須賀京太郎の悲劇   作:泡泡

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 私は千里山のキャラが好きです。嫌いな訳ありません!オブラートに包んだつもりですが批判は受け止めます。

 バッドから入ったのはビターから入ってバッドに落とされるよりもバッドを書き終えてビターを書いたほうが自分のモチベーションにも影響するかなと思っての事です。


バッドエンドルート
相反する想い


 

 やはり声をかけてきたかと思いつつも、どう接するべきか悩んだ。ここで親しくすることも多分できる。それも一つの手段だ。それでも俺の残り少ない時間の中、二人に苦痛を味わわせるのも嫌だ。・・・そんな思いをするのは俺だけで充分だ。だから先に謝っておく。

 

 

 ――ごめんなぁ――

 

 

 「誰・・・?」

 

 「「っ・・・・・・」」

 

 振り返りつつも、冷酷で一番暗い表情を出したつもりだ。その甲斐あって二人は俺の顔を見た瞬間、固まった。それはそれは、何かとんでもないものを見つめたかのように・・・。

 

 「・・・声をかけておいてだんまりか?俺に用事がないなら失礼させてもらうよ?」

 

 そう言って向き直り、駐車場へと向かう。

 

 「ま、待って・・・」

 

 それで終わらないのが、園城寺だ。何かを言いたそうに両手を胸の前でしっかりと握りしめて口を閉じては締め・・・の繰り返しをしていた。

 

 『はぁ・・・ここまで冷たくされたんだから放っておいてくれよ。どこかで引き際を考えないで近づくと、心を痛めるのはお前自身だ』

 

 「ふん・・・まだ何かご用ですか?」

 

 本心を隠して大きな溜息を付きながら、いかにも煩わしいと言わんばかりに首だけ彼女らの方向に動かして、返事する。

 

 「っ・・・」

 

 園城寺は涙を堪えきれずにいたのか、つぅっと一筋頬に垂れた。これには俺自身も罪悪感で一杯になった。『ごめん、嘘だよ。あぁ泣かせちゃったね、一つだけ願いを聞いてあげるよ』なんて言いたかった。が、それでも演技を続けなきゃいけないんだ。上手く・・・上手く演じ切らない(騙し続けない)と・・・・・・。

 

 「ちょ、ちょっとアンタっ。そんな言い方無いでしょ!!」

 

 竜華(りゅうか)がやはり詰め寄ってきた。俺の腕を掴み、目と目を合わせてどうにかして謝らせようと躍起になっているようだ。それとも自分も拒否されたのがそんなに不安なのか。

 

 「アンタも(なん)だ?俺はアンタらなんか知らんと言った。まぁ少しは乱暴な言い方だったかもしれないがそれでも掴みかかってきたのは理解に苦しむ・・・」

 

 それすら許さない冷酷な言い方を作って一瞥(いちべつ)した。

 

 「ひっ・・・。ご、ごめんなさい。そんなつもりは無かったの」

 

 その表情を見てやっと竜華も俺から目を逸らした。怯えているのかイントネーションが入っている言葉ではなく標準語になっていた。

 

 「も、もう・・・えぇよ。うちの勘違いみたいやったし・・・・・・。ごめんなさい、うちの勘違いやったみたいです」

 

 泣きそうに・・・いや、もう完全に泣いているのか竜華の後ろに守られるようにして、立っていた(とき)が本当に申し訳なさそうに謝ってきた。震える声ともって・・・。

 

 

   ――ごめん、二人とも――

 

 

 それを聞いて竜華も掴んでいた手を離して、力無く項垂(うなだ)れた。

 

 「そうですか・・・。では失礼します」

 

 少し冷たくしすぎただろうか、フォローっぽいことでも入れておくか・・・。竜華の元から去る時に一言かけておこうか。

 

 「(聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で)ごめん・・・・・・」

 

 「えっ・・・?」

 

 一瞬固まった竜華の横を過ぎて今度こそ後ろを振り向くことなく、駐車場に停まっている東京行きの都市間バスを目指した。

 

 さっき告げた言葉に対して、戸惑っている事が息を飲む音で分かる。あんなに冷たくあたっていたのにどうして・・・?とか思っているんだろう。その答えはいずれ分かるさ。

 

 でも今は・・・。このまま去らせておくれ。それが俺が今出来る最大限の事なんだから。他に道はあったのかもしれない、それでもこの時は考えるのを止めていたんだ。

 

 

 ――もう、俺には断崖絶壁しか残されていない――

 

 

 ブレーキの壊れた一方通行の列車に乗り込んで、断崖絶壁から落ちるしか道は残されていないんだ。って自分で自分を間違った仕方で擁護していた。




 悪役にはなりきれない主人公、須賀京太郎の心の声でした。

 タイトルは【あいはんする想い】意味は分かりやすく言い換えるなら“あべこべ”、“言葉と行動が一致していない”と言う意味があります。

 

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