黒い鳥と英雄   作:天乃天

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随分と遅くなってしまって申し訳ない。
……毎回言っているね、ホントに申し訳ない。

エタるつもりは毛頭ないからホントにゆっくり更新かもしれないけど、見捨てずに読んでくれると嬉しいです。
感想とかも返信遅くてごめんね。でもちゃんと読んでるからね。すごく元気もらってます。

【追記】
猿島さん、誤字報告ありがとうございます!
修正しました。 2016/11/30 12:44


第11話 合流

 

 くそっくそっくそっ―――

 心を蝕むこのイラつきはどうにも止まりそうにはない。上官は忌々しい日本人。さらには途中から現れてはいきなり補佐になるというまたしても忌々しい日本人。そいつはさらにほかの計画も掛け持ちしていて、しかもこちらと同じくタイプ94の改修計画の別案を担当しているとか。年齢は俺と大差なさそうに見えるが佐官というだけあり、悔しいがその実力はすさまじいの一言に尽きる。日本人でなければ俺も素直に尊敬しているレベルだ。

 俺が苦戦していたチョビをいなし、ステラの狙撃を掻い潜り、挙句の果てには近距離からの狙撃の弾丸を手に持つ剣で切断するという人間離れした業までしてのけた。最後に剣を収納し片腕だけになった機体でステラの銃を拾い、いくら動けないとはいえ遠く離れたVG機を片腕で狙撃して見せた。この光景には俺だけでなく観戦していた全員が言葉を失っていた。

 それだけでここまで心をイラつかせているほど俺は子供ではない。一番の原因は先程のXFJ計画のブリーフィングのことだ。大雑把な開発スケジュールや開発ベースとなるタイプ94のスペック、帝国側の要求仕様を口頭で説明され、他も配布資料にあるようなことの確認のみで終わった。質疑応答の時間もなく一方的にだ。

――俺はここに『お客様』として呼ばれたってわけか?

 

「不服そうだな、ブリッジス少尉」

 

 

 

 

 

 今目の前で行われている行為を見つめながら、この後のスケジュールを頭に思い浮かべる。このあと本日到着予定のおやっさんとACを迎えに行って、小隊ブリーフィングに顔出して、そのまま合同訓練にカグツチで参加。掛け持ちしてるとはいえ随分と過密なスケジュールだこと……。ソ連ご所望のアルゴスに引っ付く形で俺たちも参加させることを向こうに納得させるとはつくづく優秀な相棒を持って俺は嬉しいよ。身体は悲鳴をあげるかもしれないがね……。

 目の前ではつまらない意地の張り合いしてるし……あ、殴られた。しかし、ユウヤは何か彼女に因縁でもあるのかね? いや、昨日の歓迎会でも俺にきつい視線を向けていたっけ。他の奴らとはぶつかり合ったからかすんなりと仲良くなれたんだがな。

嫌われている俺と彼女の共通点っていうと上司ってことと日本人ってことくらいか? んー、わからんな。

 なんてことを考えていると目の前に篁中尉が来ていた。

 

「お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありませんでした」

「いや、気にしなくていい。俺はちょっとここから別行動になるが小隊ブリーフィングまでには戻るから」

 

 なんて律儀な娘なんだろうな。と思いながら篁中尉と別れてブリーフィングルームから退出する。そのままAC用に用意された格納庫へと向かうとすでにACは搬入されていた。

 

「おお、烏丸! 久しぶりだなぁ!」

 

 格納庫へ入るなり目敏く俺を見つけたおやっさんが片手に資料を持って近づいてきた。その後ろを見たことない女の子がついてくる。おやっさんが大きいのか、その子が小さいのかわからないが随分と身長差があって親子のように見える。……たぶん女の子が小さいんだろうな。きっと気にしていそうだから言わないけど。

 

「ああ、久しぶり。おやっさん、その子は?」

「ん? ああ、こいつは富嶽重工から出向してきたんだ」

「久野文香です。 今回のテスト武装のチェックの為、富嶽重工より出向致しました。……というのは建前で、我々はあのデモンストレーションで圧倒的な戦果を挙げて見せたこの兵器を開発したあなたから少しでも吸収し、日本の為に次世代機の開発に力を入れたいのです。我々の最高傑作を上回る機体を開発されたあなたから我々はどんなことをしても学びたい。このことをあなたにお伝えするのは私なりのあなたへの尊敬です。上司に言われて見学させてもらったデモンストレーションで私は大きな衝撃とともに新しい可能性を見させてもらいました」

 

 綺麗な敬礼を決めながら真面目な顔でこちらを見つめる久野さん。随分と大層な任務を背負っているようだが、俺はたぶん力になれないと思う。というのも、武装の設計図などもろもろはアイリスがやってくれているからだ。ホントに優秀すぎる相棒だ。

 

「なるほど、よろしくな久野さん。おやっさんか俺がいる時ならACに触ってもらって構わないからメンテ手伝ってくれると嬉しいかな。悲しいかな、ACチームは俺とおやっさんの二人しかいなくてね。富嶽重工からの出向ならある程度機械はいじれるだろう?」

「……私は構いませんが、会って間もない部外者に触らせていいのですか?」

「いいよ。別にデータを取られても困らないし、こちらから吸収しようとしている君はACを壊そうなんて考えないだろう? まぁ、壊されてしまった場合は君の感じた新しい可能性とやらがその程度だったということで、俺の人を見る目が悪かったってことだな」

 

 そういいながらおやっさんから資料を受け取る。今回は武装すべてが発注したテスト武器のようだ。背中のグラインドブレードも外してある。

 両手にオートキャノン「PASTEQUE AC106」、左ハンガーにライフル「AU11 Kinfolk」、右ハンガーにはある武器のテストとして発注したプラズマガン「UPG-16 GARDENA」。アイリス曰く、プラズマガンが出来ればレーザーライフルは簡単ですとのこと。

 資料を見ながらチラッと久野さんを見ると、先ほどの問答で壊す云々を俺が言ったことについて私は壊すつもりはないと反論したげにしているが、資料を読んでいる邪魔もしたくないようで面白いくらい右往左往している。しっかりしているようでどこか可愛らしい久野さんが小ささも相まって誰かに似ていると感じて、不意に胸が締め付けられるように感じた。多くの記憶を取り戻したにも関わらず、それが誰に似ているのか分からない。とても大事だと感じてはいるのだ。

 

「おい烏丸、どうした?」

「え? いや、なんでもない。おやっさん、今日はACチームの活動はないから久野さんにいろいろ説明とかしてあげて。俺は別件でやらなきゃならないことがあるから」

 

 どうやらボーっとしていたようだ。怪訝な顔のおやっさんに早口に指示を出し、格納庫を後にする。久野さんが何か話したそうだったが、別件があるとおやっさんに言ったのを聞いてか声には出さずに見送ってくれた。その心遣いに感謝しつつ、このもやもやした気持ちを切り替えてカグツチの格納庫へと向かう。

 




 もうちょっと書くつもりだったけど次の話に持ち越し←
 次もなるべく早く仕上げたいね……

 というかなんと投稿から1年経ちました。相変わらず文章力は上達せず、更新は遅いけども皆さんのおかげで1年も続けられています。ホント、読んでくれる方がいるのは嬉しい限りです。
 1年経ったの作者本人が気づいていなかったけども。今年の投稿少ないから今年中に最低でもあと1話は投稿したいと思います。

 

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