モテ期と修羅場は同時にやって来るものである   作:藤龍

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ハーレム≠幸せである

 一度に沢山の女子に告白されてー。とか考えてる男性諸君。絶対その願いは叶わない方がいい。

 何故なら、実際されたらされたで、スッゴい困る。俺、今困ってます。

 

 一日に三回も告白される(しかも三日前にも告白されてる)という非日常を体験した俺はとにかく混乱していた。もう某パズルゲームでゲームオーバーになる寸前の時みたいにパニクってます。

 そんなパニックの原因の一人である生徒会長で、たった今告白してきた朝倉先輩に、俺はとりあえずついさっき俺が経験してきた事を伝えた。

 既に二人の女子に告白された事や、その他諸々を。

 

「なるほど……友希君はそんなにモテモテなのね……予想外だったわ」

 

 予想外はこっちのセリフです。接点ゼロのアナタに告白される事何て想像出来ないし、しかも何故今何だ……前の二人もそうだが女子のその行動原理は何なんだ?

 

「これは……私が付き合うだけでは解決しないわね……」

「付き合うのは確定なんですか……?」

「え、当たり前じゃない」

 

 うわぁー……スッゲー真顔で言われた。あれか? クーデレってやつなの? もう俺ショートしてます。

 

「……そうね、今度その二人と私、それに天城さんを交えて、話し合いましょう」

「な、何について……?」

「それは私と友希君の交際を三人に納得させる為よ」

 

 そこは誰が付き合うとかじゃ無いの!? その前提は揺るがないのね!? 俺の意志は無視ですか……いや別に付き合うのが嫌な訳じゃ無いけど……かといってこの状況じゃあれだしな……

 

「まあ、後日話し合うという事で……」

「そうね。その時に他の奴らを黙らせましょうね?」

 

 この人怖ぇよぉ……もう嫌だ……

 とりあえず俺は生徒会室を後にして家へ帰った。どうしてこうなったのだろう……

 

 

 

 その帰り道、俺はさらに予想外の人物と鉢合わせる事になった。

 家の目の前にウチの制服を着た一人の女子。あれは……

 

「こ、こんにちは……」

「て、天城……さん!?」

 

 な、何故俺の家の前に!? いやそれより……今の俺の精神状態で一対一は何かマズい! あの出来事をどう伝える!? というかあの手紙の返事をどうする!? 保留か!? 拒否か!? それとも受け入れるか!? ……どれも罪悪感があるぅ! どうする!? マジでどうする!?

 

「て、手紙……読んでくれた?」

「へぁ!? あ、はい!」

「そ、そっか……それで……返事……聞いてもいいかな……?」

 

 ああー、スッゲェ可愛いじゃん何この生き物? もうすぐオーケーと言ってしまいたい! でも! それすると俺の命と我が妹の友人の命が危ない! そして他の二人も危なそう! ついでに天城の友情も危ない!

 

「えっと……」

 

 どう答える!? 何が正解何だ? というか答えはあるのか!?

 

「……あの! ちょっと聞いて欲しい事が……」

「……何?」

「……実は――」

 

 俺は包み隠さず、今日起きた出来事を話した。雨里に加え、他二名に告白された事。そしてそれらを無視すると色々危なそうな事を。

 それを聞いた天城はとても驚いた顔で呆然としていた。そりゃそうだよね。親友が自分と同じ相手に知った上で告白してんだもん。俺も驚いてるし。

 

「……というわけで、俺は非常に混乱している上、危険な人達に告白されたわけで……天城の思いにすぐ答える訳にはいけない状況な訳でして……そのぉ……」

「……世名君はどうする気?」

「はい……?」

「世名君は誰と付き合うの?」

「え、えっと……正直良く分かんない……天城に告白されたのはスッゲェ嬉しかったし、でも色々分からない事もあって、友達から始められたらなー、とは思ってたけど、他の三人が現れて……絶賛パニック中です」

「そっか……それじゃあ、今は誰とも付き合う気が無いって事?」

「そ、そういう事になりますかねー……とりあえず全員で話し合って……ゆっくり決めるという事……にしてくれたら有り難いなー、と……」

 

 我ながら何か情けないなぁ……ここで「俺は誰々と付き合う!」とか言えば男らしいんだろうけど、優柔不断な俺には無理です、はい。

 

「……そっか……分かったよ。明日、みんなで話し合おうか」

「え? お、おう……」

「それじゃあ、また明日」

 

 天城はそのまま何事も無かったかのように去って行く。なんかおぞましい空気を放っていたような……俺これからどうなっちゃうの?

 

 

 

 ◆◆◆

 

 ――翌日

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 …………気まずい!

 

 放課後。俺の家に集まった天城、雨里、おお……出雲ちゃん、朝倉先輩の四人。もちろん理由は昨日の告白ハットトリックの件だが……みんな凄いピリついた空気を出して黙っている。

 お願いだ……誰か喋って……! 俺気まず過ぎて死ぬ!

 

「……一応聞いておきますけど、どうして皆さんは世名君に告白したのですか?」

 

 その願いが届いたのかようやく天城が口を開く。でも第一声それじゃ無い方が良かったな!

 

「私は……衝動的というか……体が勝手にというか……」

「先輩の事が好きだからに決まってます!」

「友希君は私と付き合う運命ですから」

「……そうですか」

 

 わー、スッゴい空気が悪くなったよー。というか天城が一番殺気放ってるんだけど。一番怖いんですけど。

 

「私が世名君に告白したのは知っていますよね? なのにどうしてですか?」

 

 スッゴい挑発的何ですけど。超好戦的何ですけど。天城さんこういう人なの?

 

「このタイミングだからですよ! アナタに先輩が唆されないように告白したんです!」

「同じく」

「い、一応同じく……」

「……だったらさっさと告白すれば良かったじゃないですか。私がしたからするって、思いが弱い証拠では?」

 

 あー、もう嫌だよこの超威圧感ある口論。逃げたいよー。

 

「そ、そんな事は無いぞ! 私だって優香に負けないぐらい彼を愛してる!」

「何言ってるんですか! 私が一番付き合いが長くて、愛も深いです!」

「私が一番に決まってますよ。愛情は長さより質です」

「…………」

 

 何か凄い嬉しい事言われてるんだろうけど全然素直に喜べない……もう俺を嫌ってくれて構わないからそれ以上熱くならないで……あなた達の愛する人のお願い!

 

「……はぁ……いくら言い争っても無駄ですね。世名君」

「はいぃ!?」

「世名君は誰の事が好きですか?」

 

 ここで俺に振りますか!?

 スッゲーみんな見てるよ。血走ってるよ!

 

「い、いや……誰が好きとか……その……俺恋愛とかした事無いし……」

「では、誰と付き合いたいですか?」

 

 まだ続ける!? 言えない言えない! 言ったらヤバい気がする。間違えなく誰かしら不幸になるじゃん!

 

「……み、みんなに聞くけど……もし俺がこの中で自分以外の人と付き合うって言ったらどうする?」

「他の女を恨み尽くす」

「……もの凄く凹む」

「死んで先輩の守護霊として側に寄り添い相手を呪います」

「友希君と心中かしら?」

 

 オールバットエンドじゃねーか!

 怖いよ! みんな怖すぎるよ! 特に出雲ちゃん(3番目)朝倉先輩(4番目)怖いよ! バットエンドどころかデッドエンドじゃん! 雨里(2番目)は……可愛らしいなおい!

 いや、そんな事言ってる場合じゃ無いぞ! 何だこのクレイジーな集団は!? 誰かと付き合った時点でほぼほぼ俺の人生終わるじゃん! 逃げ道無いじゃん!

 

 こ、これが……修羅場という物なのか? アニメとか見て「修羅場とか羨ましいー」とか思ってたけど、想像よりスッゴい重い! 中心にいる俺の胃はもう破裂しそうだ!

 

「で、どうするの? 世名君?」

「うっ……!」

 

 どうするって……どうする事も出来ないよ! 天城さん、もし俺と付き合っても呪われる上に親友は凹み、俺は死ぬんだよ!? どうしようも無いじゃん!

 

 でも、どうかしなければいけない……! どうする、何を、誰を選べば……!

 

「俺は……」

 

 俺には……これしか道は無い!

 

「――俺は誰とも今は付き合わん!」

 

 全員がポカンと俺を見詰める。……視線が痛い。でも、これしか方法は無い!

 

「俺は正直誰かが好き! とかそういうのは無いし、今のこんな状況じゃ付き合う気もない! だから! 俺はまずみんなの事を知りたい! 好きとか言われても相手の事分からなかったら付き合う気にもなれない! だから、全員友達からお願いします!」

 

 これが俺の精一杯の答えだ。まあ、簡単に言うと保留だ。その場しのぎでしか無い。正直それっぽい言葉並べただけで完全に適当だ。自分でも意味が良く分かってない。

 でも、俺にはその場しのぎしか出来ない。だってそれ以外は誰かしらが不幸になる! それは何としても避けたい! 俺を好きになってくれたのたなら、全員が納得出来る結末が見つかるまで現状維持だ!

 

「……どう……でしょうか?」

「…………分かった。私もこんな状況で付き合っても、良い気分にはなれないし」

「私も……それでいい……」

「納得出来ないけど先輩が言うならそうするけど……」

「私も、アナタの意見に賛成よ」

 

 よ、良かった! とりあえず危機は回避――

 

「でも、私は退きませんよ」

「私だって先輩のガールフレンドになるの諦めませんし、他の女には渡しませんよ!」

「当然、私も譲る気は無いわよ」

「わ、私もそのつもり……です!」

 

 ……出来たのかなぁ?

 

 

 何はともあれ、バットエンド直行は免れた。が、四人の交戦状態は全然収まること無く、バッチバチだ。

 そこで、俺は四人にある提案を出した。いわゆる、これからの俺達の関係性だ。

 

 一つ、俺と四人は友人という事で、恋人では無い。デートなど、友人でも多少許される行為は認めるが、それ以外は断じて認めない。

 二つ、俺は四人と平等に交流を深め、誰を好きかを決める。その上、俺がこの人と付き合いたいと完全に心に決めるまで友人のままである。

 三つ、俺が誰かの事を好きで、その者と付き合った場合は恨みっこ無し。キッパリと諦める。

 

 この三つを基本とした五人の間の決まり事をいくつか決めた。自分で考えて何だか、スッゴい恥ずかしい。モテるってこんな辛い事何だね……モテ期怖い……

 

 ともかく、こうして俺を中心としたクレイジーな女子達による修羅場生活が始まってしまった。

 

 ……俺はどうなってしまうのでしょうか? とりあえず――生きよう。

 

 

 

 

 




 次回から修羅場が本格的に始動。主人公の胃をぶっ壊す気で甘ーく頑張ります。




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