それからしばらくしてからの事だった。須賀京太郎は病室にいた。自分が思っていた以上に体にガタが来ていたということだった。あれから自問自答を繰り返しているうちに自分の決定が間違っているということに気がついた。
清澄の部員ら何も考えているところはないが、あの
――あの時、『誰?』なんて言わなきゃよかった。でもすぐ来る別れを経験させたくなんかない。じゃあどうすればよかった?――
こうして独りになって色々と考えていると、自分のことなのにどこか他人行儀で思考を巡らせている時間が多かった。
両親には、やっと本当の事を告げることができた。その時には母親には号泣され、父親からは少し本気のゲンコツをもらった。けれど、仕事先から一時帰宅して俺の事を見守ってくれるって言ってくれた。かなり嬉しい。
「俺って愛されているんだな・・・・・・」
何て両親の前で呟いたら、きょとんとした表情を浮かべたあと・・・。
「何言ってるんだ?家族だろ?」
「そうよ、親が子供を愛さなくてなんになるの?」
って・・・・・・。一度は捨てかけたもの、両手ですくった砂が溢れるかのように、そしてそれをただ見るだけで諦めかけていたのに、最期まで見守っててくれるとは。何と言う家族愛なのだろうか・・・。
数ヶ月の命なんて言われていたが、それは少し早かったようだ。麻雀の全国大会がテレビを通して、報道されているがそれを横目で見ながら荒い息を繰り返していた。
――もう長くないのだろう――。
呼吸器が外せなくなった、ナースコールは手の届くところに置かれている。いや俺には力がなくなったから
医者はストレスが一つの原因だろうと仮説を唱えていた。だったら麻雀?って思う自分がいたけれど、それは考えないようにしている。
――だって捨てたとしても一時期は部員だったんだぜ?――
少し眠っていたのかな。ふと目を開けてみると、心配そうに見つめてくる愛する両親がそこにいた。そして俺の脈拍を計っているお医者さんの姿も。
『付けておいてくれ』と頼んでいたテレビからは、ひっきりなしに麻雀の大会の様子がうっすらと聞こえてきていた。
――
病弱なイメージを持っていながらも強い打ち手だった。あの時どうして振り切ってしまったのかな。きっとそれは、自分の弱さを露呈するのが嫌だったからだろうか。もっと別の道を歩むことができたはず・・・。
「父さん、母さん?そばにいる?」
「ああ、二人ともここにいるぞ・・・っ」
「ええ、ちゃんといるわ・・・」
両親の温かな声を聞きながら、この頃続いている鈍痛は和らぐのを感じていた。両親がいる日だけは痛み止めの点滴が弱いのに変えられているらしいが、それは本人に分からなかった。
――ねぇ、竜華に怜?今度会った時は・・・ちゃん・・・と言いたい・・・なぁ・・・。もう少しマシな人生・・・・・・送れたかも・・・しれないのに・・・・・・――。
――ねぇ・・・父さん、母さん。ありがとう。疲れたから・・・・・・少しだけ・・・目ぇ瞑っても良いか・・・な?――
―――あぁ、お休み。ゆっくり眠るんだよ―――。
―――お休み、京ちゃん。ゆっくり、ゆっくりお休みなさいな・・・―――。
須賀京太郎。永眠ス。
これで一つの終わりです。さぁ明日はAM4:00から仕事だぞっと・・・。
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