城下町のダンデライオン〜長男は魔法使い〜   作:ソール

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第二十三話

茜の覆面ヒーロー作戦をしてから数週間後

 

茜の覆面ヒーローは割と正体はバレずに彼女の仕事は上手くやれていた(もちろん国民は正体を知っていて、茜がが眼鏡をしている時は別人扱い、もしくはスカーレッド・ブルーム扱い)。彼女のヒーロー名であるスカーレッド・ブルームはかなりの大人気となった

 

本人である茜も、自分の正体を隠しているだけで楽に生活できていると、彼女は覆面ヒーロー作戦を上手くやれていた。(国民は正体を知っていると言うのに、本人はそれを知らないで、覆面ヒーローをやっている)。まあなんにしても彼女は学校生活以外は、真からもらった眼鏡で上手く覆面ヒーローをしている

 

何度か光が正体を咄嗟に言ってしまう節があるが、その度に葵が黙らせようとして何が何でも茜の今することを邪魔させないと光を小さく叱った。光は葵に怒られて、茜の前で正体は明かせなくなった(むしろ茜に声を掛けることすら、できなくなってしまう。葵のあまりの叱りに)

 

とにかく、これで茜の人見知りも治ることを祈って、とりあえず真は茜に関してはこのまま様子を見ることに

 

 

と言うように、真は、姉弟のサポートなどをしている。

 

自分にもやることはあるが、それでも今は姉弟たちの悩みに当たっている。解決しなければならない悩みが、能力を持つ王家の妹弟も人間以上にあると思って、真は魔法使いとして、魔法を妹弟達のために使おうとする

 

 

 

 

そして、次に悩む妹弟は・・・・・・

 

 

 

 

 

「遥、手紙が来ているぞ。お前宛だ」

 

「ああ、ありがとう。兄さん」

 

「それ、何かの通知だな。何か頼んだのか?」

 

「まあ・・・頼んだと言うか・・・試験の結果かな」

 

「試験の結果?」

 

 

今度は遥に関わることだった

 

双子の妹である岬とは違って、スポーツはそこまで苦手ではないが、頭は偉い方で勉学は強い。何か資格か何かの試験のようなものを受けて、今結果が帰ってきたようだ。

 

 

「ちょっと・・・・・進学先のね」

 

「高校の合格通知か・・・・ん?・・・・俺たちの高校の入学試験はまだのはずだが・・・・お前・・・遥・・・まさか・・・」

 

「ま、まあ・・・・兄さんとは別の高校に・・・入学試験を受けたんだ」

 

 

どうやら遥宛ての手紙は、高校入学の試験の合格通知の手紙らしい

 

だが、今は秋。真達が通う高校の入学試験はまだ先のはず、合っても正月過ぎて一月の中旬だ。だがまだ秋なのに高校受験をしていたとなるなら、間違いなく他の高校を通うのだろうと真はわかった。

 

岬の話では、以前は茜達と同じ高校に通うと言った。なのに遥は真達とは別の高校に入学するようだ。その合格通知が今来たところだ

 

真が遥がどうしても自分の通った高校に本人がそうしたいのなら構わないが、岬は間違いなく遥と一緒に高校を通いたいと思っているはずなのに、これでは岬は彼と一緒に通えない

 

合格したかはわからないが、今遥がその場で手紙を開ける

 

 

「合格したのか?」

 

「うん、合格した」

 

 

どうやら、通知は合格したらしく、遥はどこの高校かは知らないが、真達の通っている高校ではなく、別の高校へ通えるようになってしまった

 

岬は遥と共に同じ高校へ通いたいと思っているのに、勝手に別の高校へ行っていいのかと真は聞く

 

 

「いいのか?おそらくとは思うが、お前岬にこの事を言ってないだろう?」

 

「うん、いいよ。別に僕が居なくても岬は問題ないよ」

 

「そうか・・・・俺は絶対にお前が岬と離れることはできないと思っているけどな」

 

「どうして?そんなことを?」

 

 

真は、やはり遥はこの事を岬には言ってない予想は付いていた

 

だって双子だから、双子だと何か比較される所があるからと、それが嫌で遥は岬の側を離れたいのだと、双子ならではの悩みを真は理解していた。現に他に双子として生まれた修や奏でも、比較ではないが、似たような悩みを真は受けたことがあるからだ

 

決して魔法だから、遥の考えがわかるわけではない

 

そして遥に、岬とは絶対に離れることはできないと言う真、その理由は

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、岬の事が好きだから」

 

「な!?」

 

 

 

 

真はハッキリとそう言う。

 

そんなことを遥が言うとは思えないが、真は何も隠さずにそうハッキリと言った。大人しい彼がそんなことを考えているとは思えないが、双子でもこんなことは珍しくない。況してや同性ではなく、男女の双子なら、世間でもそうかはわからないが、少なくとも真の眼にそう写る

 

もちろん、そんな恥ずかしいことを納得のいかない遥は真に理由を聞く

 

 

「なんで僕が岬のことが好きだって言うの?」

 

「お前は岬のためならなんだってやった。比較されるようなことはあるが、それでも岬の目的やしたい事を全力で協力した。そうでもしてやるなら、彼女のことを好きであること以外他にないだろう?それとも嫌いか?」

 

「嫌いじゃないけど、だけど・・・比較されるのは嫌だ」

 

「ああ、やはりそれは気にしていたんだな?」

 

「まあね、岬の分身の中で一番ダメとか言われるし・・・・」

 

「今もか?」

 

「今は・・・・そんなことを言われないけど・・・」

 

「そうか・・・・お前がどうしても別の高校に行きたいなら、好きにすればいい。俺は別に何も言う気はない」

 

「兄さん。見ない内に厳しい気もするし、なんか冷たいことを言うようになったよね?」

 

「厳しいや冷たいにしても、そこまでは俺が口出しする権利はない。相談に乗って貰う気もないだろう?お前はなんでも自分が悩んでいることは自分で解決する。今までもそうしてきたはずだ。今まで家族のことであまり口出ししないお前が、いざ俺に何か言われると、そんな反応するんだな、お前は?」

 

「兄さんは・・・・物凄く現実味のあることを言うから・・・・でもあるからな」

 

 

遥は大人しい性格でもあるから

 

あまり家族のことで口出しはしない。それは他の兄妹が悩んでいるのにも関わらず、相談に乗ってあげたりなど、あまり人と関わりを持たない所がある。おそらく面倒事は避けるようにしているからもあるかもしれない

 

遥の性格がわかる真においては、そこまで詮索しなくてもわかるようだ。本当でなくても兄だからわかるのだろう

 

でも、好きにすればいいと、何も言えない。本人が望んだ道に口出しする権利は、流石に兄でもある自分でも真は邪魔できない

 

 

これだけ伝える

 

 

「なんだっていいが、お前は本当に、岬とは別の高校行っても後悔はしないんだな?」

 

「え?・・・・ま、まあ・・・」

 

「じゃあ、あいつに彼氏ができて、もうお前とは一緒に居られなくても我慢できるかのか?」

 

「え!?そんなこと・・・・あり得ないよ・・・あの岬だし・・・・」

 

「そんなのわからないぞ?それともなんだ?能力で予知したのか?岬に彼氏なんてできないと、高校ではそういう出会いはいくらでもある。王族であっても、もしそんなことになってもお前は我慢できるのか?」

 

「で・・・できるよ!僕は・・・できる。僕と一緒じゃなくても・・・・」

 

「お前は一人になっても平気で居られるか?別の高校で岬が居ない高校で一人になっても大丈夫か?俺が何度もお前にこんなことを言うが、少なくとも俺のこの質問に恐れがある。だから後悔しない内に、この事を岬に言え。岬はお前が困った時、助けてくれるはずだ。絶対に」

 

「なんで・・・岬に・・・・」

 

「もう俺はお前のために伝えたい事を全部言った。でもお前は自分の存在が認めて貰えないからと、俺のこの言葉も聞く耳持たず、岬の側を離れて別の高校を進もうとしている。でもその結末が、『とんでもない悲しみ』の『未来が見える』からと、少なくともお前は自分を余計苦しくするだけだと、俺もこの先の『お前の未来』が見える」

 

「え!?もしかして・・・魔法??」

 

「まあな」

 

 

真は、遥に説得をするように、別の高校へは行くべきでは無いと助言する

 

変な魔法書を読んだせいで、『未来が見える魔法眼』を彼は手にした

 

その名は『フューチャー・アイズ』

 

そんな先までは見えないが、少なくとも遥の『悪い未来』を彼は見た。全てでは無い。フューチャー・アイズは悪い未来を直視する魔法。そんななんでもありな魔法を彼は見て、遥にその道を行くべきではないと助言する

 

でも、彼は信じない。信じるはずがない。遥の確率とは別物。でも、真は岬に相談をしてから、これからどうするか、まだ秋であるため時間はあると、よく話してから決めろと言う

 

 

「じゃあ・・・教えてくれてもいい?僕が別の高校を行ったら、未来を先に知るのは良くない事だけど」

 

「そうだな、これはあくまで悪い未来しか見えないから、いいかもしれないな」

 

 

遥は、その魔法で未来が見えると言う真の未来の自分の姿を、教えてくれと言う

 

今になって後悔を覚えたのか、その未来が魔法で見えるのなら、知りたいと、本当はよく無いが真に聞く

 

そして、彼が答えた『遥の悪い未来』は

 

 

 

 

 

 

「校舎の中でお前の隣には誰も居なくて、ただその中で一人で悲しそうに立ち尽くした。お前の未来を見た」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

校舎の中でただ一人、彼だけが立ち尽くしている未来

 

これはおそらく、誰一人頼れる人が居なくて、誰も頼れることのない、牢獄に近い校舎の中でいつも一人で過ごしているのだと、家では元気で居る彼が、学校を行っては一気に気持ちが落ちて無表情になるどころか、王族でもあるのに、頼れる友人ができなくて、悲しんだ彼の顔が真には見えた

 

そんな『寂しい未来』が見えた

 

それを聞いて、遥は

 

 

「僕は・・・・岬が居なきゃダメなの?兄さん?」

 

「逆に、お前が居なきゃ岬もダメだけどな、お前は岬が嫌いなのか?」

 

「そうじゃないよ。でも・・・・王様になりたいって言うと、余計比較されそうになって・・・」

 

「今は無いと言ったが、昔はあったのか?」

 

「うん・・・・・小学生の時にね」

 

「小学生か・・・・まだ幼いから、そういう事を言う小学生は珍しくないがな、それがまた王様選挙で国民に比較されるかもしれないと・・・」

 

「なんか・・・怖くて・・・・」

 

 

遥だって、自分の存在をそんな底辺に扱って貰いたくない

 

岬が王様になりたい理由はまだ真でもわからないが、もしそれで岬が王様になったら、昔のように比較されて岬よりも格下だと思われる

 

遥にはとても辛い扱いだった

 

そんな事を国民が思うとは思えないが、自分の存在を認めてくれないのは確かに悲しい。

 

 

だけど

 

 

岬が本当に遥の気も知らないでそんな事をしているわけではない。

 

その理由をもしかしたらと真は感づく

 

それは

 

 

「ああ、だから岬は『髪を伸ばし始めた』のか。遥の気を遣って」

 

 

「え!?」

 

「あいつ、小学生の時はお前と同じ短髪だったが、最近になって・・・・いや・・・中学生になってから髪を伸ばし始めたんだ。あいつは髪が長いのは鬱陶しいとか言ってくせに」

 

「ま・・・・まさか・・・・」

 

 

そう、真の記憶が確かなら、岬は今まで短髪にしていた。少なくとも小学生の時までは

 

それが中学生に上がった時は、突然岬が髪を伸び始めたのだ

 

真が前にそれに関して岬に聞いたが、それ対して岬は『ちょっと遥にも見て貰いたくて』と、遥に意識のある理由だった。

 

少なくとも、悩んでいる双子の弟のために、双子の姉として、遥に何かしてあげたい理由があるのではないのかと真は思った

 

だが、本人がどういう意味でそうしたのか、もういっその事

 

 

本人に聞くようにした

 

 

「そこまで信じられないなら、聞いてみようか」

 

「え?」

 

 

「おい岬、そこに居るんだろ?リビングの扉の前で立ってないで入って来い」

 

「は!?岬!?」

 

 

「う、うん。ごめん盗み聞きするような事をして、兄さんは気付いていたんだ?」

 

「まあな」

 

 

そう言って岬がリビングの扉を開けて入ってきた

 

真と真剣に話していたせいで、岬はリビングに入ることができず、話し声も大きいのか、自分の関わる事に気づいたのか、リビングの扉の前に立って話を聞いていたようだ。

 

遥の方は、真と試験に話しているせいで、岬がリビングの前に立っていることは気付いていなかった。

 

真は人の気配には敏感なのか、数分前に岬が家に帰って来たことに気付いていた。そこで盗み聞しているから都合が良いと、とりあえず遥の本音を聞きたいために岬は必要とされるまでは、そして遥の悩みを消すには、彼女が必要だと、今だと真は彼女を呼んだ

 

 

「やっぱりそうなんだ。遥もそれで悩んでいたんだ。私なりに比較されないようにしていたんだけど、ごめんね。全然助けることができなくて」

 

「あ、いや!そんなことは!」

 

「『遥も』てことは、お前も誰にか比較されて、見下されているのか?」

 

「まあね、だって私は遥が居ないと何もできないもん」

 

「っ!?」

 

 

岬だって悩んでいた。しかも遥の悩みより辛い。

 

岬は頭は良くないから、行動力があってもどう動いたらいいか分からない。いつも遥の知恵を借りて動けたから、遥よりも輝いていただけ、だから自分も変わろうとするために、髪を伸ばして遥よりも凄いと、本人に認めて欲しかった

 

更に

 

 

「じゃあお前が王様になる理由は?」

 

「お姉ちゃん達よりも凄ければ、遥に認めて貰えると思っていたからだ」

 

「だそうだ。なんだかお前達が双子だけのことはある。悩みが同じな時点でな」

 

「そうかもしれないね」

 

「二人で王様目指して、国民に知らしめたらいいんじゃないか?」

 

「「え!?」」

 

「国民に教えてやれ、『僕たち姉弟はダメなんじゃない』と、王様になって変えろ」

 

 

国民を信じない言い方ではあるが、

 

それでも真は二人のために、世界に知らしめればいい。自分たちは決してダメな存在じゃないと。世界に知らしめるために王様になればいい

 

今この二人の悩みを解決するにはこれしかない

 

 

「なれるかな?私たちで?」

 

「諦めるのか?お前達が揃えば、俺は茜と奏にも勝てると思うけどな。二人のお互いのダメなところをカバーしながらな」

 

「やろうよ。岬」

 

「遥!?」

 

「僕・・・・岬と一緒ならやれる感じがするんだ」

 

 

遥は真の提案に乗り。今から選挙活動をして、自分たちが決してダメではないと知らしめる

 

存在を認めて貰うために、二人でならできるはずだと、頭で考える彼が珍しく『根性論』で勝負しようとする

 

遥が岬となら、怖くないと、ここから王様選挙に全力を賭けようとする

 

その遥の提案に岬は・・・・

 

 

「私たちに、お姉ちゃん達よりもできるかな?」

 

「僕がカバーする。一緒に頑張ってやろう。僕は兄さんの提案を信じてやってみせる。岬は?」

 

「私は・・・・・・」

 

「やってみれば?」

「できるよ」

「私・・手伝う」

「やる」

「遥も居るんだから大丈夫ですよ」

「私たちの力、出してみよう」

 

「みんな」

 

「お前の分身もやる気十分だ。どうする?」

 

「岬。やろう?」

 

 

「・・・・・・うん!!私!遥と一緒に王様になりたい!!!」

 

 

こうして、世界や国民にも、自分たちでもできるんだと言う。世界に存在を認めて貰うために

 

本格的に岬と遥が王様選挙活動に入る

 

となれば、上位である茜や奏や葵に勝たなければならないが、それでも負けないと、あの冷静な遥でさえやる気になっている

 

ならば

 

 

「遥、ならもうこれは要らないな?」

 

「あ!?それ、遥の合格通知!?」

 

「うん、いいよ。兄さんありがとう。僕に見失ったものを気づかせてくれて」

 

「別に構わないさ、もう弟の迷いが消えたようで何よりだしな。じゃあもうお前は・・・」

 

「うん、僕は岬と一緒に兄さんの高校に行きたい」

 

「遥・・・・・」

 

「ま、まあ・・・・僕が居ないとダメだしな」

 

「うう!!遥あああああああああああ!!!」

 

「うわ!?抱きつかないで岬!うわあ!?他の分身も僕に抱きつかないで!!ほら!王様選挙の活動を考えるよ!」

 

 

そんな騒ぎを聞いて、真は静かにリビングを出た。

 

遥の別の高校の合格通知は、右手に握り潰して燃やして灰を残さず消す。これで岬と遥の悩みは解決した。この先王様選挙で叶うかは分からないが、あの二人の絆を信じて、これ以上は何もしないで置こうと、真はもう自分は必要ないと出ていった

 

 

これであの二人の悩みは消えた

 

 

だが

 

 

それでも真の仕事は終わらない

 

真の仕事は、選挙活動は降りている。実はもう一人降りている弟妹も居るのだが、その弟妹にも悩みがあるのだと、真は魔法で感知した。

 

あと三人。どうしても悩みを持つ者がいる

 

魔法使いとして解決できるかは分からないが、あと選挙活動まで猶予はない。それまでにしっかりと『答え』ができるようにしてあげたいと

 

彼は次の悩みを解決しに向かう

 


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