城下町のダンデライオン〜長男は魔法使い〜   作:ソール

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第二十八話

期末テストがなんとか終了し、全員合格して、湯冬休みを迎えてクリスマスと正月を終えて、一月の中旬の時期を迎えていた。

 

 

最終選挙まで、二ヶ月半

 

 

新年を迎えて、兄妹達は選挙に向けていろいろ準備をし始めた。最終演説に向けて、何度もスピーチの内容を読み直したりなど、国民に演説を続けるなど、王様になるための下準備をそれぞれ兄妹全員している

 

もうあまり時間も余りもない期間の中で、最終演説に向けて、準備を進めている

 

葵は菜々緒達で演説のスピーチを確認、修は彼女である花と国民に演説を続け、奏は一人ではあるが、それでももうほとんどプランを考えている。茜は・・・・・親友となんとか、無理に国民の前に出て演説を続けている。相変わらずの人見知りな状態で、遥と岬は双子で一緒にやるため、協力しながら準備を進めている。輝と栞はまだ幼いため、両親にいろいろスピーチの内容を相談しながらしているなど

 

もうみんな、王様になるための演説を考えている

 

 

そんな中で

 

 

光は

 

 

「はあ〜〜〜」

 

「どうした光?お前が珍しく溜め息だなんて」

 

「うん、ねえ真お兄ちゃん。最終面接は絶対に参加しないとダメだよね?」

 

「当たり前だろう。何か困ることでも?」

 

「うん・・・・・だってそれやったら、必ず私が『ライト』だったことを明かさないとならないよね?」

 

「ああ、今度のライブで最後になるんだろう?」

 

「そうだけど・・・・・やっぱり・・・・」

 

「なるほど、続けたいのか。アイドル」

 

「うん、まだやりたい」

 

「なるほど、お前が王様を諦める理由がわかった。でもお前の正体を発表しても、人気を見る限り急上昇だ。仮にお前が正体を明かしても問題はないはず、何がそんなに困るんだ?」

 

「実は・・・・ある子とユニットを組んでいるの」

 

「誰だ?」

 

 

「米澤紗千子って子なんだけど・・・」

 

 

「っ!あの『米澤』さんか!?」

 

「え!?真お兄ちゃん知っているの!?」

 

「ああ、以前ちょっとした事で知り合ったんだ。名前も聞いているし、有名なのは知ってはいたが、お前が彼女とユニットを組んでいるのは初めて聞いた。最近はよく見てないから、もしかして彼女に正体を告げるのが怖いのか?」

 

「うん、まだ小学生だったなんて、嘘を付いてたなんて言えなくて・・・」

 

「確かに、今まで信頼してやってきたからな、今正体を明かして幻滅されるのはキツイかもな」

 

「うん、さっちゃんに嘘を付きたくない」

 

 

あの明るい光が珍しくへこんでいるのは、この最終演説に向けて

 

アイドルとして活動をしていた『桜庭ライト』の正体を、アイドル仲間の米澤紗千子に明かす事

 

真は以前、彼女がナンパされている所を助けて知り合ったため、彼女のことは多少知っている。彼女はとても真面目で努力家のある子だった

 

そんな真面目な子である彼女に、今まで能力で年齢を隠して一緒にやってたなんて、光も真面目で、そんな嘘は言えなかった。今まで信頼して一緒にライブをしてきた。そんな共にしてきた子に嘘を付いてやっていたなんて、彼女においては何も言えなかった

 

 

でも、明かさないとならない

 

 

今。光のプロデューサーとアイドル会社の社長が、父である総一郎に呼ばれ、彼女のアイドル活動において明かさないとならないと、最終演説の説明をしている。光の番になったらプロデューサーと紗千子に手伝って貰うように、頼んでいる

 

つまりはもう紗千子に全てを明かさないとならない

 

光はあまりに彼女が大好きになったからなのか、今度のライブで彼女に全てを話すことに恐怖をしている

 

彼女が幻滅しないか、恐れている

 

今まで騙して一緒にやっていたなんて、言えない

 

 

しかし、真がこう言う

 

 

「彼女のことだから、ちゃんと本当のことを言っても受け入れてくれると思うぞ?」

 

「え?そうかな?」

 

「とある事情で彼女と知り合って話したんだが、彼女は確かに真面目だが、それでもお前の正体を知っても受け入れてくれるはずだぞ?」

 

「さっちゃんに限って・・・そんなこと・・・」

 

「じゃあ、これはどうだ?」

 

「え?」

 

 

真が彼女が受け入れてくれることを信じて信用するべきだと、言うが

 

それでも光はあまりに不安になっている。

 

今まで彼女は人の信頼を裏切ったことはない。そして今その信頼を、人生初めて裏切るかもしれないと恐れている

 

今度のライブで全てを明かさないとならない。いつまでも偽名を名乗ってアイドル活動は限界、もう家柄の事情で全てを。一緒にやった彼女に告げないとならない。彼女なら必ず受け入れてくれるはずだと、でも彼女はそれでも不安になる

 

なら

 

真が彼女に光の正体を知って貰うため、ある提案をした

 

 

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだ。米澤紗千子さん。今回だけライトさんのマネージャーをやらせて貰う。櫻田・真だ。よろしく頼む」

 

 

「あ、はい。よろしくお願いします。ライト?貴方あの真さまと知り合いだったの?」

 

「ま、まあね。私のマネージャーさんは別の用事でちょっと今日は居なくて、代わりのマネージャーさんをお兄・・・じゃなくて、真様とは知り合いで、今日だけ私が頼んだの」

 

「米澤さん。今回だけ真様がライトのサポートする。申し訳ありませんが、今日だけお願いします」

 

 

「ええ。任せてください。紗千子さんとは以前知り合っているので、面責済みです」

 

 

「プライベートで知りあったので大丈夫です」

 

 

「真様って・・・本当に女性と縁があるんですね?」

 

「まあなライト。それより衣装に着替えろ。更衣室に幾つかの着替えを用意してある。後半に着替える服に番号を振ってあるから、その順に着替えろ」

 

「はーい!」

 

 

真が眼鏡をし髪色を変えて、光のマネージャー代わりをすること

 

なぜ真がマネージャー代わりをするかは光はまだ知らないが、彼女のライブに付き添うと、プロデューサーである松岡に相談して、彼がマネージャーを今日だけ行う

 

とりあえず光は、兄である真に任せればいいと、何か彼女が自分を信じてくれるようなことをしてくれるはずだと

 

紗千子の事は信じてくれるか不安だと言うのに、家族である真のことは信じていた

 

とりあえず、紗千子は以前にも彼とプライベートで会っているので、王族の彼でも躊躇うことなく接するので問題なく

 

ただ、彼がライトと知り合いなのは驚いている

 

もちろんライトもまさか真が同じアイドル仲間の紗千子と知り合いだと知らなかった

 

 

まあ、でもマネージャー代わりではあるため、王族であるにしても仕事はしっかりやるため、さっさとライブに出るための衣装に着替えるよう指示する

 

 

「紗千子さん。すまないが彼女の着替えは時間がかかるから、それが終わるまで、少し俺と話をしないか?」

 

「え、ええ。いいですけど」

 

「ありがとう。松岡さん。ここは自分と彼女だけにさせてください」

 

「わかりました。私はライブ会場を一度確認しますので、ライトが着替え終わるまでにお願いします」

 

「はい。それまでに」

 

 

彼女だけで話したいからと、プロデューサーの松岡は一旦彼女達の楽屋を出て、ライブ会場へ行った

 

その間。今この楽屋では真と紗千子だけとなった。これで彼女と二人だけで問題なく話せる

 

 

「話したいと言っていましたが、なんのことでしょうか?」

 

「もちろんライトのことについてだ」

 

「っ!?」

 

「その様子だと、いろいろ気づいているみたいだな」

 

「真様・・・・その・・・・ライトって今日で・・・・・」

 

「まあ、卒業と言う形を取ろうとしているが・・・・・・彼女は続けたいと考えている」

 

「え!?あ・・・・そうなんですか・・・・」

 

「でも・・・・君も何か彼女に気づいていることは無いか?」

 

「はい・・・・率直に聞いてもいいですか?」

 

「なんだ?」

 

 

「真様がここに居るってことは・・・・やっぱりライトは、櫻田光様ですか?」

 

 

「ああ、その通りだ。彼女は能力で体を中学生まで自由にサイズを変えているんだ」

 

「やっぱり・・・・思ってた通りだ」

 

「君もなんだかんだで気づいてはいたんだな」

 

「はい・・・・なんとなくでしたけど」

 

 

真は彼女にライトの話をし始めるが

 

彼女も大体のことを察していたからなのか、彼女がライトと接するようになってから

 

 

ライトの正体が、櫻田光だと気づいていたようだ

 

真が彼女のマネージャーをする時点で、なんとなくそういう関係があるのかと思えば、ライトが光であるのではないのかと、予想はしていたようだ

 

案外光の天然な性格が。自分の正体を隠しきれづに、紗千子に悟られたようだ

 

 

しかしだ

 

 

「光は今回のライブで卒業するつもりだったんだが、どうしても王様になるのをやめて、アイドルを続けたいと言い出した、でも今度の最終演説の前に君に正体を告げようと思ったが、本人が君に正体を明かすのを怖がっていてな」

 

「怖がる?私が?」

 

「単にずっと信頼していた君を騙していたなんて、君が失望をするかもしれないと怖くて言えないだけなんだ」

 

「まったくあのバカ。そんなことくらいで怒ったりもしないのに」

 

「だから君がなんとかしてくれないか?俺は今日だけマネージャーを担当しているのがそれが理由なんだ」

 

「そういう事情だったんですね。あの子は変なところで心配性なところあるから、なんとなくそういうことを言われると、あの子ならそうよね。と納得するんですよね」

 

「まあ、それでもあの子は真面目だから。そういうところも真面目に心配するんだよ」

 

「そうなんですね。完璧な子じゃないんだって、なんだかホッとします」

 

「完璧な子じゃない?」

 

「あの子・・・・私より物凄く上手ですから、少しだけ嫉妬していたんです」

 

「確かに、真面目にやれば上手くできる子だからな」

 

 

紗千子としては光は本当に輝かしい程に、アイドルとしても向いている逸材だった

 

アイドルは踊りながら笑顔を続けないとならない。紗千子は新人の時はそれがあまり続くことができず、疲れて体力の消耗が激しかった。それでライブを短縮したりと、アイドルとしての能力はあまりに低かった。

 

それに比べて光はアイドルの能力は美化されるものだった

 

何時間踊り続けても笑顔は絶えることもなく、体力も消耗しない。しっかりと歌の歌詞も頭に入れるなど、紗千子とは次元が違った

 

 

「私は彼女が羨ましかった。だから今まで彼女に負けないくらい努力を重ねたんです。彼女みたいになりたいから」

 

「そうか・・・・・」

 

 

紗千子は光みたいに、アイドルとして完璧になりたかったらしい。光は完璧なアイドルだったと、紗千子は真に話した

 

しかし

 

それに対して真は

 

 

「紗千子さん。君に一つ言っておく、ここ最近、光は君といつまでもアイドルやりたいからと、ここ最近アイドル活動を王様になることよりも優先しているぞ?」

 

「え?」

 

「あいつが求めていたのは完璧じゃない。君だ。いつまでも自分と踊ってくれるパートナーが欲しいだけだ。上手さは求めていないんだ」

 

「いつまでも踊ってほしい・・パートナー」

 

「ああ」

 

 

光が王様を目指すのをやめたのは、確かにアイドルをやりたいと言うのもある。しかし大前提なのは自分といつまでも踊ってくれる親友が欲しいから

 

光は葵みたいに友達作りに困っているような内気な性格ではない。友達はとても多い。でも親友が欲しい。心を許せる親友が欲しい

 

その親友とどこまでも踊りたいと、選んだのが光だ

 

これが、彼女が選んだ、王様にならない程の大きな価値

 

 

「お待たせ!真様!準備できましたよ!」

 

 

「良いところに来てくれた。ライト」

 

 

「え?良いところ?」

 

 

良いタイミングで光がアイドル衣装に着替え終え、更衣室から楽屋に戻ってきた

 

もうそろそろだと思い。真は光に向かって本題を振った

 

 

「ライト。ライブ前に彼女に『あの事』を告げるんだ」

 

「え!?お・・・じゃなくて真様!でもそれはまだ・・・・・」

 

「いいから、もうお前の言葉で告げるんだ。彼女を信じてお前の言葉で真実を言え。いつまでも逃げるな」

 

「で、でも・・・・・・」

 

「ライト・・・・・・・」

 

「ん?」

 

 

「何か隠しているみたいね?何かあるなら。ハッキリ言えってもらえる?」

 

 

「ほら、彼女もこう言っているぞ?」

 

「う、うん」

 

 

真は自分の真実を紗千子に告げるよう、光に言う

 

光は兄である真に頼りにして、彼女が信じやすくするようにしてくれるのかと思いきや、もういきなり自分の言葉で真実を告げるよう言われて戸惑う

 

でも、紗千子も隠していることがあるなら言えと、もう戸惑うことなく、真実を告げる

 

 

「さっちゃん・・・」

 

「何?」

 

「私はね・・・・桜庭ライトって名前じゃないの?」

 

「じゃあなんて名前なの?」

 

 

「櫻田・・・光・・・・そこに居る兄の妹です」

 

 

「そうなんだ。へえ・・・・てことはまだ小学六年生なんだ」

 

「うん、ごめん・・・・」

 

「なんで謝るのよ?別に怒ってないわよ」

 

「本当?」

 

「ええ、能力で中学生になって私とアイドルの活動をしていたなんて、怒るわけないでしょ?」

 

「う、うん!さっちゃん!!ありがとう!!!」

 

「まったく。そんなことくらいで怒んないわよ。何を隠していることかも思ったら、あんたが王族だからって失望なんてしないわよ」

 

 

光は戸惑いながらも真実を告げた。それで紗千子に信頼を折れるわけがなく

 

紗千子はライトが櫻田光であっても、紗千子は光を信じて親友として迎えた

 

それくらいでは彼女は怒らない。王族だろうとなんだろうと関係ない。今まで共に一緒にアイドルをしてきた仲間を、そんなことくらいで失望なんてしなかった。失望する理由もないだろう

 

 

「ほら!ファンのみんなもまっているわ。行くわよ!!」

 

「うん!お兄ちゃん行ってくるね!」

 

 

「ああ、頑張ってな」

 

 

ちゃんと信頼し合って、二人はスタジオへと走って行った

 

真が見る限り、光の今の笑顔は人生の中でいちばんのものだった。おそらくではあるけど、光の願いは叶った。信頼し合える親友。紗千子もライブ以外の笑顔は見たことはない

 

でも、間違いなく彼女達二人の笑顔は最高のものだ

 

今回のライブは輝かしい。今までのライブの中で一番の最高な笑顔をしている二人

 

やっと光にも、最終演説に向けることができる希望を手にしたようだ

 

もうこればかりは何もする必要はないと、真はそのままマネージャーとしての仕事をするのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその後、光は紗千子を家に招いて、光の部屋で最終演説のスピーチの内容を紗千子に確認を取って貰っている

 

最終演説の事情を説明して、紗千子も光の演説に着きそう事を了承してくれた

 

しかし

 

 

「何よこれ!?これで最終演説のスピーチする気!?」

 

「え?ダメ?」

 

「当たり前よ!何この内容!?全然スピーチじゃなくて感想よ!?感想文なのかと思うくらいよ!?」

 

「あ、あれれ?」

 

「はあ〜、確かにまだ小学生なのがよくわかるわ。いい光?王様を諦めるにしても、アイドルを続けるにしても、これじゃあ全く国民に伝わらないわ!」

 

「う、うう。すいません」

 

「だから私が一緒に考えてあげる。もうここからはいつまでも一緒よ。ほら頑張るわよ。私も喋るんだからね?」

 

「うん!!お願いさっちゃん!!」

 

 

「やれやれ。これで光も無事解決。これで後は・・・・・・備えるだけか」

 

 

光の悩みも無事解決した

 

これでほとんどの兄妹の悩みは消えたものだろう。真はもうあとはその日を迎えるための準備をするべきだと

 

 

今度は自分の番だと

 

 

覚悟を決めるのだった

 

 

 


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