 

別荘に戻ってきてからもやる事はある。

皆の足を洗う水の準備や、余った食材の片付けなどまだまだ終わりそうにない。

そんな時だった。

 

「絵里ちゃんっ」

 

私を呼ぶ声に振り向くと、そこには凛が立っていた。

 

「凛。どうしたの?片付けは?」

 

「ちょっと抜け出してきちゃった。絵里ちゃんと話したいことがあって…」

 

いつもの元気発剌な凛と違って、今は少し落ち着いているように見える。よほど重要な事案なのだろうか。

 

「何かしら?」

 

 

 

「───────ありがとね、優兄ィのこと」

 

「……優真?」

 

「うん。……優兄ィが絵里ちゃんにどこまで話してるのかわからないけど、優兄ィと出会った頃、あんな性格じゃなかったでしょ?」

 

「……確かに」

 

出会った頃の彼は人と関わることを恐れ、周囲と壁を作り、全てに達観しているような冷めた目をしていた。

 

「……優兄ィは昔色々あって、人と関わりが持てなくなっちゃったの。あんなに明るかった優兄ィは、まるでどっかに行っちゃったみたいで。

それが今……あんなに笑うようになってくれた。少しずつ、優兄ィは昔の優兄ィに戻ってる。……それはみんなのおかげなんだにゃ」

 

「……そうなら嬉しいけど、どうして私に…?」

 

「……絵里ちゃんは、優兄ィの高校最初の友達。優兄ィが変わるきっかけをくれたのは多分絵里ちゃんの存在だから……凛1人じゃ絶対優兄ィを助けられなかった。だからどうしてもお礼が言いたかったんだにゃ。

優兄ィは優しくて明るくて笑顔が似合う人だった。

────その笑顔を取り戻してくれてありがとう」

 

「凛……」

 

凛は悲しげな笑みを浮かべた。

凛の気持ちはなんとなく察しがつく。

きっと自分は何もできなかったと嘆き、悔しみ…

 

もっと優真の力になりたい、と。

 

 

「……私もよ、凛」

 

「え……?」

 

「私1人じゃ、優真を変えられなかった。

優真がいい方向に変われてるなら、それは私だけじゃなくて希や穂乃果……μ'sみんなの力よ。

……優真は私を助けてくれたけど、私はまだ優真に何も返せてない。こんなものじゃまだまだ足りないの。だから……私達みんなで、優真を支えましょう?」

 

「絵里ちゃん……うん!わかったにゃ!」

 

先程までとは違い、凛が満面の笑みを浮かべる。

その笑みを見て私も笑った。

 

「……でも絵里ちゃん」

 

「ん?」

 

 

 

 

「────────凛は負けないよ?

 

絵里ちゃんにもことりちゃんにも……希ちゃんにも!」

 

 

 

一転、凛は不敵な笑みを私に見せた。

 

優真と凛。

 

この2人は互いに仲のいい幼馴染だと括ってたけど

 

────(こちら)にはその気は無いらしい。

 

……私も負けていられない。

優真の好きな人も薄々わかってる。

それでも、譲るつもりはない。

 

「……恨みっこなしよ?」

 

「えへへー♪」

 

私も笑みを返すと、凛は楽しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

バーベキューと花火の片付けを終え、俺たちは別荘へと戻った。

 

「はぁー楽しかったね!」

 

みんな夜の余韻に浸っている。

なんだかんだ、楽しかったな。あんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。

そして俺たちの合宿2日目は終わ

 

「らないぜ!!」

 

「……サトシ?」

 

地の文に割り込んでくるなよ。

皆もサトシに視線を向ける。

 

「……まだアレをやってねぇだろ?アレをやらずして夜は終われないぜ!」

 

『アレ?』

 

「そうだ!さぁ、やろうぜみんな!」

 

 

 

……どうやらまだまだ俺たちの夜は終わらないらしい。

 

 

 

 

 

 




やり残したこと……いったい何試しなんだ……
絵里と凛、2人の優真への思いが語られましたね。
この2人の会話をずっと書きたかったのでここに持ってこれてやっとかという気持ちでいっぱいです笑
合宿編も終わりが近づいてきました。
最後までお付き合いよろしくお願いします!
今回もありがとうございました!
感想評価アドバイスお気に入り等お待ちしております!

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