ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
以来、アイルの姿が見えなくなった。授業は休講。弟のハリーでさえ、姉が何処へ行ったのかが分からなかった。ダンブルドアに聞こうとも思ったが、校長室の場所さえ分からないし、夕食の席には出ているがそれが終わった途端、すぐに何処かへ消えてしまう。マクゴナガル先生でさえ知らないという。
噂では、「死喰い人に連れて行かれた」とか「アズカバンに収監された」とか「自爆して死んだ」などーー中々不名誉なモノが流れていた。みんなアイルに何があったのかを知りたがり、弟のハリーに殺到したが、彼自信も何も知らないのだ。
アイルは不思議な人物だ。行動の分岐が多い、気まぐれな人。すぐフラッといなくなったと思ったら、気が付いたら側にいた…なんて事はよくあった。
アイルが失踪してから一ヶ月。流石に少し風邪をひいていたなどとは言い訳出来ない期間だった。ハリーはアイルが心配過ぎて碌に食事が喉に通らなかった。先生方も不穏な表情で校長に問い詰めていたが、ただ彼は「じゃが◯こ食べたい…」を連呼していただけだった。
大広間はいつもよりもより豪華になり、魔法で作られた夜空には満月が輝いていた。テーブルはご馳走で溢れ、皆必死で頬張っている。しかし、ハリーは楽しい気分にはなれなかった。姉がいないクリスマスなんて、クリスマスじゃない。
「ねぇハリー、元気を出して。アイル先生はきっと大丈夫よ」
「一ヶ月も前に何も言わずいなくなって、無事だっていうならそうなんだろうね」
「ハリー…」
ハリーは、目の前にある大きなチキンの丸焼きをフォークで突いた。アイルならこんなの丸々五つくらい食べそうだ。優しい姉の顔を頭の思い浮かべながら、ただ呆然とチキンを見つめた。食欲なんて皆無。お腹も空いていない。
「なぁ、僕ら暗いハリーは見たくないよ。先生は物凄く強いし綺麗だし…きっと、ダンブルドアが何も言わないって事は、極秘の任務とかについてるんだろ」
「そう、なのかなぁ」
「そうさ。じゃなきゃ、先生がハリー置いて何処かにいくわけないだろ?」
「そう…だよね!」
とりあえず、信じてみたかった。ロンの言葉を信じたかった。それが現実であってほしかった。
捨てられたんじゃないかとも考えていたハリー、今思えば、何でそんなに自分の姉を信用していなかったのか、不思議でならなかった。
*
談話室に戻ると、そこには大きなクリスマス・ツリーが飾ってあった。誰が巻いたのか、グリフィンドールのマフラーがツリーにグルグル巻きになっていた。昨日はこんなものなかったのに。談話室には、何故か人はいなかった。クリスマスの夜は、早く寝て明日を待とうという魂胆なのかもしれない。
ハリーのクリスマスは、そこまで良い思い出とまではいかない。アイルには毎年プレゼントを貰っていた。ハリーは基本的に欲しいものはなかった。あえて言うなら、姉の笑顔だろう。今まで貰ったプレゼントは、本が多かった。アイルはハリーが物欲がない事を知っているので、少しでも知識が多い方が良いだろうと本をプレゼントしてくれていた。
アイルのプレゼントは本が多い所為か、ハリーの成績は良かった。成績表を見せる度にアイルが窒息するほど抱きしめてくるので、姉の笑顔欲しさにもっと必死に勉強した。学年一とまではいかないが、上位何位にかは絶対入っていた。
今もハリーは毎日予習復習をしている。魔法でも数学でも、良い成績は取りたいのだ。アイルに見せたいのだ。自分の努力の結晶を。
彼はロンと一緒に自分の部屋へ上がった。ルームメイトのディーン、シェーマス、ネビルはベッドの上に寝転がっておしゃべりに没頭していた。
「おうハリー、良い所に来たな」
「どうしたの? シェーマス」
ハリーは黒のオーラを纏い、自分のベッドに横たわった。一日中の疲れがドッと溢れ出すのを感じた。
「何か、マルフォイ先生が挙動不審だとか言ってるんだよ?」
ネビルがおどおどした口調で言う。近くの机の上には、思い出し玉が乗せられていた。
「ルシファースト・マルフォイが?」
あのアイルの恋人であり、学校の人気教授の一人であるルシファースト・マルフォイ。不穏には思うが、アイルの好きな人なのであえて口は挟んでいないハリーだが、それなりに嫌悪はしていた。不安だし、怖いし、騙されているような気しかしないし。
「あ、ハリー、興奮するなよ? で、どんくらいキョドってるんだ?」
「何か、真夜中に学校を徘徊してるとか。一部の噂では、『アイル先生を拉致した』って…」
「はああぁああっ?!」
「いやハリー?!」
ハリーはディーンの言葉に反応して飛び上がり、奇声をあげた。ーー誰が誰を何したって?!
「あの野郎許さねぇ!」
彼はエメラルドグリーンの目を殺気立たせ、メガネがズレているのも気にせず、ベッドから飛び起きた。そして杖を取り出し、完全に人殺しの雰囲気だった。ロンは嫌な予感しか感じず、ハリーの腕を掴もうとしたが、間に合わずに彼は外へ出て行ってしまった。
ハリーは真顔で階段を駆け下りる。ロンは急いで後を追いかけた。
「待てよハリー! おい!」
談話室まで降りると、いくつかクリスマスプレゼントが置かれているのを見つけた。その中に一つ、「ハリーへ アイルより」と書かれた中くらいの箱がクリスマスツリーの目立つ所にあったのを、ハリーを見つけた。一瞬で表情が和らぎ、すぐにその場に座り込んだ。ロンが気がついた頃には、彼は杖を床に置いてプレゼントの箱を開けていた。
「ハリー、良かった…」
「…ロン、これ見てよ!」
ハリーはパアッと笑顔になった。ロンが箱の中を覗いてみると、クリスマスカードと何かスベスベした滑らかな黒い布が見えた。
「何これ?」
「見てよ!」
ハリーは嬉々としてロンにクリスマスカードを渡した。ハリーの目の色は、もう清々しいエメラルドグリーンに戻っていた。ロンは改めてハリーの見て思う。姉弟なのに、似ていないな…と。黒い髪色は同じだ。しかし、あの炎のような赤と森のような緑、正反対の色だが、引き立てあっているように見える。
ロンは彼の機嫌を損ねないようにと、笑顔を取り繕ってカードを受け取った。
メリークリスマス! ハリー!
さて、最初に言っておきたいのは、ハリーを置いて勝手に何処かに行ってしまった事を許してください。本当に自分勝手な行動を取った事を反省しています。言い訳ですが、ダンブルドア先生のお使いなのです。ごめん本当にごめんね。
その箱の中に入っているものは、私からのプレゼントです。手作りだよ? メイドインアイルの最高級品だよ?
アイルより
「透明マント…だって?!」
「これかな…」
ハリーは箱の中から黒い布を取り出した。それはシルク以上の滑らかさで、触り心地は水のようだった。ロンが着てみろよ、と言ったので、ハリーはいそいそと羽織った。途端、ロンが息を飲む声がした。ハリーが下を向いてみると、何もなかった。そう、自分の姿が見えなかったのだ。
「すっげー、先生の手作りか?」
「お姉ちゃん、こんなの作れるんだ…」
「これなら学校中歩き回れるな」
「学校中…」
「うわあ、ハリー、変な事考えるなよ? 考えるなよおお?」
「それはフリかな」
悪戯っぽく笑うと、マントを脱いで、嬉しそうに抱きしめた。
「お姉ちゃん…」
「シスコンめ。じゃ、部屋戻るぞ」
「嫌だ。ちょっと、これで旅に出てくるよ」
「うん、何があっても僕は知らないぞ」
「じゃあ、僕一人で行く」
ハリーがクリスマスカードを大事そうにポケットに仕舞い、透明マントを被ろうとした所で、ロンに腕を掴まれた。もうロンは、ハリーを逃すわけにはいかなかった。もし野放しにしていたら、何をやらかすか分かったもんじゃない。
「僕も行く。もう夜中だ。君一人じゃ危ない」
「…分かった」
更新遅いとか言わないでッ
もっと長くしろとか止めてッ
ハリポタのスリザリンの格好して、丸メガネかけて、ハリポタのサントラ流して、ハリポタの二次を書いてる私ね...幸せッス