ラブライブ! ─ 背中合わせの2人。─   作:またたね

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前半は真面目な話、後半は少しくだけた話になってます!
そして後半、ついにあのキャラが……?
そして、メンバーが増えてきたので、ことりちゃんが発する疑問文には?が⁇になっています!
以降ことりちゃんの疑問文は“⁇”となりますので、それで判別していただくようお願いします!


心を開いて

25話 心を開いて

 

 

 

 

 凛に引っ張られて、呼吸を乱しながら学校に着いた俺と凛(凛はいつも通り元気で息一つ乱れてないけど)は、屋上へと向かう。

 

 

 ─────きっと大丈夫。あいつらなら、うまくやってるはずだ。

 

 

 そして俺は、屋上のドアを開けた。

 

 

 そこに立っていたのは──────

 

 

 

 満面の笑みを浮かべた花陽と西木野さんだった。

 

 

 

「かよちん……西木野さん……!」

「凛ちゃんっ!」

「遅かったわね。心配したわよ?」

 

 

 俺は心の中でほっ、と胸をなでおろす。

 よかった─────うまく、いった……。

 

「優真先輩!」

 

 穂乃果達4人も、俺の方へと駆け寄る。

 

「穂乃果……上手くいったんだな…。本当にありがとう」

「いやいや!私はただ思ったことを言っただけですよ〜」

 

 

 違うぞ、穂乃果。

 西木野さんに必要だったのは、理屈じゃなくて、穂乃果がみんなにくれる“勇気”だったんだ。

 2つの夢の間で迷う西木野さん。

 そこから彼女を助けてあげられるのは、穂乃果の勇気。

 穂乃果の勇気が、西木野さんを動かす。

 そう考えていたから、俺は西木野さんの元に穂乃果を向かわせた。

 

「海未も、ありがとね」

「いえ!私はただ穂乃果の手助けをしただけですから…」

 

 そしてその穂乃果の突拍子もない提案を、海未の力があれば西木野さんにきちんと伝えられる。そう思ったからこそ、海未と穂乃果に頼んだ。

 

「矢澤……やっぱりお前に任せて正解だった」

「これくらい、どうってことないわよ。

─────花陽の気持ちは、痛いほどわかるしね」

 

 花陽の説得に関しては、俺よりも矢澤の方が適任だと思った。同じ気持ちを抱えたことのある矢澤の話を聞くことで、花陽の心の鍵は開けるはずだと考えたからだ。

 

 

「……ことりちゃん……大丈夫……?」

「…………………………もうツライ……………」

 

 

 ことりちゃんはもとから花陽と仲良しっていうのもあって、花陽と同じであまり運動が得意じゃないから、その辺の気持ちもわかると思って頼んだんだけど…

 

 

 ────どうしてこんなに死にかけてる。

 

 

「……矢澤これは一体……」

「……にこは知らないわ」

 

 俺の質問に明らかに目をそらす矢澤。

 ……今は、そっとしておくか…。

 

 そして一年生3人と、俺たち5人が向かい合う。

 

 

 そして1人ひとりが、覚悟を述べる。

 

 

「──────小泉花陽です。

 

 

1年生で、背も小さくて、声も小さくて…

人見知りで、得意なものも何もないです。

でも…でも、アイドルへの思いは誰にも負けないつもりです!

 

幼い頃からの夢……絶対に叶えたい……!

 

だから……

 

μ'sのメンバーにしてくださいっ!」

 

 

 

 

「──────西木野真姫。

 

私には、夢が2つあります。

今までその2つの夢の間で気持ちが揺れ動いてて…

皆さんにもたくさん迷惑をかけました。

 

──────でも、もう迷いません。

 

アイドルも勉強も絶対両立してみせます!

 

先輩達がくれた機会……絶対に無駄にしません!

 

 

私をメンバーにしてください!

 

 

よろしくお願いします!」

 

 

 

「──────星空凛!1年生です!

 

 

今までずっとアイドルに憧れてて…

でも自分には無理だって決めつけて諦めようとしてました。

 

──────でもやっぱり、アイドルになりたい!

 

それがずっと夢だったから!

 

似合わないって言われても

 

無理だって言われても

 

もう絶対に逃げません!

 

 

だから、凛をメンバーにしてくださいっ!」

 

 

 3人が、それぞれ頭を下げる。

 そんな3人の前に差し出された、手。

 

 

 西木野さんの目の前には、穂乃果と海未。

 

 花陽の目の前には、矢澤とことりちゃん。

 

 そして凛の目の前には、俺。

 

 3人が顔を上げ、それぞれの手を─────

 

 取った。

 

 

 

『─────ようこそ、μ'sへ!』

 

 

 

 

 こうして、“9人の女神”を冠した彼女達は、7人になった。

 

 花陽がまた泣き出す。

 そしてそれを横にいた2人が慰める。

 その光景を見て、俺も不覚にも泣きそうになった。

 

 ─────本当に成長したね、花陽。

 あんなに臆病だった君が、自分の意思をきちんとみんなに伝えられてる。

 それだけで、俺は本当に嬉しいよ。

 

 

「……泣かないの。小泉さん」

「うっ……ぐすっ……西木野さぁん……だって……」

「もう……しょうがないんだから……」

「西木野さんだって……目赤くなってるにゃ…」

「ち、違うわよっ……!

 

──────ねぇ、2人とも」

 

 凛と花陽が、西木野さんの方を向く。

 

「───私のことは、名前で呼んでよ。

 

私もそうするから……凛、花陽」

 

 西木野さんは夕日のせいか相当緊張しているのか、顔が真っ赤になっている。

 

「───うん!わかったにゃ!

 

真姫ちゃーん!真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃーん!!」

 

「な、何回も呼ばないでよ!」

 

───君も本当に成長したよ、西木野さん。

以前の君は誰にも心を開かないで、ずっと1人だった。

そんな君が、自分から友達を作り、関わろうとしている。

先生も、きっと喜んで君の夢を応援してくれるよ。

 

俺は西木野さんに話しかける。

 

「──────西木野さん」

「……朝日先輩。その、この間は…」

「謝らなくていいよ。寧ろ、謝るのは俺の方だ」

「そんなことありません!……先輩の言葉で、大切なことに気づけたんです。

だから─────────

 

ありがと、先輩」

 

 

「……西木野さん…」

「あと、それやめてください。

────“朝日さん”も下の名前で呼んでください」

 

「……!

 

─────わかったよ、“真姫”」

 

 彼女は俺の呼び方に、満足したように笑った。

 

 

「凛、よく頑張ったな」

「優兄ィのおかげだにゃ!

 

でも、これからは自分の力で、どんどん頑張るよ!

 

だから──────見守っててね?」

 

「──────あぁ。当たり前だ」

 

 にひひっと輝くような笑みを浮かべた凛。

 一瞬ドキっとしたのは、きっと気のせいだ。

 

 

「花陽も。強くなったな」

「ううん。お兄ちゃんと先輩達のおかげ…。

 

でも、やると決めたからには、一生懸命頑張るね!」

 

 そう言って満面の笑みを浮かべる花陽。

 その笑顔は、以前よりも一層輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ところで花陽。

 

 

ことりちゃんが死にかけてたのはなんで?」

 

「───花陽は何も、知りません…。知りません」

「何故二回言った」

「知りません」

「おい花陽!」

 

 機械のようにそう俺に告げると花陽は穂乃果達の元へと走っていった。

 くそ、矢澤も花陽も何を隠している…?

 

 ─────ふと、屋上のドアが動いたのが目に入った。

 ……誰かが見ていたのだろうか。

 

 ─────ま、“アイツ”だろうけど。

 

 

 ─────あと二人だ。待ってろよ。

 

 

 俺はきっとそこにいた“アイツ”に心の中で呼びかけた。

 

 

 

 

 

 

 屋上に続いていた階段を、下へ降りる少女が一人。

 

 

 

「ふふっ♪ありがとっ」

 

 

 

 その呟きは、彼女以外の耳には届かない。

 

 

 

 

 1年生3人が加入してから数日後の放課後。

 俺は教室に残ってある作業をしていた。

 最近コレのせいで睡眠時間がガツガツ削られている。

 あぁ……今もなかなか……眠い…

 

 

「おーい、ユーマ!」

 

 

 半分睡魔に流されていた意識が、自分の名前が呼ばれたことで目覚める。

 俺の目の前に立っているのは、筋肉ムキムキのナイスガイ。

 

「ん。サトシ。どうしたんだ?」

「お前こそ、どうしたよ!全然元気ないぜ!」

 

 こいつは剛力悟志。

 音ノ木坂に通う数少ない男子のうちの一人で、俺が唯一3年間同じクラスの男子だ。

 1年の頃、初めての自己紹介でボディビルを披露したアホだ。

 ……まぁ俺は東條がクラスにいたことに驚いてこいつのボディビルは覚えてないんだけど。

 

「あぁ……最近、コレに追われててな…」

「ん?これは……詞か?」

「そうそう。夜中までずっと考えてるから眠くってな……」

「……なるほど、お前らしくて良い詞だと思うぜ!今の所はな!」

 

 何故こいつがこんなことを言うのかというと…

 そう、こいつが2年前に矢澤の曲を作るときに編曲を頼んだクラスメイトだ。

 こんなアメフト選手みたいなガタイをして、趣味がピアノとギターなのだから不思議だ。

 しかも、めちゃくちゃ上手。

 

「しかし、μ'sか……なかなかよかったぜ、あの曲。あれもお前が作詞したんだろ?」

「あぁ、他のやつと二人で……って、お前ライブ見に来てたのか!?」

「いや、あの日はトレーニングセンターに通う日だったから行ってないぜ?」

「え……?じゃあどうして曲を……?」

 

 

 

「─────μ'sの曲、動画サイトに上がってるぜ?」

 

 

 

「は!?マジかよ!?」

「マジマジ。……ほれ、見てみ」

 

 サトシから携帯を借りて、そのサイトを見ると確かにあの日のライブの動画がアップされていた。

 

「本当だ……!しかもこんなに応援のコメントが……」

「お前たちの努力の成果だぜ!これからも頑張れよ!応援してるぜ!

また作曲のことで何かあったら俺のところに来い!いつでも手伝うぜ!」

「サトシ……。ありがとな」

「そしてあわよくば、μ'sのメンバーとお近づきになって……

 

彼女、ゲットだぜ!!」

 

 

「……一瞬でもお前に感謝した俺をぶん殴りに行きたい」

「何だと!?正直俺はお前が羨ましいぜ!

あんなに可愛い女の子に囲まれてイチャイチャと……しかも学院のマドンナと名高い絢瀬さんと東條さんと一緒に昼ごはんも食べて……この幸せ者め!」

 

 ……サトシはそう言ったけど、少し違う。

 最近、絢瀬と一緒に昼ごはんを食べることが少なくなった。いつも東條と矢澤の3人か、東條が気をつかって絢瀬と食べるので、矢澤と2人で食べるかどっちかだ。

 

「……あいつらはただの友達だよ。

……それに、作曲ができるメンバーも入ったから、大丈夫だ」

「何だと!?じゃあ俺の出番は!?」

「ねぇよ」

 

 

 

「AIBOOOOOOOOOOOOO!!」

 

 

 

「キャラ混ぜすぎだろ!

せめて作品は統一しろ!!」

 

 そんな馬鹿なことをサトシと話していたら、1人の少女が俺を訪ねてきた。

 

「────朝日さん。今大丈夫ですか?」

「ん、真姫。どうしたの?」

「次の曲のことで相談が……

 

─────って、悟志。あなたクラスここなの?」

 

「おお、真姫じゃないか。あぁ、俺とユーマは一緒のクラスだぜ!」

「……え?真姫、サトシと知り合い…?」

 

 

 

「────悟志は私の作曲の先生よ」

 

 

 

「ええぇぇぇ!?サトシがぁ!?」

 

「って言っても、ギターの打ち込みだけだけど。

ピアノは私の方が上手だし」

「はっはっは!驚いたかユーマ!」

「や、でも……納得はいくかな…」

 

 矢澤の曲の時のあのクオリティ。

 あれを知っているからこそ納得がいく。

 

「ちょうどいいわ。悟志にこの曲見てもらうわ」

「ちょ、真姫!?」

「軽く考えただけだし。……朝日さんたちが詞を作り終わらないと私も本格的にはできないから」

「うっ……申し訳ない」

 

「だからって、焦らなくても大丈夫ですよ?

いつ先輩たちが完成させてもいいように、私もあらかじめ準備しておくだけですから。

────で、悟志。これなんだけど……」

 

「おう!任せろ!

 

 

──────って、真姫ってμ'sのメンバーになったのか?」

 

「え……うん、そうだけど……」

「何だと!?マジかよ!やったぜ!」

「なっ、なによ!?」

「俺言ってただろ?真姫は絶対アイドルが似合うってな!よかったー、これでμ'sのメンバーとお近づきになれるぜ!」

「そっちが本音かよ」

「もう!悟志!こっちは真面目な話なんだけど!」

 

 唐突に褒められて驚いているのか、真姫は頬を赤く染めている。

 

「はっはっは!すまんすまん。……どれどれ……」

 

 そこから2人は、先程とは打って変わって真面目な雰囲気で真剣に話し出した。

 素人の俺が会話に割り込む余地もない。

 

「あー、真姫。俺先に部室行ってるから」

「……あ、はい、わかりました」

 

 それだけ真姫に伝えて、俺は教室を後にした。

 

 

 

 

「おっす、みんな……ってなんだこの雰囲気」

 

 俺が部室に入ると、矢澤以外のメンバーが息を飲んで矢澤を見つめていた。

 その矢澤は某国民的アニメの総司令のようなポーズをとっていた。

 

「──────来たわね」

「矢澤。これ、どういう……」

「──────決めるわよ」

「……え?」

 

 

「次の曲のセンターを…決めるわよおおお!!」

 

 

 おおー!と返事をしたのは、凛と穂乃果。

 海未とことりちゃんと花陽は、なんとも微妙な表情を浮かべている。

 

「……ナニコレ」

 

 真姫も遅れて部室に到着し、目の前の光景の理解ができないようだ。

 

「……次の曲のセンターを決める⁇」

「そうよ」

「……穂乃果ではないのですか?」

「違うわ」

「……リーダー、なのに…?」

「そうよ」

 

 海未たち3人から出た質問を、矢澤が説き伏せていく。

 

「……意図を聞いてもいいか?」

「確かに、μ'sのリーダーは穂乃果よ。μ'sを作ったのは穂乃果だし、ちょっと間抜けなとこもあるけど、いざっていうときはみんなを引っ張るリーダーシップも持ってるわ」

「いやぁ〜それほどでもぉ〜〜」

「でも!」

「ひいぃ!」

 

 褒められた瞬間は目も当てられないほど表情を緩ませた穂乃果が矢澤が声を張り上げた途端に怯える。

 

「この子はまだまだダンスも上手じゃないし、歌唱力もあるけど、天才的ってわけじゃない!リーダーだからって、穂乃果をセンターにし続けるのはどうかと思うわ!」

「そうにゃそうにゃー!」

「凛、お前絶対悪ノリしてるだけだろ」

「んにゃ?なんのことかにゃあ?」

「くっ…もういい放置だ。…で?具体的な案は?」

 

 

「もちろんあるわ!

 

 

─────第1回、μ's内センター総選挙を行うわ!」

 

 

 センター総選挙…?

 

「どんなことをするんですか⁇」

「メンバー内で色々な競技をして、その結果を見てメンバーの中で誰がセンターにふさわしいか投票するの!」

「歌とか、ダンスとかってことですね!?」

「そうなるわね」

「面白そう!ね!かよちん!」

「えぇ!?わ、私はセンターなんて無理だよぉ〜…」

「それを決めるのはあなたじゃないわ。センターは実力がある人がなるべきよ。花陽、もしあなたが選ばれたのなら、選ばれた以上責任を持ってやり抜く必要があるわ」

 

 うーん矢澤の言うことは筋が通っている…のか…?

 にしても、今日の矢澤はえらく強引だな…

 何か他に意図があるんだろうか……?

 まぁ、乗ってみる、か。

 

「アホくs」

「うん、いいと思う。やってみようそれ」

 

 矢澤に暴言を吐きかけた真姫の口を封じ、俺は賛成の意を示す。

 

「さっすが朝日!そう言うと思ってたわ!」

「優真先輩!?本気なのですか!?」

「あぁ。矢澤の言うことには一応筋が通ってたし、それにダンスや歌をテストするなら、メンバーが増えた互いの実力を知るいい機会になるんじゃないか?

みんなで一つの曲を歌うんだ、互いの実力はしっかりと知っておいたほうがいいと思うんだけど、どう?」

 

「な、なるほど……」

「そう言う理由なら、まぁ……」

「ちょっと!にこが言った理由じゃ不満足っていうわけ!?」

「まぁ、正直」

「アンタ生意気すぎるわよ!真姫!」

「よし、じゃあ総選挙始めよう!」

『おおー!』

「なんでにこの時と扱いが違うのよぉー!!」

 

 騒ぐ矢澤は放置して、取り敢えず総選挙をすることになった。

 

 

 

 

 ───さてさて、どうなることやら。

 

 




果たして、にこの意図とはなんなのでしょうか。
そして今回、ついに彼が登場しましたね。
彼の今後の活躍に、ご期待ください笑
今回もありがとうございました!

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