待っていてくださる方がいるというのはホントにうれしいものです。今後とも拙作をよろしくお願い致します。
前回、書いていたときは気付かなかったのですがカグツチという名前はすでに無限力機関を積んだイケメン合体機体としてあったのですが、FDですし戦略合神機であり戦術機でないので問題ないということで改名はやめておくことにしました。
嬉しいことにUAがもうすぐ25000、お気に入りは200突破となりました。
こんなにも皆さんに読まれていることを嬉しく思います。皆さんありがとうございます!
今まで使ってきていた機体と違う挙動に苦戦しながら相手の狙撃を避ける。過去にも逆関節は使ったことがあるはずだが、いかんせんこのカグツチとは感覚が違う。ステラの的確でエグイ狙撃を避けた先にはVGの弾幕が待っており、それを持ち前の脚力でなんとか避ける。しかし、今相手にしているのはその2人だけではなく、もう1人いるのだ。
待ってましたと言わんばかりにタリサのアクティブがナイフを片手に突っ込んでくる。手に持つ突撃砲で迎撃したいが流石に距離が近すぎて間に合わない。咄嗟に突撃砲でナイフを受け止め使えなくなった突撃砲を破棄しながらアクティブに蹴りを入れて離れる。そこを狙撃されたが、来るだろうとは思っていたのでブースターで避けて建物の陰に隠れる。
「流石にやっかいだな」
≪遠距離、中距離、近距離とバランスが良いですね≫
なんで3対1という理不尽な戦闘をしているかというのは少しばかり前にさかのぼる。
本日は俺の顔合わせをするということで、ブリーフィングルームに集まったアルゴスメンバー。みんなの自己紹介を受けて、今度は自分の番としてとりあえず自己紹介するために皆の前に立つ。
「紹介された通り、今回このXFJ計画の補佐をすることとなった烏丸 恭史郎だ。階級は少佐と皆よりも高いが、同じ開発メンバーとしてよろしく頼む」
ま、無難な挨拶だがこんなもんかと思っているとそばに控えていた褐色の男性、イブラヒム・ドーゥル中尉が頼んでもいない捕捉をしゃべりだした。
「少佐は我々XFJ計画とは別の計画も担当されている。その計画とは、新概念の機体の開発とその技術を使用した我々の計画とは異なるアプローチのTYPE-94改修計画だ」
その発言に部屋の中はざわつきはじめる。そりゃそうだ。自分たちの計画の補佐が別の計画を担当している、しかも2つ。さらには自分達と同じ機体を改修しようというのだからあてつけと感じられてもおかしくなんかない。
「皆がざわつくのも理解している。まずはこの映像を見てほしい」
そう言ったイブラヒムがスクリーンにある映像を映す。それはACが現存の戦術機を圧倒している映像だった。どうやらデモンストレーションでの映像が使われているようだ。それを見た皆は再び静まり返る。今まで見たことがない戦術機が現行の戦術機を1対多で圧倒しているのだから当たり前かもしれない。
「この機体はある程度完成に近づいており、その技術を使用した改修計画が立案されたそうだ。ではなぜここで行うのかというと一部技術の共有とお互いの切磋琢磨と聞き及んでいる。そうですね、少佐」
「……ああ。機体自体は組みあがっているから同時進行でも問題はないはずだ」
あんなところでそんな風に言われたら同意しかできん。つかそんな話があったのか。とか考えていると、俺にしか聞こえない音量で「私が手配しました」とアイリスが呟いたのを聞いてまたお前かと思った。
「少佐と親交を深めることは可能ですか!」
耳ざとく機体が組みあがっていることを聞いたのか褐色の少女タリサ・マナンダル少尉が挑戦的な目でこちらを見ていた。そんな目をされて挑まれたら断るはずがない。
「実機ではまだ無理だがシミュレーションならやってやるぞ」
その言葉に笑みを浮かべたタリサはそばにいた長髪の伊達男、VGことヴァレリオ・ジアコーザとタリサとは比べられないほどの女性的なシルエットをした美しい女性ステラ・ブレーメルに声をかけた。メインテストパイロットのユウヤは何か思うところがあるのか、はたまた昨日配属されたばかりだからなのか今回は見学することとなった。
正直ユウヤが見学は助かった。1対1だと思っていたからまさか仲間を呼ばれるとは思っていなかったんだ。ACならそれでも問題ないのだが、今回はACではなくカグツチだ。まだまだ開発段階であり不安要素があるのだからいきなり多数とはツライ。昨日の演習を見ていても皆腕のいいパイロットだったしな。
そんなこんなでこんなシミュレーション演習が始まったのだが、背部担架がないこの機体はすでに両手に持つ突撃砲の片方を失っている。そして相手の絶妙なコンビネーションに舌を巻いている。
「ピンチなんだが、俄然燃えてくるな」
≪レイヴンはこういう状況が好きですね≫
「好きってわけじゃないが、この追い詰められている感じがあの頃思い出すんだ」
そう、生と死を懸けた強敵との戦いをしていた頃を。そうだ1対多なんて今までだってあったじゃないか。格上の相手4人を相手にしたことだってあったはずだ。彼女には無理だ、逃げてと言われたがそれでも戦った相手が。NO.1を含む4人と戦ったことが!
「それに比べたら3人なんてやってやれない相手じゃない!」
レーダーに映る2機のマーカーを確認しながらそちらに向かって突貫する。即座に弾幕を張るVGとナイフを片手に迫るタリサを確認してから側の建物を蹴って急な方向転換をする。タリサは急な方向転換にも対応してこちらに突っ込んでくる。それを確認したら今一度側の建物を蹴り、今度はVGから離れるように移動する。
≪そんなんであたしから逃げようだなんて甘いんだよ!≫
こちらの意図など気づかずイノシシのように突っ込んでくるタリサ。アクティブはその背中のブースターによる加速で、カグツチは不知火をベースにしているだけあって機動力はアクティブに劣らない。しかしこの高速戦闘、VGやステラが乗っているイーグルでは追いつくことはできない。その証拠にどんどんVGと離れていることをタリサは分かっているのだろうか?
≪こんのぉ、建物蹴ってちょこまかと!≫
業を煮やしたタリサは自身の得意な機動で急接近してきた。とどめを刺すつもりなのだろう。確かに速くて捉えにくいが、ネクスト戦はもっと速い戦闘ばかりだった為見えている。左脚部にある盾のような脚を覆うパーツでブーストチャージをアクティブにカウンターで食らわせる。まさか見切られているとは思っていなかったのか、はたまた反撃に蹴りだとは思っていなかったのか見事に決まったブーストチャージで近くの建物に吹き飛ばされたアクティブに突撃砲の弾丸を浴びせてやる。
ちゃんと撃破したのを確認してから高速戦闘している間にだいぶ距離を離したVG機へと意識を向ける。ステラの狙撃のカバー内から出てこようとはしないのかこちらとの距離の詰め方が慎重だ。もはや右手に持つ突撃砲のみとなった手持ちの武器の残弾を確認する。
「向こうが慎重に来るなら荒らすしかないよな」
連携されるのは1機減ったとして辛いものがある。
VG機に接近するとすぐさま弾幕が張られる。120mmをVG機の斜め後ろの建物の根元に向けて放ち、VG機の方に崩れるのと合わせてブースターを全開にして近づく。もちろん計算はアイリス様々だ。
一瞬建物に注意を反らすことに成功した俺は最高速のままVG機にブーストチャージを食らわせる。咄嗟に回避挙動をしていたのは流石と言った所か。ただ完全に回避できなくて脚部と跳躍ユニットに相当のダメージを与えることには成功した。まともに動けないVG機に突撃砲を浴びせようとしたところを右手ごと撃ちぬかれた。
「ステラか!」
すぐさま襲い掛かる次弾を回避する。そこにVG機から弾幕が張られ後退を余儀なくされる。一旦距離を開けて建物の陰に隠れると同時にあるシステムを起動する。
両腕部が180°回転し背中の方に回ると同時に、肩部から短くはあるが羽のように背中に伸びていた装甲が展開。サブアームが展開された肩部から大きな二振りの剣を保持し、前面に展開した。武器腕ヴェンデッタ。復讐の名を冠するのに相応しく、失った腕の代わりに剣を保持する。
「実機でこれ使えるのか?」
≪一応システム的には問題はないはずです。あとは実際に動かしてみないと分かりません≫
それもそうかと納得したところでこの演習を終わらせるために行動を再開する。
機体の損傷は下半身が真っ赤なところから察せる通り酷いものだ。吹き飛ばされてぶつかった建物にもたれかかる形から動くことができない。背部担架の武装も建物にぶつかった衝撃で使い物にはならない。かろうじて動かすことが出来るのは腕部と頭部のみか。ただ腕部も関節部の負荷が大きくいつ壊れてしまうか分からないくらいだろうというのが分かるくらいぎこちない動きだ。
「悪いステラ、しくじっちまった」
≪仕方ないわ。でもさっきので少佐の武器はなくなったわ。警戒するのはあの蹴り……≫
そう蹴りなのだ。蹴りでここまで威力が出せるというのは驚きだ。対BETAではまず使わないであろう手段であり、対人戦が想定されているのが伺える。
そして第3世代機の改修機だけあって速い。2.5世代とはいえストライクイーグルで追える速度ではない。そのせいで先行したタリサの援護が出来ずやられてしまった。まぁ、あれはタリサも悪いんだが。
≪来たわ!≫
ステラの声と同時に少佐の機体が姿を現す。しかし腕を失った先ほどの姿とは違い、先ほどの腕より少しばかり細い腕にはしかと2本の剣が保持されている。
ステラの狙撃は予測されていたのか軽々と避けながらその速さを持って接近してくる。
「おいおい、その機体は一体どうなってんだ!」
ぎこちない動きで突撃砲をばら撒き、できるだけステラの狙撃が当たりやすいように誘導しようとする。が、俺を一瞥するとすぐにステラの方に向き直り俺の死角となるような位置へと移動してしまった。こうなると俺にはもうどうしようもない。
「ステラ! そっちに行ったぞ!」
できることと言えばそうやってステラに注意を促すことしかできない。
VGの機体が動かないのならばこちらに来るだろうというのは予想出来ていた。その為に少佐が隠れた位置をギリギリ狙撃できる位置まで距離をあけたのだから。こちらに向かってくるならもう移動はできない。移動している間にさらに距離を詰められてしまうからだ。故に勝負はここにたどり着くまでに狙撃できるかどうかだ。
先ほどから狙撃してはいるが当たらない。だんだんと距離が詰まるほど心臓はその鼓動を刻むスピードが増し、気持ちは焦り始める。だが距離が近づく分、的は大きくなり命中する確率は大きくなる。そして狙撃ポイントの最寄りの建物から少佐の機体が飛び出した時を狙って放った弾丸は今までとは異なり当たる確信があった。避けきれるタイミングではないと思っていた。
「そんな!?」
結果として避けはしなかった。でもそんなことできるっていうの!? 保持する剣で弾丸を切断するなんて芸当が!
とても信じられないものを見た私はその後の行動が遅れてしまった。気づいた時にはもう目の前で剣を振りかぶっていた。
前回、完全にACパーツというわけではありませんと言ったなあれは嘘だ。
すみません、ホントはそのつもりだったんですけど私が個人的に好きなのもあってヴェンデッタの機能をそのまま使用しました。一応武器腕という設定は流用しましたが他は似ているパーツという方向でお願いします。ご迷惑をかけます。
最後に
VDの武器腕が好きです。ホントに。お前らのその可変っぷり大好き。