ワールドトリガー Another story   作:職業病

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第4話

ボーダー本部会議室

 

現在、そこにはボーダー上層部の面々が集結している。それに加え、出頭した修とボーダー本部司令城戸正宗の隣に立つA級7位部隊、三輪隊隊長三輪秀次が立っている。

そこに1人の胡散臭い軽薄な笑みを浮かべた男とスーツを着た女性が入ってくる。

 

「迅悠一、お召しにより参上しました。」

 

男、迅悠一は会議室に入ると軽いノリでそう言葉を発する。

 

「ご苦労。」

 

顔に大きな傷が入っている城戸がそう告げる。

 

(この人は…!)

 

『よう、無事か?メガネくん』

 

迅をみた修の頭の中では過去の記憶が再現される。あの時修を助けたボーダー隊員だ。

迅が椅子に座ろうとしたところで修に気づき、声をかける。

 

「おっ、キミは?」

 

「あ、三雲です。」

 

「ミクモくんね、おれ迅。よろしく。」

 

軽く挨拶をしてくる迅に曖昧な感じで修は返事をする。

さすがに覚えられていなかったのだろう。迅も特に修に対して思うところはなかったような態度だ。

 

「揃ったな。本題に入ろう。昨日から市街地に開いているイレギュラーゲートへの対策だ。」

 

城戸が会議の開始を口にし、議題を提示する。だがそこへ1人の男がそれを遮るように言葉を発する。

 

「待って下さい。まだ三雲くんの処分に結論が出ていない。」

 

声を発したのはボーダー本部長忍田真史。防衛部隊の指揮官である。

その隣には本部長補佐の沢村響子が座っている。

 

「結論?そんなもの決まっとろう。」

 

忍田の言葉に対して怒気を含んだ声があげられる。

 

「クビだよクビ。重大な隊務規定違反。それを1日に2度だぞ?」

 

本部開発室長鬼怒田。見た目はほぼタヌキであるが、実績はかなりのもので偉そうにするだけのことはある。

 

「他のC級隊員にマネされても問題ですし、市民にボーダーは緩いと思われたら困りますしねぇ。」

 

メディア対策室長根付。三門市においてアンチボーダーが少ないのはこの人のお陰である。

 

「そもそもこいつのようにルールを守れんやつを炙り出すためにC級隊員にもトリガーをもたせとるんだ。バカが見つかった、処分する。それだけだ。」

 

鬼怒田が早口に捲し立てる。かなりご立腹の様子であるのは誰の目からみても明らかである。

 

「おお、すごい言われようだな。」

 

迅の関心した声に修は何も返すことはできない。隊務規定違反なのは修も承知の上だった。反論できる立場ではないことは修も理解している。

そこで再び忍田が抗議の意を唱える。

 

「私は処分に反対だ。三雲くんは市民の命を救っている。」

 

「ネイバーを倒したのは木虎くんでしょう?」

 

根付が少し嫌味のこもった言い方をするが、忍田はそれに対してさらに付け加える。

 

「木虎は三雲くんの救助活動の功績が大きいと報告している。」

 

その言葉に修は驚愕の表情を浮かべる。あれだけ否定的なことを言われてきたから修の反応は当然といえる。

 

「へぇ、あの木虎が。」

 

迅もその事実に対して驚いたような声を出す。

 

「さらに嵐山隊の報告によれば、三門第三中学校を襲ったネイバーを三雲くんは撃退している。隊務規定違反とはいえ、非常時にこれだけの働きができる人材は貴重だ。彼を処分するよりB級に昇格させてその能力を発揮してもらうほうが有意義だと思うが?」

 

忍田は嵐山隊などの報告を伝え、修の処分に反対の意見を唱え続ける。が、

 

「本部長の言うことももっともだ。が、ボーダーのルールを守れない人間は私の組織には必要ない。」

 

忍田の言葉を城戸が一刀両断する。その言葉に忍田は僅かに顔を歪める。

 

「三雲くん、今日のような事態が再び目の前で起こったら君はどうする?」

 

城戸の問いに僅かに考えるような間が空いたが、

 

「今日みたいに人が襲われていたら、やっぱり助けに行くと思います。」

 

「ほれみろ、まるで反省しとらん。クビで決定だ。」

 

修はやはりとでも言うべき答えと、それに対して鬼怒田は変わらず修への処分を決定させようと口調を荒げる。

 

(バカ正直なヒーローだな…。これでクビとは勿体無い。)

 

もう一人の幹部のタバコを咥えた男はそう思った。

 

「三雲くんの話はもういいでしょう。今はとにかくイレギュラーゲートをどうにかすることです!先程の爆撃で幸いにも死者は出ておりませんが重軽傷者は150名以上。建物への被害もそれなりにでており第一次ネイバー侵攻ほどではないとはいえ、惨事であることには間違いありません!」

 

根付はかなり焦った様子で今回の被害内容を供述する。遊のお陰でかなり被害は抑えられているとはいえ、ゼロではない。それなりにでている被害に対する補償を考えると根付の態度は当たり前とも言える。

 

「このままでは三門市を去る人間も増えるでしょう。被害者への補償もかなりの額になりますよ。ねぇ唐沢さん。」

 

先程のタバコを咥えた男、唐沢は根付の言葉に淡々とした様子で応える。

 

「いえ、金集めは私の仕事ですから。言ってもらえれば必要なだけ引っ張ってきますよ。しかし今日みたいな被害が続くとスポンサーも手を引く可能性がでてきますね。開発室長。」

 

外務、営業部部長唐沢。三門市、県、国、しいては世界を相手に協議、交渉等を一人でこなす凄腕の男。この人のお陰でボーダーは成り立っているといっても過言ではないだろう。

 

「…それは分かっとる。しかし開発部総出でも原因がつかめんのが現状だ。今はトリオン障壁によってゲートを強制封鎖しとるが、それもあと46時間しかもたん。それまでにどうにかせんと…。」

 

鬼怒田の言葉を聞き迅はスマホをいじりながら現状を頭の中で整理する。

 

「…で、お前が呼ばれた訳だ。やれるか?迅。」

 

迅が所属している玉狛支部支部長のメガネをかけ、タバコを咥えた無精髭の男、林藤が迅に尋ねる。

その言葉に迅は不敵な笑みを浮かべ、

 

「もちろんですとも。実力派エリートですから。」

 

自信たっぷりに肯定した。迅の言葉に幹部一同は驚愕の表情を浮かべる。

 

「どうにかなるのかね⁈」

 

「まかせて下さい。イレギュラーゲートの原因を見つければいいんでしょ?その代わり、と言ってはなんですが、」

 

迅は一旦言葉を切ると、修の肩に手を置き、提案もとい要求をする。

 

「彼の処分をおれに任せてもらえませんか?」

 

「…?どういうことだ?」

 

「…彼が関わっているというのかね?」

 

「はい。おれのサイドエフェクトがそう言っています。」

 

その言葉にその場の修以外の全員が納得の表情をする。修だけが現状とサイドエフェクトの意味を分かっていないようだが。

 

「いいだろう。好きにやれ。」

 

「ありがとうございます。」

 

城戸は迅の要求を特に考えることなく要求をのんだ。

だが城戸は迅に新たな質問をする。

 

「もう一つある。迅。これは木虎の報告書に書かれていたことなのだが、街中に現れた二体の新型ネイバーのうちの片方は木虎が撃退、そして何者かの支援によって川に引き摺り下ろし討ち取ったとある。もう一体の方は仮面を付けた黒ずくめの男によって街の被害が抑制され、さらにはネイバーを撃墜した、とある。恐らく一体目のネイバーもこの仮面の男の支援によるものだと思うが、問題なのはこの仮面の男が恐らく向こうの世界からきた存在であり、ボーダー管轄外のトリガーを持っていることになる。この男については貴様は何か心当たりはあるか?」

 

城戸からの質問に迅は僅かに目を細める。

 

「いや、今のところはなにも見えませんね。」

 

「そうか…。ならば三雲くん、君は現場に居たからこの男のことを目撃、または接触しているのではないか?何か知っていることがあれば話してもらおう。」

 

修は急に話をふられ僅かに動揺するが、遊の言葉を思い出しその事を口にする。

 

「…いえ、確かに目撃はしましたが接触までは…。でもその仮面の男は街の上空に壁をはって街への被害を抑えてくれて、それで僕の救助活動もスムーズにできました。その仮面の男が何者かはわかりませんが、ボーダーにとっても有益な存在だと、僕は思います。」

 

修は事前に遊に自分について聞かれたらこんな感じで答えろと言われていたことをほぼそのまま声に出す。

城戸は相変わらず無表情だが、隣に立つ男の視線は一瞬にして鋭く冷たいものへと変化した。

その視線に修は気づかない。

 

「…そうか、情報感謝する。迅、お前はこの仮面の男についても調べてもらう。この男の正体が分かり次第捕縛し、連行しろ。」

 

「連行した後はどうするんですか?」

 

「決まっているだろう。ネイバーは全て始末する。それがボーダーの務めだ。」

 

修は城戸の言葉に驚愕し、冷や汗を流す。忍田も苦虫を噛み潰したような顔をする。街の被害を抑えてくれた存在を見つけ次第抹殺するというのだ。穏健派の忍田からしてみれば到底承諾できるものではないだろうが、この場においてその反論は意味をなさない。そのことを理解してるが故になにも言わないのだろう。

 

「では解散だ。次の会議は明日の21時からだ。」

 

城戸の号令により幹部の面々は席を立つ。

 

「さて、よろしく頼むぞ。メガネくん。」

 

「は、はい!(覚えてたのか!)」

 

修の返事を聞くとニヤリと迅は笑って幹部たちにいろいろ助言等々をしていく。その光景を修は感心と驚愕の入り混じった表情で見つめていた。

そんな修に一人の男が声をかける。先程から城戸の隣に護衛のように立っていた三輪という男だ。

 

「三雲くん、一つ聞いていいか?」

 

「え、はい。」

 

「昨日警戒区域でバラバラになっていた大型ネイバー。あれは君がやったことか?それとも例の仮面の男がやったことか?」

 

修はその質問に少し動揺する。昨日そのネイバーを倒したのは遊真であり、修でも遊でもないのだから返答に困るのは当然だろう。

 

「現場付近で保護されたのは君の同級生だった。そして昨日あの場に正隊員はいなかった。君が、または仮面の男がやったとなるなら腑に落ちる。」

 

「……。それは、僕がやりました。」

 

「…。そうか疑問がとけた。ありがとう。」

 

修はその言葉を聞き、会釈すると会議室を後にした。

その後ろで三輪からの視線がさらに鋭く冷たいものになっていることに修が気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、修は遊真に渡されたレプリカの子機を通して遊と遊真に一つの質問をしていた。

今日の会議で迅が口にした『サイドエフェクト』についてだ。

 

『サイドエフェクトとは高いトリオン能力を持つ人間に稀に発現する超感覚のことだ。トリオンが脳や感覚器官に影響を及ぼし起こる現象であり、それらを総称してサイドエフェクトと言う。意味は「副作用」。』

 

「副作用…。超能力みたいなものか?」

 

『炎を出したり空を飛んだりといった超常的なものではない。あくまで人間の能力の延長線上のものだ。』

 

『目を閉じてる間だけめちゃくちゃ耳が良くなるやつとかいたな。』

 

『あー、あとは視力が恐ろしくいい奴とかもなー。多分数値にしたら視力10.0くらいあるんだとさ。』

 

遊と遊真のサイドエフェクトの例を聞き、納得した様子を修は見せる。

 

「迅さんがやたら余裕な感じなのはよっぽどすごいサイドエフェクト持ってるってことなのか…?」

 

『そんなすごいサイドエフェクトあるかなぁ?遊は今までで一番すごいと思ったサイドエフェクトってなに?』

 

『ああ、そうだな。頭の中で同時に多数の計算をやってのけるやつかなぁ。確か名前は「同時多数演算処理」とか言ってたかな。』

 

「そんなことできるのか…!」

 

修は遊のあげた例に驚愕する。そんな超人的なことができる人がこの世にいるのか。そしてサイドエフェクトとはそんなことまで可能にするのか。そう考えていると遊真の方の通信機からなにやら物音がする。遊の方からはしないのに遊真の方だけ、だ。しかもこんな深夜にである。修は不審に思い遊真に尋ねる。

 

「空閑、お前今どこにいる?」

 

『え?今?学校。』

 

「学校⁈こんな時間にか⁈」

 

『レプリカがなんかイレギュラーゲートに心当たりがあるって言うからちょっと調べて回ってる。』

 

「お前、ボーダーに任せるとか言ってなかったか?」

 

『まぁボーダーに任せてほっといたら多分その強制封鎖とやらがとけるまでにゲートの原因を見つけんのは、キツイだろうなー。』

 

「神谷さんはどこに?」

 

『おれ?普通に家にいんぞ。行くの面倒だし。あと修、別にさん付けじゃなくていいぞ?おれ気にしないし。』

 

「いや、でも年上ですし…。」

 

『まぁ修がそうしたいのなら好きにすりゃいいけどさー。』

 

「…じゃあ、神谷先輩で…。」

 

『まぁ、なんでもいいか。』

 

『まぁでもなんかみつかったらオサムにも教えてやんよ。また明日。』

 

遊真はそう言うと無線を切った。

 

「…強制封鎖がとけるまであと42時間。僕はのんきに寝てていいのか?」

 

『修が行ってもなにもできねぇよ。それに人間は休養が必要だ。どうせ明日は学校休みなんだからおとなしく寝とけ。』

 

「…じゃあ空閑はどうなんですか。」

 

『あいつはちょっと特殊でな。理由はそのうちわかる。今は気にすんな。』

 

「…わかりました。じゃあ、おやすみなさい。」

 

『おお、おやすみー。』

 

そう言うと遊も無線を切る。そのまま修はおとなしく床につきすぐに眠りにおちた。

 

 

次の日、街中にイレギュラーゲートが発生したことにより遊の通う学校も休みになっていたので少しだけ遅めに起きる。適当に朝食を済ませ恐らく一晩中街中を徘徊していただろう遊真におにぎりやらなんやらを(多めに)作って家をでる。レプリカのナビゲートに従って遊真の元へ歩を進めながらそろそろどっかでバイトでもするかなーと考えながら歩いていた。

 

しばらく歩くと警戒区域内で何かを漁っている遊真の姿を認める。

なにか見つけたようだ。

 

「よう遊真、お疲れ。朝飯持ってきてやったぞ。」

 

「む、遊か。それはありがたい、ちょうど腹減ってきて帰ろうかと思ってたところだ。」

 

「なんか見つけたみたいだな。」

 

遊がそう聞くと遊真は遊が作ってきたおにぎりを頬張りながら首肯する。

 

「ふぉう。ふぁんにんふぁこひふだっふぁ(おう、犯人はこいつだった)」

 

「食い終わってから話せ。ん、と、あぁこいつか。」

 

遊真が差し出した虫みたいなトリオン兵を見つめながら遊は納得する。確かにこいつならゲートの原因も理解できるものがある。

 

「なるほど、確かにこいつなら…。」

 

「なぁ遊。」

 

「ん?」

 

遊真から突然声をかけられる。

 

「最近発作の方は大丈夫なのか?」

 

「…。まぁ、大丈夫だ。」

 

遊の言葉に遊真は目を細め、おにぎりを頬張りながら言う。

 

「珍しくつまんない嘘つくね。分かってて言ってんだろ、おれに嘘は通じないって。」

 

「……。」

 

遊真の言葉にただ沈黙する事しか、遊は出来なかった。

 

「ん?」

 

そこで遊は不意に二人の人間の気配を察知する。遊は昔から気配察知の訓練を父親に課せられていたためかなり広範囲いあたって人間の気配を察知することができる。(サイドエフェクトではない。見聞色の覇気みたいなもの)

まだ少し距離があるためハッキリしないが恐らく片方は修だろう。もう片方はまだ知らない気配だ。

遊真が遊の作った朝飯を平らげた直後に警戒区域内に入ってくる二人の人影を遊は認める。

やはり片方は修で、もう片方の長身のサングラスをつけた男はまだ遊は知らない人間だった。

 

「空閑…⁈それに神谷先輩も…⁈」

 

「おっ、やっぱり知り合い?」

 

修が遊と遊真の姿を見ると声をあげ、隣の男は何かを確信したような笑みを浮かべいる。

 

「おうオサム。…とどちら様?」

 

「おれは迅悠一!よろしく!」

 

「おお、あんたが噂の迅さんか。」

 

「お前ちびっこいな!何歳だ?っと、お前は逆にでかいな。おれよりでかいんじゃないか?」

 

迅は遊と遊真の頭をわしゃわしゃしながら尋ねる。遊真はともかく遊は長身のため頭をわしゃわしゃされるのはかなり変な図であった。

 

「おれは空閑遊真。背は低いけど15歳だよ。」

 

「おれは神谷遊。16歳。遊真の兄貴みたいなもんだ。」

 

遊真は普通に答え、遊は迅を観察するように見ながら答える。

 

「空閑遊真、神谷遊。遊真と遊ね。ほんと兄弟みたいな名前してんな。」

 

迅はそこで一旦言葉を切った。そして再び二人に問いかける。

 

「お前ら、向こうの世界から来たのか?」

 

その瞬間遊は左手の人差し指を立て、迅に突き出す。

そうすると結晶が砕けるような光と音を発しながら十数ものそれぞれ形の違う剣が迅に切っ先を向けた状態で現れる。

 

「いやいやいやいや待って待って!そういうアレじゃない!お前らを捕まえたりしないよ!」

 

さすがにいきなりここまでのことをされるとは思ってなかったのだろう。迅はかなり狼狽え、弁解する。

その言葉をきき、遊は視線を遊真に向けるが遊真は反応しない。そうすると遊はそのまま手をおろし、再び結晶が砕けるような光と音を出し剣は消滅する。

 

「ふービックリしたー。」

 

「早とちりだったみたいですね。いきなりのご無礼お許しください。」

 

「ああいや、別に気にしなくていい。お前らもいろいろ警戒してるだろうしな。」

 

遊の謝罪に迅は本当に気にしていないように返す。なかなか懐の深い人間のようだと遊は思った。

 

「おれは向こうの世界にいったことがあるし、ネイバーにいいやつがいる事も知ってるよ。ただおれのサイドエフェクトがそう言ったからちょっと聞いてみた。」

 

「迅さんのサイドエフェクトって…?」

 

「おれには未来が見えるんだ。目の前の人間の少し先の未来が。」

 

「未来視…!かなり高ランクのサイドエフェクトですね。」

 

遊は驚いたような声を上げる。

 

「昨日メガネくんを見たとき、今日この場で誰かと会ってる映像が見えたんだ。その誰かがイレギュラーゲートの原因を教えてくれるって未来がな。それが多分こいつらだ。」

 

迅は遊の肩を叩き、遊真の頭をわしゃわしゃしながら言う。

 

「じゃあ、イレギュラーゲートの謎は…⁈」

 

「うん、ついさっき見つけた。」

 

そう言うと遊真は先ほど遊に見せた虫みたいなのを持ち上げる。

 

「犯人はこいつだった。」

 

「なんだこいつ…⁈トリオン兵⁈」

 

『詳しくは私が説明しよう。』

 

そう言うとレプリカが遊真のトリガーから姿をあらわす。

 

『初めましてジン。私はレプリカ。ユーマのお目付役だ。』

 

「おお、これはどうも初めまして。」

 

突然現れたレプリカを迅は物珍しそうに眺めながらレプリカの挨拶に応える。

 

『これは隠密偵察用小型トリオン兵ラッド。ゲート発生装置がつけられた改造型のようだ。昨日と一昨日の現場を調べたところ、バムスターの腹部に格納されていたらしい。一体掘り起こして解析してみたところ、ラッドはバムスターから分離した後地中に隠れ、周囲に人がいなくなったところで移動を始め、散らばっていく。人が多いとこでゲート発生の準備をし、近くを通る人から少しづつトリオンを集めゲートを開く。ボーダー隊員の近くで開くのが多いのは高いトリオン能力がある人間からは多量のトリオンが得られるからだろう。』

 

「じゃあそのラッドを全部倒せば…!」

 

「いやーきついと思うぞ?」

 

修の言葉を遊真は即座に否定する。

 

『ラッドは攻撃力を持たない所謂ザコだが、その数は膨大。今感知できるだけでも数千体が街に潜伏している。』

 

「数千体⁈」

 

「そんなん全部殺してたら何十日もかかりそうだな。」

 

「しかもそれを殺してる間にまたラッド積んだやつがこないとも限らない。レプリカが今感知してるの以外にも多分結構まだいるだろうからぶっちゃけ無理ゲーだろ。」

 

遊と遊真はの言葉に修は冷や汗を流す。それは半分三門市が人の住めない場所であることを示しているからだ。

だが迅は動ずるどころかむしろ余裕の笑みを浮かべいる。

 

「いやめちゃくちゃ助かったわ。こっからはボーダーの仕事だな。」

 

ラッドの死体を弄びながら迅はそう言った。

遊と遊真は顔を見合わせ首を傾げるのだった。

 




修が後半半分空気。
ラッドのくだりは次回適当に流すつもり。
学校編もいろいろ書きたいし。
ではまた次回

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