須賀京太郎の悲劇   作:泡泡

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 曖昧さ、ちぐはぐさなどが存在すると思われますがこの作品自体崩壊してますから・・・。突っ込みたい?我慢してください。読みたくない?読まなくていいです。これは作者自身の妄想を元に書いている作品ですから


戸惑い

 

 あれから数週間後、やっと容体が落ち着いたので一般病棟に移ることが出来た。だがそれでも傷口が大きかったせいで病む時も多々あった。今日は主治医から大切な話があるそうで…。

 

 

 自分としてはあの時、ガラス越しに見た彼女らも来そうな予感を持っていた。

 

 

『彼女らはどうして泣きそうな表情をしていたのだろうか?その事を考えると急に心の奥が痛むのはどうして…?これは俺の記憶が関係しているのか?あぁ駄目だ、どうしてもこの問題の答えが出てこない』

 

 

 いつまで経ってもその答えは得られそうになかった。

 

 

 薄味の病院食を朝、昼と食べ終えてから面会の時間がやって来た。自分がいる病室は個室でなおかつ離れているため誰かがここにやって来る場合、その足音には気づきやすい。

 

 

 コツコツと革靴特有の固い音が今日は三つした。どうやら例の少女らも一緒であると思われる。ドアをノックする音が聞こえてきたのでどうぞと答える。すると一拍置いてから引き戸が開かれた。

 

 

 主治医を先頭にして二人の少女が病室に入ってくる。その様子は自分が覚えている限りよく見かけているが、今日も俯きつつ元気の無い様子だ。何かに悲嘆していることは間違いなさそうだった。

 

 

 「やぁ、調子はどうだい?少しは元気になってきただろうか?」

 

 

 先生の軽やかな声が聞こえてきたので、深い思考を止めて自分の正面に意識を向ける。

 

 

 「ええ、ICU(集中治療室)にいた時よりは大分元気になりましたよ。ところで今日はどんな用件です?」

 

 

 「「っ!!」」

 

 

 と言った途端彼女らの表情が一気に崩れるのを視界の片隅で眺めながら、そちらのほうを向かないようにし主治医の答えに細心の注意を払う。

 

 

 「うぅむ…。今日は君宛に届いているノートを見せようと思ってだね。(この様子だと…)」

 

 「ん?先生何か言いましたか?」

 

 小声で何かを呟いていたようだったがそれは聞こえなかったので聞き返した。先生は何でもないと言わんばかりに首を左右に振った。そしてそれ自体が赤い色をしたノートを見せたのは、顔面蒼白の彼女らの一人だった。

 

 「うん?これを俺に?」

 

 「そや・・・。見たってな」

 

 言葉少なめにそう言って、ベッドに備え付けられている可動式の机の上にポンと置いた。意味が分からず二人のほうを見るがこちらと顔を合わせたくない様子。困って主治医のほうを向くと肩をすくめて、やれやれと言う仕草をする。

 

 「君は覚えていないだろうが、それは君が書いたこれからの事だ。そして彼女らは君にとってのキーパーソンになる存在だ。今は感情の整理がつかないだろうからこれで失礼するよ。そのノートをゆっくり時間をかけて読むといい」

 

 そう言うと俯いたままの二人の肩に手をやり、病室をあとにしようとする。そして思い出したかのようにそれでいて聞こえるか聞こえないかぐらいで呟く。

 

 「君は・・・いいねぇ。とてもとても好かれていて・・・。覚えていないだろうが(から)と君は最初言ったが満たされているじゃないの。・・・ちゃんとそれ読むんだよ」

 

 『読むんだよ』だけは強調して言ったので聞こえた。だが『いいねぇ』の続きはどうしても聞こえなかった。今はそれでいい。三人が去っていった病室は無音で覆われていた。

 

 「こ、これを俺が書いた?」

 

 震える手で可動式の机の上に置かれたノートに手を伸ばす。どうしてか手が震える。何かを本能が察知しているのか。それとも記憶を失う前の自分がこのノートにとんでもないことを書いたのか。それすらわからないが意を決してノートを開くことにした。そうでないと俯いたままの彼女らを悲しませることになるだろうから・・・。

 

 

 ~赤いノート~

 

 これを開いて読んでいるということは俺は記憶を失ったんだな。ははは、せんせーから聞いていたけれどもこうして自分がなってみるとホントどうしていいかわからないな。これを持ってきた彼女は悲しんでいただろ?

 

 ――あぁ、そうさ。悲しんでいたさ――

 

 悲しんでいることに気づいているならそれでいい。それにすら気づいていないなら俺が書いた最後のページだけを読むことを薦めるよ。・・・そうならないことを期待しているが、な。

 

 ――大丈夫だ――

 

 このまま読みすすめると分かるが彼女らは、俺にとって唯一と言っても過言ではないほどの存在だ。さてと、支障がないぐらいの情報をここに記しておこう。俺の名前は・・・知らないならそれで構わない。せんせーがどうにかしてくれる。

 

 ――いいのか?――

 

 最初は楽しんでやっていた麻雀があった。あまり知られていない高校に存在していた麻雀のクラブだ。少なかったが心から楽しんでいた時期があった。だがそれが全国大会なんて行けるようになってから一変した。

 

 ――麻雀・・・?――

 

 俺だけ取り残されている感じがしていた。だけどそれはただの思い込みだなんて思ってた。それでも現実は辛すぎた。周囲からのいわれのない圧力や陰口。それに耐え切れたのは部員のおかげだと思い込んでいた。

 

 だけどそれは幻想だった。いてもいなくてもどうでもいい、そんな存在。麻雀卓を囲んでいる部員から買い出し要員へと変わっていった。そんな時に頭痛が襲った。今日乗り切ったら明日は休み。病院へ行こう・・・。でもそれは遅かったみたいだ。病院で告げられたのは余命いくばくもない診断。原因不明だってさ。空元気しか出なかったよ。

 

 それから俺は麻雀をやめ、学校を辞め闘病生活へと移った。そこで出会ったのが彼女らだったんだが、それを覚えていないんだよなぁ。まあいいさ、彼女らは君に『これから思い出を作っていけばいいよ!!』的な何かを言ったと思う。それに乗っかっちゃえよ。

 

 ――それでいいのか?――

 

 最初は戸惑うこともあるけれども、ここから始まることもあるだろうさ。いや、ある!!病気のことを告げられて少し自暴自棄になっていた俺を救ってくれた彼女らだから、これからどんなことがあろうとも乗り越えていけるさ。なぁに大丈夫、俺と彼女らに乗り越えられない壁なんてない!!

 

 ――はは、失う前の俺って・・・――

 

 ~赤いノート~

 

 

 目を通してみたが『できるさ!!』や『頑張れ!!』『乗り越えられる!!』など元気が出る言葉が綴られていた。その反面これからどうしていいかふと疑問に思うこともあった。

 

 彼女らが見てきたのは記憶を失う前の俺。一旦リセットしてどう付き合えばいいのだろうか?俺のほうは何もかもが新鮮な内容。だが彼女らにとってもう一度経験する事柄も含まれているだろう。接し方、話し方、行動の仕方など考えればキリが無かった。

 

 「俺はどうすればいいのか?ドウセダッタラ、イッソコノママ・・・っ」

 

 一瞬でも考えたことを振り払うかのように頭を振る・・・事はせずに自身の頬を強めに抓った。そういう考えは無しにしたかったからだ。

 

 「それよりも彼女らと会話しないと。新俺になってからのファーストコンタクトになるのかな」





 最後のページ

 『今すぐ誰にも会わずに非常階段を下り、駐車場に停めてある黒いクラウンに乗れ。そこに乗っている彼が全てを把握している。待ち時間は15:00~16:00の間だ。』

 いわゆる全てを捨てて夜逃げ?のようなものです。傷口?そんなの闇医者に任せればいいさ的なノリです。

 
 

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