告白とは突然されるものである
モテ期とは――
今まで女子との関わりなど一切無かったにも関わらず、有り得ない程複数の絶世の美女に好意を寄せられるという全男性の夢である。
ソースは俺の個人的見解だ。
で、そんなモテ期が来ていわゆるリア充状態になった奴を未だモテ期が来ない非リア共は妬み、恨んだりするものである。
これもソースは俺の個人的見解である。
俺もつい最近まで女子との絡みがほぼほぼ無い一般人だった。彼女とか居る奴の事を「べ、別に羨ましくねーしぃ!?」とか強がっていた男子高校生だった。リア充とかいう存在をこの十六年間どれだけ恨んだことか……
だが、俺は今まで「リア充爆発しろ!」とか呪いの言葉を掛けていた人達に謝りたい。「リア充も……辛いんだね」って。
「ちょっと、今私のお弁当を食べてもらっているんですけど?」
「良いじゃないですかぁ。セーンパイ、私のお弁当美味しいから食べてくださいよぉー!」
「その料理はカロリーが多すぎる。私のなら栄養バランスも完璧だ! さあ、食べろ!」
「そんな堅苦しいのより愛情の籠もった物の方が美味しいわよね? 可愛い後輩の為に作ったんだから食べて?」
全国の非リア諸君……一つ言っておきたい。リア充は幸せばかりじゃ無いぞ。どっちかって言うと何か胃が痛くなる。たった一人の地味ーな女の子と密かーに付き合う方が超幸せ。絶対そう!
こんな事言えば全国の非リア民の皆さんに「テメェ何贅沢言ってんだゴラァ!」とか言われるだろうが、言わせてほしい――
「……どうしてこうなった……?」
◆◆◆
学園のアイドルとは案外自分の通う学校に居るものである。
現に俺の通う何の変哲も無いこの「
しかしそんな彼女はいわゆる高嶺の花。きっと話す事も無く終わるんだろうなと、誰しもが思っているだろう。俺もそう思っていた。高一では同じクラスだったが、結局殆ど話す事も無く、二年はクラスも別。今後関わる事も一切無いと思っていた――のに。
「あ、あの……これ! 読んでください! 感想とかは後でいいんで、とにかく読んで下さい! そ、それじゃあ!」
「…………」
そんな高嶺の花から、ラブレター(らしき物)を俺は貰いました。
「…………」
俺は改めてその受け取った手紙を見る。真っ白で宛名も何も書いていない封筒に、ハートのシールで封をしてある。
「…………どういうことなの!?」
え? え? ちょっと待って、これは一体何ですか? いきなり放課後屋上に呼び出されーの? それが学園のアイドルでーの? いきなり顔を真っ赤にして手紙渡されてーの? 猛ダッシュで逃げられーの? 取り残されーの? …………どういうことなの!?
「これって……ラブレター……だよな?」
いやいやいやいや! 有り得ないって! 相手はあの学園のアイドル天城優香だぞ? ほぼ接点の無い自他共に認めるザ・スタンダードな俺がこんなの有り得ないって! これはきっと……うん、あれだ! メールやSNSが発達した現代において手紙の素晴らしさを知ってもらおうというボランティアだよ! 天城はその手紙愛好ボランティアの一員何だようん!
でも、何故俺がターゲットに? ……あれだな、適当何だよなうん! 気にしなくていいんだよ友希君!
……と、とりあえず家に帰って確認するか。いや決して期待している訳では無くて! もしかしたら重要書類かもしれないし! 新しい連絡網かもしれないし! あ、クラス違うか。
「……って、何一人脳内で言い訳してんだ俺……帰ろう……」
そう色々混乱しながら家路へと向かい、そそくさと自宅へ帰宅する。
で、気付いたら家に到着していた。多分ずっと手紙の事考えてたんだろうな……よく事故らなかったな。
「ただいまー……」
ドアを開けて自分の部屋へ直行。途中階段ですれ違った妹に超不審な顔されたけど無視だ。部屋へ入り、手紙を取り出しベッドへダイブ。
「……いや、どうせくだらない内容オチだって! 期待するだけ無駄だよな――」
余計な事を考えるのを止めて封を開け、手紙の内容を確認する。
――いきなりこんな手紙を出してしまいすみません。いきなりですが、ずっと前から好きでした。
はいラブレター確定来たー!
いきなり過ぎるだろう! こういうの普通どうでもいい事並べたりして行数伸ばしたりするんじゃ無いの!? まだめっちゃ文字続いてるよ!? 見事に三枚組だよ!? というか文字綺麗だなおい! というか何だこれ!?
興奮やら恥ずかしさやら疑問やらで全身が痒くなったり、熱くなったりしたが、とりあえず最後まで手紙を読み進める。
内容はこの手紙を出した理由から始まり、俺に惚れたキッカケや、俺の好きなところやこれからどうなりたいか等が長々と書かれていた。
俺が第三者なら恨みを持って燃やし尽くしたい程幸せいっぱいな内容で、正直途中で読むのが辛くなった。何かすっげー恥ずかしい。
まあ、ともかく……これは間違い無くラブレターだ。そしてこれを貰った俺はすなわち――学園のアイドルである天城優香に告白されたという事だ。
すっげぇ嬉しい事だ。が、それ以前に疑問が多すぎる。何故俺に!? ザ・スタンダードな俺に何故惚れた!? すっげー聞きたい! でも連絡先とか知らねーし、家も知らない! そして何より今日金曜日! つまり明日から連休! 天城さんタイミング考えて!
「こ、これは……どうすれば良いんだろうな……?」
とりあえず一人で背負うには余りにも事が多き過ぎる。ここは幼なじみであり、俺の最大の友人、親友Aこと、
スマホからささっと親友Aに連絡を取る。
『もしもし。どうした?』
「いや、あのー……実はさ……」
『悩みかなんかか? 俺なんかよりネットで意見貰え』
「冷たいなネット中毒野郎! ていうかネットに書いたら叩かれるって!」
『恋愛沙汰か?』
鋭い……! こいつこういうとこあるから怖い。
「そうなんだけど……実は、告白されたんだよな……」
『切るぞ』
「待って親友A!」
『うるせぇ。そんなノロケ話付き合ってられるか。SNSに拡散するぞ?』
「脅迫まがいな事止めて! マジで悩んでるんだって! 相談乗ってくれないと俺悶え死ぬ!」
『ますます乗りたくねぇーが……何なんだ?』
「実は……天城に告白されたんだけど……」
『…………天城ってあの天城か?』
「はい、あの天城さんです」
『…………良かったじゃん。じゃあな』
「待ってぇぇぇぇぇ! 相談乗って! 今度フォーティーワンのアイス奢るから!」
『……ダブルな。で、何で悩んでんだよ?』
よ、良かった……何か気分悪いけど乗ってくれそうだ……ダブルって高いっけ?
「いや、その……何で俺なんかに告白したかがわかんねぇーんだよ。だってあの天城だぜ? そりゃ嬉しいけど、有り得ないだろ? だからもうどうすればいいか分かんなくて……」
『……悶え死んどけ。じゃあな』
「解答短っ!?」
しかも今度はガチで切ったし!? 元々相談乗る気なかったなコイツ! アイス奢り損じゃん!
「どうすんだよこれぇ……」
結局それから親友Aは居留守を使い相談には乗ってくれず、俺は土日の連休を悶えながら過ごした。
◆◆◆
――月曜日
ようやく学校に行ける……これほど月曜日が待ち遠しかったのは久しぶりだ……ともかく、今日は天城に手紙の真意を聞く!
とはいえ朝一で向かうのもあれなんで昼休みか放課後に聞くことにして俺は自分の教室へ向かった。
「おはよーっす――」
「世名ぁ! これどういう事だゴラァ!?」
いきなり何!? 教室入った途端血気盛んな男子生徒達が押し寄せて来たよ!? 新手のイジメ!?
「これどういう事か説明しろよ!」
男子生徒Aが差し出してきたのはスマホ。そこの画面には某SNSの画面。そしてこうコメントが書かれていた。
「えーっと……『俺の幼なじみのS君が学園のアイドルに告白されたんだってー。本当リア充爆発しろ』か……」
……とりあえず俺は教室の端っこの方に座っている親友Aこと裕吾に目をやる。が、スッと視線を逸らされる。
――アイツ拡散しやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「これ書いたの新庄だよな!? そして幼なじみってお前だよな!? そして学園のアイドルって天城さんだよなぁ!?」
「待て! 落ち着くんだ男子生徒Aから……Oぐらいまで! 一旦落ち着こう!」
「否定しないって事は……嘘じゃねぇのか!?」
何この集団尋問! 俺が何をしたっていうのー!
◆◆◆
――放課後
俺は結局あれから休み時間全てで質問責めにあった。どうやら噂は一瞬にして学園中に広がったらしい。世間って狭い。
で、天城も同じく質問責めにあったらしく、耐えきれず先に帰ったらしい。
「天城には悪い事したな……」
「俺にもその謝罪の気持ちを向けろよぉ! 何なの!? 俺の事嫌いなの!? 何で拡散した!?」
「いや電話の時何かあまりにも幸せそうな声してたからイラッときて」
え、俺そんな幸せトーンの声だったの? でも拡散は駄目だろ! 最近のネット怖いよ!? ちょっとした呟きが一瞬で全世界に知れ渡るんだよ!? 友希知ってる!
「しかしこんな大事になるとは思ってなかった」
「とんでもねーもん何だから当たり前だろ! 爆弾投げて爆発しないと思ったのか馬鹿!」
「……ば、多い」
「知るか! 親友Aから親友Bに格下げするぞ!」
「どうでもいいわ……黙れよ親友D」
「俺親友Dなの!? 上三人誰よ!?」
駄目だ……これ以上会話しても無駄だ。もう、帰ろう……
下駄箱を開けると、何か落ちるのが目に入る。
「何だこれ……手紙? しかも三通?」
「……またラブレターとかじゃねぇか?」
「え……? いやいや有り得ないって……」
まあ、そう言いながらもちょっとドキッとしたのは認めるよ。とりあえず一通目を開けて確認する。
――話ガアる。生ト会シつまでコい。
「……何これ怖い……」
何この短い文……いや問題はそこじゃない! 何故この手紙の文字は新聞の切り抜きが使われているんだ! これあれだろ! 殺人予告とかで見るあれだろ! ドラマで出てくるあれだろ!
「何だそれ怖いな……もしかして天城の事好きな奴がお前を殺そうと送ってきたんじゃね?」
「恐ろしい事言うなよ! ていうか、こんな凝ったの一日じゃ出来ないって……」
「俺が拡散したのは金曜日。これ作る余裕ぐらいある」
「希望を潰すなこの野郎!」
やべぇよ……何か知らないけど俺殺されそうだよ……はっ! という事は残りの二通も……
やだよー、見たくねーよー。絶対殺すとか大きく書かれてるよー。
とはいえ、確認しないのもより一層怖いので二通目を確認する。
――お話しがあります。放課後に屋上に来て下さい!
うん、普通の文章だ。だが問題がある。何故赤いペンで書かれてるんだ? 何か文字も荒々しくて怖いし。何か殺意感じるし! これもヤバいよ、果たし状感がハンパ無いよ!
「つ、次だ……!」
何か怖いのでそそくさと最後の一通に目を通す。
――2年A組の教室に来い。
おお……どストレート……執筆方法も普通にシャーペンだな、うん。でも何か怖い。無言の圧力的なの感じる。
やべぇよ……三通中三通がデスルート直行間違い無しの感じするんだけど……
「お、おい……どうすれば――」
裕吾に助けを求めようとする――が。
既に居ませんでした。
「…………見捨てたなアイツ!」
血も涙もねーのか!? 友人がデスレター的なの貰ったんだぞ! 逃げる普通!? 元々お前のせいだかんな!!
「……どうしよう、これ……」
正直行きたくない。でも、行かなかったら行かないで、凄い恐ろしい事が待っていそう。
……よし、行こう! そして正直に土下座をして謝ろう! 何も悪いことしてないけど謝ろう! それしか生存ルートは無い!
とりあえず一番安全性のありそうな教室へ向かう。2年A組……俺のクラスだけど、もしかしてクラスメイトAか!? もしくはD!? ……誰でも変わらんか。
そうこうしている内に教室到着。ここが、俺のお墓になるのかな……もし殺されたら何て言おう……
不吉な事考えながら俯きながら扉を開く。
「――来たか」
「へ……?」
声が高い……ていうか女子? その驚きの出来事に顔を上げる。
目の前に居たのは我が校の純白のワイシャツに黒のブレザーという制服を着こなす茶髪のポニテガール。アイツは……ウチのクラスの委員長――しかも確か天城の唯一無二の親友、
「すまないな、いきなり呼び出したりしてしまって。あの騒ぎでは直接呼び出すのが難しくてな」
「お、おお……」
やっぱりコイツが手紙を出したのか……一体どうして? って、答えは一つだよな……
「ズバリ聞く。優香に告白されたという噂は本当なのか?」
それだよな、当然。というかコイツ天城から聞いて無いのか……まあ、教える必要も無いしな。でもコイツも何故知りたがる? 友人の恋愛沙汰に突っ込むような奴じゃ無さそうだが……いや、友人だからこそか? 俺みたいな奴が天城と付き合うのは許さない的なあれか? 行き過ぎた友情ってやつか!?
「おい、どうなんだ?」
「え? あ、いやー……まあ、ラブレターは貰いました……はい。でも、まだ返事は出して無いっすよ!」
「そうか……お前はどう答えるつもりなんだ?」
「どうっ……て……とりあえず、ちゃんと話し合って……それから色々決めよう……かと。良く分かってない事も多いし」
「そうか。では今は付き合うつもりは無いという事だな?」
「えっと……今すぐは無い……かな?」
「そうか……では、チャンスはあるな……」
チャンス? チャンスって何!? 脅迫か!? 天城に近付くなという脅迫か!? 女の友情怖い!
もう逃げてしまおうかと思った矢先――雨里が近付き、俺の襟首を掴む。
握力強っ! 何か顔怖いんだけど! 眼力凄いんだけど! 顔赤いんだけど! ……ん? 何で顔赤いの?
すると雨里の口がゆっくりと開かれる――
「世名友希――私と……付き合え」
「…………はい?」
というわけで新作はラブコメです。
他にも色々やっているんですが、思い付いて書きたくて仕方なかったので、勢いで書いた。
自分の他の作品はシリアスなのが多いので、この作品は緩く好き勝手自由に明るくやります。超不定期ですが、よろしくしてくれると有り難いです。