ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね

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今回から第3章です!
メインとなるのはもちろん2章で出番が一話しかなかった彼女たちです!笑



【第3章】ー交わる道
テストが彼と彼女たちにもたらしたもの


27話 テストが彼と彼女達にもたらしたもの

 

 

 

「『ラブライブ!』?」

「はい!そうです!スクールアイドルの祭典、『ラブライブ!』です!はぁぁ〜ついに開催されるなんてぇ…」

 

 新曲、『これからのSomeday』の撮影&動画投稿も終え、梅雨に足を踏み入れかけた6月初旬。花陽がその話を始めたのは、そんなある日の部室での事だった。ちなみに矢澤は席を外している。

 

「どんな感じなの?」

「はい!スクールアイドルの甲子園……それが『ラブライブ!』です。スクールアイドルサイトに登録されたチームのランキングが上位20組以内の学校が本選進出で、No.1を決める大会ですっ!」

「へえぇ〜!」

「スクールアイドルは、全国的にも人気ですし…」

「はいっ!上位20組となると……一位のA-RISEは確定として、二位三位は……!はぁ〜まさに夢のイベントです〜っ!チケット発売はいつでしょうか〜!」

「へぇー!すごいすごい!私たちも参加してみようよ!」

 

 穂乃果の言葉に花陽は驚いたように立ち上がった。

 

「うえええええええぇぇぇ!?

そんな、私たちが参加なんて…畏れ多いです…」

「花陽、あなたキャラ変わりすぎ……」

「凛はこっちのかよちんも好きだよー!」

「じゃあ花陽ちゃん、観に行くつもりなの?」

 

 

 

 穂乃果のこの言葉に─────

 

 

 

 花陽の雰囲気が変わる。

 

 

 

 

「キッ……!」

「ひいっ!?」

 

 

 

 鋭い眼光を穂乃果に飛ばす花陽。

 怯える穂乃果をよそに、花陽は椅子から立ち上がり、穂乃果に詰め寄る。

 

「当たり前です!!これはアイドル史に残る一大イベントですよ!?そこにこの私が参加しないとでも!?断じてありえません!!──────さあ皆さん!『ラブライブ!』出場目指して練習頑張りましょう!!」

「は…花陽、ちゃん……?」

 

 な、なんだなんだ…?前からアイドルになると目の色変えて喜んでたけど、こんなに威圧感あったか…!?さっきと言ってる事正反対だぞ!?しかもことりちゃんなんて爪先から毛先までガタガタ震え上がってるじゃねぇか!

 

「こ、ことりちゃん…!?」

「ああああぁぁぁぁ……お、オタ陽ちゃん……いやあぁぁぁ……」

 

 今、聞きなれない単語が……

 なんて言った?“おたよ”?

 

「さぁ練習しますよ!急いで屋上へ!!早く!!」

「は、花陽……キャラ、変わりすぎじゃない…?」

「り、凛はこっちのかよちんも好きだよ……?」

 

 真姫と凛も花陽のそのあまりの変貌ぶりに引き笑いを浮かべている。

 しかも凛に至ってはいつものセリフが疑問文に変わってるし。

 

 ことりちゃんの今の様子とあのときの死にかけていたときの事を考えるに、どうやら花陽のこの状態には、矢澤が一枚噛んでいるのは間違いなさそうだ。後で問いただして絶対に吐かせてやる。

 

 

 

 

「うぅ〜……本当にごめんなさい……」

 

 あれから程なくして花陽は元の性格へと戻り、今はみんなに謝罪を述べている。

 

「大丈夫だよ、花陽ちゃん!……やっぱり花陽ちゃんも、『ラブライブ!』に出たかったんだよね?」

「……はい、実は……少し……」

「だよねだよね!やっぱりみんな、出て見ようよ!せっかくのチャンスだし!」

「確かに、本選に出場できれば、確実に学校のアピールに繋がりますね」

「うん!せっかくスクールアイドルやってるんだし、目指してみたいかも!」

 

 2年生の提案に、凛と真姫も同意の笑みを浮かべる。

 

「よし!じゃあ学校の許可をもらいに────」

 

 バタン!

 

「みんな!大ニュースよ!」

 

 凄い勢いでドアを開け部室に入ってきたのは矢澤。

 

「ついに、ついに開かれるわ…!スクールアイドルの祭典!」

「『ラブライブ!』だろ?」

「……知ってたのね」

「今その話してた」

「もちろん参加するわよね!?」

「みんなそのつもりだ」

 

 メンバー全員が矢澤に笑顔を向ける。

 

「アンタたち…!」

 

 さて、これで俺たちに新しい目標ができた。

 

 

 

 ──『ラブライブ!』本選に出場して、学校のアピールをすること。

 

 

 

 

「うぅ……いざ行くとなると緊張するね……」

 

 現在、理事長室の前。

 絢瀬たちに話をしてから行こうと思ったが、生憎生徒会室には誰もいなかった。

 

「大丈夫でしょ?悪いことするわけでもないんだから」

「うぅ、でも……」

「あぁもう!穂乃果らしくないわね!サッていけばいいのよ!サッて!」

 

 しびれを切らした矢澤がドアに駆け寄る。

 その時。

 

 内側からドアが開いた。

 

 

「─────貴女達」

「絵里先輩!それに希先輩!」

「お揃いでどうしたん?」

「アイドル研究部から学校へ許可を取りたいことがあってな。生徒会室に誰もいなかったから直接理事長室に来た」

「……貴方も一応生徒会なんだから、別に私たちのところに来る必要はなかったでしょ?」

「俺もそう言ったんだけどな。穂乃果がどうしても絵里先輩達に報告してから行きたいって聞かなくてな」

 

 えへへ〜と笑う穂乃果。

 それを見て絢瀬からも自然と笑みがこぼれた。

 

「……そう。…で、許可って?」

 

 

 

「────そこから先は、中で聴こうかしら」

 

 

 

 ふと気がつくと、入り口のドアの前に理事長が立っていた。

 

「理事長…」

「そんなところで立ち話もなんでしょう?中へどうぞ」

 

 失礼します、と言いながら俺たちは中へ入る。

 

 

 

 

「へぇ、『ラブライブ!』?」

「はい。ネットで全国的に中継されることになっています」

「本選に出場できれば、学校のアピールにも繋がると思うの」

 

 穂乃果達2年生3人が、理事長と話している。絢瀬はその横で、それ以外の俺を含めたみんなは後ろで話を聞いている。

 

「なるほどねぇ……絢瀬さんは、どう思う?」

 

 理事長は、そこで話を絢瀬に振る。

 絢瀬は一瞬驚いた顔をしたがすぐ普段の張り詰めた表情に戻った。

 

 さぁ。お前が出す答えは。

 

 

 

「──エントリーするくらいなら、問題ないと思います」

 

 

 

「そうね。私もそう思うわ」

「本当ですか!?」

「えぇ。学校は、アイドル研究部の『ラブライブ!』への参加を認めます」

 

 やったぁと喜びの声を上げるメンバー達。

 俺はそれ以上に、絢瀬の返答に驚いていた。

 

 あの絢瀬が、部分的にでも俺たちの活動を認めた。

 これは大きな進歩に思えた。

 

 しかし。

 

「──理事長、やはり納得がいきません。私達生徒会も学校を存続させるために活動させてください…!」

 

 絢瀬が理事長に詰め寄る。

 

「それはダメよ」

「何故ですか!この子達の肩を持つんですか!?」

「そんなつもりはないけど」

「何故この子達が良くて、私達はダメなんですか!?」

 

 

 

「──簡単なことよ?」

 

 

 

 そうだ。簡単なことだぞ?絢瀬。

 

 ──もうとっくに気づいてるんだろ?本当は。

 

 

「っ……意味がわかりません」

「あっ、えりち…!」

 

 そう呟くと、絢瀬は理事長室を後にした。

 そしてその後を、理事長に頭を下げてから東條が追っていった。

 穂乃果達も、心配そうな表情を浮かべている。

 

「絵里先輩……」

「ただし、条件があります」

 

 

 理事長の言葉に、俺たちは改めて居直る。

 

「勉強が疎かになってはいけません。

 

 

 

──来週の期末試験で、誰か1つでも赤点をとった場合、参加を取り消します」

 

 

 

 なんだ。結構緩い条件だな。

 さすがに赤点なんて取るやつは──

 

 

 

 ──いや。

 

 バタン。

 

 

 待て──いる。俺たちには……

 

 

 バタン。

 

 

 とんでもない爆弾が、2つ──!

 

 

 

 ──────バタン。

 

 

 

「って矢澤!お前もかよ!!」

 

 

 後ろを振り返ると、ガクリとうなだれ、この世の終わりのような雰囲気を発し出した単細胞コンビ+矢澤。

 

 

 

 

 

「大変申し訳ありません」

「ません」

 

 現在、部室にてみんなに頭を下げる問題児2人。

 

「中学校の頃から知ってはいましたが…穂乃果…」

「数学だけだよ!ほら、私小学校の頃から算数苦手だったし!」

7×4(しちし)

「……………………26……?」

 

 ……これほどまでか…。

 おいあの花陽ですら微妙な顔になってるぞ。

 

「で?凛はどうなのよ?」

「凛は英語!英語だけはどうしても肌に合わなくて……っていうか!凛達は日本人なんだよ!?どうして英語なんて勉強しなきゃいけないの!?だいたい英語って何語かわかんないにゃ!」

 

 だから英語は英語だっつーの。

 

「屁理屈はいいのよ!こんなんで出場できなかったら恥ずかしすぎるわよ!」

「真姫ちゃんこわいにゃ〜……」

 

 ……でだ。

 

「おい爆弾第3号」

「ぐっ……」

 

 今や完全に威厳を失った部長さんにこえをかけた。

 

「お前、赤点取るほどやばかったっけか?」

「……数学だけはいっつも…」

「……はぁ……ダメだこいつら……仕方ない。しばらくは勉強会だな。俺が矢澤に教えるから、残りの2人はお前らに──」

 

 

「──お困りのようやね」

 

 そう言って入ってきたのは、東條。

 

「希先輩……」

「ウチが力を貸してあげよう……!」

「本当ですか!?」

「ただし条件があるんよ」

「条件……⁇」

 

 そして東條が指差したのは、俺。

 

「ゆーまっち、生徒会に貸して」

「ええええぇ!?優兄ィを!?」

「うん♪今日だけでええから」

「ちょ、東條?」

「最近やることが多くてね……正直、ウチとえりちだけじゃ3人分の仕事を2人で片付けるの大変なんよ。やから、今日の内にゆーまっちの分は終わらせてもらおうと思って」

 

 そして東條は俺に笑いかける。

 

 

 ──その時確かに聞こえた

 

 

 

 ──“えりちを助けてあげて”──

 

 

 

 あいつは何も言葉を発してはいない。

 でも、伝わってきた。

 そういうことなら俺は。

 

「……わかったよ。ってなわけですまん。今日は俺抜きで頑張ってくれ」

「えぇ!そんなぁ〜」

「東條が頭いいのは知ってるだろ?多分教え方は俺よりも上手だから、頑張れよ」

 

 俺はそう言って部室を後にしようとした。

 

 

「──頼んだよ、ゆーまっち」

「──あぁ。任せとけ」

 

 お互いに顔は合わせない。

 でもそれだけで十分だった。

 

 

 俺は俺のやることをやる。

 絢瀬のためにも、俺のためにも。

 だから今は────あいつらを信じよう。

 

 そう思って、俺は生徒会室へと向かった。

 

 

 




前回がとても長かったのと、導入部分なので今回は短めです!
今回もありがとうございました!
感想評価アドバイス等お待ちしております!

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