ワールドトリガー Another story   作:職業病

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原作一部カットしてありますのでとりあえず土下座です。
諸事情により主人公の名前が変わりました。


第6話

米屋が槍を突き出し、遊が剣でそれを受け止める。

 

「秀次!遊とはおれがやるぜ!そっちは頼む!」

 

「わかった。知り合いとはいえ容赦するなよ。ネイバーは人類の敵だからな」

 

「行くぜ遊!」

 

「今の言葉の返事しなくていいのかよ」

 

大きく突き出された槍を剣で受け止め、大きく下がる。どうやら米屋はかなりの腕を持っていることがいまのやりとりでわかった。

 

(さて、どうするかね)

 

修の立場を考えると下手に手出しできない。とはいえ返り討ちにしたらそれはそれで面倒なことになる。

 

(穏便にすませる方法があればいいんだけどね)

 

遊真も同じことを考えているようで防戦に徹している。

そこで米屋が再び飛びかかってきた。

槍が首に一直線に突き出されてくる。かなりの早さで防ぐのは間に合わない。避けるしかない。

だが普通に避けようとしたところで、槍の穂先が変形する。

 

「ッ!」

 

さらに大きく体を捻り、なんとか回避する。僅かに掠ったが大したことはない。

 

「あらら、浅いか。やっぱいきなり首は無理か。狙うなら足からかなー」

 

「随分いい槍もってんな。変形すんのかよ、それ」

 

「お、今ので気づくのかよ。やっぱお前、ただもんじゃねぇな」

 

「ただもんなんだけどな…」

 

「大型ネイバーバラバラにしたのも遊がやったのか?」

 

「いや、ありゃ遊真だ。おれじゃない」

 

「まぁそんなデカイの食らわないけどなっ!」

 

今度は足を狙ってくる。槍が変形するためかなり大きく回避する必要があるためなかなか神経を使う。

そこで遊真が壁に追いやられる。

その状況を打破するために『弾』印で駅の屋根を突き破り脱出する。

 

「あのバカ。スナイパーいるつったろ」

 

スナイパーと遊真の間に『壁』判をはる。しかしそっちに少し気をとられ米屋の槍の攻撃が遊の左肩を削る。

 

「どこ見てんだ!」

 

「弟の方をな」

 

剣で米屋を押し返したと同時くらいに『壁』判にスナイパーの弾が当たり、遊真を守る。

 

『すまん遊、助かった』

 

『スナイパーいるつったろ。少し考えて飛べ』

 

内部通信で遊真を叱る。その間も米屋の猛攻は止まらない。手を出せない故にこちらが少しづつ削られる。

 

「オラ遊!少し反撃してみろ!いじめみたいになってんぞ!」

 

「ほっとけ」

 

(いやマジでどうしよう。多分『鎖』判じゃ捕まらないし、『罠』判だと間違いなくオーバーキルだし。やべぇな)

 

猛攻を防ぎながら考えていると遊真が相手の黒い弾丸にあたり重しを取り付けられる。

 

「おっ、秀次やったな。ならおれもとっとと片付けるか!」

 

「レプリカ、遊真がやられたあのトリガーどうなってる?」

 

『トリオンを重しに変えて拘束するトリガーのようだ。直接的な破壊力がない代わりにシールドと干渉しないしくみになっている』

 

『便利なのがあるもんだ』

 

『解析が完了した。印は『射』印と『錨』印にした』

 

「OK。『錨』印+『射』印4重」

 

その瞬間、先ほど三輪が放ったものと酷似した弾丸がトドメを刺そうとした三輪の体を貫く。

 

「秀次!」

 

(馬鹿な!鉛弾をおれの放ったものの倍近くの威力で…⁈)

 

三輪が放った鉛弾と遊真が放った『錨』印とでは倍近くの重さの差があった。遊真は鉛弾を食らってもギリギリ動けたが、三輪は身動きすらろくにとれない。

 

「へぇ、いいな、それ。『円』判(サークル)

 

すると遊を中心に半径20メートルほどの球体の半透膜ができる。

 

「うお!なんだこりゃ!」

 

『鏡』判(ミラー)

 

半透膜が一瞬光るが、それで半透膜は姿を消す。

 

「?なにした遊」

 

「さぁな」

 

そう言いながら遊は下がる。当然米屋はそれを不審に思いながらも追う。

だがそこでそれは失敗だったことに気づく。一歩踏み出すとその瞬間床が光る。

 

「⁈」

 

すると米屋の動きは止まり、かわりに光る球体が周囲に現れる。

 

「もう遅い。『錨』判+『罠』判(トラップ)

 

球体が爆発する。すると遊真の『錨』印と同じような重しが米屋のトリオン体に付けられ、行動を不能にする。

 

「うわ!こっちもコピーかよ!やっべー!」

 

「はー疲れた。よし、これで話せそうだな」

 

「ふむ、話し合いしようか」

 

(こいつのトリガーは、他者の攻撃を学習するトリガー!それにコピーするトリガーもある。そんな反則みたいなトリガーがありなのか!)

 

「迅さん!」

 

「どもー。おっ、なんかかわいい子がいる。初めまして」

 

「は、初めまして」

 

迅が遊達のもとに到着する。恐らく後ろにいるのはスナイパーだろう。レプリカもついている。

 

「だから言ったろ秀次、やめとけって」

 

「わざわざおれらをバカにしにきたのか⁈」

 

この秀次と呼ばれた青年は相当ネイバーに恨みがあるように見える。執着、とも捉えられる。

 

「違うよ、やられて当然だ。だってこいつらのトリガーは、黒トリガーだからな」

 

「⁈」

 

「マジ⁈」

 

「レプリカ、黒トリガーってなんだ?」

 

『ふむ、黒トリガーとは優れたトリオン能力を持つ使い手が死後もおのれの力を残すために自分の命と全トリオンを注ぎ込んで作った特別なトリガーだ。黒トリガーは作った人間の性格等が強く反映されるため起動できる人間は限られるがその性能は桁違いだ』

 

「じゃあ、空閑と先輩のトリガーも…」

 

修はどこか納得した様子を見せる。遊真のトリガーの話を少し聞いていたようだ。

 

「最近普通の相手でもごたついてるのにこれで黒トリガーまで敵に回したらやばいことになるぞ。しかも2つだ。お前らは帰って城戸さんにこいつら追い回してもムダってこと伝えとけ」

 

「…その黒トリガーが敵に回らない保証は?」

 

「おれが保証する。クビでも全財産でもかけてやる」

 

迅の言葉に修は表情を明るくする。だが倒れてる三輪は別だった。

 

「損か得かなど関係ない。ネイバーは、全て敵だ。ベイルアウト!」

 

すると三輪のトリオン体は爆発し、本体がボーダー本部に飛んでいく。緊急脱出用のトリガーのようだ。

 

「さて、三輪隊だけだと報告偏るし、おれもいくかな」

 

そうして迅さんは去っていった。

 

「おいコラ遊!お前のトリガーどんな機能ついてんだ!最後のなんだ!」

 

「うるせー。おれのトリガーは鏡判。相手のトリガーをマネする、というか写し取るトリガーだ。さっきの『鏡』判で相手のトリガーを写し取って、それを使うんだ。遊真のと違って機能が上がるとかはないし、相手のトリガーが黒トリガーだと相性悪いとマネできないけどな」

 

「なんだそりゃ。あんま使い勝手よくねぇな」

 

「ほっとけ。てか米屋はネイバー嫌いじゃねぇの?」

 

「おれはネイバーに被害受けてないからな。恨みとかは正直ない。それに、その、なんだ?おれはお前は他のネイバーとは違うと思うからよ。本当に悪いやつなら、学校であんなじゃねぇだろ」

 

「そっか」

 

「ま、そんなんだ。じゃあおれはいくわ。次は手加減なしでよろしくな!」

 

そうしてその場に残されたのは遊と遊真と千佳だけになった。

 

「とりあえず移動しようか。時間も時間だしメシでも買って迅さんまとう。迅さん帰ってこないとなんもできんし」

 

「ふむ、そうだな」

 

「あ、私いい場所知ってるよ!」

 

「お?」

 

 

ファストフードで適当に食物を買い、千佳に案内された場所に行く。そこは古びた神社だった。

 

「おー!いい感じのとこだな!」

 

「そ、そうかな」

 

(古びた神社、ね。確かにここなら誰も来そうにないし座るとこもあるしでいいな。しかし…)

 

「千佳は、なんでこんなとこ知ってたんだ?」

 

本来ここは警戒区域にほぼ入ってるようなとこだ。千佳のような一般人が来る場所とはとても考えづらい。

 

「あ、実はネイバーから追われてる時に偶然見つけて、それからよく使わせてもらってるの」

 

「ほう、そんなことが。ま、とりあえずメシでも食ってオサムを待とうぜ」

 

そういってみんなで買ったものをモサモサする。今時のファストフードはあんな短時間でそこそこうまいものがでる。技術の進歩とは素晴らしいものだ。無論、体にいいとは思えないが。

 

「二人は、本当にネイバーなんだよね?」

 

「ほうだよ」

 

「飲み込んでから答えろ」

 

「む、ぐ。あ、でも街襲ってたのとおれらは関係ないよ」

 

「うん、それは修くんに聞いた。…それでね、二人に聞きたいんだけど、向こうに連れてかれた人ってどうなるの?」

 

「気になるのか、お兄さんと友達のこと」

 

「え?」

 

「すまんなチカ、さっき修に少しだけ聞いたんだ」

 

「あ、そういうこと。うん、大丈夫だよ」

 

「ふむ、向こうの世界に連れてかれた人についてだったな。それは連れてかれた世界によるな…」

 

千佳はよくわからないのかキョトンとしている。知識のない人間からすれば襲ってしてるネイバーは皆同じに見えるし無理もないだろう。

 

「あっちにもたくさん国があって国によってスタイルが違うんだ。こっちに来てるネイバーも同じに見えて別の国のネイバーだったりする。だからその国の状況…、戦争に勝ってるか負けてるか、兵隊を鍛える余裕があるかないか、司令官がデキるやつかダメなやつか、いろんな事情で話は変わってくるけどトリオン能力が高い人間は向こうでも貴重だからほとんどの場合戦力として大事にされると思うよ。チカとか超大事にされるかも」

 

「じゃ…じゃあ、向こうにさらわれた人が向こうで生きてることも…」

 

「普通にあるだろうな。おれの行ったとこでもさらわれた人は大半生きてたし」

 

「そっか、そうなんだ…」

 

千佳はどこか嬉しそうに、そしてホッとしたように呟いた。

 

「しかし千佳、お前がボーダー頼りたくない気持ちと事情は理解したけどさ、その結果お前が被害にあったりしたら周りにもっと迷惑かけるということを忘れるな。今のやり方をやめろとは言わない。でも、周りのこともお前はもっと考えた方がいい。修と同じでお前はちょっと自分のことを考えてなさ過ぎだ」

 

「…うん」

 

「まぁ気持ちはわからんでもないけどなー。おれもオサムといたせいでオサムの出世をフイにしたかもしれんし。だとしたら申し訳ない」

 

「それは大丈夫だよ。修くん多分そんなこと気にしてない。『自分の意思でやったことだ。お前が気にすることじゃない』って言うと思う」

 

思いの外千佳のマネがうまくて遊はつい吹き出してしまう。本当に言ってる姿を容易に想像できる。

 

「さっきも修くん、遊真くんと遊くんのこと心配してたし」

 

「あいつもあいつで、面倒見の鬼だな…。心配の必要なんかないのに…」

 

「え、でもボーダーの人二人を狙ってくるんでしょ?」

 

「ボーダーが何人でこようと本気でやればおれたちは負けないよ。おれとレプリカだけなら、そうだな、迅さんとかならどうなるかわからんな」

 

迅悠一、先程のおでこにサングラスかけた人だ。確かにサイドエフェクトの能力と雰囲気からして彼は相当できると遊は思っていた。恐らく遊は負けないが、それでも相手にはしたくない。

 

「ユウなら勝てるか?」

 

「まぁ、やり方次第だがな。多分負けない」

 

「遊くん、そんなに強いの?」

 

「ユウは一人で城崩しとかやってたからな」

 

「おい、いらん情報喋んな。おれが戦闘狂だと思われたらどうすんだ」

 

「あ、あはは…」

 

ほのぼのした雰囲気だった。

 

ーー

 

「二人は、どうしてこっちの世界にきたの?」

 

「おれは親父が死んだから」

 

「え、あ、ごめん…」

 

「いいって気にしないし」

 

遊真がメシを食い終わりそこらへんの落ち葉を蹴って遊んでいると千佳が聞いてくる。その答えに対して遊真の返事が予想以上に重い理由だった。

 

「あれ、じゃあ遊くんは?」

 

「おれは遊真の付き添いと、あと持病持ちでね、おれ。それどうにかできないかなって」

 

「え、持病って…」

 

「時々発作で胸が苦しくなる感じかな。今は落ち着いてる。ただこれどうやらトリオンが関係してるみたいでな、他の国だと治せる方法が見つからなかったからこっちに来たんだ」

 

「そうだったんだ…」

 

少し空気が重くなる。申し訳ないことしてしまったな。

 

「ちっちゃいころからいろんなとこ連れまわされて、確かおれが11の時に親父が死んだ。『もしオレが死んだら日本に行け。知り合いがボーダーって組織にいるはずだ』って親父がよくいってたから日本に来たんだ。まぁ、親父のしてた話とは現状がだいぶ違ったけどな」

 

「遊真の親父さん、変な人だったもんな」

 

「ユウのとこもな」

 

「そうだな、遊真のとこより変人だった」

 

「遊真くんのお父さんはどんな人だったの?」

 

「変な人だったよ。例えばおれが6歳のころに聞かされた3つの教えってのがあるんだけど…

 

ーー

 

3つ、『親の言うことが正しいと思うな』」

 

「⁈」

 

「な、変な人だろ?」

 

「確かにちょっと変わった人だね」

 

ちょっとどころではないだろうけど。

そこで遊のスマホが震える。修からの連絡だ。

 

「修から連絡が来た。移動しよう」

 

 

それから少し移動。迅さん達と合流した。

 

「おっ来た来た。オサムと迅さん」

 

謎のドヤ顔迅さんと相変わらずの修。

 

「オサムえらい人にしかられた?」

 

「いやまあ叱られたけど、とりあえず処分は保留になった」

 

「そか、よかったなー」

 

「いやまだ安心できませんよ。先輩達のトリガーを狙ってくる可能性があるんだ」

 

まぁ今までのやりとりをみてればそうなることは大体予想できるが。

 

「これから、どうしますか?迅さん」

 

「んーそーだな。いろいろ考えたけどこういう場合はシンプルなやり方が一番かね」

 

「シンプルなやり方?」

 

「そ。遊、遊真、お前らさ、ボーダーに入んない?」

 

「ま、そうなりますよね…」

 

「おれが…⁈」

 

大体予想できていた。迅さんみたいなタイプならボーダーに勧誘してくる可能性も遊はなんとなく考慮していたので。しかしいろいろ迷惑かけるであろうからすこし不安ではあるようだが。

 

「二人をボーダーにいれる⁈」

 

「おっと、別に本部に連れてくわけじゃないぞ。ウチの支部に来ないかって。ウチの隊員は向こうにも行ったことあるし、お前らが向こう出身でも騒いだりしない。とりあえずお試しで来てみたら?」

 

「ふむ、ユウはどうする?」

 

「遊真に任せる」

 

「じゃあ、オサムとチカも一緒ならいいよ」

 

「よし、決まりだな」

 

 

途中で土産の品の饅頭を買って移動すると、川の上に建物が建っている。何かの研究施設だろうか?

 

「さぁついた。ここが我らの玉狛支部だ」

 

なぜ川の上にあるんだ。

 

「ここは昔川の何かを調べる施設だったらしくてな。使われなくなっていたとこをウチが買い取って支部にしたんだ。いいだろ?」

 

「さりげなくこころ読まないで下さい。洪水したら終わりじゃないすか?」

 

「そこはトリガーでどうとでもなる」

 

なぜドヤ顔…。それでいいのか。

 

「ただいまー」

 

ドアを開けると、なぜかカピバラに乗ったヘルメットの子供がいた。なぜ室内でヘルメット。

 

「しんいりか…」

 

「いやしんいりか、じゃなくて」

 

「おぶ」

 

迅さんがヘルメット小僧にチョップかましてる。すると上からなんかパタパタ聞こえてきた。誰かいるのだろう。

 

「おかえり迅さん!…あれ、もしかしてお客さん?うわ、お菓子あるかな⁈ちょっと待って!」

 

慌ただしく降りてきたのはメガネをかけた女性だった。見た所遊と同い年くらいだろうか。

 

「ごめんなさい!お菓子とか今用意しますからとりあえず上がって下さい!」

 

「あ、いえ、お構いなく。急に押しかけたのはこちらですし。あ、これ粗品ですが」

 

「え⁈あ、いやーすいません。あ、これいいとこのやつだ。じゃあ上がって下さい。すぐお茶用意するので」

 

いいって言ったんだけどな。

 

 

居間に通されてお茶だけでなくわざわざどら焼きまで用意してくれた。

 

「どら焼きしかなかったけど、このどら焼きいいやつだから食べて食べて。アタシ宇佐美栞。よろしくね!」

 

「これはこれは立派なものを…」

 

「いただきます」

 

どうやら彼女は宇佐美栞というらしい。メガネで結構明るい子だ。

そこで遊真がどら焼きを食べようとすると横からどら焼きを取ろうとする手があった。さっきのちびっこだ。

 

「あ!陽太郎!あんたはもう自分の食べたじゃん!」

 

「あまいなしおりちゃん。ひとつでまんぞくするおれではない」

 

なぜドヤ顔なのだろう。そこで遊真がちびっこの頭にチョップを下す。

 

「悪いなチビ助。おれはこのどら焼きというやつに興味がある」

 

お前もチビだしちびっこ相手になに大人気ないことしてるのだか…。

 

「ふぐぐ、おれのどら焼き…」

 

しかも半泣きになってる。

 

「あーもう、おれのやるからなくなチビ助」

 

「ふぉ!おまえいいやつだな!でしにしてやってもいいぞ!」

 

「あーハイハイ」

 

とりあえず適当に流す。遊はあまりちびっこの相手には慣れていないからどうすればいいのかよくわからないのだ。

 

「…なんていうか、本部とは雰囲気だいぶ違いますね」

 

「そう?まぁウチはスタッフ10人しかいない基地だしね。でも、はっきり言って強いよ」

 

ここまで自信もっていうのだから本当に強いのだろう。

 

「ウチは防衛隊員は迅さん以外に3人しかいないけどみんなA級レベルのデキる人だよ。玉狛支部は少数精鋭の実力派集団なのだ!」

 

「少数精鋭…!」

 

「キミもウチに来る?メガネ人口増やそうぜ」

 

なぜそこでメガネネタを入れてくるのだろう。そんなにメガネ大事なのだろうか。

 

「あの、迅さんからさっき聞いたんですけど宇佐美さんも向こうの世界に行ったことあるんですか?」

 

「うん、一回だけね」

 

「その向こうに行く人ってどうやって決めてるんですか?」

 

「それはねーA級隊員の中から選抜試験で選ぶの。大体チーム単位で選ばれるからアタシもくっついていけたの」

 

「やっぱり…すごいんですよねそれって」

 

「そりゃボーダーの中でも精鋭だからね。ツワモノ揃いだよ」

 

恐らく千佳は向こうに行って兄や友人を探したいのだろう。この様子からなら一目瞭然だ。

 

「よ、お前ら。親御さんに連絡して今日は泊まってけ。ここなら本部の人も来ないし空き部屋もあるから。宇佐美は面倒見てやって。そんで、メガネくん、遊、遊真。うちのボスが会いたいってさ」

 

ボス。支部長の事だろう。迅さんにつれられて支部長室へと向かった。

 

ーー

 

支部長室にはメガネをかけた無精髭の男がいた。

 

「お前が空閑さんの息子か。初めまして」

 

「どうも」

 

どことなく似た雰囲気のある二人だ。

 

「んで、お前が神谷さんの息子な。お久しぶり」

 

「…みたいですね。おれは全く記憶にないんですけど」

 

「そりゃそうだ。お前と会ったのはお前がこーんな小さいときだからな!」

 

その言葉に他の人は驚愕の表情を浮かべている。まさか知り合い、いや知り合いと言うのか甚だ疑問だが知り合いだとは思っていなかったらしい。

 

「いやしかし、ほんとでかくなったな。悠介さんにも見せてやりたいよ」

 

「……親父が見たがるとも思えませんけどね」

 

「素直には言わないだろうな。さて、本題に戻ろう。まずおれらはお前らを捕まえる気は全くない。あと迅と三雲くんに聞いたが、どうやらボーダーに知り合いがいるらしいな。それだけ教えてくれ」

 

遊は特別何も言ってないので恐らく遊真が何かしら修に言ったのだろう。

 

「モガミソウイチ。親父が言ってた知り合いはモガミソウイチって人だった」

 

「……そうか、やっぱり最上さんか」

 

二人の顔に陰がさす。そして迅さんは腰のベルトから黒い棒状のものを外し机におく。

 

「この黒トリガーが、最上さんだ」

 

それが意味すること、それは最上さんはもう亡くなっているということだ。

 

「最上さんは4年前にこの黒トリガーを残して死んだ」

 

「……」

 

「そうか、このトリガーが……」

 

「おれは有吾さんや悠介さんに新人時代いろいろよくしてもらった。その恩を返したい。ボーダーに入れば大っぴらにお前らのことを庇える。悪い話じゃないだろう。どうだ?ボーダーに入んないか?」

 

確かに悪い話ではない。だが遊真のこちらに来た目的を考えると……

 

「ユウはどうする?」

 

「わからん。少し考える。遊真は」

 

「おれは……」

 

 

「まさか断られるとはな」

 

「……」

 

今部屋にいるのは林藤支部長と遊のみ。

 

「遊、お前はどうする?」

 

「おれは、まぁあいつ次第でもありますけど今の所残ろうとは思います」

 

「そうか」

 

「で、おれを残した理由はなんですか?」

 

「ああ。悠介さんからある程度こちらのことは聴いてるんだろ?」

 

「そうですね、ある程度は。ボーダーが完全ネイバー排他的主義であるとこと街の平和第一主義のとこと、そこまでネイバーに排他的ではないとこの三つの派閥に分かれてることくらいなら」

 

「そこまで知ってんのか」

 

「ある程度親父に聞かされました。あなたの話もそこそこ聴いてます」

 

「うへぇ、変な話されてないといいけど」

 

「してませんよ、そんな変な話」

 

「そっか。じゃあ本題だ。お前の昔話を聞かせてくれ。そしてお前がこっちに来た理由も」

 

「……ええ、わかりました」

 

遊の過去が、明かされる。




神谷遊
身長179㎝
16歳(現時点)高2
誕生日 1月6日
鍵座 B型
好きなもの 海 空 本 コーヒー 和食
嫌いなもの 面倒事
トリガー 鏡判(きょうばん)
判(遊真でいう印)を使う。コピーしたのは大抵判になる。
『強』判 遊真の『強』印のコピー。効能は同じ。
『弾』判 遊真の『弾』印のコピー。効能は同じ。
『隠』判 姿を透明化させ、レーダーから消える。隠密行動に便利。
『壁』判 巨大な壁を出現させる。『追』判と併用すると可動式になる
『射』判 遊真の『射』印のコピー。効能は同じだが『追』判との併用で追尾式になる
『罠』判 罠を仕掛け、その上を通った相手の動きを瞬間的に止め、爆発を起こす光球を周囲に出現させ、攻撃する。イメージはFFの皇帝の「メランコリアの檻」
『錨』判 遊真の『錨』印のコピー。効能は同じ。
『追』判 他の判と併用する時のみ使える。使った判が追尾型になる
『円』判 光の半透膜状の球体を作り出す。そのサークルの中だと物を動かしたりすることが可能。『鏡』判と併用でサークル内の敵のトリガーをコピーできる。初期装備。
『鏡』判 初期装備。相手のトリガーをコピーする。『円』判と併用しないと、相手に直接触れる必要がでてくる。初期装備。
『捕捉』 ターゲットにカーソルをつけ、どこにいるか常に把握できるようになる。『追』判と併用で特定の相手につけられる。初期装備。
『シフト』 出現させた剣の半径2メートル以内に瞬間移動する。剣を投げてその場所に移動する事も可能。初期装備。
『幻影剣』 多数の剣を周囲に出現させる。防御も可能。トリガーを起動させずに出現させることもできる。初期装備。
なお、判でないものは大抵初期装備。

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