モテ期と修羅場は同時にやって来るものである   作:藤龍

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修学旅行の幕開け

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、自由行動の時、どこ行く?」

「金閣寺とかでよくない?」

 

「お土産何にしようかなー。やっぱり八ツ橋とかかな?」

「修学旅行って言ったら木刀だろ!」

 

「ほら、早く引けよ」

「分かってるよ……これ! って、ババ引いたぁ!」

 

 男女入り混じる活気ある声が、そこら中から聞こえてくる。その声を聞き流しながら、俺は背もたれに寄り掛かって目を閉じる。

 

「――友希、よかったら食べるか?」

 

 そのまま眠ってしまおうかとした矢先、隣から右耳に流れ込んできた声に、俺は目を開き首を横に動かす。視線の先には、グミの袋をこちらへ差し出す制服姿の海子が居た。

 

「ああ、じゃあ一個貰うよ」

 

 袋に人差し指と中指を突っ込み、中から紫色のグミを一個挟んで取る。そのままグミを口へ運び、奥歯で噛む。思った通りのグレープ味が口の中に広がる。

 グミをモグモグと噛みながら、軽く辺りを見回す。周りには俺達と同じようにお菓子を交換したりする者、トランプなどで遊ぶ者、一人アイマスク着用で寝る者――様々な事をする、俺のクラスメイト達が居る。

 それを見て、俺は思った。ああ、修学旅行っぽいな――と。

 

 

 11月17日――今日は多くの生徒が待ちに待った、修学旅行当日。現在、俺達乱場学園二年生は新幹線に乗り、修学旅行の舞台である京都を目指している。

 東京の都心部に近いところにある白場から、京都までは新幹線で大体二時間とちょっと。みんな到着するまでの暇潰しとして、各々持ってきた物で遊んだり、友人との会話を楽しんでいる。

 俺も暇を潰すのに本でも持ってくればよかったのだが、この移動中の事はすっかり頭から抜けていて、何も持ってきていない。

 話し相手も、同じ班で席が近い……というか真正面に座る裕吾が居るには居るのだが、こいつは現在ちゃっかりとアイマスクを着けて寝ている。孝司や翼もクラスが違うので居ない。

 なので、俺はこれといって暇を潰せる事が無いのだ。まあ、海子が隣に居るので話そうと思えば話せるのだが、何を話していいか話題が見つからないので、さっきからだんまりを決め込んでいる。

 そして海子も俺と同じなのか、時々お菓子を渡してくれたりするのみで、必要以上に話そうとはしない。何度か声を発さずに口を開いたり、チャレンジはしようとしているようだが。

 

「ふわぁ……」

 

 やっぱり隣同士なんだし、何か話した方がいいよなと、話題を必死に頭を回して考えていると、不意にあくびが出る。目元に浮かんだ水気を指で拭っていると、海子の表情が小さく変わったのが見える。

 

「さ、さっきからヤケにあくびをしてるな。寝不足か何かか?」

 

 直後、ほんの少し上擦った声で、そう問い掛けてくる。

 さっきの表情の変化は「いい話題が見つかった!」って事だったんだな――納得しながら、その質問に答える。

 

「まあな。昨日の夜さ、陽菜の奴に京都のいいところとか、色々話されてな。あいつこっちに戻る前は、京都に住んでたらしいからな。無駄に熱が入ってて、夜中まで聞かされたよ」

「そ、それは大変だったな……そうか、陽菜は京都に引っ越していたんだったな」

「俺もそれを知ったのは、あいつがこっちに帰ってきてからだけどな。お陰でまだ京都に行ってないのに、京都の知識が付いた気がするよ。代わりに凄い眠いけどな」

「京都はいいところがいっぱいあるからな。陽菜も、お前にそれをいち早く知ってほしかったんだろう」

「その気持ちは嫌では無いんだけどな……そういや、海子は京都って行った事あるか?」

 

 京都は有名な旅行スポットだし、海子も行った事があるのだろうか。そんな疑問からなんとなく、軽い気持ちで問う。

 すると、海子は何故か一瞬言葉を詰まらせ、間を空けてから答える。

 

「……ああ、小さい頃にな」

「そうか……何か口ごもってたけど、どうかしたのか?」

「ん? いや大した事じゃ無い。昔の事を思い出して、少しな」

 

 と、海子は何かを懐かしむように目を細める。その瞳に、俺はどことなく寂しさも感じた。

 

「京都への旅行には、私が小さい頃に一度だけ行った。……母さんと父さんが離婚する前に、一度な」

「あ、そういう事か……ごめん、余計な事思い出させて」

「謝らなくていい。私にとってはいい思い出だ。あの頃は学校で一人ぼっちで寂しかった分、家族の時間がとても楽しかった。あの時間が無ければ、私はどうなっていたんだろうな」

「海子……」

「だから離婚した時は、本当に悲しかったな……もしお前に出会わずにいたら、色々辛すぎてどうにかなっていたかもな」

 

 胸に手を当て、海子はギュッと目を瞑る。

 

「……っと、すまない。暗い話をしてしまったな」

「いや、元は俺が振ったのが原因だからさ。こっちこそごめんな」

「だから謝らなくて……いや、ならおあいこという事にしておこうか」

 

 楽しそうな海子の微笑みに、俺も笑顔で頷き返した。

 

「ともかく、京都へ行くのはこの修学旅行で二回目だな。あれ以降は母さんも仕事と家事の両立で忙しかったしな」

「そっか。じゃあ、久しぶりの京都旅行、楽しもうぜ」

「ああ。お前と一緒の京都……楽しみにしてるぞ」

 

 海子は膝に両手を乗せ体を少し傾けながら、俺の顔を見つめて柔らかな笑顔を作る。その仕草があまりに女の子らしく、とても可愛く、思わず顔が熱くなる。すると海子も俺の様子の変化に気が付いたのか、急激に顔を赤くし、目を背ける。

 

「そ、それよりだ! 寝不足なら、少し寝ていろ! まだ本番はこれからなんだ! 今から体力を溜めておけ!」

「え? そ、そうだな。じゃあ、少し眠らせてもらうわ」

 

 照れ臭いムードが生まれ、これ以上話し続けてもろくな事にならなそうなので、俺は背もたれにもたれ掛かり、目を閉じた。

 周りの生徒の声や、今のドキドキでなかなか寝付けそうにないと思ったが、俺の寝付きの良さがここでも見事に発揮され、俺の意識は数分もせずに夢の世界へ落ちた。

 

 

 

 それからしばらくして、俺の意識は再び騒がしい新幹線に戻った。徐々にしっかりと聞こえ出す生徒の声。俺は瞼をゆっくりと上げ、目を擦る。

 

「起きたか」

 

 同時に、正面からいつの間にか起きていた裕吾の声が届く。彼はいつものようにスマホをいじっていた。その様子を見た感じ、まだ京都に到着するのはしばらく先のようだ。

 そんなに長い間寝てた訳じゃ無いみたいだな……どれぐらい寝てたんだろう。

 今の時間を確認する為、上着のポケットからスマホを取り出そうと体を小さく動かしたその時、右肩に何かが乗っているような違和感を感じる。

 寝る前には無かった感覚に、俺は首を横に動かす。

 

「……え?」

 

 瞬間、俺の肩に寄り掛かり、完全に無防備な状態で寝息を立てる、海子の寝顔が視界に映り込んだ。どうやら、彼女も俺が寝ている合間に眠ってしまったようだ。

 しかし、これはどうしたものか。今の海子は完全に俺へ体重を預けている。今の状態で俺が動けば、彼女の体は支えを失い、どこかしらに頭をぶつける事になるだろう。

 流石にそんな痛々しい目覚ましを、彼女に受けさせる訳にはいかない。とはいえ、このままなのは俺としては色々と緊張する。

 彼女はまるで自室に居るかのように気持ち良さそうに眠っている。当然その寝顔はとても可愛らしく、艶やかな唇から一定のリズムで吐かれる寝息はとても耳をくすぐる。緊張やらなにやらで、さっきから心臓が激しく高鳴っている。

 そしてついでに、周囲の男子生徒の視線も痛い。教室だろうが新幹線の中だろうが、これは変わる事は無い。

 

 なので出来れば彼女には目を覚ましてほしいのだが、気持ち良さそうに寝ている彼女を起こすのはとても心苦しい。かといってこの状況が続くのは、出来れば遠慮したい。決して嫌な訳では無いのだが、やはり周囲の視線が痛い。

 何か別の支えを用意してやるか、それともこのまま耐えるか、案を彼女を起こさないように置物の如くジッとしながら考えていると――

 

「――クシュン!」

 

 海子が寝顔に相応しい、可愛らしい小動物のようなくしゃみをする。するとそれで目が覚めたのか、海子がゆっくりと目を開く。

 

「んっ……寝てしまったか……」

 

 寝起きらしいぼんやりとした口調で呟きながら、海子は目を擦る。そしてしばらくぼーっとした後、こちらへ目を向ける。まだ寝ぼけているのか、据わった半開きの目でジーッと俺を見つめる。

 数秒後――海子は現状に気が付いたのか、一気に目を大きく見開き、顔をみるみる染め上げた。

 

「お、おはよう……」

「……す、すまない! そ、その、別にわざとでは……!」

 

 寝起きとは思えぬ素早い俊敏な動きで、海子は俺から離れ、視線を泳がせながら盛大に慌てふためく。

 

「あ、謝らないでいいよ! 俺も今起きたとこだし……」

「その、あの、えっと、べ、別にしたくて寄り掛かった訳では無くてだな、お前の寝顔を見てたら眠くなったというか、ちょっとは考えがあったが、別に本当にしようとは……」

「お、落ち着けって! 別に怒ってないし、ゆっくり話を……」

 

 テンパり過ぎて思考が追い付いていないのか、海子は支離滅裂な言い訳っぽい事を口にする。それをなんとか宥めようと、彼女の慌てように釣られながら、俺も口を動かし続ける。

 

「……お前ら、今日も平常運転で何よりだな」

 

 そんな裕吾の皮肉めいた言葉を流し、俺は海子を宥めるのに全力を尽くした。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 波乱の新幹線移動を終え、俺達はとうとう修学旅行の舞台、京都へ到着した。

 移動中の疲れも抜けきってはいなかったが、修学旅行はノンストップで進む。京都に着いてから早速、前もって決めていた通り、先生達の指示に従い班行動が開始。

 俺の班には、裕吾と海子が一緒に居る。本来なら男女三人ずつ、計六人の班となるはずだったのだが、俺と裕吾の他にもう一人居た男子が(本当かどうか分からないが)風邪を引いて欠席。計五人と少ない人数で、俺達は班行動をする事となった。

 班行動と言っても、する事は前もって決めていた寺やパワースポット巡り。特にこれといった事も無く、班行動は終了した。

 

 その後は全員で宿泊先である旅館へ移動。日も落ち始め、夜が近付いているのを感じ始めた頃、俺達の乗ったバスが旅館に到着。他の生徒達に続き、海子、裕吾と共にバスを降りた。

 

「ここか……結構大きいな」

 

 駐車場から移動して旅館の正面に辿り着くと、海子がその旅館を見上げながら呟く。

 ここが俺達が三日間お世話になる宿泊先、赤坂旅館だ。普通の旅館がどれぐらいかはよく知らないが、海子が口にした通りかなりの大きさを誇っている。老舗と聞いていたが、どちらかと言えばホテルっぽい外観だ。リフォームでもしてるのだろうか。

 

「あ、居た居た! 友くーん!」

 

 その巨大な旅館を三人で見上げていると、昨日夜中までさんざん聞いたあの声が聞こえてくる。それに視線を旅館から外すと、複数の人物がこちらへ来るのが見えた。

 天城に陽菜、そして翼に孝司、さらに滝沢に川嶋、そして法条に何故か夕上、他のクラスの知り合いがこぞってやって来た。

 彼女達はぞろぞろと俺達の近くに立ち止まると、続けて陽菜が口を開く。

 

「友くん、そっちはどうだった?」

「別になんも無いよ。そっちは?」

「スッゴく楽しかったよ! ね!」

「あなたがずっと騒いでただけな気がするけどね……」

「そうだねー、ひっちゃん一人でワーワー騒いでたよねー」

「だって久しぶりの京都なんだもん! テンション上がっちゃうよ!」

 

 いつもより三割ほどテンションが増している陽菜に、苦笑いを浮かべていると、ふとどこか様子のおかしい法条の姿が目に入る。

 すると、陽菜が突然その法条へ何か目配せを送り、それを受け取った彼女は、どこか緊張した面持ちで小さく頷く。直後、法条はささっと前へ出て、引きつった笑顔を作りながら口を開いた。

 

「お、おはよう裕吾! な、なんか面白いネタあった?」

「……別に。あと、今夕方だぞ」

「あ、そ、そうだったね。アハハハ……」

 

 力の無い笑い声を出しながら、法条はそのままスーッと後ろへ下がった。

 何がしたかったんだあいつ……まあ大方、こないだ話していた、修学旅行で裕吾との距離を詰める云々の事だろうけど。見事に失敗した訳だが。

 そんな出だしを盛大にミスった事に、みんなの陰に隠れて落ち込む法条を見なかった事にして、俺は適当な話題を振る。

 

「そういえば、ここって陽菜の友達の実家なんだよな?」

「お、友くんよく覚えてたね!」

「昨日嫌というほど聞かされたからな……会えるといいな」

「うん!」

 

 今から会いたくて仕方無いといった笑みを浮かべながら、陽菜は力強く頷く。

 陽菜の京都での友達か……話でしか聞いた事無いから、俺も会うのが楽しみだな。

 

「おい、いつまでも話し合ってないで、中に入るぞ。ここに居ては邪魔だ」

 

 と、夕上が生徒会副会長らしく厳しめな一言を口にして、旅行の中に入っていく。俺達もそれに続いて、旅行へと足を踏み入れる。

 

「おわっ、中も広いなぁー」

 

 エントランスに入るや否や、滝沢がキョロキョロしながら呟く。

 彼女の言う通り、エントランスもなかなかの広さだ。外観と同じく、まるでホテルのそれと同等だ。だが内装は赤い絨毯や、京都でよく見るなんか傘が立った椅子など、和風な感じだ。

 普段あまりお目に掛からない光景に、物珍しそうに見回すみんなと共に顔を動かしていると――

 

「――もしかして……陽菜ちゃん?」

 

 凛としていて、若干京鈍りっぽいのが混ざった声が聞こえてくる。すると陽菜の表情がハッと変わり、勢いよく振り返る。俺も陽菜と同じ方へ視線を向けると、そこには綺麗な着物を着こなす、おっとりとした顔付きの黒髪の少女が立っていた。

 

「椿ちゃん!」

 

 次の瞬間、陽菜は歓喜の声を上げながら少女に駆け寄り、彼女達は互いに手を取り合う。

 

「やっぱり陽菜ちゃんや! 久しぶりやなー!」

「本当、久しぶりー! 元気にしてた?」

「こないだ電話したばっかりやん。でも、こっちに来るのは知っとったけど、会えて嬉しいわぁ!」

 

 陽菜と黒髪の少女は手を合わせながら、ぴょんぴょんと小刻みに跳ねる。陽菜のサイドテールと、少女のショートカットが上下に揺れ動くのを、他のみんなと呆然と見ていると、不意に彼女達が動きを止める。

 

「あ、ごめん……一人で勝手に舞い上がっちゃった……」

「いやいいんだけど……もしかして、彼女が?」

「うん! 私の京都でのお友達! 椿ちゃん、ここに居るみんなが、私の東京でのお友達だよ!」

 

 陽菜が両腕を俺達に差し出しながら、大きく広げる。すると少女は「この人達がそうなんや」と呟き、礼儀正しくお辞儀をする。

 

「改めて、赤坂旅館へおいでやす。ウチは赤坂椿言います。陽菜ちゃんが京都に居る間、クラスメイトとして仲良うしてはりました。どうぞ、よろしゅうお願いします」

「あ、どうも……えっと、俺達は……」

 

 ひとまず俺を加えて全員、軽く名前だけで自己紹介を済ませる。

 

「こんなにお友達が居るやなんて……流石陽菜ちゃんやな。みんなええ人そうやな」

「うん! みんな優しくって、楽しい人達だよ!」

「そらよかったわ。そんで……」

 

 そこで言葉を切ると、赤坂さんは急に俺の方へ近寄り、ジロジロと顔を覗き込んでくる。

 

「あ、あの……何か?」

「あんさんが噂の友くん? ……なんや、思ったより普通やね」

「え……?」

 

 突然の普通宣告に、思わず変な声がこぼれる。

 

「陽菜ちゃんがあんなに惚れ込むから、もっと魅力的な人や思っとったけど、そうでも無いんやな。どっちかというと、向こうの二人の方がカッコええ気がするわ」

 

 と、彼女は裕吾と翼へ目をやる。

 確かに、普通はあっちの二人の方が男性として魅力的だとは思うけど……正面から言われると、ちょっと凹む。

 

「そんな事無いよ! 友くんはスッゴくカッコいいんだよ! 見ただけじゃ分からない魅力がいっぱいあるんだよ!」

「はいはい分かっとるって。まあ、適当によろしゅうな、友くん」

「は、はぁ……」

「……ちょっと、いきなり世名君に対して馴れ馴れしくない?」

 

 と、俺と赤坂さんの間に天城、そして海子が割って入る。

 

「お? あんさん達が噂の恋のライバルやね。すまへんなぁ、ウチ前から陽菜ちゃんに彼の話聞いとったから、初対面な気がしなくてな。今後は気ー付けるわ」

「……そうしてくれると助かる」

「あんさんらも、相当友……やなくて、世名君にベタ惚れなんやなぁ。頑張りやー、陽菜ちゃん」

「うん! ところで、恵理香ちゃん達って今どうしてるの?」

「エリちゃん達は、今日は部活が忙しいみたいやから会えへんかなぁ。ただ、明日は会えるんとちゃうか?」

「そっか……楽しみだなぁ……」

 

 別の友人の事を思い出しているのか、陽菜は口元をだらしなく緩ませながら、天井を見上げる。

 陽菜の奴、こっちでもいい友人に巡り会えてるようで何よりだ。明日、他の友達とも会えるといいな。

 彼女が友人と再会出来るのを、心の中で密かに祈っていると、不意に遠くの方からハル先生の声が聞こえてくる。

 

「みんなー! 夕飯前に、部屋に荷物を置いてきて下さいねー! それから、今日は旅館から出ないようにして下さいねー!」

「っと、いつまでも話しとったらアカンね。ほんなら陽菜ちゃん、時間が出来たらゆっくり話そなー」

「うん! またね椿ちゃん! よし! 優香ちゃん、由利ちゃん、私達の部屋に行こっか!」

「おー」

「ちょっと、引っ張らないでよ……!」

 

 多分同室なのだろう、陽菜が川嶋と天城の手を引っ張りながら、階段の方へ進む。それに続き、海子達他の女性陣も動き始め、赤坂さんは一礼をしてから仕事に戻る。

 

「さてと……じゃあ、俺達も部屋に行くか」

「そうだね。バスや新幹線で、ずっと座りっぱなしで疲れたしね」

「さっさと荷物置いて、夕飯食って、そして風呂だ!」

「……警察沙汰にはするなよ」

「なんも言ってねぇだろ!」

 

 俺と同室である裕吾、翼、孝司も階段に向かい歩き出す。俺もその後を追い掛ける。

 とうとう始まった、三泊四日の修学旅行。この四日間で何があるのか、それはまだ分からない。でも今回も思い出に残るような、大切な時間にしよう。

 

「……よし! 頑張りますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 いよいよ修学旅行編、開幕です。陽菜の過去編で登場した友人達も登場。
 果たしてこの旅行では何が起こるのか、どうぞお楽しみに。

 それから少し遅れましたが、恋する情報屋、法条さんのプロフィールを登場人物一覧表に追加したので、興味があれば是非。



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