ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください   作:カドナ・ポッタリアン

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ドラゴンと少女

 

「おう、ちょっと待ってくれ」

 

 

 ハグリットは、火を灯した暖炉の所まで行った。そこでは、大鍋の中で何かが温められていた。ハグリットは大きな分厚い手袋をはめると、大鍋の中のモノを取り出し、ツクエの上にゆっくりと置いた。それは卵だった。灰色でダチョウの卵のような大きさだった。

 

 

「…ハグリット、貴方、逮捕されたいの?」

「え、アイル、俺はただ、ペットの卵を孵化させようとしているだけだが? ドラゴンの」

『え?!』

「はぁ…良い? ハグリット。ドラゴンの卵は、取引禁止品目Aクラスの危険な魔法生物よ。すぐに移動させないと…」

「んなもん無理だ。もう卵から出てくるぞ〜」

 

 

 彼は手袋を取って鼻歌を歌いながら、大鍋を何かでかき混ぜ始めた。ロンは興奮した様子で言った。

 

 

「ドラゴン誕生の瞬間なんて! 生きている間ではもう二度と見られるもんじゃないぜ!」

「何言ってるのロン、これが見つかったら、ハグリットが大変な事になるわ」

「同意よ。この家が燃えるわ」

「お姉ちゃん、ドラゴンってそんなに危険なの?」

 

 

 ハリーは卵をジッと見つめる。今まで魔法界と切り離されていたハリーにとって、こんな非現実的な事はとても興味があるのだ。アイルは笑顔で頷き、ハリーの頭を撫でた。すると彼は、少し嬉しくなって自然と笑みがこぼれ落ちる。二人の友人は、それを見て苦笑した。このシスコンめ。

 途端、卵に少し亀裂が入った。ハグリットはすぐに駆けつけてくる。

 

 

「生まれるぞ。よーく見とれ」

「仕方ないわね。此処は、見守るしかないわ」

 

 

 アイルは立ち上がってカーテンを閉め、外から中の様子を絶対に見られないように魔法もかけた。

 

 

「これで大丈夫…」

 

 

 五人でツクエを取り囲み、卵を見つめる。何かの小さな足が、大きな卵の殻を破った。パリ…という音とともに、その怪物は姿を現した。

 黒い小さなコウモリのようだった。筋がクッキリと見え、それに相応しない美しくも強い羽。そして、大きな半分ほど飛び出した黄金の瞳。見るからに不気味だった。卵から出たばかりなので、白いベトベトした膜がドラゴンにまとわりついていた。

 

 

「ふ〜ん、可愛い子ね」

「そうだろうそうだろう…嗚呼、美しい」

『え…』

 

 

 三人の子供は、目の前の麗しい女性と巨体の髭もじゃの感性が分からなかった。この不細工なドラゴンの何処に、可愛いや美しいといった要素があるのだろうか。

 アイルは、ドラゴンに触れた。

 

 

「ハグリット、『刻印』して良い?」

「え、あれをするのか? お前さんが? まぁ構わんが…」

 

 

 ドラゴンは首を傾げた。特に抵抗する様子はない。それどころか、何だか安心したように尖った尻尾を振り、少し紅蓮の炎を吐いて、ツクエに寝た。アイルはそのドラゴンの頭を優しく撫でる。

 

 

「ハリー、ロン、ハーマイオニー、今から私がする事は完全に他言無用。もし誰かが知ってたら…容赦なく全ての記憶を消させてもらうわ」

『は、はい…!!』

 

 

 そして彼女は目を閉じ、杖をドラゴンに向けて詠唱を始めた。辺りは、水を打ったかのように静かになる。自然の音も暖炉の燃え盛る炎の音もかき消され、その小屋は大きな魔力で包み込まれた。

 

 

『我の前に生けるノルウェー・リッジバックよ』

 

『永久の紲は其方を繋ぎ止め』

 

『其方は主人に全てを捧ぐ』

 

『曙の美しさ』

 

『燈の光』

 

『尊の刹那』

 

『烈の強さ』

 

『主人は其方にそれらを捧ぐ』

 

『我の前に生けるドラゴンよ』

 

『其方の忠誠を体に刻み込みたまえ』

 

『主もまた刻む 不滅の縁を』

 

 

 アイルは唱え終わると、杖で自分の腕を切った。途端に緋色の液体が宙を舞い、ドラゴンにかかった。すると、ドラゴンは物凄い光を放ち始めた。眩しくて、目が見えないほどだ。

 煌が失せると、五人の目の前には銀髪ショートの中性的な少女があった。少女は牛乳のような色をした、だぶだぶのローブを着ていた。天使のように可愛らしい少女は、5歳半ばのようで、白金の瞳を周りに向けてキョロキョロとしていた。

 

 

「お、ねえ、ちゃん…?」

「おぉ、久しぶりだけど上手くいったようね」

「あり? なんでにんげんになってるの?」

 

 

 可愛らしい少女は、自分の姿がドラゴンでなく人間になっている事に気がつき、アイルに目を向けた。すると、彼女は笑顔で答える。

 

 

「私のかけた魔法の所為よ」

「ドラゴンを、人間にする魔法…? そんなの、聞いた事ない」

「当たり前よ。私が作ったモノだもの」

「あ! 『魔法の錬金術師』!」

「あぁグレンジャー、私の黒歴史を掘り起こさないで!」

 

 

 アイルはわざとらしく頭を振る。

 

 

「おかあちゃん?」

「えぇそうよ。可愛いドラゴンちゃん」

 

 

 麗しき女性は優しく微笑むと、ツクエに座る小さな少女の頭を撫でた。シルクのような滑らかな銀髪は、何処かルシフを連想させた。でも、よく見ると若干色が違うのが分かる。

 

 

「私はアイル。この髭もじゃさんはハグリット」

「はぐりっと?」

「そうよ。それで、ハリー、ロン、ハーマイオニーね」

「はにー、ろむ、はーみゃいおにー?」

「あ…うん、そうね」

 

 

 少女は首を傾げてハリー達を見た。

 

 

「ハチミツみたいな名前になっちゃった」

「僕はハムじゃないのか?」

「私は猫っぽくなったわね…」

「アイル…その子の名前、俺がつけて良いか?」

 

 

 ハグリットは、アイルの様子を伺うように恐る恐る言う。何を恐る必要があるのか。数多の怪物達を目の前にして、ひるまずに「可愛いな〜♪」と言ってきた男が何を今更。アイルはえぇ、と笑って言った。

 

 

「貴方のドラゴンよハグリット。是非名前をつけてあげて」

「うぅ…お前さん良い奴だなぁあ」

「さぁ、どんな名前なの?」

「女の子だから、ノーバーとかどうだ?」

「ノーバーだって…どう思う?」

「うん! それがいい!」

 

 

 少女…否、ノーバーは大きく首を上下に揺らした。すると、ハグリットは本気で嬉しそうな顔をした。今にも泣きそうだった。どんだけ嬉しいんだよ…

 

 

「おうをおおお!!」

「ハグリット、お黙りなさい」

「はいぃ、すまんアイル。みんな」

 

 

 急に叫び出したハグリットに驚き、ハリー達は目をカッと見開いて若干震えていた。

 

 

「ねぇノーバー、貴方、この小屋で過ごしてもらえないかしら?」

「え…このいえ? いいよ!」

「うおおっぉ!」

「はぐりっと、よろしくね」

「あぁ! 良い子だなぁ!」

 

 




注意:別に犯罪じゃねぇよ、だって相手はドラゴンだ

アイルがチートすぎるんじゃないかという意見もリアルで聞いたのですが、個人的にチートは大好きです。なので容赦なく打ち込みます。私の小説はみんなチートだ、それを理解してくれ。
正直、こっちの話は秘密の部屋まで書き溜めをしているのだけど、私は大きなストックがある方が安心なので、この調子で進んでいきます。

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