モテ期と修羅場は同時にやって来るものである   作:藤龍

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男友達は掻き回すだけの存在である

 ――ゴールデンウィーク最終日

 

 なんとか無事に天城達との連日デートを終え、俺は最後の一日を家でゆっくりして、これからの激動の日々に問題無く対応すべく、英気を養おうと思っていた。

 

 

 ――が、その休日もある四人の人物により潰された。

 とはいえその四人はあのバイオレンスガールズ達では無く、そのバイガル達に四苦八苦する俺を傍らから見ているだけの酷い連中達だ。

 

「……何でウチに来てんだよ?」

 

 俺は部屋に引きこもる気満々のジャージ姿のまま、俺の部屋に堂々と居座る四人に問い掛けた。

 

「暇だから」

 

 最初に返事をしたのは我が親友Aこと、新庄裕吾。茶髪のくせっ毛が特徴的な正直イケメンの部類に入る半ネット依存野郎。今もスマホいじってるし。

 実は何回か告白された事があるらしいが、面倒だとかなんとかで全部断ったとか。じゃあ何でコイツリア充爆発しろとか呟いたの? まあ、それは置いておこう。

 

「僕は他の二人に誘われて……」

 

 続いて少し申し訳無さそうに返事をしたのは親友Bこと、早乙女(さおとめ)(つばさ)。少し外人の血が入っているらしく、瞳が青く、髪も見事なサラサラな青髪。そして何より端から見ると女子っぽい。いわゆる男の娘だ。当然女子からも(マスコット的な扱いで)大人気。

 性格もかなり善人で、一時期「天使の翼」とかちょい恥ずかしいあだ名が付いた程だ。クラスが別になってあんまり絡まなくなったがな。

 

「俺も暇だからー」

 

 そう気だるい声で返事をしたのは親友Hこと、真島(まじま)孝司(こうじ)。ぼっさぼさの黒髪に中の下辺りのルックス。他の二人と違って全然モテない。俺がザ・スタンダードならコイツは非常に残念な奴だ。悪い奴では無いんだが、若干ウザイ。

 ちなみに何故親友Hなのかというと、以前ちょっとした事から格下げした。翼と同じクラスになって、同じくそんなに絡まなくなった。

 

「同じく暇だからー」

 

 最後に返事をしたのは我が妹友香。染めた茶髪に、俺と同じ血筋だとは思えない美人。学校では優等生っぽい扱いをされているらしいが、家ではわりとぐーたらな奴だ。

 というか暇なら遊びに行けよ! 休日に兄の部屋でだらけるってどうなの!? お兄ちゃん心配だよ!

 

 

 と、いうわけでこの腐れ縁親友三人に加え、妹が我が癒やしのマイルームに半ば強引に突入して来て、俺の休日は潰れた――それが今の状況だ。

 

 

「お前らな……何でゴールデンウィークの最終日という貴重な時に全員揃ってウチ来てるの? 大体知ってるだろう俺の昨日までの事を!」

「ああ知ってるよ。だから来たんだよ! お前ばっか幸せな思いしやがって! このまま幸せの休日にさせてたまるか! 俺達がテメェの幸せを台無しにしてやるぅ!」

 

 何だその意味不明な嫉妬! そんなんだからおめぇ親友H何だよ!

 

「大体幸せ……ではあったかもしれないけど、結構な苦行だったんだぞ!? 少しは休ませろ!」

「苦行って言っても三日連続で同じ映画観たとかだろ?」

「な、何故知っている!?」

「俺のフォロワーが『同じ男が三日連続で違う女と同じ映画観に来た。こちとら三連勤で彼氏とデートも行けないってのに』って呟いてた」

 

 あのお姉さんお前のフォロワーかよ! 世間マジ狭い! あとお姉さん、そういう事は呟いちゃ駄目! そして彼氏さん居たのね! 四連勤じゃ無くて良かったね!

 

「そ、それ以外にも色々あったんだって! 本当幸せばかりじゃねーからな!」

「でも幸せ成分もあんだろ!? こちとら灰色何だよ! 燃え尽きてんだよ! 少しは妬ませろ! 何でお前だけそんなモテてんだよ!」

「知るか! 俺だって好きで幸せ成分貰ってんじゃねーしぃ! 勝手にモテ期が来ただけだしぃ!」

「俺なんかモテ期来たことねぇんだよ! 何でお前だけ来るんだよ! 差別ですかコノヤロー!」

「お前のモテ期は赤ん坊時代に過ぎたんじゃねぇの!? 二次元に命懸けて生きとけアホッ!」

 

「ふ、二人ともそれぐらいで……」

 

 翼の制止でなんとか孝司が収まる。全く……コイツはくだらない事でキレるからな……

 

「でも凄いよね、友希君一度に四人に告白されるなんて」

「偶然だろ偶然。きっと集団の新たなイジメだよ」

「負け惜しみが過ぎるぞ……」

「まあ、モテ期何てものはなんの脈絡も無くやってくるものじゃねぇだろ。日頃の行いが積み重なって、それの恩恵が一気に同時期に来ただけだろ」

 

 な、なるほど……確かに裕吾の言う通りかもな……これでもそれなりに人事を尽くしたつもりはあるしな。それの結果がこれか……あまりにもカオスな結果過ぎないか神様。

 

「それでも納得いかん! こうなったら、何故友希がこんなにモテる憎むべきリア充野郎になったか徹底議論だ!」

「人の家来てやることか!?」

「あ、いいねー。やるやるー」

「待て妹よ! 色々待て! 兄の恋愛事情に妹が首を突っ込むもんじゃありません! 部屋に戻って勉強しなさい!」

「いいじゃーん、私も興味あるし、お兄ちゃんの弱み握れるかもじゃん」

 

 さらっと恐ろしい事言うんじゃありません! いつからそんな腹黒い子になったの! お兄ちゃんそんな子に育てた覚えはありません!

 

「さあ、始めるぞ! まずは友希のどこにモテる要素があると思う同士諸君!」

「勝手に始めんな! 何その質問!? もう帰れよお前!」

「……案外ルックスが良い?」

「翼君!? 意外と乗り気!? そして案外は余計!」

「まあ、確かにどこぞのうるさい野郎よりは整ってるな。中の中の上辺り」

「お前もか裕吾!? そしてなんだその微妙なランク!」

「俺の方がイケメンだろ! この溢れ出るフェロモンが分かんねーのか!?」

「知るか! ていうかマジ帰れよ! 新しいギャルゲー買ってやるから帰れよ!」

「ジュースとポテチ持ってくるねぇー」

「持ってくるな妹よ!」

 

 コイツら俺の気持ち無視か!? もうツッコミが追いつかんぞ! もう……知らん! 勝手にしろバカヤロー!

 

 

 

 こうして友香がポテチとコーラを持ってきたと同時に、『緊急議論! 世名友希という人間~何故彼にモテ期が来たのか!?~』が始まった。

 ……どうしてこうなった。

 

 

「――と、いうわけで! モテ期の原因を探るぞ!」

「何だよそれ……」

「黙れ被告!」

「誰が被告だ!」

「それではまずは身内の世名友香! お兄ちゃんの魅力は!」

「妹にそれ言わせる!? 軽い拷問だろ!」

「んーっと、真面目なところ?」

「答えるのね!?」

 

 それでいいのか妹よ! 今お前お兄ちゃんの好きなところ暴露してるようなもんだぞ! とんだ羞恥プレイだよ! いいのか? 明日から見事ブラコン扱いだぞ!?

 

「確かに真面目だよな」

「でも真面目過ぎるな。だから今も全員幸せにする――とか無謀極まりない事掲げてるし」

「そ、それぐらい当然だろ?」

「かー! 天性の善人ってか? そりゃモテるよねー!」

 

 投げやりだなおい! お前が始めた企画なのに何ふてくされてんの!

 

「あー、後テンパると脳内の独り言多くなるよね。よく言葉に出てるし」

 

 それは魅力なの!? まあ確かにテンパると脳内で言葉数多くなるけど! 今もそうだな……

 

「他に……翼さんは何かある?」

「僕? そうだな……基本他人に優しいところとか?」

「確かに……困ってる人は見逃せないタイプだよな」

「どこの主人公だよ! テメェどんだけモテポイント稼いでんの! 貯金か? モテ貯金か?」

「知るか! モテ貯金ってなんだ! 大体それは人としては普通だろ!」

「まあお兄ちゃんは度が過ぎるというか……優し過ぎるよね」

「また過ぎるですか! なんだお前、スギル星人ですか!?」

 

 スギル星人って何だ! つまんねーネタ言うな! 大体何イラついてんの! だったら止めろよこの企画! 何の得にもならないよ!

 

「あー、後天然ジゴロなとこもあるな。サラッと女子の好感度上げる的な」

「主人公補正付いた意味不明なイケメンかテメェ! あれか? ラッキースケベとかしちゃうタイプか? キャッキャウフフ引き寄せるタイプか!?」

「もはや何言ってるか分かんねーよ! 後耳元で騒ぐな!」

「うるせぇー! これぐらいの距離で言わないと聞こえねーだろ難聴野郎!」

「何だその理屈! 大体難聴じゃねーし! 知ってるだろう俺の唯一の長所!」

「ああー、そういえばそうだな。唯一かどうかはさて置き、それは悪いな」

 

 はぁ……やっと収まったか。まあ、流石に事実を曲げる事はしないよな。

 そう、俺の長所。それは五感が異常に鋭い事。とはいえそんな誇れる事では無い。

 視力が良いとか。

 結構小さな音が聞こえるとか。

 嗅覚が凄いとか。

 味覚がハッキリしてるとか。

 触覚が鋭いとか。

 

 そんな程度だ。正直誇れるものでは無いが。

 まあ、それは孝司も理解しているし、ほじくり返したりしないだろう……多分。

 

 

「はぁ……もうこれぐらいでいいか。というかこれ以上お前の良いところ発掘したく無い」

「お前が勝手に始めたんだろ!」

 

 勝手に発掘して愚痴るとか、身勝手にも程があるだろう……まあ、ようやく収まったなら、それで良いか……

 

「えっと今まで出た友希の良いところ纏めると……ルックスが中の中の上で、真面目で、優しくて、天然ジゴロね……はぁ、言ってて辛くなった……」

「だったら言うな! こっちだって何かハズいわ!」

「まあ結論は……お兄ちゃんはモテるだけの要素は十分持ってる――って事でいいのかな?」

 

 ざっくりと纏めたな妹よ……まあ、ここまでほぼざっくりだったし、良いか。この時間本当に無駄だったな……

 

「はぁ……俺もお前みたいなモテモテ人間になりてぇー」

「俺だってそう思ってたけど、なったらなったで辛いんだよ」

「まあ、あの四人が相手だと大変そうだね……」

「で、お兄ちゃん結局誰と付き合うの?」

「そういう事兄に聞くか? まだ決まってねぇよ」

「お前、前から彼女欲しがってたし、さっさと決めろよ。いっそ全員と付き合うとか? 愛人A、B的な?」

「そんな最低な事出来るか!」

 

 冗談で言ってるんだろうが、流石に酷いぞ!

 

「確かに、彼女は欲しいけど、だからってホイホイ付き合うのは違うだろ。相手が真剣なら、こっちも真剣にならないと。俺は恋愛とかした事ねーから、しっかりじっくり考えて、アイツら全員とちゃんと向き合うつもりだ!」

「お前……本当にとことん真面目だな」

「呆れる程にな」

「まあ友希君らしいといえばらしいけどね……」

「本当、お兄ちゃんはお兄ちゃんだねー」

 

 誉められてんの? それとも罵倒されてる? まあ、深く考えるのは止めるか……

 

 ともかく、今言った通り、俺は四人と真剣に向き合いたい。中途半端な気持ちで答えるのは相手にも失礼だし、俺もそんなのは嫌だ。だからどんな困難な道でも、俺は絶対諦めずに、目を背けずに四人の気持ちにしっかり答える! ……不安だらけだけど!

 

 

 

「まあ……色々大変だろうけど頑張れ。俺達は時々相談乗ったり、傍らでニヤニヤイライラしながら見守ってやる」

「後半はいらん!」

「でも、友希君ならきっといい結果が出せるよ! とりあえず……ファイト!」

「どうせグダグダになって最終的に愛想尽かれて終わりだろ」

「お前は……本当に一言多いな……気が済んだらさっさと帰れ」

「じゃあ次は友希の駄目なところ探していこー」

「帰れよ!」

 

 

 これから日か暮れるまで三人は俺の家に居座り、結局俺はゴールデンウィーク最終日をほぼツッコミという仕事に潰されたのだった。

 

 

 

 

 




 今回もヒロインとキャッキャウフフ……では無く男友達とのくだらない一日。(深夜テンションで若干雑)
 理由としては主人公をそれとなく掘り下げよう、そしてあまり甘い展開ばかりだと作者のメンタルが保たないからです。
 それに次回からはとうとう学園修羅場生活が本格化する予定なので、色んな意味での箸休め回です。
 
 





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