須賀京太郎の悲劇   作:泡泡

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 登場する記者は架空の記者です。この作品だけの記者です。

 2014/7/16彼の髪の毛に関する記述の変更を加筆。


取材

 

 ――千里山高校に男子が転入!!しかも麻雀部特別顧問に・・・――

 

 その真相を知るべく一人の記者がそのもとを訪ねた。これはその話の全容である。

 

 「今日はお忙しい中取材に応じて下さりありがとうございます」

 

 この取材に応じてくれたのは最近とある地方の方で人知れず話題になっている青年だった。そのことについては後ほどこの青年に聞いておこうと思う。それにしても写真で見たのとは髪の毛の色とか違うんだな・・・。そこらへんも聞いておこう。

 

 「いえいえ、段々と噂されている中でしたから来るだろうなとは思ってましたよ。それで聞きたいことがあればなんでもおっしゃってくださいね」

 

 「はい、では――。ICレコーダーのスイッチを入れて・・・と。よしオッケー。では最初に」

 

 「質問されるところ申し訳ないのですが、スイッチ入れてませんよ。ほらここが赤く点滅してないでしょ。記者さんは機械系は苦手ですか?」

 

 「うわっ、まただ・・・。はいお恥ずかしながら、あまり得意じゃないみたいです。昔のようにメモをその場で取ることが多いせいか。すみませんね、ここからですね。改めて最初の質問です。この千里山高校に入られた経緯をできるだけ詳しくお願いします」

 

 記者のおっちょこちょいが作動し、あと少しの状態で今回の取材が非公開の物になってしまいそうになっていた。

 

 「まずは自分自身の状況をお話します。大病を患ってしまって入院している時にずっとそばにいてくれたのがあの二人だったんです」

 

 そう言って少し離れたところから心配そうにこちらを見ている二人に手を振る。その様子を見てホッとしたように他のメンバーと世間話に戻る。

 

 「なるほど・・・。ちなみにどのような病気だったんですか?」

 

 「そこは・・・申し訳ないのですがぼかしておいて下さい。自分としてもギリギリの状況で明日の太陽を見ることができるか、できないかの瀬戸際だったので・・・」

 

 「分かりました。それで続きはどうなったんですか?」

 

 「ええ、茶化すわけではありませんが結婚する時の誓いの言葉に『健やかな時も病めるときも共に・・・』何て言う言葉がありますがその言葉を実現してくれたんです」

 

 「つまり?」

 

 記者がずずずっと身を乗り出す。ICレコーダーが男子の口元に当てられ、一言も聞き逃さないようにされる。

 

 「・・・(苦笑)普通、健康なときには一緒に居やすいものですが病気・・・この場合は重病でしょうか、対象者が段々と死に近づいていると見ていられないと言う理由でそこから去る人も多いと思うんです、一般的に考えて・・・」

 

 「そうですね、私もそう思います。しかし彼女たちはあなたと一緒に片時も離れなかった。そのように理解すればよろしいですね?」

 

 「はい、その後も自分の横に目をやると二人がいる・・・。そんな幸せな時間を過ごすことができたので退院後は何かお礼をしたいと思ってました。勿論、二人はそんなことを要求すらしませんでしたが。でも俺自身が何かの手伝いをしたいと強く思い、それだったら・・・と千里山の麻雀顧問が共学に向けてのテスト生として転入するのはどうだろうかと勧められました」

 

 「なるほど・・・。しかしそれだと特別顧問と言う肩書きは付けられていませんね。千里山高校はインターハイでも上位に名を連ねるほどの名門校なのでどういった経緯でその肩書きに・・・?」

 

 「ええ、リハビリと銘打ち麻雀を始めたのがきっかけでした。あれよあれよという間に顧問が気付かなかった彼女らの欠点を見抜き、運以上のものが絡むとはいえ連勝してしまったのですから」

 

 「・・・・・・(パクパク)」

 

 記者の開いた口が塞がらなかった。試しに少し離れたところにいる千里山高校のメンバーにどうなのかと目線を送ってみると、恥ずかしそうに頷いた。

 

 「一度目は“うっかりしていた”二度目は“た、たまたまだし!!”三度目は“・・・・・・”と三度目の正直と言う言葉は当てはまらないでしょうが、そうなったんです。日を改めて行ないましたが結果は変わることなし・・・。顧問の口も記者さんのように塞がらない状態でした。俺自身にも何が何だかさっぱりですよ。無我夢中で対戦したら・・・って書いててください(苦笑)」

 

 「ま、まぁ一つの謎のようなものはあらかた明らかになりました。しかしこう・・・千里山高校って言うのはあなたを除けば皆、女子ですよね。麻雀とはかけ離れていますが大丈夫ですか?男性と女性の付き合いというのでしょうか、難しいさを感じるようなことはありませんでしたか?」

 

 「えっと・・・そうですね・・・・・・」

 

 彼は虚空を見、それから数秒の間何かを考えるように目をつぶった。そして口を開いた。

 

 「ぜんぜーん。そんなこと考えたことありませんね。記者さんのご期待に添えなくて申し訳ないですが・・・」

 

 「と言うと・・・?」

 

 「ほら、こっち見てる二人がいつもとなりにいたので牽制のような感じで遠巻きに眺めているだけと言うか。それでも何度かは告白を受けましたが、自分自身のモヤモヤした感情をどう制御していいのか分からない内に付き合うって言うのもどっちつかずでイヤだったので全て断りました」

 

 「紳士ですねぇ。私でしたら付き合ってから決めても良いのでは・・・と思ってしまってました。あなたは麻雀だけでなく男女の関係もしっかりしているんですね。よく分かりました」

 

 「あはははは・・・。(これから大変な決定が待ち受けていますが・・・ね)」

 

 記者はICレコーダーのスイッチを切ろうとして、ふと思い出したかのように質問をしてきた。

 

 「あぁ、それとこれは私があなたの元を訪ねようとした時にとある高校の麻雀部員たちからあなたに尋ねてもらいたいと言われてきたことなんですが・・・」

 

 「えぇ、どうぞお話ください」

 

 「とある高校と言うのは長野に所在する清澄と言う高校なんですが・・・」

 

 「清澄・・・。はぁ」

 

 「ご存知ないですか?全国大会にも出場したんですが・・・」

 

 「名前だけなら知っていますが。一応全ての高校には目を通していますから・・・。部員はギリギリ5人のうち(千里山)と比べたら少ないですが力を見るに侮れない高校の一つですね。知っていることといえばそのぐらいでしょうか。記者さんは何が聞きたいのですか?」

 

 記者は自分の持ってきたカバンから一枚の写真を出す。髪の毛は金髪であることを除けば、どこにでもいそうな青年の写真だった。

 

 「これを見ていただけますか?」

 

 「はい・・・」

 

 彼は記者から写真を受け取り、それからテーブルの上に乗せる。

 

 「いかがでしょう」

 

 「見覚えがありませんが、髪の毛の色や痩せているなどの点を除けば自分に似ている・・・かな。ただそれだけですが・・・」

 

 「ええ、私は清澄高校と面識がありましてここに来る前に取材をしてきたんです。向こうで一番多かったときつまり6人いた時の写真を見せてもらったのですが、そこにあなたに少し似ている少年の姿があったんです」

 

 「なるほど・・・。自分と比べて頬の部分が痩せていることや、写真の人物は金髪な出で立ちですが、自分は銀髪ですね。これは手術後に色素が薄くなったのとそれを隠すために彼女らによってイメチェンしてもらったのが理由となります」

 

 「そうですか・・・。勿論、千里山にいるあなたの事も違う雑誌で見ておりその後、記憶に新しい中で清澄に取材で訪れたとき、先ほどの似ている少年の写真を見たんです。それで清澄の部員に、千里山にいるあなたの写真と清澄の写真と比べて見せたところこう言っては不謹慎ですが面白い反応が返ってきました」

 

 「聞きましょう」

 

 「絶句後、詰め寄られました。部長を勤めている女子生徒は支離滅裂な事を呟き、ショートカットの女子生徒はその場にしゃがみこんで泣き出し、他の3人は呆然自失としていました。あなたは清澄と一体何の関係があるのですか?彼女らに酷いことをしたんですか?」

 

 「しかし見方を変えると違う考えもできますね?」

 

 「・・・と、言うと?」

 

 「ええ、“こちらが・・・”ではなく“向こうが・・・”何かをしでかした、とね。まぁこれは一般論ですからどちらが何をしたのかと言うのは重要ではないはずです」 

 

 「極論ですがそうかもしれません。ではあなたとしては清澄高校とは何の接点もないし、彼女らと面識もないのでそのような感情を示されても理解しがたし・・・のような結論でよろしいのでしょうか?」

 

 「申し訳ないですが、その通りですね。記者さんには面倒をかける形になるかとは思いますが、清澄の方たちにそのように伝えてもらっても構わないでしょうか?」

 

 「ええ、そのように伝えます。しかし謎・・・ですね。無反応のような感情であればそれはそれでここまで私も聞こうと思いませんし、激しい感情をあらわにするとは・・・いやはや分からないことだらけです。・・・最後にお尋ねします。あなたは男子個人戦にこれから出るようなことは計画されていますか?」

 

 少し疲れた表情を浮かべる彼に最後の質問をしてみる。

 

 「そうですね、それも一つの考えですね。彼女らに助けてもらったからそれを麻雀という形で返す・・・と言うのも手かもしれません。ただ千里山の彼女らといる事が幸せすぎて考えにくいというのも現状でしょうか」

 

 記者は『なるほど』と相槌を打って、座っているソファーから少し離れたところにいる彼女らの顔を覗き見ると真っ赤になっていた。

 

 「今日は取材に応じて下さりありがとうございます。おかげで実り多い取材にすることができました。取材の内容はまとめた後、雑誌という形を取ってお送り致します。楽しみに待っていてください」

 

 「ええ、こちらこそ。楽しかったですよ。たまに自分の体験を思い出すと良いものですね。(それでも清澄と言ったか。その高校だけは要注意しておかないと・・・)」

 

 何度も何度もお辞儀をして、その記者は自分の前から去っていった。するとすぐに彼女らが走り寄ってきた。

 

 「大丈夫なん?」

 

 「疲れてない?」

 

 「あぁ、大丈夫だよ。そんなに疲れてもいないし・・・。気遣ってくれてありがとう」

 

 二人の気遣いに感謝するべく、いつものように頭を撫でる。段々とその撫でている手に力が入りワシャワシャとキレイにセットされている髪型をぐしゃぐしゃにしてしまうのもいつもの事だ。

 

 『はぅ』とか『うにゃぁ』と言う声が撫でる手の下から聞こえてきて、それを遠目で見たほかの部員がニヤニヤした眼差しを送るのもいつもの事だ。




 少しずつ書かないと忘れてしまうものですね。
 
 さて、加筆後になってしまいますが、このまま彼の名前は出ないままです。理由はめんdゴホンゴホン・・・最後になってから名前が出るのも何だかなぁ―と・・・。

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