モテ期と修羅場は同時にやって来るものである   作:藤龍

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持つべき友は思い人の妹なり

 

 

 

 

 

 

 天城が太刀凪書店で働き始めて数日。あれから俺が仕事の内容を教える日々が続いた。流石と言うべきか、天城は教えた仕事の内容を支障無く覚え、正直俺のレクチャーなんていらないぐらいまでの技術を身に付けた。

 いい新人が入ったと、千鶴さんも機嫌がすっかり直り、万々歳だ。

 で、今日も特に問題無く仕事が終わり、俺と天城は帰り道を二人で歩いていた。

 

「それにしても、天城は覚えが速いよな。俺覚えが悪いから尊敬するよ」

「そんな、対した事じゃ無いよ。世名君の教え方が良いんだよ」

「ははっ、そう言ってくれると嬉しいね」

 

 ちょくちょく会話を交えながら、別れ道がくるまで二人並んで歩みを進める。自分で言うのもあれだが、普通にいい感じだな……いつもはバチバチの修羅場だし、こういう平和が常に続けばいいんだけど……

 しみじみとそんな事を考えている内に、天城と道が別れる場所に辿り着く。

 

「あ、それじゃあここで。また明日……は、休日だし、バイトも休みか」

「そうだな。また来週な」

「うん、またね」

 

 爽やかな笑顔を見せ、こちらに手を振り天城が去る。俺もそれを姿が見えなくなるまで見送り、再び家路を歩く。

 最近は天城も機嫌がいいし、目立った事も無いし、平和だなぁ……もうすぐ5月も終わるし、来月まではこの現状がキープされていてほしい……

 平穏を願いながら進むこと数分、家に到着する。今日は疲れてるし、夕飯まで寝て休むか……

 

「ただいま……うおっ」

 

 玄関を開けた途端、思わず声を漏らす。玄関には見慣れない女性物の靴がいくつかあり、お世辞にも広いとは言えない家の玄関を埋め尽くしていた。

 

「あ、お兄ちゃんお帰りー」

 

 その事に驚いていると、リビング方面からお菓子とジュースを持った友香がやって来る。

 

「おう、ただいま。もしかして、友達来てんのか?」

「うん。みんなで勉強会」

「へぇ……それは感心だな。なんか分かんない事あれば相談乗るぞ?」

「あ、じゃあ早速頼んで良い? みんな揃って詰まってるとこあるから」

「お、おう……」

 

 冗談半分で言ったんだけどな……俺勉強得意でも無いし。まあ、高一レベルなら何とかなる……かな?

 少々不安になりながらも、靴を脱ぎ、階段を上がって友香の部屋に向かう。玄関にあった靴は三足だから、来てるのは三人だよな。ちょっと狭そうだな……

 二階に上がり、まずは荷物を自分の部屋の扉を開け、ベッドの上に放り投げる。そのまま隣の友香の部屋へと移動。

 

「みんなー、お菓子持って来たよー。後、頼りないけど助っ人来たよー」

 

 友香が扉を開けると同時にそう口を開く。妹よ、兄を頼りないとか言うのはどうかと思うぞ。

 部屋を友香の後ろからチラッと覗き込むと、三人の人物の姿が見える。そしてその瞬間、俺はある重大な事を忘れていた事に気付いた。

 友香の友達って事は――当然彼女が居るという事に。

 

「あ、セーンパーイ!」

 

 そう、俺の姿を目視した瞬間、飛びっきり甘えた声を出し、一人が立ち上がる。そう、友香の友人で俺の悩みの種の一人、出雲ちゃんが。

 迂闊だった……友香の友人っていったら真っ先に思い浮かべなきゃならん人物だろう俺! 面倒事を起こさない為には接触しない事が一番だろうに……まあ、もう会ってしまったし、無視するのもあれだし良いけど。

 とりあえず出雲ちゃんは今日俺に会いに来た訳では無く、友香の友人として友香の家に遊びに来ているだけだ……多分。だからそんな他の三人を出し抜くとかそういう企みでは無いはずだ……多分。

 

「や、やあ出雲ちゃん……他の二人も、なんか久しぶりだね」

 

 とりあえず一旦出雲ちゃんの事は置いておいて、他の二人に挨拶をする。一人は礼儀正しくお辞儀をし、もう一人はぼーっとしていたのか、遅れて適当に頭をぺこりと下げる。何というか……相変わらずだな。

 

 彼女達二人も、友香の友人で、中学時代はよく家にも遊びに来ていたので接点はある。

 しっかりと礼をした方は中村(なかむら)愛莉(あいり)。どうやら結構育ちが良いらしく、誰に対しても礼儀正しい、朝倉先輩とは違ったタイプのお嬢様って印象だ。見た目は天城みたく、黒髪のサラッサラなロングヘアーで、見た目から清楚感満載な女性だ。未だに友香と接点を持った事が不思議で仕方無い。

 

 もう一人のなんかぼーっとしてる方は小波(こなみ)悠奈(ゆうな)。こっちは極々普通な女性。強いて言えば常にぼけっとしてて、色々心配になる不思議な雰囲気を醸し出す少女だ。何か色々だらしなくて、きっとオシャレなんか興味が無いタイプなんだろう。髪もボサボサで染めてない黒だし。

 

 そしてヤンデレ娘の大宮出雲ちゃん。そんな割と濃いメンバーが揃った我が妹の友人AからCを目の前に、少したじろいでしまう。女子高生の集団に入り込むの割と勇気いるね、うん。

 

「えっと……今日は勉強会何だよね? まだ遊びたい時期だろうに、頑張るねー……」

 

 とりあえずなんか気まずいので適当に話題を振ってみる。

 

「学生の本分は勉学ですから。当たり前な事をしているだけです」

 

 最初に透き通った声で返事をしたのは中村。本当に真面目だなぁ……こういうのを完璧って言うんだろうな。

 

「……私はテキトーに……友香達が誘ってきたから」

 

 続けてだるそーな声で小波。この子は……曲がらない意志的なのを感じるな。まあ、断らないだけ良い子か。

 

「私は、先輩に会えるかなーって思って!」

 

 最後に甘え声で出雲ちゃん。うん、思いっきり俺目当てだねこの子。俺に直接会いに行くと他の三人にどうこう言われるから、妹の友人という特権をフルに使ったなこの子……まあ、それはしょうがないよな。でも、他の三人には黙っておこう。伝えたら恐ろしい事になりそう。

 よし、とにかく話題を戻そう。出雲ちゃんも友人の前ではそんな大胆には攻めてこないだろう。

 

「……確か、問題で分からないところがあるんだっけ?」

「はい、少し手間取ってしまって……お願い出来ますか?」

「世名先輩ヘルプー」

「じゃあお兄ちゃんよろしくー」

 

 とりあえず中村以外は年上にお願い事をする際のマナーを覚えようか。はぁ……ちゃちゃっと終わらせて部屋に戻るか……女子高生の輪は高校生男子には辛いです。

 適当な場所に座ろうと空いている場所は無いかと部屋を見渡す。その最中、出雲ちゃんがいきなり俺の腕を掴み、引っ張ってくる。

 

「ほら先輩! 私の隣に座って座って! じっくり教えてほしいなぁ……」

 

 半ば強引に自らの隣に座らせ、思い切り体を押し当ててくる。

 ……駄目だ、全然自重する気無いな。欲望全開だよ。友達の目を気にしなさいよ! ほら、みんななんか気まず……あれ、なんかそうでも無いな……?

 中村は見てはいけないものを見てしまったかのように少し赤面して両手で目を覆う。が、ちょっと指の隙間から覗いている。

 小波は超ガッツリ見ながら「ほほぉーう」と呟いている。

 そして友香は知ってたと言いたげな顔で見ていた。

 ……なんか恥ずかしいんですけど。これはさっさと終わらせなければ!

 

 

 

 

 

 

 ――数十分後。役目を終えた俺は自室に戻り、ベッドに倒れ込んだ。ものの短時間でこんなに疲れるとは……分からない問題ってのが得意な数学の計算問題で助かった……

 あの後ササッと問題のヒントを与え、即座に退散した。出雲ちゃんはもうちょっと居てとせがんで来たが、勉強会何だから集中しろ的な事を言って何とか説得出来た。

 

「はぁ……寝るか」

 

 また分からない事があったら呼んでくれとは言ったが、彼女達ならそう簡単に手間取る事は無いだろう。バイトの疲れも残ってるし、ゆっくり休むか――

 

 

「それにしても、さっきの出雲大胆だったね」

 

 目を閉じた瞬間、隣の部屋から小波の声が聞こえてくる。壁一枚隔てただけだからな……そりゃ聞こえるか。俺耳良いし。まあ、気にしないで寝るか――

 

 

「え、そんなに大胆だった?」

「そうですよ。私思わず恥ずかしくなっちゃいましたもん」

「本当よね。というか出雲は何でお兄ちゃんの事好きなの? 欠陥だらけじゃん」

「友香さん、お兄様にその言いようは……」

「そこまで真剣になるものなのぉ?」

「当たり前だよ! だって先輩カッコイいじゃん! それに優しくってぇ、頼りにもなるしぃ、もう私にとっては完璧だよ!」

「そんな美少年かなお兄ちゃん……」

「まあ、確かに世名先輩は素敵なお方だとは思いますけど……」

「あれぇ? もしかして愛莉も狙ってる感じぃ?」

「そ、そんな事ありませんよ! そもそも出雲さんの思い人に好意を向ける行為なんてしませんよ!」

「私は知ってるけどな、そういう行為してる人」

「大丈夫、愛莉はそういう子じゃ無いって知ってるし、恋愛なんて無理だよね、シャイだし! でも、先輩に手出したら私怒るよ?」

「わ、分かってますよ……!」

「出雲、目が笑ってない」

「ははっ……でも――」

 

 

「…………」

 

 ――寝れるかぁ!

 ガールズトークを聞かされた状況で夢の世界なんか行けるかぁ! 聞き耳立てちゃうよ男の子だもん! しかも話題の中心俺ぇ!

 イカン……このままなんか悶々とした感じが続くのは辛い! リビングに行こう……そうすれば声も聞こえなくなるだろうし……

 早速起き上がり、部屋を出ようとしたその時――

 

「そういえば先輩今日帰り遅かったけど、バイト? というか、友香は先輩のバイト先知ってる?」

 

 突然の出雲ちゃんの爆弾発言にギクッ! と効果音が付くぐらい体を思いっきり震わせる。

 マズいぞ……バイト先が知られる事は今はマズい! そしたら出雲ちゃんは絶対店に来る……そうすれば天城とのキャットファイトが始まってしまう!

 友香は当然太刀凪書店の事は知っているし、天城の事も知ってはいる……もしかしたらここで真実を知ってしまうかもしれない……!

 乱入してでも止めようかと、葛藤を続けていると、友香の声が聞こえてくる。

 

「お兄ちゃんなら、近くのスーパーでバイトしてるよ。でも、裏方の仕事だから、行っても会えないと思うよ?」

「そうなんだ……そこ今バイト募集してるかな?」

「うーん……今はしてないみたい」

「そっか……残念だな……」

 

 我が妹よ! 俺の状況をしって誤魔化してくれたのか! マジでありがとう! 今度お前の好きなシュークリーム好きなだけ奢ってやる!

 そう心の中で最大級の感謝を伝え、俺はリビングへ向かった。

 

 

 

 

 

 リビングに到着すると同時に、電話が鳴り出す。こんな時間に誰だろうと、不思議に思いながら受話器を手に取る。

 

「はい、世名です」

『あ、友希?』

「母さん? 何かあったの?」

『いやそれがね、今日はママ友達とお買い物に行ってたんだけど、ついでに外で食事する事になっちゃって……悪いけど、今日は二人でご飯食べててくれる?』

「ん、了解」

『ごめんなさいね。食材は好きなの使って良いからねー』

 

 そう言い残し、ブツリと電話が切れる。

 受話器を元の場所に戻すとほぼ同時に、友香が上から降りてくる。

 

「電話?」

「母さんから。ママ友と晩飯食べるから、二人で食べてろって」

「ふーん。って、もしかして私が作る感じ?」

「そりゃ、お前以外居ないだろ」

「えー、メンドクサイなぁ……勉強して疲れてるんだよねぇ……」

「お前な……」

 

 確かに気持ちは分かるけど、しょうがないだろ。出前取るにしても、母さん居ないから俺とお前で金出さなきゃいけないけど、俺今金欠だし、お前もさほど無いだろうし、お前が作るしかないだろうが……

 が、友香は何か良い案を思い付いたのか、口を開き目を輝かせる。……嫌な予感。

 

「ねぇ、夕飯お兄ちゃんが作ってよ」

「はぁ!? 俺料理とか出来ねーぞ!」

「生姜焼きとか、少しは出来るじゃん」

「そりゃ簡単なのは出来なくはないけど……」

「さっきの事、聞いてたよね?」

「うぐっ……!」

 

 コイツは……早速恩を返せっていうのか……

 

「はぁ……分かったよ、作れば良いんだろ? 言っとくが、味は保証しないぞ?」

「知ってる。楽出来ればいいもん」

 

 はぁ……良い性格してるな……しょうがないか。その代わりシュークリームは奢ってやらん。

 早速冷蔵庫に何か材料があるか確認しようとキッチンに向かおうとした瞬間――

 

「先輩、料理作るんですか!?」

「うおっ!? い、出雲ちゃん? いつの間に……」

「ねぇねぇ! 先輩が料理作るんですか!?」

「ま、まあな……」

「先輩の料理かぁ……私も食べて良いですか!?」

「えぇ!? でも今日の夕飯だし……」

 

 流石に出雲ちゃんだけに食べさせる為に作るのはなぁ……と思っていると友香が再び目を輝かせる。またなんか思い付いたなアイツ……

 

「なら出雲、ウチで夕飯食べてく?」

「え、いいの!」

「ちょっと待て! 何勝手に決めてんだよ!」

「いいじゃん、友達と一緒に夕飯とか、いい思い出じゃん。妹の青春のワンページの協力ぐらいしてよ」

「お前……俺の苦労ぐらい考え――」

「……言っちゃうよ?」

 

 こ、コイツは……! いつこんな腹黒い子になったのこの子! お兄ちゃんそんな子に育てた覚えありません!

 

「分かった、分かったよ! 作ればいいんだろ!」

「やったー! 先輩の手料理だー!」

「流石お兄ちゃん! それじゃあ、愛莉達にも言ってくるねぇー」

「おう……って、他の二人も食わせてくつもりか!?」

 

 俺の制止も聞かずに、二人は上機嫌のまま立ち去っていく。はぁ……何でこんな事に……

 とはいえ、決まってしまったものは仕方無い。せめてちゃんとしたものを作ろう。とりあえず……生姜焼きでいいか。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ――数時間後

 

 

「はい、お待ちどうさん」

「お、待ってましたー!」

 

 長方形のテーブルに座る四人の前に、何とかして作った生姜焼きとインスタントの味噌汁、ご飯をそれぞれ出す。久しぶりにフライパンを握ったから、色々悪戦苦闘したが、とりあえず食える代物にはなったはずだ。

 

「おー、おいしそー」

「食欲をそそる香りですね……」

「先輩の手料理かぁ……ねぇ、食べて良い?」

「思う存分に食え。じゃないと作った意味が無い」

「はい! それじゃあ、いただきます!」

 

 元気よく両手を合わせ、出雲ちゃんが生姜焼きを口に運ぶ。他のみんなも続いて食事に手を伸ばす。

 

「……うん、美味しいじゃん」

「ホントだ、美味」

「とても柔らかくて、美味しいです!」

「お、そうか?」

 

 意外と好評の嵐だ。こういう事聞くと作った甲斐があるってもんだなぁ……

 少しほんわかとした気持ちになりながら、食事を進める。チラリと出雲ちゃんの方を見てみるが、見てるだけで幸せそうだと分かる表情で、モグモグと手製の生姜焼きを食べ進めてくれていた。なんだかんだ言って喜んでもらえたなら、何よりだな。

 

 そのまま時々会話を交えながら食事を進め、あっという間に全て食べ終えてしまった。みんな満足してくれたらしい。

 

 その後、数十分程度休息を入れたところで、俺は三人を家まで送る事にした。もうそろそろ辺りも暗くなっているし、そんな夜道を女の子だけで帰らせる訳にもいかないだろう。

 友香を留守番に残し、三人を連れて外へ出た。幸い全員近場で、方向も同じなので、さほど時間も掛からないだろう。

 

 そしてしばらく歩くと、出雲ちゃんの家の近くまで辿り着いた。

 

「さて、ここまで来れば大丈夫かな。後は一人で平気だよな?」

 

 そう問い掛けるが、出雲ちゃんは返事をしてこない。どうしたんだ? 後数メートル歩くだけだろうに……

 

「ねぇ、先輩、私まだついて行っていい?」

「え、何で?」

「えっと……もうちょっと愛莉達と一緒に話したいなー、なんて」

 

 何かはぐらかすようにする出雲ちゃんの様子を見て、何となく察する。全くこの子は……

 

「あ、あのぉ……私達からもお願い出来ますかね?」

「私もー」

 

 その出雲ちゃんの思いを察してか、二人もそう申し出てくる。

 

「はぁ……まあ、帰りもここ通るし、いいよ」

「やった! ありがとう先輩!」

「近所迷惑」

「あっ、ごめんなさい……」

 

 そのまま出雲ちゃんのわがままに付き合い、彼女の家を通り過ぎ、先にある二人の家へ向かう。二人は同じマンションに住んでいる。案外出雲ちゃんの家から近いので、十分も経たずに到着する。

 

「ここまでで結構です。わざわざありがとうございました」

「感謝です。友香によろしく……」

「おう、気をつけてな」

 

 マンションに入っていく二人を見送り、改めて出雲ちゃんの家に引き返そうとした途端――

 

「えいっ!」

 

 そう可愛らしい声を上げ、出雲ちゃんが俺の腕にしがみついてくる。

 

「えへへ……やっと先輩と二人っきりになれたぁ……」

「そんな事だろうと思ったよ……もう言い返す気にもなれないけど。というか、何ではぐらかすような言い方したんだ?」

「そのぉ……正直に言ったら断られるかなって……」

「別にそれぐらいのわがままは受けるよ。でも今度はちゃんと家に帰ってもらうぞ?」

「分かってます! ただそれまではこうしてて良いですよね?」

 

 さらに腕にキツくしがみつく。歩き難い上に、胸が当たって意識が乱れる。が、いくら言っても聞かないだろう。仕方無くそのまま歩く。

 

「今日は幸せな日だったなぁ……先輩の手料理も食べれたし、こうして夜に二人っきりになれたし、もう大満足だよ……」

「それは……何よりだ」

「ふふっ……先輩と結婚したら、こういうのも当たり前になるのかな?」

「結婚って……」

 

 言い返そうとしたが、出雲ちゃんのあまりに純粋な笑みに思わず言葉を詰まらせてしまう。

 根は純粋で素直ないい子何だけどな……素直過ぎて、狂気が無ければいいんだけど……それが難儀だよなぁ……

 

「ん? おい、着いたぞ」

「えー。もうかぁ……もっと一緒に居たかったなぁ……」

「あんまりわがまま言うな……これ以上は他の三人に悪い」

 

 あくまで平等がモットーだからな。まあ、天城の事とか、色々崩れてきてるが、そこは意識しとかないと。

 

「こんな時まで他の女の事考えて……まあ、先輩らしいけど」

 

 今日初めて見せた不満そうな顔に少し怒りのようなものを感じたが、気のせいだと割り切る。

 

「じゃあ、俺はここで。また来週な」

「うん。先輩、また今度ね! 今度は私が料理作ってあげるね!」

 

 そう言って、出雲ちゃんは自分の家に走っていった。

 

「……はぁ……この事他の三人が知ったらどうなるか……」

 

 とりあえず、他の三人にも機会があったら料理でも作ってみるか。……その為にちょっとレパートリー増やしてみるか。

 今度太刀凪書店で料理本でも探してみよう――そう心に決め、友香がだらけてテレビを観ているであろう我が家を目指し歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 主人公も一対一なら大分ヒロインの扱い方が分かってきた感じがする。まあ、複数相手だとてんで駄目だけど。
 ヤンデレ後輩ちゃんも周りにライバルが居ないと、素直で良い子なんです。妹の友人二人はそんなヤンデレ後輩ちゃんの恋を応援しています。

 次回もお楽しみにー。



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