ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください   作:カドナ・ポッタリアン

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少年少女よ

 

「んじゃ、俺らちょっとリーに呼ばれてるからチェケラ」「行ってくるってばよ」

「「行ってらっしゃい…」」

 

 

 赤毛の双子は、手を振りながら颯爽とコンパーメントから出て行った。

 アイルは、窓を見る。花鳥風月が外を流れる。シルクのような緑の畑は、太陽の光で星となり、ホグワーツの生徒達に宇宙の森を見せていた。蒼の風は、永久に続く純金の輝きの刹那を、大きな腕で抱擁していた。孤独のような静寂は、コンパーメントを飛び回っていた。

 二人の少年は顔を合わせ、一人の女性は外を見ていた。

 

 

「あ…ね、ねぇロン! 君の家族は、みんな魔法使いなの?」

「うん、そうだよ。僕は兄ちゃんが、あの二人も合わせて5人いるんだ。で、妹が1人」

「良いなぁ…楽しそうだね」

「君は、マグルと過ごしているって聞いたけど、どうなの? どんな感じ?」

「あー…」

 

 

 ハリーはチラッとアイルを見た。どうぞ、とでも言いた気に彼女は笑った。

 

 

「お姉ちゃんがいるから楽しいよ。何ていうか…魔法のないだけの世界みたいな」

「へ〜、マグルに生まれてもそんな感じなんだな。マグルって凄いよね。魔法もないのに色んなモノを作って。正直、マグルの方が僕ら魔法使いより進歩してる感じだな」

 

 

 ハリーは、ダドリーにいじめられている事は言わなかった。目の前に姉がいるからだ。ロンになら何だって話せそうな気がするが、姉には心配をかけたくないので言えない。

 

 

「ポッター先生…ですよね?」

「まだ敬語も先生も良いよ。さて…私ちょっと出るかな」

「え、お姉ちゃん何処行くの?」

「あの双子が何かやらかしそうだから、探してくる。あと、私がいたら話辛いでしょう?」

「あ…」

「行っちゃったね」

 

 

 ハリーが止める間も虚しく、アイルはコンパーメントから出てしまった。

 あの一触即発な双子を野放しにするワケにはいかない。リー…というのは恐らく仲間だ。アイルは辺りを見回した。廊下に気配はない。コンパーメントにいるのかと右に踏み出した時、隣のコンパーメントのドアが開いた。

 

 

「あら、ねぇネビル。この汽車って大人も乗れるのね」

「え、知らないよ…」

 

 

 髪が栗色で爆発した可愛らしい女の子と、丸い顔をした気の弱そうな男の子が出てきた。あの自称「悪戯仕掛人」と同じ反応だ。

 

 

「すみません。ヒキガエルを見ませんでしたか? ネビルのがいなくなったのだけど」

「ヒキガエル?」

「はい…僕の大事なペットで…」

 

 

 この二人は、礼儀を学んでいるようだ。あの赤毛ツインズに見習わせたい。大事なペットが何処かに行ってしまう…というのは何よりも辛い。

 

 

「ごめんなさいねネビル。ヒキガエルは見てないわ」

「うぅ…」

「私も探すわ。少し汽車の中を歩くつもりだし」

「っ! よ、よろしくお願いします! 僕、ネビル・ロングボトムです」

「私は、ハーマイオニー・グレンジャーです」

「良い名前ね。私はーー」

 

『おいリー! 何だよこの生物!』『フレッド落とすな! 爆発するぞ!』

『はうああああ! 俺のハイパーデンジャラスポテンシャルを喰らえこんにゃろおお!!』

 

「ごめん、私ちょっと行ってくるわ」

 

 

 奥のコンパーメントから、赤い問題児が飛び出してきた。何か騒ぎが起きているようだった。アイルは二人に謝ってその場所まで走って飛んで行った。

 

 

「ちょっとアンタ達! 新学期早々問題起こすんじゃないわよ!」

「おう先生! どうかミーヘルプっ」

 

 

 そこのコンパーメントの中では、フレッドが何かピンク色のもふもふしたモノに襲われていた。廊下には、ジョージとドレッドヘアの少年ーーリーだろうかーーがいた。

 

 

「うん、5文字いないで説明しなさい」

「ヘルプピー」

「じゃ10文字」

「フレッドが襲われた」

「何に?」

「分かんない。試作品なんだけど…落としたら爆発するんだ」

 

 

 ジョージは苦笑いをしながら言う。フレッドは、そのピンクのもふもふーー略してもふピンーーと格闘していた。どうにか床に落とさないように頑張っていたが、その顔は引っ掻き傷だらけだった。

 

 

「ったく…ホグワーツ行ったら覚悟しなさい」

「おー…怖い」

 

 

 アイルは杖を構え、コンパーメントの中に躊躇わずズカズカと入って行った。

 

 

「のわあああははちょっがっきいっ!」

「はいはい、罰則が楽しみね」

 

 

 アイルは杖を使うまでもなく、手で「もふピン」を持ち上げ、それの正面を向けた。空中で暴れまわる。醜い顔だった。シワの寄った顔は垂れ下がり、眼が細く何やら黒いブツブツのようなモノがたくさんある。そしてアイルは、杖をその生物に構えた。

 

 

「『ステューピーファイ! 失神せよ!』『フィニート・インカーターテム! 呪文よ終われ』」

 

 

 アイルが魔法をかけると、その生物は消えた。やはり人工物。

 

 

「あっははーねぇフレッド。どんな罰則が良い? 外のお二人も」

「い、いやぁ、俺ら何にもしてないッス」「そうッス。窓から飛んできた奴を倒していたなり〜」

「いやいや、じゃあ何で落としたら爆発するって知ってんの」

「「「…」」」

 

 

 3人共何も言えなかった。アイルは床に寝転がるフレッドを起き上がらせて、ソファに座らせた。酷い傷だが、正直お仕置きはこのまま一週間…でも良いかもしれないが、流石にそれは可哀想なので魔法で治してあげる事にした。

 

 

「『エピスキー 癒えよ』」

 

 

 アイルが杖をフレッドの顔に向けると、傷は見る見るうちに塞がり、元のジョージに瓜二つの顔に戻った。

 

 

「あぁ、傷があった方が見分けついたかもね」

「おいリー…」

「だって、僕も見分けつかないんだぜ? モリーおばさんがわかるのは、やっぱ母親だからであってね…」

 

 

 ドレッドヘアの男の子は、やはりリーらしい。

 

 

「あぁ、リー。彼女はアイル・ポッター。新しい先生らしいよ」

「えっ! アイル・ポッター? あの? 『愛された女の子』?!」

「もう女の子って歳じゃないけどね」

「ぼ、僕はリー・ジョーダンって言います」

「よろしくねリー」

 

 

 リーは顔を赤くして嬉しそうに言う。だがアイルはそんな事に気がつかなかった。窓を見ていたからだ。赤い毛糸で美しい夕焼けが編み出されている。空という名の踊り子が紅と白銀のベールを羽織い、イギリスという名の舞台で舞っていた。

 

 

「おっと、俺らそろそろ着替えないと」

「お先生、お外にお出いただけるとお嬉しくお思います」

「仕方ないわね、今日は減点はしないけど、明日は罰則喰らわすからね。…ちなみにこれは罰則には影響しないけど、さっきの生き物は何なの?」

「あれは、『ピグミーパフ』2号。俺が作った生物だZ!」

「1号は?」

「爆発でお亡くなりになりました」

「あっ…」

 

 *

 

 アイルがハリー達のいるコンパーメントに戻る途中、ある3人組に出くわした。シルバーブロンドの美少年。そして、その横に後ろにいる2人のぽっちゃりとした少年。シルバーブロンドは、アイルを見るなり嫌味ったらしく笑った。

 

 

「おや、どうやらハリー・ポッターの保護者として、お姉さんも来ていたようですね」

「君は? 一年生のようだけど…」

「僕はドラコ・マルフォイ」

「マル…フォイ…?! まさか、ルシウス・マルフォイの…」

「何故父の名を? 聞いた話だと、ホグワーツで教鞭を取られるそうですね。よろしくお願いします」

 

 

 マルフォイは手を差し出す。しかし、アイルはその手は取らなかった。ただ、驚きと憎しみを堪えていた。マルフォイ…それはアイルを監禁するための場所をかした人間だ。この少年が知らない事から、ルシウス・マルフォイは話していないようだった。

 アイルを解放した時のルシウス・マルフォイの涼し気な顔、「助けてやった」とでも言うような視線、ご主人様に頭を垂れて喜んで地下牢を貸したくせに、よくそんな事が言えたなと…アイルは今でも彼に怒りを覚えている。

 

 

「退きなさい。急いでいるの」

 

 

 アイルはマルフォイの顔を見たくなかった。あの高慢と自信に溢れたルシウス・マルフォイにソックリだ。彼女は3人を脇を通って、小走りでコンパーメントに戻った。

 中を見てみると、ハリーとロンは既にローブに着替えていた。

 

 

「あ…お姉ちゃん、さっき何か…」

「あの少年とは…お願いだから関わりを持たないで…ロン、貴方もよ。お願い…」

「ど、どうしたんですか?」

 

 

 もう会いたくない、もう思い出したくないーーアイルはソファに座ると、頭を抱えた。あの冷たい地下牢の記憶が蘇ってきた。封じたハズのあの記憶の一部が、脳裏に浮かび上がってきた。ーー私が残したいのは、あの時のダンブルドア先生の優しさだけなのに…!

 

 

「お、お姉ちゃん?!」

「ごめんねハリー…私の所為よ」

「え…?」

「その傷ができたのは私の所為…嗚呼…」

「ごめんねハリー…ハリー…」

「お姉ちゃん、僕傷の事なんて何も気にしてないよ!」

 

 

 アイルの目からは熱い液体が溢れ出てきた。嗚呼私の所為なんだ。私がハリーの事ばかり口にしなければ、ヴォルデモートはハリーの事はーー

 

 

「先生、もしハリーの傷が先生の所為だったとしても…魔法界が救われたのはある意味先生のおかげなんですよ!」

「…」

「先生が…な、何かしなかったら、魔法界はまだ『例のあの人』に支配されていたかもしれない! 先生とハリーのおかげなんですよ。今の平和は」

「…ハハッ」

 

 

 彼女は苦しみを流しながら笑った。苦しいけど、嬉しかった。ハリーとロンの言葉が何よりも嬉しかった。

 

 

「嗚呼、君たちは良い子だね。もし私が闇に堕ちても、君たちは私の事を嫌いでいないでくれるかい?」

「え…当たり前だよお姉ちゃん。僕は、どんなお姉ちゃんでも好きだよ」

「僕も、先生の事はまだよく知らないけど…先生は物凄く良い人だから」

「フフッ、ありがとう二人共。ありがとう…」

 

 

 アイルは別の意味で涙した。

 




何故投稿が遅れたかだって?
何故さっさと書かないかって?
(以下言い訳)
...いやぁね、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」のゲームの買ったんですよ。Wiiのをやっと手に入れたんですよ。
私プレステとか持ってないから。ゲーム機とかWiiとWii Uしか持ってないから。もう本当に手に入れるの大変だったんだから。
ん? それの何処か言い訳だって?
ゲームをやり込んで執筆の時間がなかったんだよオオオオォオオオ!!

うん、面白かったです。ゲーム。

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