【完結】ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れない兄になって死にたくなってきた   作:食卓塩准将

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柏木編最終話及び最終章前編です
では、はじまりはじまり


第十病・なまえをよんで

 ああ、本当に良かった。 間に合ったのだから。 全てが決まって取り返しのつかなくなってしまう直前に、こうして柏木がここに来てくれたという事実に、俺は心の中で感謝する。

 

「柏木? おい、どうして柏木が今ここにきたんだ」

 

 悠と校長が入って来た時の早坂達を焼き写したかの様に、校長が何が起きたのか把握できずに俺や悠に聞いてくる。 早坂達は入って来たのが柏木だと分かっただけでばつが悪そうに顔を伏せたのに、このおっさんは呑気に何を言ってるのやら、厚顔無恥とまでは言わなくても相当面の皮が厚い事は確かだ。

 最も、既得権益に関わる問題になるとさっきまでの様にトコトンへたれに成り下がってしまう様だが。

 取り敢えず俺と悠の交互に質問してくる校長は無視して、俺は一歩だけ柏木に近づいてから、ここに来た理由の確認を取る事にした。

 

「柏木」

「はい」

「……大丈夫、だな?」

「……はいっ!」

 

 今朝までのオドオドしていた態度が全くと言って良いほどなくなっ……てはいないが、迷いが吹っ切れた力強さを感じさせる声で、柏木は答えてみせた。

 ……うん、いい加減な判断かもしれないが、もうこれだけで十分だと確信出来た。 そうと決まれば話は早い、後は最後の舞台を整える為に、俺も含めたこれ以上この場に居る必要のない人間には退場させる事にしよう。

 

「そういうことだ。 悠、綾瀬、後は柏木に任せよう」

「ええ、いいわよ。 ……しっかりね、柏木さん」

「は、はい。 ありがとうございます、河本さん」

 

 この二人、なんかいつの間にか仲良くなってないか? 気のせいだろうか。

 

「それじゃあ柏木さん、また後で」

「はい。 綾小路君も、ありがとうございます」

「いえいえ……何してるんです校長、貴方も行くんですよ」

 

 名前を呼ばれてハッとする校長。 するとすぐに俺に向かって捲し立てる。

 

「い、いや待て野々原、私の件はどうするつもりだ!」

「あ、さっきのアレですか? いやあ、校長が結論言い出す前に、より早坂達に判決下すのにふさわしいヒト(柏木)が来ちゃいましたから、なかった事に」

「ふざ、ふざけるなぁ!! 私が早坂達を退学にすれば今回の件から私を見逃すと言ったのはお前だろうがぁ!!」

「え……いやだなあ、校長先生ぇ……。 あんな言葉を鵜呑みにしちゃったんですか? あはは、嘘でしょう?」

「このっ……、大人を馬鹿にしやがって、クソガキどもがっ……」

 

 尋常じゃない憎しみの念を込めながら校長が俺と悠を睨みつける。 正直少しだけビビったが、悠の方が何食わぬ顔で『校長先生、さっさと行きましょう?』と言ったら、後は叱られた子犬の様に大人しくなって、先に部室を出ようとする悠の後ろを黙ってついて行った。 結局、最初から最後まで生徒の前で大人げない醜態を晒しただけで終わってしまったな、あの人は。

 

「なんか変な空気になっちゃったけど……行こう、縁」

「そうだな、それじゃ後は、同じ部員だった者同士で話し合って貰おうか。 教室行って荷物片付けようぜ綾瀬」

「野々原、アンタ、なんで……」

 

 早坂が何やら言ってるが、当然それらに答える事はしない。 俺が言うべき事や言いたかった事は全部言い切った。 後は全部柏木が直接終わらせるだけだ。

 綾瀬と共に足早に部室を出た後、俺はピシャリとドアを閉めて、その場を離れた。

 

 ……

 

「……あれが、貴方の考えてた終わらせ方?」

 

 部室を離れた後、俺達の教室に戻って悠が帰ってくるのを待つ間、綾瀬がちいさく笑いながら俺に聞いてきた。

 

「まあ、な。 以前に、先生にチクって終わらせるだけじゃ駄目だって、言ったの覚えてるか?」

「覚えてる。 第三者が無理やり間に入っても、解決しないって話だったっけ?」

「そう。 だから今回、俺があいつらを説き伏せて終わらせるってやり方じゃいけなかったんだ。 教師が俺に替わるだけだったからな、それじゃ意味がない。 だから柏木には、どうしても最後の最後に出て来てもらって、柏木の手で、今回の件を終わらせてもらう必要があったんだ」

「なるほどね~、うまく行ったみたいだから良かったけど、もし私が捕まえる前に柏木さんが帰っちゃったら、ご破算になる所だったわね」

 

 そう、実は綾瀬には俺が話しを進めている間に、柏木がどこに居るのか見つけて、もし本人に部室へ向かおうとする意志があったら、急いで連れて来てもらうように頼んでいたのだ。

 俺は早坂達と話をして、悠は校長の確保(逃げようとする可能性も考えられたので)、綾瀬には柏木の確保をさせる、それが今回俺が計画していた作戦だった。

 しかし、実のところ柏木の来るタイミングはかなりギリギリだった。 途中で柏木に来てもらって、本人のいる中話を進めていくつもりだったが、現実にはノーマルエンド一歩手前だったのだから。

 綾瀬も言うように、最終的には成功に向かったから良かったものの、如何に俺の考えが甘かったのかを痛感させられた。 もうこんな事あって欲しくはないが、もし次も同じような出来事に見舞われた時は、今回を教訓にしようと思う。

 

「二人とも、お疲れ様」

 

 まるで疲れを感じさせない声で、今回一番頑張ってくれた人が戻ってきた。

 

「綾小路君もお疲れ様、校長先生はどうなったの?」

「ああ、彼は……今頃車に乗って別の場所に向かってるんじゃないかな?」

「別の場所?」

「うん。 まあ、今回の事でトコトン絞られるんじゃないかな」

「あ~、そういう事ね、うん。 分かった」

 

 明確には分からない物の、校長に訪れる修羅場を察して、やや引き気味に綾瀬が言った。 そんな綾瀬にイタズラっぽく笑ってから、悠が俺に言った。

 

「縁、今回はお疲れ様。 これできっといじめの方は良い方向で終わると思うけど、まだ問題が一つ残ってる事は分かってるよね?」

「えっ、まだ何かあったの? ……ってあぁ、部活の事ね?」

 

 綾瀬が思い出して、表情が陰る。 そうなのだ、いじめの件とは別で、俺は柏木の守ってきた園芸部を廃部にさせない事も約束していた。 夏休みが始まるまでに部員を集めないと、強制的に園芸部は休部になってしまう。 来年になっても入部希望者がいなければ廃部だ。 しかも一度休部になったら部室は使えない、来年新入生を勧誘するにしたって部室がないんじゃ勧誘しようがない、休部になっても実質終わりなのだ。

 

「早坂さん達は今年違う部に入ってるから、正当な理由もなしに部活を変える事は出来ないだろうね」

「だからって、わざわざ関係ない人に無理に園芸部に入って貰うわけにもいかないわよね……どうするの? 縁」

 

 新たな問題が浮上、一難去ってまた一難……だと思うかもしれないが、実はこっちの問題に関してもとっくに解決策は見出していた。

 

「悠、あのさ、お前確か前に──」

 

 ……

 

 ひとしきり話が終わった頃に、トタトタと廊下を走る音が俺達の教室までやって来たかと思うと、肩で息をしながら柏木が姿を見せた。

 

「よ、良かった……まだ、残ってたんですね……」

「あ、ああそうだけど、どうした柏木。 そんなに急いで、何か問題が起きたのか?」

「いえその、問題はないんです、ですけど、その……」

「……?」

 

 最後に園芸部で見た時と違い、また今朝の時の様に煮え切らない態度で言葉が止まる柏木。 だが、少ししてから、意を決したように柏木が言った。

 

「あ、あの……野々原君に、伝えたい事がある、ので……」

「えっ」

「も、もう一回、園芸部の部室に来てください!」

「あ、ちょ、ま──」

 

 言いたい事だけ言うと、また柏木はドタドタと去って行った。 恐らく部室に戻ったのであろう。

 さて……さて、たった今起きた事を端的に言うと、だ。 柏木が早坂達との会話を終えてその報告と共に、俺に部室に来るよう言った。 悠と、綾瀬のいる前で、だ。 もう一度言う、綾瀬のいる前で、だ。

 さてさてさて、ここで自分自身に問題だ。 ヤンデレCDの柏木編で、柏木と対立して殺し合い(と言っても柏木が瞬殺したようだが)をした人物は誰でしょう? 

 考えるまでもない、当然答えは綾瀬だ。 以前に見た夢でも、綾瀬はもれなく死体となって出てきました、思い出したら今も少し気持ち悪さが戻ってくるぐらいにはトラウマレベルだ。

 さーてさてさて、夢やCDとは違うとはいえ、そうなってしまう可能性が高いのに、柏木が俺一人を部活に呼ぶと言う場面を目の当たりにして、綾瀬はどういった反応を示すのだろうか? ……考えたくもない、振り向けばすぐに答えが分かるものの、ハッキリ言うと恐くて見られない。

 

「縁」

「っ、ひゃい!?」

 

 唐突に背後の綾瀬が俺の名前を呼ぶ、状況も合わさっておかしな返事になってしまったが、そんなことより綾瀬が何を言うのか、それについて全注意を払わなければならない。

 なるべく動揺を悟られないように、ゆっくりと振り返る、そこには負の気配を万遍なく放出している姿──、

 

「何ぼうっとしてるの? 早く行かないと柏木さん困っちゃうわよ?」

 

 などは全くなく、むしろ早く柏木の元へ行こうとしない俺に怪訝な顔をする綾瀬がいた。 え、何で? 

 

「いや、そりゃ行くけどさ……その、良いのか?」

「どうして私達に聞くの? 呼ばれたのは貴方の方でしょ?」

「でも、……いあや、マジで良いの?」

 

 だっておかしいだろう、柏木のいじめを解決させるって決めた時は、最初に俺が柏木の事好きだからそんな事してるんじゃないかって疑った綾瀬がだぞ? その綾瀬が、目の前で二人っきりになるお誘い受けてるの見て、むしろ行けよボーイ、だなんて言うか? この綾瀬本物かよ? 

 

「……何で驚いてるのか知らないけど、柏木さんは、今回の事をしっかり終わらせるために、最後に貴方に言う事があるって言ってるんでしょう? 柏木さんにとっては貴方と話をする事が必要なんだから、早く行く!」

「僕達はまだここで待ってるから、しっかり話をつけに行っておいで」

 

 うーん、どういうワケか知らないが、綾瀬が今の柏木に対して、以前までとは違う心持ちでいるらしいのは分かる。 ここに悠が居るのも理由の一つかもしれないが、少なくとも今俺が柏木の所に向かっても、危険性は無いようだ。

 

「分かった、遅くなったら先に帰ってて良いからな!」

 

 そう言って、俺は急いで園芸部室まで走り出した。

 

 ……

 

「……良かったの? 河本さん」

 

 縁が勢いよく教室を出て行ったあと、僕は隣に立つ河本さんに聞いてみた。

 

「良かったのって、何が?」

 

 質問の主語が抜けていたからか、河本さんが聞き返す。 ふふ、本当は何のことを指してるのか分かってるくせに。 意地悪する気はなかったけど、聞かれたので明確に言う事にしよう。 きっとその方が早く話が進むだろうから。

 

「だって、柏木さんが縁を部室まで来るように言った時の顔見たよね、あれは十中八九──」

「分かってるわよ、それくらい」

 

 うん、やっぱりこうした方が河本さんが自ら話すのを促せるね。

 

「……どうして敢えて送り出したのか、聞いても良いかな?」

「柏木さんは、それくらいの事しても良いくらい頑張ったから」

「頑張ったから……?」

「柏木さん、辛くてもずっと一人で頑張ってきたでしょ? そんな柏木さんを助けた縁を、彼女が好きになっても、おかしくないもの」

 

 なるほどね……じゃあ今回縁を柏木さんのところへ送り出したのは、長い間一人で頑張ってきた柏木さんに対するご褒美って事なのかな? 随分と余裕だなぁ、幼馴染ゆえに持てる余裕、特権なのかもしれないね。

 そういえば、河本さんは柏木さんを部室まで連れてくる役割を担っていたんだっけ、ひょっとしたら今日、僕や縁の知らない内に二人の関係が少し良好な関係になっていたのかもね。 今だけじゃなくあの事(……)についても、そうだと考えれば合点がいく。

 

「僕は誤解してたよ。 河本さんはもっとこう……独占欲の強いヒトだと思ってた。 でも、案外そうでもなかったんだね」

 

 厳密に言えば、独占欲の強いヒトではなく、独占欲の塊だけどね。 最初、縁に積極的に手伝おうとしなかったのは、縁と柏木さんの関係が近しくなってしまう事を恐れての事だったんだろうし。

 あぁでも、後半は僕じゃ手の届かなかった範囲で協力してくれた所を見ると、僕の見てない所で二人の間に何かあったんだろうね。 少なくとも、河本さんの縁に対する見方を改めさせるぐらいの事が。

 それはそうと、曲がりなりにも独占欲の強い人間だなわて、ある意味では失礼な事を言われたのに、河本さんはそれに対して怒ることはなく、代わりに小さく苦笑しながら言ってみせた。

 

「そんなことないって……ただ、信じてるだけだから、私は」

「ふぅん……そうなんだ」

 

 訂正、河本さんこの人は独占欲が強いヒトじゃない、それだけじゃないんだ。

 きっと、多分これは……重いんだね、愛が。 とっても。 重過ぎて相手を押し潰してしまいかね無い程に。 そしてそれはきっと、河本さんだけじゃなくて『彼女』も……。

 

「全く……大変だね、彼は」

「え?」

「ううん、こっちの話だよ、河本さん」

 

 頑張れ、縁。 そう心の中で呟いて、僕は親友の前途を憂い……少しだけ、楽しくなりそうだと思ってしまった。

 

 ……

 

「スマン、若干遅くなった!」

 

 本日、二度目になる園芸部室の扉を開く。

 室内には既に早坂達の姿はなく、本当に柏木と俺の二人きりだ。

 

「来なかったらどうしようと思ってましたが、杞憂だったみたいですね」

 

 そうはにかみながら言ってから、柏木がほぅっと安堵の息をつく。 その姿からは、昨日までの陰は微塵も感じられなかった。 大丈夫だと思っていても少しは不安もあったのだが、杞憂だったのはこちらの方だったらしい。

 

「その様子から見るに、うまくいったんだな」

「はい、またすぐに去年の様に仲良く、と言うのは流石に無理でしたけど、でも、今までの事分かってくれて、謝ってくれて……もう、これからは大丈夫だと思えます」

「そう、か」

 

 結局柏木達があの後どんな会話をしたのかは分からないし、聞くつもりも毛頭無い、それは野暮ってもんだ。 もう柏木がいじめられる事も、早坂達と禍根を残す事も無くなった、それだけが分かればそれで良い。

 

「私は、もう終わりだと思ってました。 どうしようも無くて、学園を辞めちゃおうかなんて思った事もありました。 野々原君が居なかったら、きっとまだ、私はあの公園で泣いてたと思います」

 

 目を閉じてこれまでの事を反芻しながら、胸に手をあて静かに、これまでずっと押さえ込んできた感情を吐露しながら柏木が言う。 僅かに微笑みながら話すその言葉一つ一つから、柏木が今日までどれ程苦しんできたか、今日の出来事がどれだけ彼女にとって大きな物であったのかがまざまざと感じて取れた。

 良かった、と心の底から思う。 綾瀬の言う通り、たまたま全てがうまく合致しただけで、人によってはもっと確実で堅実な方法を思いつけたのかもしれないが、俺が思いつける最善の方法はこれだけだったし、それで彼女が今笑ってくれてるなら、それに越した物は何も無い。

 

「貴方のおかげです、野々原君……本当に、本当にありがとうございました」

 

 閉ざしていた目を開けて、今度こそ明瞭に微笑んで、柏木が俺に言う。 その笑顔は以前夢に見た笑顔よりもはるかに輝いて見えた。

 しかし、だ。 その笑顔を向けるのが俺だけだと言うのは間違いだろう、行動のきっかけは俺だが、綾瀬や悠がいなければ絶対にこんな早くに終わる事は無かったし、そもそも終わるかどうかさえ定かでは無かったのだから。

 

「どういたしまして、でも、その言葉は後で二人にも言ってあげてくれ」

「はい、もちろんです。 でも一番に野々原君に言いたくて、その……すみません?」

「おいおい、なんでそこで謝っちゃうんだよ」

「……ですよね、ふふっ」

 

 すっかり緊張が抜けて弛緩しきった空気の中二人、肩を揺らして笑い合う。 思えば柏木とここまで肩の力を抜いて会話したのは、今日が初めてではなかろうか。 日頃どれだけ切迫した日常を過ごしてきたんだ俺は、我ながらもう少しゆとりを持てよと言いたい。

 ひとしきり笑い終えると、そこには穏やかな沈黙が漂う。 しかし本当に静かだ、それでいて何か喋らなきゃ、という焦りも生じない。 ゆっくりと、好きなタイミングで会話が出来る事の素晴らしさを今になって実感した。

 そうは言っても、何時までも互いに黙ったままじゃ埒が明かないし、待っててくれているかもしれない悠や綾瀬にも悪い、ここはそろそろ会話を再開させるべきだろう。

 

「あの」

「あのさ」

 

 おいおい、まさかの同時に発言かよ、完全に出鼻をくじかれてしまったぞコレ。 が、しかし! ここでまた互いにもたついてちゃそれこそ時間の浪費、ここは早坂達を相手にしていた時を思い出して、俺から行こう。

 

「俺から話し始めても?」

「あっ、はい。 なんでしょうか」

「早坂達の件は終わってもさ、まだ柏木にはもう一つ問題があったよな? 園芸部の存続についてさ」

「ええ……ちょうど私もその事について野々原君に言おうと思ってたんです」

「ん? 何か案があったのか? よければ先に言ってくれるか」

 

 昨日まで部活について考えていられる環境じゃなかっただろうし、考えたとしても早坂達と和解してから俺を呼びに来た僅かな間の事だろうけど。 もし俺が用意した物よりも現実的だったら、そっちの方を優先的に採用して──、

 

「もう、園芸部は無くなっても良いんじゃないかって思ったん──」

「却下だ」

「ええっ? また言い終わらない内に却下ですか……」

 

 当たり前だの何たらかんたら、こちとら月夜の晩に『お前の居場所は俺が守るぜ』なんてクサい事言ってしまったんだから、発言に責任を持たせろ。 言った俺は当然、発言を受け入れたお前もだ。

 

「園芸部、胸糞悪い事もあったが、お前にとって大切な場所だったんだろ?」

「それは勿論、今も私にとっては大切な場所ではありますけど」

「だったら、そんなあっさり……でもないか、ずっと一人で頑張ってたわけだし──とにかく! まだ夏休みまでまだ猶予があって、せっかくいじめも無くなったんだから諦めるのは勿体無いだろ」

「でも、部員は私だけですし、一人だけではどうしても……」

 

 そう言って柏木が困り顔で苦笑する。 こういう会話でもすぐに暗鬱とした表情を見せなくなった点は、昨日よりもネガティブ思考から脱却した事を感じさせる。 だがそれでも部の存続に諦観しているのには、やはり現状一人しかいない事が大きな原因だろう。 恐らく柏木の元々の性格からでは、一年生に勧誘なんて簡単には出来ないだろうし、自然に部員が来るのを待つくらいしか出来ないのだろう、それがほぼ不可能だと理解していても、だ。

 でも良かった、おかげで俺の策が無駄になる事は無くなりそうだ。 ……ポケットに右手を入れて中にあるソレ(……)を確認してから、俺はもう一度世間話をする様な気軽さで、柏木に言う。

 

「なあ柏木、俺とお前が知り合う事になったきっかけを覚えてるか」

「きっかけですか? それは確か、野々原君と綾小路さんが、見学に来た時だったと」

「そう、よく覚えてたな。 今じゃ不思議と随分前の話に、それこそ一年も昔の事に感じるが、きっかけはその通りだ、それで柏木、俺達は何であの時いろんな部活を見学していたでしょう?」

「それは当然、入る部活を選んでいたから……ですよね?」

 

 自信なさ気にそう答える柏木。 うーん、もうこの時点で察するかと思っていたんだが、案外そういった方向の思考には疎いのかもしれないな。 渚や綾瀬に、悠みたいな察しの良すぎる連中とばっかりいるから、若干感覚が麻痺しているのかもしれない。

 仕方ない、ここはもうどストレートに動いた方が話が早いだろう、そう判断つけた俺は、ポケットに持っていたソレ(……)を取り出して、柏木の前に突き出した。

 

「えっ……それって、まさか……」

 

 俺の手に握られている物が何なのかハッキリと認識した柏木は、まず口元を押さえながら驚いて見せた。 よしよし、望んでいたまんまのリアクションを見せてくれて万々歳だ。 と言うより、これでドライな反応返されたらこっちが困る、何故なら俺が柏木に突き出して見せたのは──、

 

「入部届けだ、三人分! 部の存続には顧問を抜いて最低四人いればいいわけだから、これで万事解決だ!」

 

 学生手帳のまんなから辺にある、入部届けが三人分。 これが俺の考えた廃部を回避させる為の策だった。

 まあ、正直この程度の事は策と言える位に高尚な物では無いが。 とにかく部員が少なくて、しかも一人じゃ何も出来ないと言うなら、そこに俺と、一緒の部活に入ると言っていた悠が入部しよう、という計画だった。

 ……その筈だったのだが、柏木に言った通り今俺の手には、一人多い三枚分の入部届けがある。 一体この一枚多い入部届けは誰の物なのか、疑問の答えは十数分前に遡る。

 

 ……

 

「悠、あのさ、お前確か前に入る部活は俺に合わせるって言ったよな」

「そうだったね……ん? あっそうか、そういう事だね」

「え? え? 二人だけで何を納得してるの?」

 

 俺と悠の会話についてこれず、綾瀬が頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。

 

「俺と悠は元々、どの部活に入るか決める為に、いろんな部活を回ってたろ? だから俺と悠が園芸部に入部して、あとの一人は何とか夏休み前に確保しようって考えたんだ」

「僕は前に縁が入ると決めた部活に行くって決めてたからね、いいアイデアだと思うよ。 当然僕も異議無しだ」

 

 二人で事の顛末を説明終わると、何故かやや青い顔をし始めた綾瀬が、右手を肩の高さまで上げて、引きつった笑顔でおずおずと聞いてきた。

 

「それって、つまり、これからは放課後に部室で二人(……)が毎日一緒になるって事?」

「そりゃ当たり前でしょ、園芸部は園芸部用の部室があるんだから」

 

 いまさら何当然のことを、さも地球の終わりみたいな顔して聞いて来るんだこの幼馴染は。 そして悠よ、お前は逆にどうしてニヤニヤしているんだ? まるで面白いものを見ている様に、確かに青い顔する綾瀬は珍しいけど面白くは無いぞ? 

 幼馴染と親友がこぞっておかしな様子を見せるものだから、ついつい話が続かない、あまり待たせると柏木に悪いのだが。 ここからどやって話の収束に掛かろうかと考え出した矢先に、綾瀬が迫真の表情でいきなり、突拍子も無い事を言い出した。

 

「決めた! 私も園芸部に入るわ! 私も部活はどこにも入ってないし、問題ないわよね!?」

「はいぃ!? いきなり何言ってんだお前!!」

「アハハハハハ! やっぱりそうなるよね!」

 

 驚愕する俺と、待ってましたとばかりに手を叩いて大笑いする悠。 唐突な発言の筈なのに、何故ここまでリアクションに差がついてしまうのか。 と言うか悠、お前楽しむな。

 

「綾瀬お前、広報委員会の活動はどうするんだよ!? 結構ハードな職場なんだろ」

「辞めるわ」

「良いのかよ!?」

「何? 貴方は私が園芸部に入るのがそんなに嫌なの? 私と一緒になる事がそんなに苦痛?」

「あ、いや違います、そうじゃなくてですね……」

 

 一瞬で不穏な気配を察知してしまい、言葉が尻すぼみしてしまう。 最近綾瀬からは危険な雰囲気を感じなかったので油断していたが、綾瀬も場合によっては十二分に『ヤヴァい』のだ。 冷静に考えれば綾瀬が園芸部に入る事で生じるデメリットは無い(願望補正多め)し、むしろ最後の一人を探さなくて済むのでメリットだ。

 

「じゃあ、綾瀬も、うん。 よろしくな」

「ええ。 ……はい、これ」

 

 学生手帳を取り出して、慣れた手つきで入部届けが記載されているページをめくって、これまた慣れた手つきで切り取り、俺に渡す。 次いで会話中に静かに自分の名前を記入し終えていた悠からの入部届けも受け取り、これで園芸部の未来は安泰となったわけだ。 ……うん、綾瀬は記入する仕草を全く見せていなかったのに、届け用紙にもう名前が書かれてある事については触れない方が良いだろうな。 キジも鳴かずば何とやら、だ。

 

 ……

 

 ──とまあ、柏木が教室に入ってくる少し前にこんなやり取りがあったわけだ。

 

「俺と悠と、綾瀬の三人が園芸部に入る。 これでもまだ、お前は廃部を受け入れるか?」

「……っ、野々原、君……」

 

 くぐもった声でそうつぶやいて、柏木が手を小さく震わせて、俺の手から入部届けを受け取る。

 これでようやく、俺は柏木との約束を果たせた。 いじめを無くし、部も存続させる。 結果だけを見ればそれはCDで語られた顛末と同じだろう。 しかし、その過程は大きく異なっている。 恐らく最初から最後まで一人で行動し、柏木を自分しか映さない人間にしてしまった『主人公』と、親友二人の力を借りながら、最後には柏木自身に最後をゆだねて、外の世界を向けさせた『野々原縁』とでは、その先に待つ未来に大きな違いがある。

 もう、目の前に居る柏木がCDの『柏木園子』の様に、世界を省みない人間になる事だけは絶対にないと、俺は信じたい。 自分の為というのも当然あるが、何より彼女自身のこれからの為にも、切にそう願う。

 

「今日はもう放課後で、家に帰る用事があるからだけど、来週からよろしくな、部長?」

 

 俺がそう軽く言うと、柏木ははっと息を呑んで、やがて、

 

「野々原君……うっ、うぅ……」

「ゔえぇ!? 何で泣く!? 俺何か地雷踏んだか!?」

 

 あろう事か、その場で泣き出してしまった。 女子の泣き顔なら今までに何回も見てきたし、ついさっきもこの部屋で早坂達のそれを見たが、まさか泣くとは露にも思わないタイミングでのソレだったので、俺の動揺も一塩だった。

 

「いえ、違うんです、その、嬉しくてつい……」

「あ、ああそうか、なら良いのか……?」

 

 どうやら感極まって泣いてしまったようだが、相手を喜ばせて泣かせた経験も無いので、結局もぞもぞとした気分になってしまった。 どうやら女の涙に弱い人間のようだ、綾瀬が泣いた時もテンパって抱きついたりしたし。

 

「野々原君は、本当に不思議です」

「ふ、不思議?」

「会って少ししか経ってないのに、私の考えを誰よりも分かってくれて、力になってくれました」

「……っ」

 

 指で涙を拭いながら、心の奥から紡ぎだす様に話すその言葉に、俺は思わず止める事も茶化してごまかす事も出来なかった。

 

「いじめから私を救ってくれて、早坂さん達とやり直す機会をくれて、園芸部も廃部にならずに済んで……私の大切な物を、野々原君は全部守ってくれました」

「柏木……」

 

 いや、ソレは違う。 柏木は一つ思い違いをしている。 今後の柏木の為に、そこだけはハッキリといってあげないとな。

 

「違うぞ柏木、確かに俺はお前の力にはなった。 でもな、今ある結果は、お前が自分で動いた結果得られた物だろ?」

「そう……でしょうか?」

「俺がいじめを止めようと動いたのは、そりゃ俺が自発的に動いてた分もあったが、決定的だったのはお前が俺に助けてくれと言った(……)からだ。 お前が早坂達と関係のやり直しが出来たのは、お前が自分で解決しようと()()()()からだ」

「あっ……」

「ほらな? 俺はただお前の脇でちょろちょろ動いてただけだった。 一番大切な物が何かを考えて、その為に行動したのは全部、お前自身なんだよ、柏木」

 

 そう、だからこそ、今の柏木に言える、言うに相応しい言葉がある。

 

 ──彼女は、孤独だった。

「お前はもう、孤独じゃない」

 

 ──幼い頃から、自己主張が周りの子どもよりも少なかったのが原因だったのだろうか。 病弱で頻繁に幼稚園や学校を休む事が続き、まともに友達を作る事が出来なかったからだろうか。

「他人との係わりが出来ない人間でも、自分の気持ちを相手に見せられない人間でも無くなった」

 

 ──いずれにせよ、彼女はゆっくりと、しかし確実に、“独りぼっち”になっていった。

 ──その心の最奥に、言いようも無いほどの悲しみを抱え、声にならない声で嘆き続けながら。

「独りぼっちになって、痛みや苦しみを心の奥に押さえ込む必要なんか、もう無いさ」

 

「だから、自分に自信持てよ。 そんで何かまたきつい事が起きたら言えばいい。 同じ(……)園芸部の部員が力になるからよ」

「……ふふっ」

「おい、笑うな、我ながら臭い台詞吐き出しまくってる事は自覚してるんだからよ」

 

 今の場に柏木しか居なくて良かった。 もし綾瀬や悠のどちらか一人でも居て聞かれていたら、向こう十年間はネタにされる事間違い無しだからな。 というか今こうして笑われてる時点でもう負の歴史確定ではないか。

 自分の頭を抱えてのた打ち回りたい、そんな俺の心中も察する事無く、まだクスクス笑いながら柏木が言った。

 

「いえ、違うんです。 やっぱり野々原君は不思議な人だなあって、思ったので」

「そうだね、こんな痛い事言える人間なんて不思議ちゃんしか居ないもんね」

「いえ、そうではなくてですね。 私、今まで自分の事を何にも出来ないってずっと思ってたんです。 でも、野々原君にそう言って貰えるだけで、初めて本当に自信がついた様な気がして。 だから、やっぱり野々原君はすごい人だと思います」

 

 そりゃ今までお前にポジティブな事言ってくれる人間が居なかっただけだろ、と言いたくなったが、それを言ってもまた話がループする気がしたので口をつぐんだ。

 ひとしきり笑い終えると、改めて柏木が俺の目をまっすぐに見つめる。 その僅かな仕草と空気の変化から、この園芸部室で交わされて来た二人だけの時間に、最後の会話が来たのだと分かった。

 

「野々原君……最後に、一つだけ、私のお願いを聞いて貰っても、良いですか?」

 

 お願い、と柏木は言った。 それが何なのか、柏木の口から言われるまでは俺に分かる術は当然無い。

 だが、自意識過剰と笑われるのを分かった上で敢えて仮定するとして、それが『告白』だったとしたら、俺はどうする? 

 CDではいじめが無くなってから、『主人公』と『柏木園子』は恋人同士になった。 その過程には必然、どちらかからの告白があっただろう。 そして『野々原縁()』と『柏木』も、出会ってからの日数こそ少ないが、今ではもう先程までの様な、朗らかな会話を交わせるくらいの関係に、自然となっている。 始めは柏木を警戒していた俺は、今ではもうその名残も無い。 そして自惚れでは無く柏木の方も、俺に対しての感情は好意的な物だと言えるだろう。

 これは柏木に対する懸念ではない。 仮に告白を受けたとして、果たして俺がその告白にどう返事をするのかという、俺自身に対する問題提議なのだ。 俺はその時、告白に応じるのだろうか、断るのだろうか。 先述の通り、俺はもう柏木に危機感は抱いていない。 確かに『柏木園子』はヤンデレで、閉ざされた世界で自分の愛を貫く為に、『主人公』の命を奪った猟奇的な人間だった。 だが、『柏木』は違う。 設定と思考と物語が定められたCDのキャラクターである『柏木園子』と違い、外の世界へ目を向き、他人に自分から関わる事を知った、生きた人間だ。

 であるならば、もはや彼女は、CDと同じヤンデレの思考を持った人間でもなくなっているのではないか? それなら自分が過度に柏木を避ける意味なんて、無いようなものじゃないか。 幾重にも重なって揺れる思考を抑え込みながら、俺は柏木にとりあえずの返事をする。

 

「あぁ……なんだ?」

「はい、その……私と──」

 

 心臓がドクン、と強く鼓動を鳴らす。

 私と、その後に続く言葉を柏木が言おうとした瞬間──、脳裏に彼女(……)の顔が、ふっと浮かんだ。

 

 

 

 

「私と──名前で呼び合ってくれませんか?」

「──え?」

 

 緊張が一気に解けていく。 えっと……名前で呼び合うってのは、どゆこと? 

 

「……というと、つまりは?」

「その、ですね……これから野々原君とは、一緒の部活をする仲間……に、なるわけですから。 これからは、お互いに、下の名前で呼び合いたいなと、思ったので」

「…………」

「えっと、駄目です、か?」

 

 ああ、全く。

 コレだから俺は、ったく、もう、ほんとに俺は。

 

「くっ、くははは! あはははははははは!!」

「え、ええ!? あの私、そんなにおかしい事言ってましたか!?」

「いや、違うよ、大丈夫、俺が空回りして馬鹿な思考してただけだから」

「そ、そうなんですか……」

「そ。 思春期の男子特有の謎現象だと思って──ぷふっ、ふはは」

 

 あったりまえだよな? そもそも冷静に考えなくたって、この程度で好きになるとか告白だとか、あり得るわけねえだろうよ! ばーかだな本当に俺は、こんなお粗末な思考回路だったから前世で野垂れ死にするんだよ。

 ……まあ、でも、あれか。

 こんな奴にも、わざわざ名前で呼び合うって言ってくれる奴が出て来てくれるんだから、それはそれで良いか。

 

「うん、勿論構わないよ。 改めてこれからよろしくな、()()

 

 そういいながら、柏木に手を差し出す。 それを受けて、柏木は今まで見た中で一番輝いた笑顔を見せて、

 

「はい! よろしくお願いしますね。 縁君!」

 

 しっかりと、俺の手を握り締めた。

 

 ……

 

 彼が帰ったあとも、私は一人この部屋に残っていました。 今までだって一人でこの部室に居ましたけど、今の私を包むこの部屋の空気は、もはや孤独のものではなく、確かな人のぬくもりが感じられる物です。

 わざわざ、やる事が残っていると嘘を言ってまでここに残った理由は、気持ちに区切りをつける為でした。

 

 実を言えば──本当は私は今日、この部屋で、彼に自分の気持ちを告白しようと思っていたんです。

 

 彼に対する気持ちが好意であった事を自覚したのは、昨日の晩に彼と会話を交わした後が初めてでした。 だが思えば初めて出会った時から、不思議と私は彼に対して拒絶感を覚えてはいなかった事にも気づきました。 きっとあの時から、彼の不思議な雰囲気に、どことなく惹かれていたのだと、今なら思えます。

 そして、私の為なんかに本当に頑張ってくれて、最後には早坂さん達と話す為に背中を押してくれて、自覚したばかりの想いが、風船の様に膨れ上がっていくのが分かって、抑えられなくなりました。 入部届けをくれた時にも、人は嬉しい時でも本当に涙を流せるのだと、生まれて初めて分かりました。

 

「……でも、駄目でした、ね」

 

 彼に告白しようと、勇気を振り絞って彼の目を見つめた時に、私は気づいてしまったんです。

 彼の目が、揺らいでいる事に。 そしてその瞳の奥に、私ではない誰かを映して、その人への思いで心を苦しめている事に。

 だから……だから、私は、とっさに違う事を言ってしまいました。 勿論名前で呼び合いたいとは思っていたので決して嘘ではありませんが。

 

「だって、彼は私の苦しみを解いてくれたんですから。 私が、彼を苦しめちゃ、嘘になっちゃいますよね」

 

 私が告白すれば、彼は受け入れてくれたかもしれません。

 でもそれは、私の想いを無理やり押し付けてしまう事と同じ。

 だから、きっとそれは彼を余計に苦しめてしまう事になる。 それだけは、死んでも嫌です。

 

「私の恋は、すぐに終わっちゃいました。 後に残ったのは、のこんの月の様な、片思いだけ。 でも……」

 

 彼が心の奥で思っているその人が、いつか彼の想いに応えて、彼を幸せにしてくれるのなら。

 私はそれでも良いと、思えるのです。

 当然、心は痛むでしょう。 彼の隣に居るのは自分でありたいと、今もこれからもずっと考え続けるでしょう。 でもこれが、私を救ってくれた彼への、私なりのお返しだと思えるのです。 この恋心が、彼の苦しみになるくらいなら、私の胸の中に一生閉まって置いた方が、ずっと良い。 彼は心のうちを隠すなと言ってくれましたが、コレだけは絶対に譲れません。

 

「だから、お願いしますね、彼の想い人さん。 どうか縁君を、幸せにしてあげてくださいよ?」

 

 さもないと、その事で私が怒っちゃいますからね? 

 もし彼を悲しませたりしたら、その時は……絶対に、絶対に許しませんからね? ふふっ。

 

 

 ──to be continued




結局、柏木はヤンデレなのか違うのか。
管理・依存・狂気、種類が多いヤンデレですが
自分の思いを徹底的に抑えて、好きな人の幸せを思うのも、ヤンデレの持つ色の一つだと思います


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