今回は本編とは別の記念回です!
幾つか注意を。
・この話は本編とは関連はございません。
・作者は凛ちゃんが大好きです
それではどうぞお楽しみください!
【星空凛生誕記念 特別話】Venus of Yellow Sp. 〜今夜、貴方と星空を
「凛……大丈夫…か…?」
「んっ……優兄ィ……」
今の状況を説明するとこうだ。
“俺は凛を押し倒している”。
……いや待って!話せばわかるから!
ブラウザバックしないで!!
確かに今俺の左腕は凛の体の下を通り手のひらは頭の下にあって、右腕は肘を凛の顔の横について俺たちの顔は互いの吐息がかかるほど近い。
くそ、どうしてこうなった……!?
って凛!そんな物欲しそうな顔して頬を赤らめながら目を瞑るのはやめてくれ!!
でも……俺は凛のその表情に……
見惚れて、しまった。
やばい───────可愛い
自分の理性が、飛びそうになっているのがわかる。
俺は────────凛と
そして2人はゆっくりと────────
▼
10月31日、今日はμ'sでハロウィンパーティ!
今日だけは練習をお休みして、みんなで楽しく盛り上がった。
でも…みんな明日のことは覚えててくれてるかな?
少し心配になってたけど、「明日もパーティだね!」って穂乃果ちゃんが言ってくれたから、ちょっと安心した。
……そう、明日は私、星空凛の誕生日。
この間の絵里ちゃんの誕生日から少ししか経ってないけど、凛もまた一つ歳をとります。
みんなから何を貰えるのかな、とか少し楽しみにしてたり。
そんな中でも凛が一番楽しみにしてるのは……
優兄ィからのプレゼント。
ある年は勉強道具だったり、ある年は手作りのお菓子だったり……またある年はダンスのシューズだったり。
優兄ィがくれるものは何でも嬉しくて……。
そして今年は、自分の優兄ィへの想いに、気付いちゃったから。
そしてできれば─────できればだけど、夜は優兄ィと一緒にいたいなぁ、なんてね。
今は一緒に帰ってた優兄ィとかよちんと別れて、家に帰ってきたところ。
そんな凛を迎えてくれたのは、予想外の人だった。
「─────凛、お帰りなさい」
「あ!蓮姉ェ!帰ってきてたの!?」
そう、蓮姉ェこと星空蓮。凛のお姉ちゃんで、普段はカメラマンとして世界中を飛び回っているんだけど、どうしたんだろう。
「当たり前でしょ?明日は可愛い妹の誕生日なんだから」
そういって蓮姉ェは凛にウインクした。
蓮姉ェは美人で……とても大きい。
身長も……胸も。
「……さ、凛。風呂入っといで。ご飯食べながらまた写真見せてあげるから」
「え!本当!?うん!ありがとにゃ!」
蓮姉ェが見せてくれる写真は綺麗で、いつまでも眺めていたくなる。凛はそれを楽しみにしながら、急いでお風呂へと向かった。
▼
蓮姉ェと久々の楽しい食事を終えて、時刻は現在10時半過ぎ。
凛は今部屋のベットの上でケータイをいじりながらゆっくりとくつろいでいる。
そしてそろそろ寝ようかなとしていたときのこと。
『凛ー。起きてるー?』
部屋の外から声がした。
「んー、蓮姉ェ?どうしたの?」
『ちょっと部屋入ってもいい?』
「うん、いーよ!」
外側からドアが開き蓮姉ェが部屋へと入ってくる。
「ありがとね、凛」
「どうしたの?」
「いやいや、もう少し可愛い妹とお話ししたいなぁと思ってね」
蓮姉ェはそう言いながら、近くの机の椅子に座った。
「ふーん、そっかそっか!」
「ふふふっ。……ねぇ凛。
──────────他に好きな人はできた?」
「んえぇぇ!?ななななんでそんな、いきなり……
……って、“他に”?」
「────だって凛、ずっと優真くんのことが好きだったでしょう?他にできたのかなーって」
「なっ……!」
どうしてそれを蓮姉ェが!?
誰にも言ってなかったのに!
蓮姉ェの指摘に、思わず顔が真っ赤になる。
「ななな、なんで知ってるの!?」
「いや、見てたら普通にわかるわよ。凛が誰を好きかくらいね。……その反応だと、まだ好きみたいね、優真くんのこと」
「……まだっていうか…好きって自覚したの今年の春のことだし……」
凛は顔を赤くしながら、枕に顔を埋めた。
─────そっか。
凛、ずっと前から優兄ィのコト……
「……で?告白しないの?」
「……うん…勇気が出なくて……」
「もう!そんなんじゃ優真くん取られちゃうよ?」
「わかってる……けど…」
思い出したのは、恐らく凛と同じ思いを抱えている、何人かのμ'sメンバー。
─────凛なんかじゃ……敵わないよ
「ほら、明日は誕生日なんだし、夜くらい2人で過ごしたら?」
「うん……誘って、見る……」
その時。
ケータイの着信音が鳴り響く。
誰からだろうと思って液晶を確認して、そこに表示された名前を見た瞬間、飛び上がりそうになった。一気に心拍数が跳ね上がる。
「ん?優真くんから?」
蓮姉ェからの問いに、コクリと頷く。
出なよ、と蓮姉ェが言ってくれたので凛は少し緊張しながらその電話を取った。
「もしもし、優兄ィ?」
『ん、もしもし。ごめんな、起こしちゃったか?』
「ううん!全然大丈夫だよ!どうしたの?」
『いやいや。……ちょっと散歩でもどう?』
「散歩?今から?」
『うん。────ていうか、もう居るんだけどね。
……窓の外見てみ』
「え……?」
言われた通りに、カーテンを開けて窓の外を見る。
するとそこには笑顔でこちらに手を振る優兄ィの姿が。
何故かリュックサックをからっている。
「嘘ぉ……」
その姿を見た瞬間、凛は部屋から飛び出した。
そして急いで外の優兄ィの元へと向かった。
「優兄ィ!どうしたの?」
「いやいや、お前を少し脅かそうと思ってな。……それより散歩、できそうか?」
「え……あぁごめん、まだ親に何も……」
「いってきなさいよ」
後ろを振り返ると、凛の後を追いかけてきたのか蓮姉ェの姿があった。
「蓮姉ェ!」
「あ、蓮姉さん。こんばんは、帰ってきてたんですね」
「久しぶりね、優真くん。うちの親にはなんとか説明しておくから、凛を連れてってあげて」
「蓮姉ェ、いいの?」
「まぁお姉ちゃんに任せときなさい。……上手くやるのよ?」
「わぁぁぁ!!蓮姉ェええええ!!」
最後の言葉は優兄ィには聞こえなかったようで、優兄ィは首を傾げていた。
▼
「お待たせっ」
「いや、そんなに待ってないよ。んじゃ行こうか」
あれから着替えなどを済ませ、準備をしてから改めて散歩に行くことになった。
歩き出した優兄ィの隣に自然に並びながら2人で歩く。
「どこいくの?」
「ん……ちょっと見せたいものがあってな」
「見せたいもの……?…っへくしっ」
「…お前なんでそんなに薄着なんだよ」
「ちゃ、ちゃんときてきたにゃ!ただ、予想より寒かったっていうか……」
今の凛の格好は、薄手の長袖のシャツの上にニットのセーターを着て、下はショートパンツに黒のニーハイといういつも見たいな軽装。
「……ったく、ほらこれ着なよ」
さっきくしゃみをして寒そうな凛の事を考えてくれたのか、優兄ィが一番上に着てたパーカーを凛に差し出した。
「でも……優兄ィが……」
「お前に風邪引かれたら俺が困るんだよ。『ラブライブ!』も近くなってきたし、これからって時期なのに俺のせいでお前が風邪引いたら申し訳ないだろ?」
「……うん、ありがと……」
凛は優兄ィが差し出したパーカーを受け取って、そのままそれを着た。
中は結構厚手で、優兄ィの温もりと合わさってなかなか暖かい。
それに……優兄ィのいい匂いがする。
「……そういえばこのパーカー、見た事ないにゃ。新しいやつ?」
「……まあな」
優兄ィが貸してくれたのは黒を基調として、白と水色で所々に模様が施してある、フロントジッパータイプのフード付きパーカー。
ジッパーの両サイドにはポケットが付いている。
どちらかというと、大人でカジュアルな服装を好む優兄ィからしたら、珍しく少し子供っぽいセンスだと思った。
「珍しいね、優兄ィがこういう服着るなんて」
「そうか?」
そんなとりとめもない会話をしながら、凛達は夜の散歩を楽しんだ。
▼
「お……ここ面白そうだな」
散歩を続けていた凛たちが辿り着いたのは、近くの裏山の、木々に囲まれた少し暗い自然にできたトンネル。
「……暗いね…」
「ん……怖いのか?」
「うん…ちょっと。幽霊とかは大丈夫なんだけど、こういう暗いのは少しだけ…」
「……んじゃ、手でも繋ぐ?」
そう言って優兄ィが手を差し出してくれた。
でも……少し困らせてみたいな…。
「──────腕組んじゃダメ?」
凛の提案に、少々驚いたような表情を見せた優兄ィだったけど、返事は早かった。
「いいよ。ほら」
「やった!ありがとにゃ♪」
優兄ィが開けた右腕の間に、自分の左腕を回して、体ごと優兄ィの右腕にしがみつく。
「……歩きにくくないか?それ」
「大丈夫だよーっ♪」
「……お前全然怖そうじゃねぇな」
正直、優兄ィと一緒なら全然怖くない。
でも今は、役得を楽しまなきゃ損、って事で!
「……んじゃ、いくよ」
そしてその体勢のまま、凛たちは山の奥へと歩き出した。
▼
優兄ィの左手から出るスマホの明かりを頼りに、凛たちはどんどん奥へと進んでいく。
「どんどん暗くなってくるねー……」
「………………」
「……優兄ィ?」
「──────誰かに後ろからつけられてるな」
「え……?」
「振り向くな。さっきからずっと後ろの方から俺たち以外の足音が聞こえる。ここ下に落ち葉溜まってるから、足音響くからな」
凛も少し注意深く足音を聞いていると、確かに凛たち2人以外の足音が聞こえた。
足音から考えて、その人との距離は近くはないが、安心できるほど遠くもない。
しかもここまで一本道で来たから、戻るにも戻れない。……自然と優兄ィの腕を握る手に力が入る。
「─────大丈夫だ、凛。少しでも近づいてきたら俺があいつとやるから、その隙に出口まで走れ」
「でも……!」
優兄ィは確かに喧嘩には強い方だけど……
相手がもし凶器なんて持ってたら……
そんな事を考えると、やっぱり優兄ィを置いていくなんて事はできない。
───────だったら……!
「──────逃げよ!優兄ィ!」
「え……っておい!凛!?」
凛はしがみついていた腕を離して改めて優兄ィの手を握り、全力で走り出した。
「お、おい待て!凛っ!」
優兄ィの制止の声が聞こえるが、それも気に留めず凛は走る。
相手を撒けるように、右左に走り抜ける。
そして走り続けた先で、進行方向右側に隠れられそうな小さな茂みを見つけた。
「あそこなら……!」
「ちょ…うわっ!」
急に右に曲がった凛に合わせて、優兄ィの体が大きく振り回される。
そして茂みに身を潜めようと横道へとそれた時。
「あっ…………」
足元に張っていた蔓に気づかず、足を引っ掛けた。
走っていたスピードを維持したまま、慣性に従って体が宙を舞う。手をつないだままの優兄ィも、凛に引っ張られて大きく体勢を崩した。
このままだと、凛は顔から地面へとダイブだ。
その時。
「凛ッ!!」
優兄ィが叫ぶ。
優兄ィは繋いだ手を引っ張って、凛の体の向きを自分へと向けさせる。
そしてそのまま凛を引き寄せ──────
抱きかかえるように空いていた左手を凛の頭の後ろに回した。
しかし勢いを殺しきることはできず、2人はその体勢のまま地面へと飛び込んだ。
「凛……大丈夫…か…?」
「んっ……優兄ィ……」
優兄ィが庇ってくれたおかげで、幸いにも怪我はなかった。頭も背中も打たなかったけど、お尻だけは勢いよく落ちたから少し痛む。
そして目を開けた時……衝撃が走った。
(な、ななななな!?)
目の前……お互いの吐息がかかるほどに近くにある優兄ィの顔。
優兄ィの左腕は今現在凛を庇うように落ちたせいで、凛の体の下敷きになって体を通って手のひらは凛の後頭部を包むようになっている。
そして右腕は、凛を潰さないようにと気遣ってくれたのか、右肘を凛の横の顔についた状態だ。
ここここれって……女子に人気の床ドンってやつ!?床じゃないけど!!
されると胸がキュンってするって聞いてたけど……キュンなんてレベルじゃない。
さっきから凛の心臓は優兄ィに聞こえてしまうんじゃないかってくらいバクバクしてる。
優兄ィもこの状況を意識してくれているのか、少し頬を赤らめている。
2人を取り囲む静寂が…甘い色へと染まっていく。
暗い夜……好きな人と、2人きり。
そして好きな人が、自分を押し倒してくれている(たまたまだけど)。
───────この状況で、“それ以上”を望まない女の子なんて、いない。
“したい”──────。
大好きな、優兄ィと。
そして凛は、期待するように瞳を閉じた。
優兄ィは今、何を考えているんだろう。
優兄ィの吐息が近づいてくるのを感じる。
凛は今から、優兄ィと────────
そして、2人の唇が重なる────────
────────直前。
『ブ──────ッ!!ブ───────ッ!!』
「んにゃああああ!?」
「んがぁぁっ!!」
凛の携帯が、大きな音を立てて震えた。
それにびっくりした凛は目を開いて腹筋の要領で上半身を起き上がらせる。
その瞬間、凛の硬い額が優兄ィの鼻先を捉えた。
そして優兄ィは後ろへと吹っ飛ばされ、倒れた後鼻を押さえて悶絶していた。
「わあああああ!!ごめん優兄ィ!!」
「うっ……あぁ……くおぉ…だっ、大丈夫だぁ…」
優兄ィが半泣きになりながら凛にピースサインをして大丈夫とアピールをする。
それを見てさらに手で『ごめん』のサインをしながら、届いたメールを確認する。
『星空蓮:うまくいった?♡』
ああああああああああああああああ!!!!
……と叫びたい気持ちを抑えつつ、冷静に返信文を作成する。
『星空凛:バカ!!アホ!!空気読め!!』
大好きな姉に、ここまで暴言を吐いたのは人生初だ。
それほどまでに凛が受けたショックは大きかった。
後少しで、優兄ィと────────
「……誰からだったの?」
優兄ィが鼻を押さえながら訊いてきた。
「……蓮姉ェから」
「ん?なんて言ってたの?」
「何もないにゃ」
「え、なんで怒ってるの?」
「何もないにゃ!!」
「怒ってるよね!?」
「なーにーもーなーいー!!」
ふんっ、とやり場のない怒りを優兄ィにぶつける。
だって優兄ィがもっとしっかりしてたら今頃……今頃っ……!
「はぁ……んで、どうする?…ここどこだろ」
周りを見回す優兄ィ。
確かに結構無我夢中で走ってきたから……元の道からはだいぶ外れてしまった。
そのおかげで後ろをつけてきた人はうまく撒いたみたいだけど。
「……ごめんね、優兄ィ…凛がいきなり走りだしちゃったから……」
「……気にすんな。それより出るとこ探そうぜ。このままじゃ流石にヤバいからな……よっと」
優兄ィが立ち上がり、凛に手を差し出す。
「……ほら、いくよ?」
「……うんっ…」
さっきのこともあって、少し意識してしまう。
凛は少し躊躇いながら、優兄ィの手を取った。
▼
再び歩きだしてから、どれだけ経っただろう。
あれから暗い森の中を、優兄ィと2人で歩き続けている。気分が暗くならないように優兄ィが話を振ってくれるけど、やっぱり……自分のせいだと思うと優兄ィに申し訳なくなる。
そんな時、ついに見つけた。
暗い闇の中に、少しだけ明るさを宿した空間。
あそこはおそらく……木々に囲まれてはいない。
「優兄ィ!あそこ!」
「ちょ……!お前またっ…!」
凛は走りだした。
僅かな光へと向かって。
「出たーーーーー!……ぁ」
木々が囲む森を出て、飛び出した先は草原。
そこだけ木の一つも生えていない、風に乗って草が揺れる、夜の暗さと月の明かりが相まって、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
山の中に、こんな場所があったなんて……
その美しい場所に、見惚れそうだった。
ただ。
下が斜面だった。
そう、つまり全力で駆けていた凛達は……
「「またかにゃあああ(よおおお)!?」」
情けない声を上げながら2人で斜面を転がり落ちた。
しばらく経って、勢いを失った体は斜面の途中で停止した。
凛と優兄ィは大の字になって草原に寝転んでいた。
「……ってて…凛、大丈夫……か……」
「うん、下が柔らかかったか……うわぁ……!」
目を開くとそこに広がっていたのは──────
満天の星空だった。
雲一つなく、夜空を明るく照らす月と、上空一面に輝く星の海。
そしてその海を駆けるように流れる、流れ星。
────────流星群だ。
「綺麗…………!」
「────────“オリオン座流星群”」
「え……?」
「これを見たかったんだ。……ほらっ」
優兄ィが改めて座り直した。
その横に凛も座る。
そして優兄ィはスマホを起動した。
「……午前0時半にピーク、か……。
うん、時間ぴったりだ」
「最初からこれを見るために……?」
「うん。これを見たかったんだ。
─────────凛と2人で」
「え……?」
「30分遅れたけど、凛、誕生日おめでとう」
「優兄ィ……」
「……最初はこんな予定じゃなかったんだ。
12時前にはここについて、12時になったらおめでとうを言おうと思ってた。そして半になるまでゆっくりしようと思ってたんだけど……なんとかなったな」
「じゃあ最初からここに来たかったの?」
「うん、思ってた場所とはだいぶ違うところに着いちゃったけど。……今思えば、俺たちの後ろについてきてた人も、ここに来たかったのかもな。だから俺たちと道が一緒だったのかも」
優兄ィが笑った。
凛もその笑顔を見て幸せな気持ちになる。
──────こんな素敵な景色を、凛のために。
「……一番最初に祝いたかったんだ。今年はμ'sのみんながいるし、抜かれちゃいそうだったからな。俺が一番乗りだなっ」
「ふふっ……ありがとにゃ」
「……ねぇ、凛」
「ん?どうしたの?」
「パーカー返して」
「えぇ!?いきなり!?」
「ごめん、寒いから……」
もぉ〜と言いながら凛はパーカーを脱ぐ。
少し名残惜しいけど、優兄ィに風邪引かれたら困るし。
そして優兄ィにパーカーを返そうとした時。
優兄ィから紙袋を渡された。
「……これ、は…?」
「───────プレゼント。たくさん転がったから袋ぐちゃぐちゃだけど、中身は大丈夫だから」
「──────────ありがとう!」
中身を取り出すと入っていたのは……
「あ!!これって!!」
「……わかった?」
そう、パーカー。
“優兄ィと色違いの、同じ”パーカーだった。
優兄ィの水色で塗られた色の部分が、凛のものは黄色で塗られている。
そしてフードには、凛の大好きな猫の耳が付いている。
つまり──────ペアルック。
「……昔、俺とお揃いの洋服欲しいって言ってたの思い出してな。お前に似合いそうなパーカー探したんだ」
だから優兄ィは、いつもと違うセンスのパーカーを着てたんだ。
自分には多少似合わなくても、凛には似合うと思って。
「もう……いつの話してるの?」
からかいながらも、ニヤニヤが止まらない。
だって、こんなの……嬉しすぎるよ。
凛はそのパーカーを着て、優兄ィの肩に頭を乗せた。
「……似合ってる?」
「……当たり前だ。俺が選んだんだぞ?」
「……嬉しい、アリガト」
ふと触れ合う互いの指
どちらからともなく指を絡める
そして2人の距離は、近づく
「……綺麗だね」
「うん、見れてよかったよ」
「……凛もよかった。……優兄ィと、見られて」
「……俺もだよ」
沈黙が流れる。
そして思い出すのは、さっきのワンシーン。
続きをするなら……今かな?
でも……これ以上は望んじゃダメだ。
だって今、こんなに幸せなんだから。
これ以上は……欲しがりすぎだ。
……だけど
少し欲張りになっても、いいよね?
「ゆーう兄ィ!」
「うおっ……!」
繋いでいた手を解き、凛は優兄ィを横から抱きしめた。いきなりのことで優兄ィは耐えられずに後ろへ倒れた。
「ってて……」
そして倒れた優兄ィの上に馬乗りになり
優兄ィの額に優しく口付けた
「────────!」
「だーいすき♪」
凛の言葉に、呆気に取られた表情をする優兄ィ。
ややあってその表情は笑顔へと変わり
優兄ィも凛の額にキスをした
「ばーか」
そして優兄ィは凛を優しく抱きしめた。
左手は背中に回し、右手は凛の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「……へへへ♪」
きっと今、凛は世界で一番幸せだ。
神様がくれた、最高のプレゼント。
満天の星空を流れる星に願う。
この幸せな時間が、ずっと続きますように。
来年も、優兄ィとこの星空が見られますように。
優兄ィと……ずっとずっと、ずーっと一緒に入られますように。
叶えてくれるよね?お星様。
だってこんなに沢山流れてるんだもん。
今日の夜を、凛は絶対に忘れない。
気持ちを通じ合わせた2人を───────
月と星が優しく照らす。
というわけで改めて、凛ちゃん誕生日おめでとう!
背中合わせ番外編、凛ちゃん誕生日回はいかがでしたか?
今回も、甘〜くなるように書いてみました!
凛ちゃん推しの方が満足していただければ幸いです。
それでは、凛ちゃんと、凛ちゃん推しの方々にとって、素敵な一年になりますように!