黒い鳥と英雄   作:天乃天

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随分と時間を頂いてしまい申し訳ありません。

待っていてくれた方がどれだけいらっしゃるかは分かりませんが、お待たせいたしました。




最近、作業用にBGMを聞いているんですが、そのBGMがすごく中毒性のあるものでして一種の洗脳染みたことになってます。曲名はあとがきで←


第3話 おめでとう。今日から君は

 呟いた俺の声を聞き取った白衣の女性は不思議そうな顔をしていた。

 

「アリーヤ? それがあの機体の名前かしら。まあいいわ。とりあえず知っているのね」

「……何故あの機体がここに?」

「あたしが知るわけないでしょう? 気が付いたら演習場に転がっていたのよ」

「転がっていた……」

「そんなことはどうでもいいわ。で、あれはいったいなんなの? いくら調べてもブラックボックスだらけで何も分からないじゃない。むかつくわ」

 

 白衣の女性は苛立ちを隠そうともせず頭を掻きむしる。

 

「話してもいいが、その前に契約しないか? 俺は傭兵だ。報酬分の仕事はする」

「契約ぅ? あんた自分がどんな状況か分かってないの!?」

「分かってるさ。だが、俺を殺すとあれの解析はできない。できたとしても何年先なんだろうな? 技術面では俺のいた世界の方が先を進んでいるようだからな」

「っ」

「契約内容は、あんたらに俺は惜しまず協力しよう。戦闘でも、技術面でも。そのかわり衣食住とこの世界での俺の立場の確保を要求する。いつまでも捕虜はつらいからな。あんたらにとっても悪い話ではないと思うが、どうだ?」

 

 女性はきつくこちらを睨みつけた後、構えていた銃をおろした。

 

「契約成立、かな」

「言っとくけど、まだ完全に信用したわけじゃないわ。あんたの利用価値が高そうだからってだけよ」

「構わないさ。とりあえずこの手錠を外してくれないか」

「あたしは手錠の鍵なんて持ってないわよ。そんなことより、さっさとあれについて教えなさい」

 

 なんとなくそんな気はしていたが、どうやらまだしばらくはこのままらしい。とりあえず、俺のいたあの世界の兵器について説明することにした。ACという兵器について。そしてそこにあるアリーヤ、ネクストについて。

 

「そのネクストってのがあれなのよね? 汚染は大丈夫なわけ?」

「見たところ稼働状態ではないし大丈夫だとは思うが、一度コックピットまで行かせてもらってもいいか?」

「行かせるわけないじゃない。そのまま暴れられたらたまったもんじゃないわ!」

「銃を構えた状態でついてきてもらっても構わない。どのみちいつかはコックピットを開かないといけないだろう?」

「いちいちむかつくわねぇ。いいわ、その提案にのろうじゃない。少しでも変な動きしたら撃つから」

 

 彼女は俺の後ろに回り込み、俺が先導する形でコックピットまでたどり着く。ハッチを開くとシートの上に見慣れない携帯端末があった。振り返り彼女から許可を貰うと端末をシートから持ち上げる。

 

≪データの認証を開始。……認証が完了しました。初めまして、黒い鳥(レイヴン)

 

 急に端末から女性の声が聞こえてきて驚く。振り返るが、白衣の女性も知らないようで怪訝な顔をしている。

 

≪私はあなたのリンク型サポート用AIとなります。そうですね、名前は並び替えてAILS(アイリス)とでも名乗っておきましょうか。以後よろしく≫

「リンク型サポート用AI?」

≪ええ。私にできることはACのオペレーター代わりとACのシステムサポート、またメンテナンス等の技術面のサポートです≫

「……アリーヤは動くのか?」

≪いえ、動きません。コジマ粒子を必要としない代わりに膨大なG元素が必要になります。最低でもハイヴ1つ分は必要ですね。レイヴンにはまだ分からないかもしれませんがそういうことですので、期待していた香月博士には申し訳ありません≫

 

 何を言っているのかまったく分からないがそういう事らしい。香月博士と呼ばれた白衣の女性を振り返るときつい表情で「使えないわね」とつぶやいていた。

 

「じゃあなに? そのACとやらもネクストとやらも使えないわけ?」

≪浅はかな。何が使えないというのです? ACがあの程度の攻撃でやられるとでも?≫

「使えないわけではないだろうがもうAPは」

≪そんなもの欺瞞情報に決まっています。ネクストを演習場に放置し、博士に興味を持って頂いてから見知らぬ機体が来れば必ず興味を持たれます。ましてやネクストが全く解析できないならばなおさら。そして見知らぬ機体のパイロットから是が非でも情報を聞きたいはずです≫

「欺瞞情報なんてどうやって……」

≪先ほども申しあげたとおり私はリンク型サポートAIで、ACのシステムサポートもしています。その程度のことは造作もありません≫

 

 博士はあからさまに不機嫌な表情でこちらを見つめた。

 

「じゃああたしはあんたらの掌で踊らされていたわけ? このあたしが……屈辱だわ」

≪我々の目的はこの世界の救出です。その為にはあれくらいはしなければこの物語に関わることができません≫

「……いいわ、あのACは使えるわけね。とりあえず指示は出しておくから、今日はあの営倉に戻ってなさい。明日にはあんたの立場とか用意しとくわ」

 

 そう言って博士はここから離れてどこかへ行ってしまった。

 とりあえず俺はアイリスを持ち、アリーヤのコックピットハッチを閉めて下へと降りた。ここまで来たうろ覚えの道をたどるのかと考えているとこの空間の入口に立っている銃を持った兵士が営倉まで誘導してくれた。扱いは捕虜のままだったのでとても冷たくて、ほろりと涙が出そうだ。まぁ当たり前だし自業自得なんだがな。アイリスのことは博士から連絡が伝わっているのか、見逃してくれたので営倉の中でアイリスと話すことにする。

 

「向こうからの手助けはできないんじゃなかったのか?」

≪できませんよ。だからこちらから手伝える存在を作ったのです。とは言ってもあくまでサポートであり、実際に何かをするのは全てあなたです≫

「随分と俺は優遇されているな」

≪あの方に感謝するべきですね。私を作り上げ、ACやネクストをこちらに送ったのですから≫

「感謝してもしきれないよ。ただ、あいつの身が心配だけどな」

≪この世界を救出することが出来れば、神様も文句はないと思いますよ≫

「そのために俺は頑張らないといけないってわけだな」

 

 アイリスと一通り話して、俺は睡眠を取ることにした。明日から本格的に活動をすることになるのだろうし、休めるときに休んどいた方がいいからな。とりあえずはACのメンテナンスとこの世界の情勢について調べることになるだろう。もしかしたら雇い主の香月博士から別の仕事を割り振られるかもしれないが、それはその時だな。などと考えている内に、意識はまどろみの中に消えていった。

 




みなさんからいろいろ意見やアドバイスを貰って、考えて考えた結果私はこうなりました。
なんじゃこりゃなんて思った方もきっといるかと思いますが、どうか今後もお付き合いいただければと思います。
またいろいろ意見等あればお気軽にください。よろしくお願いします。


曲名は「Ever Green Family type2」です。
いやもうこれの中毒性ヤバいっすね。ゲームでも思いますけど頭にめっちゃ残るし。
ウィ!ラィ!エッヴァグリ!フォエバーハピネスメイカッドリム!

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