黒い鳥と英雄   作:天乃天

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ちょっとまた忙しくなりそうなので急いで執筆。
おかしいところとかあったら修正するかも……。

まだまだアンケートは募集中ですのでよかったらどうぞ!


【追記】
警備部隊隊員Bさん、誤字報告ありがとうございます!修正しました。
ついでに文章加筆修正しました。 2016/03/28 11:40


第8話 ヴォールク

 デモンストレーションを終えてから数日が経過した。まず、香月博士を通してACの武器の弾薬の生産とアイリスから引き出したACの武装の設計図の一部を生産するように要求したところ、向こう側は了承をした。

 この世界でACの実用性は証明され、研究の第一歩を歩み出したことになる。アイリス曰く、研究が進んだところでこの世界でACを生産するには随分と先になるらしい。まぁ、当たり前かもしれないが。

 香月博士に呼ばれて博士の部屋に足を運ぶと、今日はシミュレーションを使った訓練を行うとのことですぐさまシミュレータールームに行かされた。強化装備に着替えるとシミュレーターに押し込まれ、しばらく待機を命じられた。ピアティフさんに。

 

「……いったいどゆこと?」

≪わかりませんが何か考えがあってのことなのでしょう≫

「まぁ、そうなんだろうけど……」

 

 頭にハテナマークを浮かべながら言われた通り待機する。待機していると嫌でもこのコックピットモジュール内部が目につく。モジュール内にはモニターなどがないのだ。強化装備と同じく身体に装着するヘッドセットから網膜に直接投影するシステムを採用しており、こちらの世界とは違う方向で技術が進歩しているのだなと感じる。

 

「そういえばさっきピアティフさんが言っていたコールサインってなんだ?」

≪敵に特定されぬように呼び合うコードネームの様なものです。レイヴンはクロウ1ですのでクロウ隊の1番機という意味になります≫

「なるほどな。傭兵時代ではそんなもの使ったことなかったからな」

≪必要なかったので仕方ないかと思います≫

 

 そんな話をしているとシミュレーターの外が若干騒がしくなってきた。他の団体でもきたのかなと思っていると、視界の隅にウィンドウが開き、淡いピンクのような髪の色で両サイドにリボンをつけた女性が映った。

 

≪初めまして、私は今回のCP(コマンドポスト)を務めます涼宮 遙中尉です。本日は合同シミュレーションよろしくお願いします≫

「ああ、よろしく」

 

 涼宮中尉の説明を受けながらシミュレーターが起動する。説明によるとヴァルキリーズとの合同訓練で、ヴォールクデータを使ったハイヴ突入シミュレーションをするそうだ。

 

「俺チーム戦事体数えるくらいしかやってないからチームワークなんてものないぞ……」

≪だからシミュレーションで訓練するのでは?≫

「それもそうか」

≪それに、レイヴンはドミナントなのですからこの程度造作もないと思います≫

「言ってくれるじゃないか……」

 

 ドミナント。それを利用してある兵器をなんとかしようと目論んだ策士がいた。その名前に踊らされた戦士がいた。強さを、生きる意味を求めてその境地に至った女性がいた。

 自分もドミナントとして認められた。そして最後に残った2人となった俺は同じドミナントである彼女と戦い、勝利した。そして彼女が俺に残した最後の言葉――

 

――レイヴン。その称号は、お前にこそふさわしい。

 

 彼女たちはまさしく強敵であった。その彼女たちに認められたのだ。やれないなどと弱音を吐くことは許されない。やれないではない、やるのだ。

 

≪大丈夫ですレイヴン。私もサポートします≫

 

 それに今の俺にはこんなにも頼もしい味方がいるではないか。何を不安に思うことがあったというのだ。知らないならばここで全て吸収してやる。まずはよく周りに気を配ろう。

すでに状況は開始され、ハイヴ内へと機体を進める。そしてBETAと呼ばれる人類の敵と対峙した。

 

「なんだありゃあ……ずいぶんと既視感を感じるな」

 

 どこぞの企業が開発した生物兵器にどこか似ているような気もする。裏にキサラギでもいるのかと疑いたくなる。

 それは置いておいてすでに戦闘の火蓋は切って落とされおり、周りのヴァルキリーズ機からは絶え間なく弾が吐き出されBETAを喰らい尽さんとする。だがそれ以上に脇にある道から奥から次々と湧き出てくる。正直きりがない。

 現在、まだ脱落者はおらず自機を含めて13機存在する。確か部隊での行動する際の最小単位は2機のエレメントだったと記憶を呼び起こす。ならば、今自分は余っていることになる。結局はチームワーク云々ではないかもしれないがちょうどいい。前に出て道を切り開こうではないか。それくらいやれないでレイヴンなんて名乗れない。

 

「悪いな。結局チームワークじゃねぇことするわ」

≪1人ではありません。私とレイヴンでエレメントです≫

「フッ、違いないな!」

 

 グッとフットペダルを深く踏み込み、ぐんっと機体が前へと出る。不知火の両手に持つ突撃砲で要撃級を屠りながら進む。地面を埋め尽くすほどの赤い戦車級は足場の確保のためだけの最低限だけ処理する。

 

≪ヴァルキリー・マムよりクロウ1。突出し過ぎです! 部隊に合流してください!≫

「反応炉まで行くんだろ? こんなとこで足止めてる暇なんてねぇよ。ましてやここはあいつらの巣なんだ増援が途切れることなんて期待できない。道作ってやるからついてこい!」

 

 次々と迫ってくる要撃級を屠りながら通信に返事を返す。正直いっぱいいっぱいだ。1体1体は大したことはないが、圧倒的な物量に舌を巻く。なるべく相手にしないように進んでいるが厳しいものがある。だが道を作ってやると言った豪語したのだ簡単にやられてやるわけにはいかない。こちらにも意地があるのだから――

 

 

 

 

 

 香月副指令より今日の訓練が合同のものになると言われて、どんなものになるかと思えばヴォールクデータを使用したハイヴ突入訓練だ。我々ヴァルキリーズに合流するのはたった1人の衛士。その衛士についての詳細は一切明かされていない。ウィンドウにもSOUNDONLYと表示されるだけで顔すら分からない。唯一声で男と分かるくらいだ。

 正直、戦力として当てにしていなかった。だが、急に前に出たと思えばたった1人で突き進んでいく。挙句の果てには道を作ると豪語して、それを実行している。現在は弾が切れたのか背部担架に装備していた長刀で切り進んでいる。

 

「速瀬、あいつに獲物を全てとられてしまうぞ」

≪分かってますよ大尉。あいつに頼りっきりなんて伊隅ヴァルキリーズの名がすたるってもんですよ!≫

 

 B小隊がクロウ1に続き、そのあとを支援しながら追いかける。今までの約半分の速さで中階層までくることができたことはひとえにクロウ1のおかげだろう。間違いなく、その実力はエースだ。

 だが、エースの快進撃はここまでだった。中階層に入ったあたりから敵の増援が一気に増え、部隊も少しずつのその数を減らしていく。クロウ1も長刀の切れ味がなくなり中ほどから折れている。左腕は肩から失われており、その進行速度は目に見えて落ちている。そして我々の道を作るために推進剤を使い過ぎたのか、はたまた機体トラブルかは分からないが急に飛ばなくなった彼を待っていたのは無慈悲な要撃級の一撃だった。その一撃で動かなくなった機体はすぐさま群がった戦車級の餌食となった。

 彼が前で活躍していた姿は皆を勇気づけていた。あまりにも無謀なことだと思うことをやってのけるその姿に、その技量に皆は魅せられ、これなら反応炉までいけると希望を抱いた。その彼の機体がやられてしまってからの部隊の崩壊は著しく、次第に部隊は足を止め、その数を減らし、そのままBETAに殲滅させられた。

 

 訓練が終わってクロウ1と挨拶がしたかったが、シミュレータールームに彼の姿はもうなかった。

 




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ちょっと慌ただしいけど今回はこれで。

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