ワールドトリガー Another story   作:職業病

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第2話

あの後車の運転手に頭を下げてから遊と遊真は自宅へと戻った。

 

「お前、学校も遅刻したらしいな。なんで先に基地見に行ったんだよ。後でおれもいくつったろ。」

 

「好奇心には勝てなかったぜ。」

 

「はぁ…。」

 

遊の説教に悪びれもなく返す遊真に心底頭が痛いような表情を遊はする。

 

「とりあえず、メシは済ませたから荷物片付けんぞ。」

 

切り替えるように頭をかき、遊真に声をかける。

 

「りょうかい。」

 

それから日付けか変わるまで作業をしていた。

 

 

翌日、朝起きると眠る必要のない遊真は机に向かってペンを動かしていた。遊真は今までこちらの世界に来たことがなく、勉学に関しては壊滅的だった。それゆえ、学校に行くにあたって遊が遊真に勉強をかなり初歩から教えていた。

遊真は過去のある出来事により眠る必要のない身体になっているので夜は大抵暇にしている。ならその時間で勉強をしてみてはという遊の提案になんの抵抗もなく遊真は承諾した。

それから毎日夜は遊が教えたことの復習をしているらしい。なんだかんだでちゃんとできるようになっていることに遊は正直驚いていた。

 

「む、遊か。おはよう。朝飯はまだか。」

 

「おお、おはよう。まだだ。今から作るからもうちょい勉強してろ。」

 

「ふむ、わかった。」

 

といい、遊真は再び勉強に戻る。

一階に下りキッチンへ向かい朝食の支度を始める。

彼らの家はどこにでもある普通の一軒家だ。しかし、住人は遊と遊真の二人のみである。

この家はかつて遊の父親が暮らしていた家であり、それを彼らが使っているといった感じである。

朝食と作り終え、自分と遊真の分の弁当も作る。弁当も作り終え、遊真を呼ぶとすぐおりてくる。

二人で食事をとり制服に着替え、準備を終えるとすぐ家を出る。二人とも学校までの距離はそうないので時間はかなり余裕かある。学校はお互い別方向なので戸締りを確認すると軽く声をかけ各々の学校へ向かう。

 

「今日も、寒い。」

 

遊は1人、そう呟いた。

 

 

学校につき、下駄箱で靴を履き替えるとそこには昨日の帰り際に知り合った1人の女子生徒がいた。

 

「あら、神谷くん。おはよう。」

 

「おお、那須か。おはようさん。」

 

「ふふ、神谷くんっていつも眠そうな目をしてるのね。」

 

「ほっとけ、デフォルトだ。」

 

朝から失礼なやつだと思いつつ、まだ数少ない知り合いと挨拶を交わす。昨日あれから多少話したおかげで今は普通に話せる。

 

「今日は平気なのか?朝からいるってことは。」

 

「うん、最近は調子いいの。」

 

「そうか。」

 

「まぁ、それでも体育とかはできないけどね。」

 

「そっか…。」

 

昨日聞いた話だと那須は昔から身体が弱く、運動などほとんどできなかったらしい。病院にもよく通っていて、入院することもあっとか。

 

「そういえば、来週からテストね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

「神谷くんは初めてのテストだね。得意科目とかあるの?」

 

「まぁ、化学と物理かな。基本理系はできる。文系はちょっと苦手だけど。」

 

「へぇ、理系なのね。私も理系科目の方が得意かな。」

 

「意外だな、なんとなく文系だと思ってた。」

 

「そう?よく言われるけどね。くまちゃんも理系なのよ。」

 

「それはもっと意外だ。体育会系かと思ってた。」

 

「くまちゃん、そこそこ成績いいのよ?私の方がいいけどね。」

 

「さりげなく自慢すんな。まぁ、なんなら勝負でもするか?ジュース賭けてとかさ。」

 

「あ、いいかも。」

 

そんな会話をしてるうちに教室につく。じゃあまた、と声をかけ遊は教室にはいり、那須はその隣の教室にはいる。

米屋と出水はまだ来てないようだ。二人が来るまで勉強でもしてようとノートとテキストを開きペンを動かし始めた。

結局米屋と出水は遅刻ギリギリに教室に滑り込んできたのだった。

その日も昨日と似たように普通の高校生達の日常だった。

 

 

その日の授業も終わり帰りの支度を始める。隣の出水は今日は防衛任務があるので途中早退し、米屋は掃除当番があるのですでに掃除場所へと向かっている。

いくら遊といえどもまだ編入して二日目では友人と呼べる者は出水と米屋しかいない。なので今日の帰りは昨日と違い1人だった。

 

「今日は1人か。帰りに食料買って帰るか。遊真にも手伝わせようかね。」

 

そんな独り言を呟きレプリカに遊真の場所を聞き、その場所に遊は向かった。

 

 

レプリカのナビゲートに従って歩いていくと、昨日会ったメガネの少年、修ともう一人初めてみるショートの髪の女性がいる。

そこはたとなく面倒ごとの空気を感じ取った遊はレプリカに問う。

 

「レプリカ、今日遊真は何をやらかした。掻い摘んで話せ。」

 

『イレギュラーゲートが学校に開き逃げ遅れた生徒を修が逃し、モールモッドにやられそうになった修をユーマが助けた。修はボーダーの訓練生だったゆえ基地外部でのトリガーの使用が認められていない。それ故本部に出頭し処罰を受けさせる為にキトラに連れられ本部に向かうところというわけだ。』

 

「なるほど、理解。」

 

(あのショート髪はキトラというのか。話を聞くに、キトラはボーダー隊員だろう。目をつけられると面倒そうだな。)

 

遊はそんな事を考えつつ、遊真の方へ足を向けた。

そしたら遊真と木虎がなにか言い争ってるのが聞こえる。

 

「部外者は黙っててくれる?さっきも言ったけれど彼のやったことはルール違反なの。きちんと評価されたいならルールを守ることね。」

 

「ルール違反なのはオサムだって知ってたわけじゃん。戦っても褒められるどころかむしろ怒られるのをわかってて、それでも助けに行ったんだから逆にエラいんじゃないの?」

 

遊真の言葉に木虎がぐっと押し黙る。遊真はかなりのリアリストなので口喧嘩はかなり強い。もともと頭の回転もはやいのもあるだろう。

 

「それとこれとは…。」

 

木虎がなにか言おうとしているがそれを遊はわかってて話をぶった切る。

 

「よぉ遊真、探したぞ。」

 

「む、遊か。」

 

「あ、神谷さん。」

 

「⁈誰ですか⁈」

 

想像以上にきついリアクションが木虎から来たため遊は少しきつい口調になる。

 

「相手に名前を聞くときはまず自分から名乗るもんだ。それとなにもしてないのに自分のイライラを他人にぶつけんのはやめろ。不愉快だ。」

 

遊の言葉に木虎は少し狼狽えるが、すぐに切り替える。

 

「私はボーダーA級部隊嵐山隊所属の木虎藍です。先ほどのご無礼は失礼しました。あなたの名前は何ですか。」

 

さっきのが少し癇に障ったのか睨みつけたままそう木虎はいってくる。

が、遊は涼しげに返す。

 

「神谷遊だ。この遊真の兄貴みたいなもんだ。まぁとりあえずよろしく。」

 

遊は無表情で木虎にそう返す。

 

「ああ、彼のお兄さんでしたか。でしたら弟さんの教育がなってないように思えますがね。」

 

木虎はかなりイラついていたのだろう。鋭い目つきで遊のことを睨みながらいってくる。

 

「みたいな、つってんだろ。本当の弟じゃない。それに教育に関してはそいつが生きてきた環境と育てた人間によるからおれにはどうしよもない。」

 

遊の言葉にまたも木虎はぐっと押し黙る。

 

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて…。」

 

遊と木虎の舌戦を修が仲裁する。木虎は少し修のことを睨んだが、自分に非があるとわかっていたのか、おとなしく引き下がる。遊に関してももともと喧嘩するつもりがなかったわけで特に何も言わなかった。

 

「そういえば聞きたいことがあったんだ。」

 

修が口を開く。

 

「今日の学校のネイバー、あれはなんだったんだ?なんで警戒区域の外にネイバーが…?」

 

「ふむ、そういやそんなこと言ってたな。本当なら基地の周りにしかでないはずなんだろ?遊は知ってるか?今日うちの学校でネイバーが出てきたんだぞ。」

 

「ああ、うちの学校にも連絡が来てた。何が起こってんだ?」

 

今日学校であったことを修と遊真が木虎に尋ね、遊もそのことについて気になっていたのでそのことを口にする。

 

「…部外者がいるから話せないわね。」

 

木虎は憮然とした表情で遊と遊真をみて言う。

 

「おれは部外者じゃない。被害者だ。」

 

「おれは被害者の兄貴みたいなもんだ。」

 

その言葉に木虎は僅かに考える素振りをし、応える。

 

「…そうね、C級には知り得ない情報だもの。私が教えてあげる。まだ詳しくことはわかってないけど、ボーダーの誘導装置が効かないイレギュラーゲートが開き始めているみたいなの。今本部のエンジニアが総出で原因を探ってるわ。」

 

「…⁈イレギュラーゲート⁈」

 

「今日の一件以外にも、昨日から6件似たような事例が報告されてるわ。」

 

その言葉に修は絶句し、遊は眉間に指をあて、遊真は腕組みをしている。

 

「今までは偶然非番の隊員が近くにいたから犠牲者はでなかったけど今後どうなるかはわからない。パニックを避けるために公表はされてないけど、今はこの街のどこにゲートが開いてもおかしくない状況なのよ。」

 

「そんな…!早くどうにかしないと…!」

 

「それはエンジニアの仕事よ。私たちがどうこうできることではないわ。私は防衛隊員。戦って市民を守るだけよ。」

 

木虎は自身に言い聞かせるように言った。その時遊真の耳元でレプリカが囁いた。

 

『なるほど、キトラの言う通りのようだ。』

 

レプリカがそういうと修達の近くの上空にゲートが開く。

警報が鳴り響きゲートから魚のようなネイバーが二体現れる。

 

「おいおい、忙しい日だな。」

 

「そうみたいだな、全く。」

 

遊真の言葉に遊は同意する。

 

「何このネイバー!こんなのみたことないわ!」

 

(空閑!こいつは⁈)

 

「イルガー!珍しいな。イルガーは、爆撃用のトリオン兵だ。」

 

遊真がそういうとイルガーは街中に爆撃を始める。

 

「街が…!」

 

「他の部隊待ってられないわね。私がいくわ。」

 

「僕もいく!」

 

木虎の言葉に修がすぐ反応する。

 

「あなた、また出しゃばるつもり⁈そもそも空の相手に何ができるの?」

 

「それは向こうで考える!」

 

「「トリガー、起動!」」

 

二人が同時にトリガーを起動する。

が、修の手には武器が出現しなかった。トリオン不足らしい。

 

「…やっぱりC級ね、そこでおとなしくしてなさい。」

 

「キトラ、一人で大丈夫なのか?初めて見る敵なんだろ?」

 

遊真が声をかけるが木虎は自信ありげに返す。

 

「愚問ね、私はA級隊員よ。あのネイバーは私が始末する。」

 

そういうと木虎はすぐにイルガーにむかって走り出す。

 

「やれやれ、面倒な事になりそうだ…。」

 

遊は死んだ魚のような目でそう呟くのだった。




2話ですね。ようやく一巻終了。
神谷くんの容姿はDグレのネアみたいな感じ。
かなりもてるのに自覚なしかつヘタレゆえに女子と話せない(慣れればそれなりに話せる)というかなりタチの悪い性格。
次に神谷くんのトリガーでますかね。

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