黒い鳥と英雄   作:天乃天

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少し遅れてしまったかな・・・申し訳ないです。
お待たせいたしました。とりあえず、続きです。


第2話 圧倒的な暴力

 つい先ほど通信で香月副指令から我々に出された命令を思い返す。

『いい? あの不明機をなんとしても生け捕りにしなさい!』

 36mmは甘んじて受けるくせに120mmはきっちりと躱すあの不明機。戦術機の半分程しかない小ささながらも、36mmでは倒せないほど強固な装甲を持っている。それだけではなく、そんな装甲を持っているのにもかかわらず戦術機に劣らない機動性。大口径のライフルやガトリングなどを保持するパワー。またその火器から放たれる火力。

 明らかに戦術機とは異なるコンセプトで造られたのであろうことは一目瞭然で、それを生け捕りにするなど至難の業である。副指令の無茶は今まででも何度かあったが、今回ばかりは無茶過ぎる。

通信の声や表情から副指令自身も難しいとは思っている様子がこちらに察せるほどに動揺しているみたいだ。無理もない。あんな兵器は誰も想定していないのだから。

 先ほど陽動が成功し大ダメージを負わせることには成功したと思われる。だが、次からは陽動は成功しないに等しく、ここからは厳しい戦いが繰り広げられることになるだろう。

 そこまで思考していると、突如として不明機の左腕がパージされた。

 

≪悪いが圧倒的な力を持って全てを破壊させてもらう。それしか能がないもんでな!≫

 

 通信から発せられた声と共に、不明機の背部に背負われていた武装が展開される。6つの剣と思わしきものが1列に展開され、その剣は武装を仕舞った不明機の右腕を囲うように円状に並びを変えた。そのままものすごい速さで回転を始めた。

回転を始める際にチラッと確認できたが、あれは剣ではなくチェーンソーだ。刃の部分も回転をしており、触れた瞬間に粉微塵にされるであろうことが容易に想像できる。

 

≪大尉! あれはまずいですよ!≫

「くっ、全機距離をとれ! 決して近づくなよ!」

 

 120mmは弾数が少ないため心もとないが、あれに近づくことは自殺に等しいと理解できる。少しでも削れればと36mmをばらまきつつ後退する。

 

≪なっ、はや……≫

 

 火花を散らしながら突き進む不明機は、直線的な軌道ではあるものの先ほどよりも速い。なんとか回避に成功した部下の後ろにいた撃震がまきこまれ左腕、左脚を粉々に砕かれていた。

 脚部でブレーキをかけてクルッと180°回転した不明機は再びドリルのように高速回転するチェーンソーを片手に携え、こちらに複雑な機動で接近してくる。

予測される軌道上に120mmを数発放っておきながら後退を繰り返す。それしかできないことに歯痒い思いしながら、先ほどからばらまいている36mmが少しでもあの不明機の装甲を削っていることを信じて。

 

 

 

 

 

 的確な軌道予測で口径の大きな火器がこちらの軌道上に放たれ、その度に軌道の変更をしていると近づくことはかなわない。かといって今のAPでは無理をして突き進むのもはばかれる。よくできた部隊だと思う。どこぞの警備部隊とは違うな。

 最初の混合部隊はあらかた戦闘不能にはしたが、この部隊はどうにも削れない。ここにきて先ほどの陽動による集中砲火が響いてきている。敵の攻撃はACの装甲には大したことはないのだが、塵も積もればなんとやら。そろそろ無視できない。それに加えてグラインドブレードがそろそろ稼働限界だ。

 

「最後は派手にいくか……」

 

 そう呟いて最大速度で敵に突っ込んでいく。弾幕など気にしない。時折口径の大きな火器が当たり、機体に衝撃を伝えるがこいつはその程度では止まりはしない。

 

「こいつを喰らえええええええええ!!」

 

 新しい機体の内の1機をグラインドブレードで破壊したその瞬間、グラインドブレードは稼働限界を迎え強制終了する。グラインドブレードというOW―Overed Weaponの使用に伴い、稼働終了とともにブースターが一時使用不可になりその場に機体が停止する。カメラで確認などしなくともこの場にいる敵機のすべての銃口がこちらを向いているのがわかる。

 

≪不明機のパイロット、聞こえるか? 武装を解除しろ。これは命令だ。従わない場合、死んでもらう≫

「……従えば命を保障すると? 甘すぎる。流石に信用ならんな」

 

 そういってOWを解除した右腕に再び握られたガトリングの銃口を1機の新しい機体に向ける。

 

「でもま、もうやれることもないか」

 

 そう呟いてそのままガトリングをパージする。事実、最後の突撃でAPはすでにレッドゾーンであり、この数を相手には分が悪い賭けだ。なにより自分はこの世界を救うために転生したのであって、ここの人々を殺しに来たのではないのだから。このまま拘束され死んだとしてもそれまでだったということだ。力を貸してくれた青年には申し訳ないがな。

 

≪機体を下りてもらおう≫

「ま、そうだわな」

 

 コックピットハッチを開放し、機体から降りる。すると銃をもったMPが俺を拘束し、そのまま連行された。特に暴力を振るわれなかったことは幸いかな、などと的外れなことを考えながら基地の中へと連れられていく。

 拷問のようなものもなく、ただただ検査され営倉へとぶち込まれた。これでいいのか? などと考えながらいくらか時間が経過した時、ある人物が営倉の中に入ってきた。紫のセミロングの髪をしていて、どことなくキツイ眼差し。そして白衣といういかにもマッドっぽそうなアイテムを着用された女性はウサミミのようなものを着けた銀髪ツインテール娘と一緒に入ってきた。いかに俺が手錠をかけられているとはいえ無防備に入ってきたなと思った。白衣というアイテム一つでビビったりなんかはしていない。ナニカサレソウだなんて思っていない。いないったらいない。

 

「あんた、あの機体は一体どこで手に入れたの?」

「随分な挨拶だな。まずは自己紹介からじゃないのか?」

「捕虜に教える義理はないわ。いいから答えなさい」

 

 ジャキッと銃の銃口をこちらに向け構える。おどけるようなしぐさをしつつも真面目に答えることにする。

 

「分からない」

「死にたいみたいね」

「事実だ。言ったところで信じてはもらえないし、俺にも分からない」

「……いいわ、言ってみなさい」

 

 少し後ろに控えているウサミミ娘に少しアイコンタクトをした女性は俺の言い分を聞いてくれるようなので、どうせ信じてはもらえないだろうと思いつつもこれまでの経緯を話す。

・この世界の住人ではないこと

・本来の世界ではすでに死んだこと

・神様の慈悲で転生をしたこと

・転生の度に世界を変えてきたこと

・この世界を救うために送られてきたこと

・あれは転生先の世界の兵器であること

 全てを話し終えると一言「あっそう」とだけ残してウサミミ娘と一緒に退室していった。俺自身こんな話聞かされたら信じられないし、こいつ頭でも打ったんじゃないかとか思うだろう。ただ、個人的にはもう少しリアクションが欲しかったなと思う。営倉の中は暇なのでそういったリアクションひとつでも退屈しのぎになるのだ。

 

 彼女達との邂逅から数日が経ったある日、外も見えない退屈な営倉でボーっと過ごしていると、あれ以来いなかったこの営倉に再び来客が現れた。その来客はあの白衣の女性だ。再び何の用だろうと思考の海に潜りそうになっていると、またしても一言「ついてらっしゃい」と言って再び退出。俺はよくわからないままのっそりと立ち上がり、ゆっくりと開けられたままのドアをくぐり営倉を出る。手錠はついたままだが、それは仕方ないだろう。彼女は随分と先を歩いていたので慌てて追いかける。

 彼女に連れられ廊下を歩き、エレベーターに乗りと移動して辿り着いた場所は随分とひらけた場所だった。一緒に行動していた際は常に銃口が向けられていたことを追記しておこう。

 

「あんた、あれに見覚えはある?」

 

 彼女の指した方向に視線を向けるとそこにあったものを見て驚愕した。そこにあったのはかつての愛機なのだから。

 それは、かつて世界を破滅させた力。汚染をその身に纏い戦う圧倒的な兵器、ネクスト。

 

「アリーヤ……」

 




なんかキャラぶれてない?って感じてる。。。
ああ、原作キャラ難しいなぁ。

ホントは120mmもあんま効果ないんじゃないかななんて思ってたけど、流石にある程度のダメージはあるということで。あのアセンだとKE防御高いですけど・・・

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