ヴォルデモートに死ぬほど愛されています、誰でも良いので助けてください 作:カドナ・ポッタリアン
「闇の魔術に対する防衛術」の教師がいなくなった。ダンブルドアは当たり前だが、新しい教師を募集した。アイルがその日の夕食の時、自分のイスの上に置かれた「日刊預言者新聞」を覗くと、求人欄で教師の募集を文章を見かけた。
【ホグワーツ魔法魔術学校・「闇の魔術に対する防衛術」の教師募集!】
先日、当学校教師が辞職されましたので、新たに「防衛術」の教師を募集いたします。月給:25ガリオン。
ホグワーツに住み込みで教鞭をとってくださる方を募集しています。
現在は、アルバス・ダンブルドアが校長をしております。
校長から
「もし来てくれたら、ポテチあげるぞ? それもワサビ味☆ 美味美味〜♪」
校長は相変わらずだ。求人広告でふざけて、誰も来ないのではないかと思う。よく見てみると、これは一週間前のモノだった。アイルはそんなにも寝ていたのか。ワサビ味のポテトチップス、少し食べてみたいが、マクゴナガル曰く口から火出るほど辛いらしいので止めておく事にした。
チラッと左を見ると、マクゴナガルや校長が何やら話しているのが見えた。左を見ると、図体の大きいハグリットがソーセージを食べているのと、イスが一つ空いているのが見えた。しばらくボーッとしていると、スネイプが話しかけてきた。
「…アイル、さっきからお前は呆然としているが…どうした」
「いえ。別に…」
「無理には聞かん。あの日何があったのか。しかし、目障りな奴がいなくなると、中々爽快だ」
「”目障りな奴”? それはどういう…」
アイルが聞こうとすると、大広間の扉が勢い良くバン!と開いた。途端、生徒達や教員方は驚き、料理を取り落とす。そして皆、音の方向を見る。そこには、真っ赤なローブを着た、ダンブルドアのような長い白髪の、アイルの同い年くらいの若者が立っていた。
女子達から黄色い悲鳴が上がった。見た事もないような美しい顔立ちをしていて、何処か不機嫌そうだったが、その顔も尚神々しい雰囲気を醸し出していた。
アイルがそれぞれの寮を見ていくと、スリザリンテーブルでドラコ・マルフォイが驚愕の表情をしているのが分かる。しかし他の周りの人間は唖然としているだけで、驚いてはいなかった。
その男は、何処かで見た事があるようだった。
「ルシファースト・マルフォイ」
男は言葉を発しながら真ん中の道を通り、上座の教職員テーブルに向かって歩いてくる。歩くたびに、美しい純白の絹が揺れた。
「この度、『闇の魔術に対する防衛術』の教鞭を取る事になった」
感情の無い目をして、笑う事も表情を変える事もなく坦々とただ歩いてくる。
「スネイプ先生…あのマルフォイって人…」
「ルシウス・マルフォイの息子、ドラコ・マルフォイの兄だ…」
「っ!」
通りで似ている。あの嫌味ったらしい「死喰い人」。彼奴には二人も息子がいたのか。怒りと殺気がフツフツと湧き上がってくる。あの男はアイルと同い年のよう。それならば、彼女の事を知っているハズだ。彼女の事をーー
アイルには記憶があった。シルバーブロンドの少年の記憶。彼女が地下に監禁されていた時、一度だけ見た事があった。
『オマエ…あの人に連れてこられたんだよな?』
鎖に繋がれ、逃げる事を完全に諦め、考える事を止めようかなと思っていた頃だった。ヴォルデモートは”調教”と称して「磔の呪い」をかけた。何度も何度もかけた。辛くて辛くて、死にたいくらい痛くて怖くて。でもその度に、ヴォルデモートはアイルをそっと抱きしめる。そしてまた呪いをかけるのだ。
目の前に現れた白髪の少年は怖くはなかった。アイルは「助けて」とでも言いた気な目で彼を見た。少年は、何処かで見た事のある人物だった。
『無理だ。助けられない。オマエが俺を恨む理由は分かる…』
『…』
『おい、アイル・ポッター? 何でこんな所に』
『…』
『分からないのか? …あの人は、そろそろ帰ってくる。俺の事は言うなよ』
結局その少年が何がしたかったのかはわからなかった。しかし、その時の記憶だけは薄らと残っていた。
目の前の男ーールシファーストは、その時の少年に似ていた。本人、なのだろうか。
「おう、ルシファーストか。わしは、ご存知の通りアルバス・ダンブルドアだ。よろしく頼むぞ」
「…はい、よろしくお願いします。…そこの女性は、何か俺に恨みでも?」
ルシファーストは、アイルの方を見る。
「殺気を感じるのだが」
「知ってるくせに。覚えているくせに」
「…」
「そうやって、貴方達はいつも逃げる。いつもいつもいつも。私の苦しい思いは…貴方達の所為で大きくなったのよ」
「俺には知る由もない」
彼とアイルとの間に、火花が散っていた。大広間にいる人間は皆、その空気を感じ取った。すぐにスネイプが止めに入る。
「ルシフ、止めろ。今はそんな事をやる時ではない。後で睨みあえ」
「…オマエはいつもながら邪魔をするな。スネイプ」
ルシファーストは言い放つと、スネイプの隣の空いた席に座った。
*
「ルシファースト・マルフォイ…貴方はそんな名前だったのね」
夕食が終わり、生徒も先生も全員大広間から出た瞬間、そこにはアイルとルシファーストだけが取り残された。天井で輝く魔法で作られた空は、数多の星を映し出し、浮かび続けるロウソクは、淡く辺りを照らしていた。
漆黒の女と、純白の男。正反対であり表裏一体。その二つの存在が、今対峙していた。
「アイル・ポッター…俺はオマエを助けたかった」
「戯言かしらね? 私には、虚言にしか聞こえないわ。私がどんな思いをしていたか、知らないくせに」
「違う…俺は両親を死なせたくなかっただけだ。あの人の力は膨大だ」
「私は、彼奴に勝てない事はない」
「分からないだろう? そんな事」
ルシファーストはため息をつくと、グリフィンドールのテーブルに座った。
「…貴方の父親と母親は『死喰い人』なのでしょう? 何故捕まらないのよ。そうでもすれば、私の心は少しでも軽くなるのに」
「俺は知らない。俺に言われても分からない。俺はあの人に逆らえなかっただけだ。もう忘れてくれないか?」
「…」
「俺はやり直したい」
彼は真剣な目でアイルを見る。冗談にも嘘にも見えないが、何を今更やり直すというのだ。
「俺の事は、ルシフと呼べ。暗黒の時代は終わった。もう過去に囚われる事はない」
「何故、何故貴方はそれを私に言うの? 何故ホグワーツに…」
「オマエに会いたかった、ただそれだけだ」
「え…?」
「俺はずっと…オマエの事好きだったから」
『…俺様を差し置いて…』
「っ!」
「ど、どうしたの?」
「いや…」
ルシファーストはアイルを見た。さっき、何か声が聞こえた。低い、恐ろしい声だった。しかし、気の所為だろう。彼はアイルを見た。心なしか両者共、頬が赤くなるのを感じた。色白のルシファーストの肌はピンク色に染まっていた。
「な、何だか、恥ずかしくなってきたな…」
「そうだね…ねぇ、ルシフ? ダンブルドアから何か聞いたのかな? 先任の事とか…」
「嗚呼、辞職くらいしか聞いてないな」
「そうかぁ」
なら良し、とアイルはつぶやく。ルシファースト…否、ルシフは訝し気な目で彼女を見るが、何も言わなかった。アイルは、ルシフの気持ちについてはあまり触れない事にした。恋というのは複雑なモノだから。彼女自身、体験などした事ないが。
「…弟、いるよね?」
「ドラコの事か。良い子にしているか?」
「うーん…分からないな。普通の生徒みたいな感じだよ」
「オマエも弟がいるな。ハリーだろう?」
「えぇ。…あ、贔屓とかないから」
「分かっている」
ルシフは楽しそうに笑う。その笑顔はとても素敵だった。アイルはこの時、生まれて初めて心が熱くなった。
ハリポタの世界の物価って、案外低いですよね。
世界最速の箒「ファイアボルト」は500ガリオンなのですが、日本円に直すと(1ガリオン約870円)約435,000円のご様子。これを知った時の私の顔→( ´Д`)安い〜〜!
ハリー曰く、ファイアボルトでグリンゴッツの金庫を空には出来ないという事なので、イギリスの魔法界は相当物価が低いのでしょう。
なので、教員の給料は30ガリオン。まぁこれでも高い方なんじゃないかなと思います。ダンブーちゃん太っ腹だからなぁ良いなぁ( ̄ー ̄ )
皆さん、今年も宜しくお願いいたします( ´ ▽ ` )ノ