神父と聖杯戦争   作:サイトー

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20.黄昏スモーカー

 私に名はない

 もっとも、立会いで名乗りを上げるべき相手がいなかった。

 

 学も無く読み書きも出来ない。

 そもそも、生きる為に必要なものではなかった。

 

 ……毎日毎日、ただただ刀を振る日々。戦も無く平和な日常。

 

 追い剥ぎや山賊などはいるが、これといって何もない世界。

 しかし、争い事が全くない訳ではなく、自分は殺し合いを何度か経験した。鍛えた剣技で悪党の類は斬った事は何度かあるが、強敵に巡り合うこともなく、剣術家としては何の達成感もなかった。一人の人間として、自分の剣で人を助けられたことに喜びは確かにあったが、欲しかったものは十分に立会いのできる相手だった。

 本来なら、戦士である侍もただの階級に落ち切っていた。武家生まれの男と死合いをした事もあったが一撃で首を撥ねることが出来た。それでも、世には強者と言える程の猛者たる侍がいるのだろうが、自分がその者らと出会うことは一度も無かった。

 

 ―――戦いの充実が得たかった。いつかは自分と斬り合える者に巡り合いたかった。

 

 だが、自分と斬り結べる敵に会うこともなかった。田畑を耕す傍らで剣を振っていた。いつかは、とそう思って鍛えていた。

 

 ―――あれはいつだったか、見上げた空を飛んでいた鳥を斬ろうと決めたのは。

 

 とにかくする事が何もなかった。だから自分は目指す場所が欲しかったのだろう。それからは、「つばめ」と呼ばれる鳥を斬るために刀を毎日振って過ごしていった。

 

 

 ―――春夏秋冬、剣を振る―――

 

 

 ただ燕を斬る為に剣を振る。

 振って振って振り続ける。苗植えの時期も、収穫の時期も、刀と生きて剣を振る。

 

 

 

 

 ―――そして自分は秘剣を完成させ、何も得ることなく生涯を終わらせた。

 最期の時、この秘剣を存分に振える者と立会いがしたい、と無念を募らせて死んだのだった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 柳洞寺の山門。そこには誰も見当たらないが、確かに目に見えない「何か」が存在した。

 

「…………(いやはや如何も、人生はまこと不可思議なことが起こるものよ。まさか、死んでから己が望みが叶うとは)」

 

 太陽が沈む黄昏の時間。侍が一人、佇んでいた。

 

「…………(まさに、夢。死後の夢がここまで愉快なものだとは思わなんだ)」

 

 現世に呼び出された彼は、真名を佐々木小次郎と名づけられたサーヴァントである。

 本来の彼には名前はないが、佐々木小次郎として召喚されたのなら、無名であるその身は佐々木小次郎なのであろう。

 

「……………(出来る事なら山を下りて現世も楽しんでみたいが・・・、ふ、詮無き事よの)」

 

 魔力に余分がないので戦闘の時以外は常に霊体となって山門に待機していた。それは己の召喚者である性根が捻じり曲がった魔女の仕業であった。小次郎は、あの女は男が苦しむ姿が好きなのだろう、と魔女の事を最悪だと思った。

 

「―――(召喚されしサーヴァントは七騎、未だ誰とも決着はついておらん。…さてはて、次に果たし合う強者は一体誰なのか、まこと楽しみよ)」

 

 

 

 ―――侍が笑う。

 山の頂きから、愛しき強敵がいる冬木の町を見下ろしていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 泰山を二人は出る。士人が会計をサクッと済まし店を出ていた。

 代行者として働き、経費として教会から賃金を貰っている士人はかなりお金持ちなのだ。飯を奢ったくらいで懐にダメージはない。

 

 

 ―――夕焼けの川岸。二人がいる場所をオレンジ色の光が照らしていた。

 

 

「…………………はぁ~」

 

「ごほっ、ゴホッッ………キツゥ。なんでこんなのを吸えるのよ?」

 

 ぷはぁ、と士人の口から灰色の濁った煙が出る。そして神父から一本興味本位で吸ってみた綾子は、おもいっきり咽ていた。

 なんでも無い様に吸っている士人を変なものを見る様に彼女は見ていた。

 

「……さあ、こういう物は好みの問題だと思うが」

 

 士人は小型の結界を張り、周りの一般人から認識されないようにしていた。煙草を吸っている姿を人に見られても特に問題はない。何せそこに何が有るか認識できないのだ。士人は魔術師ならあまり見向きをしない、こういった便利な魔術を多く習得している。

 そして一息ついた後、彼は綾子へと言葉を続けた。

 

「それとな、煙がキツイならまずは口に入れるだけで肺に入れないようにしてみるといい。慣れてきたら徐々に肺へ送ってみろ。それでも駄目なのならお前には合わないのだろう」

 

 言われた綾子は口に煙を溜め、ぷは、と煙を出す。次に少しだけ煙を吸い込み咽ることなく煙を出した。徐々に繰り返していくと慣れた感じに煙草を吸っていく。

 顔が段々と恍惚としたモノに変わっていった。口には笑みが造られてる。

 

 ――ぷはぁ――

 

 そんな擬音が似合う様に綾子の口から煙が漏れた。

 

「………これ、イイかも」

 

 思わず、といった表情で呟いた。

 そんな綾子を見ながら士人は箱から一本煙草を取り出しソレを二本の指で挿んでゆらゆらと揺らす。

 

「――――欲しいか?」

 

「――――頂くよ」

 

 ……士人の持っていた煙草の先端に火が灯り、それを綾子は受け取った。

 

 橋の近くにある公園で神父が魔力回復の為、日課の煙草を吸っている。

 教会の過剰なまでに洗浄された空気や工房の濁った空気に満ちる大源より、外の新鮮な空気に満ちている大源の方が風情があるというものだ。それに教会は言峰士人が管理している落ちた霊脈がある。教会の空気は必然的に魔に歪んでいるのだ。部屋の中で吸うより、こうして外で吸う方がヘビースモーカーとしては情緒があるというものだ。

 それと綾子がこの場にいるのは単純で泰山で食べ過ぎたからだ。彼女は回り道をして長い距離を歩いて帰ろうと考えていた。このままでは夕飯を残してしまうし、何より女の怨敵が増加する。

 

「美綴は煙草を初めて吸ったのか?」

 

「そうだよ。・・・こんな姿を父親に見られたら、思いっきり怒鳴られるからね。それに母親にばれた場合も不良になったって泣かれて怒られるわ。

 ほんと、考えただけで、怖い怖い」

 

「―――家族、か。

 ふむ……やはり俺には全く解らないな。親と言う存在は恐ろしいものなのか?」

 

「そりゃ勿論さ。あたしじゃ全然勝てない相手、それが肉親ってもんだよ」

 

 それは士人には解からない理屈だった。

 

「―――む。そうなのか。

 俺は綺礼(オヤジ)と本気の殴り合いをした事があったが、何とか勝ったな。内臓がいくつか駄目になり両腕も粉砕したが、アレの意識を奪ってやった」

 

 あれは三、四年くらい前の事だったなぁ、と最後にしみじみと呟く神父。

 

「…………そういう意味じゃないんだけど」

 

 ジトっとした目を向ける美綴。それに士人は苦笑して話を続ける。

 

「冗談だよ、美綴。言葉に込められた意味くらいは俺でもわかる。

 ただ俺には、怒鳴られるとか、叱られるとか、そういった経験がなくてな、お前が言った事に対して実感が欠片も無いのだよ」

 

「………どんな親さ、それ?」

 

「――……そうだな。一言で纏めると外道神父、だな。

 俺は自分に不都合が無ければ、養父に言われた事を、言われた事以上の出来で成果を出してきたからな。まあ、叱られる事をしていないと言うのもあるのだろうが、その様な怒ると言う親の行動は愛があってこそなのだろう。

 それから、そもそもアレにまともな親としての機能がついていないのも原因だな」

 

 士人の話を聞いた綾子。表情で内心が丸わかりだ。

 

「―――壮絶、だね」

 

 と、そんな一言を呟いた。

 

「――…………壮絶って、美綴お前なぁ」

 

 なんだかなあ、と言いたげに神父は隣の少女に言い返した。

 

「子が子なら親も親って訳なんでしょ、どうせ。

 遠坂やアンタの知り合いからは、その神父さんに良く似ているって言われてるだろ?」

 

 沈黙した士人は、スー、ハー、と煙草を吸って吐いた。視線の先は今にも沈みそうな橙色の太陽だ。灰色の煙が光に溶けて、無くなっていく。

 

「……わかるか?」

 

「そりゃ勿論わかるよ。アンタも正真正銘の外道神父じゃないか」

 

 そう言い切った彼女。そして異様にうまく感じる煙草の煙を吐いた。光の中に消えていく灰煙は中々に風情があった。

 

「俺が養父に似ているか否かは、さておいて。

 親に勝てないとはどの様な心情なのだ? 出来れば聞いてみたいのだがな」

 

「……そうねえ。こう何と言ったらいいか……そうだね、精神的に勝てないってヤツ。最終的にはどうしても頭が上がらないのよ」

 

 首を捻りながら綾子は答えた。

 改めて考えてみれば身近な事程、難しいコトもない。自分がそこに関わっているならなおさらなのだろう。単純に客観的に見ればいいというわけでもない。逆に主観的なモノだけでも間違っている訳ではないが正しくもないし、そこには如何しても違和感が残ってしまう。

 綾子にしてみれば士人のそれは、中々考え深い質問であった。

 

「なるほど。やはり、俺には解らないな。そういうのは経験しないと得られないのだろう」

 

 残念そうな雰囲気を纏う神父は、迷った学者みたいに苦笑を浮かべる。そして困った表情を浮かべる士人は珍しく、綾子は不思議そうに彼を見ていた。

 

「…そう言えば孤児だったんだよね、アンタって?」

 

そこで、ふ、と綾子は、言峰士人は確か養父に引き取られた過去を持っていたのを思い出した。

 

「………どうだろうな。孤児、と言うのは正しくない、と思う。

 火事で一人になったが、その後すぐに拾われたからな。実際、気が付いたら養父のところにいた。俺は独りだったことは一度もないし、独りで生きてきたこともないからな」

 

 重苦しい会話。だが二人ともこれと言って気にした様子はない。もとより地雷原のごとき過去を持つのがこの神父だ。過去話や家族の話をすれば、不幸話になるのが必然だ。

 それに暗い内容になってしまうが既にわかっているコトなので、一々気にするのも失礼だろう。そもそも質問してきたのも士人からであり、綾子が気に病む事でもないのだ。

 

 

 二人が吸っている煙草も段々と灰へと変わっていく。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 煙草も殆ど吸い終わる。

 日も沈みかけ、冬木の街に夜がそろそろ夜が訪れる。

今は聖杯戦争の時期であり、夜の時間は血で血を洗い、肉で肉を削ぎ、骨で骨を砕く、そんな闘争の時間だ。

 

「―――そう言えばさ、なんであたしを助けたんだ?

 いくらアンタが強いといっても、アレが相手じゃ死ぬかも知れなかったのに」

 

 ふと、綾子は疑問に思った。

 確かにこの男がいくら強かろうとも、自分が見た本物の怪物相手では命を掛けなければ生き残る事さえ出来ない。自分のために死を賭した神父にこの様なコトを聞くのは失礼であるが、何処か歪んだ自己犠牲が気になり、それを彼女は聞いてみたかった。

 それを聞いた士人は、ふむ、と頷き目を瞑る。そして数秒間、沈黙した。

 

「理由は簡単でな、それは自分が、神父、だからだ。職業倫理は守らないと人に示しがつかぬだろう。

 それに人を見殺しにするよりかは、助けた方が自分としては面白くなる。また代行者でもある俺は逆の場合で殺す側にもなるし、その相手も人によりけりだ。まあ、なんだ、自分にとって、他人と関わり他者を知るという事はそういう事でもあるのだ。

 ……後は、そうだな。この様な厄介事は自分にとって、又とない娯楽の機会だ。こういうのは損得で考えて動くモノではない」

 

 そんな理由で死徒27祖クラスの怪物である英霊に挑むあたり、この男、中々に壊れている。

 もっとも人の業を愉悦とするこの神父は、厄介事が派手な馬鹿騒ぎであればある程、その時間を愉しんで生きているのだろう。

 

 ―――自身を極め強くなったのも、求道の為。

 

 純粋に極めた果てに何が在り、何を得られるのか、言峰士人はそれも求めている。そして、自身を極めたのもまた、己が得られた誇りの為でもある。

 しかし、そもそも強くないとこの世界を楽しみながら求道など出来やしないだろう。この世では何をするにも力が必要となって来る。意志に刻みこんだ求道に生きる為にも、それを貫き通す強さが必要なのだ。

 

「それはなんと言うか、随分と極端な話じゃないかい? つまりアンタは、助けるのか、殺すのか、その二択しかないってコトなの?」

 

「まさか。これはそこまで極端な話ではない。

 だがまあ、殺して生きるか、殺されて死ぬか、その様な法則が蔓延る戦場では他人に対し、如何してもその様な取捨選択を迫られるものだ。それに自分が経験してきた殺し合いは基本的にそう言ったものだった。

 そもそもの事だが、これは戦場での話。戦いにおいて自分がどのような考えを持っているのか、お前に言っただけに過ぎん。殺し合いには程遠い平和な時間では、俺は神父としてお前と大差の無い倫理に基づいて行動しているよ」

 

 と、そこで話し終える。綾子は小難しい彼の話を簡単に頭にまとめた。

 

「――――む。

 つまりアンタが言いたいのは、限定的な条件下における行動の取捨選択ってこと?」

 

 助けるのか、殺すのか。この両極端な二択を選ぶと言った士人は、戦場や殺し合いでの場合だと限定した。つまり綾子がいつも見てきた言峰士人も戦場で生きる言峰士人も、どちらも偽りなき己である、と綾子に彼は言っていたのだった。

 

「そうだ。俺は先程お前に、厄介事、と話しただろう。

 ――――戦場と言う限定的な状況は、ヒトの業が良く渦巻いているからな」

 

 奈落の目で神父が言う。何か楽しいモノを思い出した子供みたいな、そんな笑みを浮かべていた。

 それを見た綾子はいつもの士人と違和感を感じていたが、どうしてか、それの方が言峰らしく感じるコトを不思議に思った。

 

「……じゃあ、あたしを助けたのもそういうコトだっていうの?」

 

「ああ、そうだぞ。

 それにだ、そもそも俺は神父だ。友人のお前を、助けられるのに助けない、等という選択肢を選ぶ必要がないからな」

 

「――…………………そっか」

 

 綾子は士人が自分を助けた理由を解った。神父であるこの男は人助けが習慣、または習性にでもなっているのだ。

 自分の目的に害がない限り、神父として役割を全うする。

 

「――――日が沈んでいくねえ」

 

 綾子の囁き。しみじみ、と、疲れを口から吐き出す様に呟いていた。

 

 地平線へ真っ赤な太陽が消えていく。

 

「……さて、と。そろそろ帰ると良い美綴。大分時間は潰せたと思うのだが」

 

「―――ヤレヤレ、だね。

 アンタは相変わらず、つれない事をヅバっと言うよ」

 

「つれないとはまた、辛い言葉で。

 だが今の冬木の夜は危険だぞ。どの様な姿で死んでもまったく不思議ではない。早く帰らないとお前の親御さんも心配するだろうし、もし死にでもしたら家族は泣き嘆くことになるだろう」

 

 全くもっての正論。それについこの間に心配させたばかりだ。家族の負担を増やすのも如何なモノか、考えればわかること。

 

「それもそうね。自分じゃ対処ができない危険へ突っ込んでいく程、あたしはまだ狂ってないし」

 

「まったくだ。それに俺は監督役ゆえ、お前が死ぬと死体処理の仕事が増えてしまうからな」

 

「………ここはさあ、男として女を心配するのが男の甲斐性ってやつでしょ?」

 

 あんまりな士人の言い分。人道から遠く離れた言葉だ。綾子は、この外道神父め、と士人のコトを内心で罵っていた。

 

「―――ク。まさか、この俺に甲斐性を求めるとはな。

 もっとも美綴が微量でもか弱い女性だったなら、甲斐性無しな俺でも少しは気の効いた事も言えるのだが」

 

 と、人をからかう悪い笑顔を浮かべる神父。

 残念なモノを見る目で、ククク、と此方を笑う士人に対して綾子は、正直かなりイラっとした。

 

「―――アンタって神父は。

 これだから、外道なんだよ…………っ」

 

「なんと言う事か、命を助けられた相手にそのような暴言を吐くとは信じられん。美綴、お前という奴は本当にか弱さからは遠く離れているなぁ、ハッハッハ!」

 

態とらしく、面白くて仕方がない、と笑っている。綾子のお怒りメーターの針が振り切れそうだ。

 

「……アンタとは一度、トコトン話し合わないといけないみたいだねえェェ…………ッ!」

 

 顔を赤くして怒っている。士人にとって、遠坂に何処か似ている美綴は、自分の師匠よりからかい甲斐があるのだ。そしてそれは、綾子にとって悲劇以外の何物でもなかった。

 子は親に似る。楽しそうに凛をからかう綺礼を見て育った士人の趣味がかなり悪趣味なのも頷ける。何せ、この神父はあの神父の後継者なのだ。

 

「クックック。そう怒るな、可愛い顔が台無しだぞ、残念だ」

 

「残念!? 何がよ!!?」

 

「そうだな。煙草を吸う姿が漢(オトコ)過ぎるところ、とか?」

 

「あたしに聞くなっ! それに煙草はアンタがすすめたんでしょ!?」

 

「ハッハッハ」

 

「―――はっはっは、じゃねぇわよっ!」

 

 と、騒ぎ始める二人。ここまで大声を出してしまうと結界の効力は殆ど無くなってしまう。

 ぶっちゃけた話、河川敷の公園で痴話喧嘩する初々しい高校生カップルにしか見えない。しかし、そんな事を気にするほど羞恥心がある二人ではなかった。士人と綾子は知り合った時からこんな感じであり、高校でも基本的にこのノリだ。

 それに学校で、付き合っているのか、とちゃかされても、全然、と断言しちゃう二人でもある。恋愛感情は無いみたいに思えるし、互いを異性として捉えているのかさえ疑問が残ってしまう。

 

 数分間、いつものように言い合い(?)をする綾子と士人。

 

「もう帰る」

 

「何だ、いじけてしまったのか。まったく、いつも美綴がそういった殊勝な姿だったら、俺もからかう事も少なくなるのだがな」

 

「――――………耐えるの。耐えるのよ、あたし…………………………やっぱ言峰死ね」

 

「おい。声から思考が駄々漏れになっているぞ。それとも態とか」

 

 彼女は思わず心の声が口から漏れ出してしまった。

 

 黄昏の時が終わる。

 夕闇が濃くなり太陽ではなく月が輝く闇の時間。二人の声が聞こえる河川敷の公園は段々と暗くなっていった。

 


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