波乱の王様ゲームも終わり、午後四時を回った頃、少し遅めのオヤツとして母さんが大きなホールケーキをリビングに持ってきた。それには誕生日らしく蝋燭が俺達の年の数、十七本刺さっていた。
「さあ友希、陽菜ちゃん、フーッと吹き消しちゃって!」
母さんがパチリと部屋の電気を消し、蝋燭の灯りだけを残して部屋が暗闇に包まれる。
「友くん、一緒に消そ!」
暗闇の中、蝋燭の灯りに照らされる陽菜の童心に返ったような顔に、頷いて返事をしてからケーキを見つめる。そして二人タイミングを合わせて息を吸い込み――同時に蝋燭の火に溜め込んだ息を吹き掛けた。蝋燭の火は風に揺らめき、フッと音も無く消え去った。瞬間、完全な暗闇の中にみんなの拍手がこだまし、直後に電気が再び部屋を照らす。
「おめでとー、二人とも!」
「……今更だけど、こういうのって最初にやるもんじゃない?」
「まあいいじゃない細かい事は。さあ、みんなでケーキを食べましょうか!」
母さんはキッチンから包丁を持ってきて、ケーキを切り分ける。母さんから受け取ったショートケーキをみんな美味しそうに食べ進める。
その光景を見て、このパーティーがなんとなく終わりに近付いているのを感じ取った俺は、ケーキを平らげると同時に自分の部屋へ向かった。
部屋に入った後は、電気を点けずに薄暗い中真っ直ぐ勉強机へ向かい、その上に置いてある袋を手に取る。
「友くん、どうしたの?」
それを持ってリビングに戻ろうとした時、部屋の外から声が聞こえ慌てて向き直る。そこには、扉の陰からひょっこりと顔を出し、こちらを見る陽菜が居た。
「お前……ついて来たのか?」
「えへへ、どこ行くんだろーって気になっちゃって……」
「……丁度いいや、ここで渡しちまうよ。正直、天城達の前じゃあれだしな」
「……?」
不思議そうに首を傾げる陽菜へ、俺は手にした袋を渡した。
「何これ?」
「中見てみろよ」
「うん……」
陽菜は右手を袋の中に突っ込み、中身を取り出し顔の前まで上げる。
「これって……!」
それを見た瞬間、陽菜は驚いたように目を見開いた。
彼女が手にしているのは、真っ白な手乗りサイズぐらいのウサギのぬいぐるみだ。陽菜はそのぬいぐるみをじっくりと眺めると、こちらへ目をやる。
「あー、その……一応、誕生日プレゼントだよ……こないだ買いに行ったんだ」
「そっか……でも、このぬいぐるみって……?」
「……お前が引っ越す前さ、街中でそれに似たぬいぐるみを見掛けて、これ欲しいって言ってたの、こないだそれを見掛けて思い出してさ。他のプレゼントも考えたんだけど……それが頭離れなくて……それにした。お前可愛い物好きだしさ」
「友くん、そんな事覚えててくれたんだ……」
「引っ越す少し前だったからな……昔の事だから、もうそんな物欲しくねぇよな。悪いな、そんな物で――」
「そんな事無い!」
大声を上げ、俺の言葉を遮る。陽菜はギュウッとウサギのぬいぐるみを抱き締め、暗がりでもよく分かる、とびっきりの笑顔を見せた。
「スッゴく、スッゴく嬉しいよ! ありがとうね友くん、このぬいぐるみ、一生大事にするね!」
「……喜んでくれたなら、よかったよ」
「うん! スッゴく可愛いし、本当に嬉しいよ! ……あ、そうだ! ちょっと待ってて!」
突然、陽菜は部屋を飛び出し姿を消す。陽菜の行動に驚きながら彼女の言う通り待っていると、再び彼女が戻ってくる。その手にはウサギのぬいぐるみに変わり、紙袋が握られていた。
「友くんこれ! 私からの誕生日プレゼント!」
「えっ? ああ、お前も買ってたな……ありがとう」
「いいのいいの! ささ、中身見てみてよ!」
彼女に促されるまま、紙袋の中身を取り出す。
「これは……ブックカバーか?」
紙袋の中身は、シンプルな無地の黒いブックカバーだった。
「うん! 友くんよく本読んでるけど、毎回本にカバーしてないなーって思ってさ。だからブックカバーにしたの! 栞付きだし、本も汚れないから個人的にはいいチョイスだと思ってるよ!」
確かに、面倒だからブックカバーなんか買ってなかったな……よく本は読むし、時々表紙が曲がったり、汚しちゃう事もあるし……実用的かもしれんな。……俺の事、よく見てくれてんだな。
「私、あんまりお金持ってないから、そんな安物しか買えなかったけど……気持ちはいっぱい籠もってるから!」
「分かってるよ。嬉しいよ、ありがとうな」
「えへへ……友くんが喜んでくれてよかったよ! 私も改めて、ありがとうね!」
「いいって事よ。さ、そろそろリビングに戻るか。みんな心配……というか、嫉妬してそうだから」
「うん! 戻ろうっか!」
陽菜はこちらへ近付き、手を取って小走りに部屋を出る。彼女に手を引かれながら一階へ降りるが、このままだと天城達がどんな反応するか分かったもんじゃ無いと、慌てて手を離すように陽菜へ伝える。すると陽菜も「あ、そうだね」と楽しそうに笑いながら、俺の手を離した。
そのまま二人揃ってリビングに戻ると、扉のすぐ先に待ちかまえていた天城達の視線が俺を襲った。
「……二人でどこ行ってたの?」
「あ、いや、別にそんなふしだらな事では……」
「はぁ……別に責めたりはしない」
「ただ、こっちにも先輩に用があるんですから、勝手に居なくならないで下さいよ!」
「よ、用……?」
「誕生日プレゼントよ。友希君と……一応桜井さんにもね」
と、みんなが一斉に紙袋を前に出す。
そうか、みんなも当然用意してるか……自分が渡される事は全然考えて無かったわ。
「私にもくれるの!?」
「あくまでオマケよ。本命は友希君だから」
「あんまり期待はしないでね」
「それでも嬉しいよ! うーん、楽しみだなー!」
「……じゃあ、最初は私から」
天城が前に出て、俺の前に立ち、二つある紙袋の内一つを渡す。
「世名君、お誕生日おめでとう。世名君が喜んでくれるか分からないけど……私、精一杯頑張ったから……!」
「ああ、ありがとう天城。見てもいいか?」
その問いに、天城は少し恥ずかしそうにコクリと頷く。どんな物だろうと期待しながら、紙袋の中に手を入れ、中身を取り出す。
「これは……赤いマフラー?」
「ほら、もうすぐ冬だからさ……丁度いいかなって思って」
「これ……天城が?」
「うん、折角だから手編みに挑戦してみたんだ……個人的には上手く出来てるとは思うんだ……!」
自信あり気に言う通り、天城の手作りマフラーは一瞬市販の物かと錯覚してしまうほどの出来映えだ。手に持つだけで暖かさが伝わってくるし、これは重宝しそうだ。
「ありがとう天城……有り難く使わせてもらうよ」
「よかった、喜んでくれたみたいで……いっぱい使ってね。それでいつかは、二人で一緒に使ったりしたり……」
ボソッと小声で呟きながら、人差し指をツンツンする。恐らく天城の頭の中には、カップルが一緒に一つのマフラーを使うベタなシーンが浮かんでいるのだろう。
「ねぇ優香ちゃん! 私のは?」
が、陽菜は空気を読まずに、待ちきれずにワクワクと目を輝かせながら言い寄る。それに気分を害したのか、厳しい目付きで陽菜を睨みながら、残りの紙袋を雑に渡す。
「ありがとー! 何かな何かなー? …………何、これ?」
「高二の参考書一式よ。それで期末テストに向けて勉強するのね」
「……あ、ありがとー、優香ちゃん……私頑張るよー」
と、陽菜はあからさまにテンションが下がった棒読みを放つ。
天城にとっては純粋な協力の気持ち六割、嫌がらせ四割のプレゼントだろうが、多分陽菜が一番必要な物かもしれん。期末を控えているのは事実だし。
そんな陽菜へのちょっとした嫌がらせを成功させた天城は満足げに後ろに下がり、交代で海子が前に出る。
「その……友希、改めて誕生日おめでとう……私からの、プレゼントだ」
「……? おう、ありがとう……早速見させてもらうぜ」
海子の少しばつが悪そうな顔に疑問を抱きながら、紙袋の中身を取り出す。海子からのプレゼントは、青い毛糸の手袋だった。それを見た瞬間、俺はなんとなく察した。
「……これ、手作りか?」
「……まさか、優香と被ってしまうとはな……」
「い、いや! マフラーと手袋は別々に使えるし! これも十分嬉しいよ! 暖かそうだし、使わせてもらうよ!」
「そ、そうか……? そう言ってくれると、嬉しい……是非活用してくれ。ああ、それから陽菜にも……」
「お、待ってました!」
今度こそはと、陽菜は目を輝かせる。海子はスカートのポケットから小包を取り出し、それを渡す。陽菜は受け取った小包を早速開ける。すると、中からストラップサイズの子犬のような編みぐるみが出てくる。
「うわー! スッゴい可愛いー!」
「余った素材で悪いが……作ってみた。悪いな、時間があればもっといいのが作れたと思うんだが……」
「ううん、これで十分だよ! ありがとうね海子ちゃん!」
「ならよかった。鞄にでも是非付けてくれ」
「うん! はぁー、よく出来てるなー」
陽菜は海子のプレゼントをジッと眺める。俺もそれをよく出来ているなと関心して見ていると、出雲ちゃんが俺の腕をツンツンとつついてくる。
「先輩、今度は私の番なんですから、無視しないで下さいよ!」
「あ、ごめんごめん……」
「はい! 先輩、誕生日おめでとうございます! 私の愛情がたーっぷり籠もったプレゼントですよ!」
ズイッと紙袋を前に突き出し、俺はそれをお礼を言いながら受け取る。出雲ちゃんが中を見て感想を欲しい、と言わんばかりにこちらを見つめてくるので、早速紙袋に手を突っ込む。すると、前の二つと似たような感覚が手に走る。それになんとなくプレゼントを察しながら、中身を取り出す。
案の定、プレゼントはまた手作りの編み物だった。今度は黒いニット帽だ。
「出雲ちゃんも手作りにしたんだね……」
「はい! 他の二人と被っちゃいましたけど、愛情は一番籠もってますから!」
「ムッ……」
「聞き捨てならないな……」
「ま、まあまあ……! ありがとうな出雲ちゃん、大切に使わせてもらうよ」
「はい! それに実はそれと同じ物を今、私用に作ってるんです! 出来たらお揃いですよ!」
キャピキャピと嬉しそうに話す出雲ちゃん。それを聞き、海子と天城はその手があったかみたいな表情を浮かべる。
……みんな俺とお揃いファッションにしようとしないよね?
「出雲ちゃん、私の分は?」
「おこがましいですね……一応、仕方無く用意してますよ。はい!」
「わー、ありがとう! ……って、これは?」
「よく消える消しゴムと、折れにくいシャーペンです。それと天城先輩から貰った参考書を持って、図書館で勉強でもして下さい」
「また勉強用具……でも、ありがとうね」
苦笑いを浮かべながら、陽菜はちゃんとお礼を言う。これで陽菜の奴が勉強に力を入れてくれるといいが……
「さて、最後は私ね。はい友希君、誕生日おめでとう。私の最大級の愛を込めてこれを贈らせてもらうわ」
「あ、ありがとうございます……」
もしかしたらまた手編みの何かではないかと思いながら、紙袋に手を突っ込む。しかし、俺の手に走った感覚は毛糸のそれでは無い。
一体なんなんだと、俺はそれを勢いよく引っ張り出す。次の瞬間、俺の目の前に黒い、いわゆるトレンチコートなる物が姿を見せた。
「こ、これがプレゼントですか……?」
「ええ。オーダメイドで作らせた特注品よ。私の手作りじゃなくて申し訳無いけど、ちゃんと愛情はたっぷりよ。友希君の事を考えて、一つ一つ丁寧に注文したのよ」
「あ、ありがとうございます……でも、これ高いんじゃ……?」
「友希君へのプレゼントだもの、一億でも一兆でも支払うわ」
と、微笑みながらサラッととんでもない事を口にする。流石にお嬢様、スケールが違う……これいくらだ?
恐らく軽く万は超えているであろうコートを、恐る恐る紙袋に戻す。
しかし、まさか彼女達のプレゼントだけで冬の装備一式が揃ってしまうとは……大切に使わせてもらおう。
「ああ、そうそう、一応桜井さんにプレゼントがあるわ。はいこれ」
「あ、ありがとうございます! うぅ、なんだか緊張する……」
俺のプレゼントの事もあり、陽菜は緊張した様子で紙袋の中を探る。
「……これは?」
「私が使ってた料理本一式よ。私はもう使わないから、あげるわ」
「そんな処分みたいな……でも、これは普通に嬉しいです! これで料理頑張ります!」
それでいいのか……いや、料理苦手な陽菜には丁度いいか。
「これで全部か……みんな、俺達のためにありがとな」
「いいよこれぐらい」
「喜んでくれたなら満足だ」
「しっかり使って下さいね!」
「……さて、これでもう終わりかしらね」
チラリと、朝倉先輩が時計へ目を向ける。時刻はもうすぐ五時。かれこれパーティー開始から四時間近く経過した事になる。
もう終わりか……始まりが早かったから、なんかまだ早いって感じがするな……
「えー、みんなもうちょっと遊んでかないの? まだまだ時間はいっぱいあるよ!」
「……悪いけど、遠慮しておくわ。友希君の誕生日をもっと一緒に過ごしたいけど……この後色々あるしね」
「色々?」
「……世名君は気にしなくていいよ。あんまり長居してたら、世名君疲れちゃうしね」
なんだろ、みんなの様子がおかしいな……気のせいかな?
そんな俺の疑問を打ち消すように、母さんが突然手を叩いてみんなの視線を集める。
「それじゃあ、そろそろパーティーはお開きにしましょうか! みんな、悪いけどお片付けを手伝ってくれるかしら?」
「分かりました」
「いっぱいあって大変そうですね……でも、頑張りますか!」
「あ、私もやるよ!」
「陽菜と友希は休んでいろ。私達だけで十分だ」
「そうね。むしろ桜井さんは邪魔だわ」
テーブルに並んだ食器を中心に、みんなが片付けを開始する。俺と陽菜はお言葉に甘えて、ソファーに座りみんなの片付けを見守る。
「……パーティーも終わりか……」
「そうだね……スッゴく楽しかったよ! 料理食べたり、ゲームしたり、プレゼント貰ったり……もう幸せだよ!」
「楽しんでくれたならよかった……俺も、色々あったけど楽しめたしな」
「素敵な思い出になったね、友くん!」
「ああ、そうだな……」
みんなも楽しそうにしてくれてたし、今回のパーティーは一応成功かな?
無事にパーティーが終わった事に安堵しながら、飾り付けが外され、いつものリビングに戻るのを黙って見守った。
そして長い時間を掛け、片付けは終了。とうとう、解散の時が来た。
裕吾達男子組は空気を読んで先に帰り、残った天城達を見送る為に、俺と陽菜は家の前まで出た。
「みんな、今日は本当にありがとうな」
「そう何度もお礼を言うな。私達も楽しめた」
「そうね。最初は友希君と二人きりでないとつまらないと思ったけど、意外と楽しめたわ」
「まあ、先輩と二人の方がよかったってのは変わりませんけど!」
「うん……でも楽しかった。世名君、誕生日おめでとう。……桜井さんも」
よかった、みんなちゃんと楽しんでくれたみたいだ……でも、やっぱりどこか少し浮かないというか、複雑な顔してるな……何でだろう?
それを問おうとしたが、それを遮るように天城が口を開いた。
「それじゃあ、私達はこれで。また明日ね」
「えっ? ああ、また明日」
「またねー!」
陽菜と揃って手を振る。それにみんなも手を振り返し、バラバラに家の前から立ち去った。
結局、どうしてあんな顔してたか聞けなかったな……決して寂しいとか、悲しいとかじゃなくて……なんだか、嫉妬したような顔に近かったな……本当、何だったんだ?
疑問を残しながら、家に戻る。すると、玄関先でいつの間にか着替えた母さんと父さんに出会す。
「……どっか出掛けるのか?」
「ああ、ちょっと久しぶりのデートにな」
「で、デート? どうしてまた……」
「みんなに感化されたのよ。多分帰ってくるのは明日になるから、戸締まりよろしくねー」
「えっ……ちょっ、まっ――」
慌てて訳を聞こうとするが、母さん達はそそくさと外へ出てしまった。
い、一体なんだってんだ……?
「デートって……どうしたんだろうね?」
「さあ……あ、友香! お前なんか聞いてないか?」
二階から降りてきた友香に、そう問い掛ける。が、友香もいつの間にか着替えていて、二人と同じくどこかへ出掛けるスタイルになっていた。
「お、お前もどっか行くのか……?」
「うん。今日は愛莉の家でお泊まり会すんの。明日は直接学校行くから」
「お前まで……いきなりなんだよ、みんなして」
「……ま、これが誕生日プレゼントと思ってよ。……陽菜さんへの」
「わ、私への……?」
自分を指差しながら、陽菜は首を傾げる。
「陽菜さんは誕生日パーティーでいいって言ってたけど、本当はお兄ちゃんと二人っきりになりたいでしょ? 誕生日ぐらい」
「えっ、それは……」
「だから、今からみんなで家を出てお兄ちゃん達を二人きりにして、家デートでも楽しんでもらおうって事にしたの」
「な、なんだそれ? そんな事、勝手に――」
「言っとくけど、これ優香さん達からの提案ね」
俺の言いたい事を先読みしたのか、友香が割り込む。
「陽菜さんだけにお兄ちゃんと二人きりの時間を与えないのは、不平等な気がする。誕生日パーティーはあくまでお兄ちゃんの誕生日をみんなで祝うって事で、陽菜さんには自分の誕生日を、自分達と同じようにお兄ちゃんと二人きりで楽しんでもらう。ここまで来たら、全員平等で正々堂々戦いたいから――ってね」
「みんなが、そんな事を……」
もしかして……だからさっき、あんな顔をしてたのか。今から俺と陽菜が二人きりになる事を知ってるから、あんな嫉妬したような……
「で、陽菜さんはどうしたい? 余計なお世話なら、私は残りますよ?」
「私は……正直、友くんと二人きりで居たいって気持ちは、あったよ。だから……凄い、嬉しいよ」
「……じゃ、決まりですね」
友香は俺達の間を通り、靴を履いてドアに手を掛ける。
「今から明日まで、二人で家デートを楽しんで下さいね」
「友香ちゃん……ありがとね!」
「お礼は優香さん達に。あ、それから一つ。家で二人きりになる事は百歩譲って許すけど、もしやる事やったりしたら、容赦はしない――だそうです。じゃ、行ってきまーす」
物騒な言葉を残し、友香は家を出た。
まさか、あの四人が俺と陽菜の家デートなんかを許すとは……彼女達も、考えが少しは変わってるのかな。正々堂々と……か。
「……優香ちゃん達にはお礼を言わないと。ここからが、私の誕生日のもう一つの思い出だ。……なんだか緊張するな……夜の家に二人きりなんて、多分初めてだもんね」
「そ、そうだな……」
「……友くん」
「……なんだ?」
「家デート……思いっきり楽しもうね! 私……ちょっと張り切っちゃうよ?」
俺の顔を覗き込み、照れ臭そうに頬を染めながら笑う。その表情に俺も思わず照れ臭くなり、顔を背ける。
まさかこんな事態になるとは、予想もしてなかった……けど、こうなった以上、陽菜の奴を楽しませてやらないとな。家でやれる、健全な事なんて限られてくるだろうが、陽菜の思い出の為に、頑張らないと。
こうして、俺達の誕生日パーティーは終わりを迎え――俺と陽菜の、誕生日家デートが始まった。
誕生日パーティー編、完結。しかし、二人の誕生日はまだ終わらない。
次回、ワクワクドキドキ? の夜の家デート開始。お楽しみはこれからです!