――なんでだろう。朝起きて、時間が経つにつれて何か大切な物を置いて来ている気がする。でも、ゆきちゃんを見てるとすぐ傍に在るような気もする。
忘れてしまうということは、きっとその程度のことなんだ。
学園生活部部長 若狭 悠里
圭と美紀が仮入部した晩のことである。数日ぶりに慈は由紀との密会を行っていた。場所は職員室。既に、二人以外は眠りについた深夜だ。
そこで慈は遠足前に発見してマニュアルの追記と殺されていた教頭のことを由紀に伝え、さしもの由紀も新たな情報と深まる影に頭を抱えたくなった。
「めぐねぇ、すごい深刻だとおもうんだけど」
「私もそう思うわ。今の今まで、相手にして来たのはゾンビ。でも、明らかに私たちには生きている“敵”がいるの」
「結局わかったのはもう助けが絶対にこないってことだけ。むしろ、絶対に逃がさないって感じが」
「このマニュアルを作った人たちがどうなったかわからない。けれど、間違いなく巡ヶ丘を迷宮入りさせようとしてる人たちがいる」
証拠隠滅を図る相手が生存者を助ける訳が無い。躊躇い無く、慈たちを消しにくるだろう。そうならないためにも、相手側に見つからず巡ヶ丘からまずは逃げ出す必要がある。
ただそれはずっと先だ。今はまだ学校の制圧と、情報を集める必要がある。
「ふぁ。もう、ねむくなっちゃった」
「そうね、今夜はここまでにしましょう」
慈はマニュアルをいつものように机の中にしまった。由紀がその間に職員室の扉まで歩いていた。開ける前に彼女は一度立ち止まり、慈にこういった。
「ねぇ、めぐねぇはもう前に向けた?」
「え?」
「ううん、向けたよね。ありがと、わたしの友達になってくれて」
振り返り、久しぶりに見た由紀の本当の笑顔。慈の目にその笑顔が見えた時、“あの日”以前の慈だけが知っている由紀がそこにはいた。
この笑顔を大切にしたくて、由紀に近づき過ぎた。それが同時に彼女を苦しめてしまっていた。でも、由紀は今、笑ってくれている。この笑顔が皆の前で輝いた時に、慈の教師生活は一つのピリオドを迎える。
「おやすみ」
「えぇ、おやすみなさい」
由紀が職員室から出て行く。慈は改めて、自身の教師としての重みを確かめる。美紀と圭が増えて、教師としての役目はまだ終われない。美紀の恐怖を打ち消して。一緒に前へ進んであげる。それがまず一つ、新しいものだ。
圭はもしかしたら、自力で立ち上がれるのかもしれない。だとしても、その手伝いぐらいはしてあげてもいいはずだ。
佐倉 慈はまだ先生なのだから。
目が覚めた圭は身体を起こす。隣にはいつものように美紀が寝ていた。枕元の目覚まし時計はまだ朝早い時刻を伝えている。
改造された放送室(寝室)に圭と美紀の分の布団も敷かれ、六人が寝る寝室となっていた。まだ、圭と美紀のロッカーは用意されておらず、胡桃の怪我が落ち着き次第、下から用意するとのことだった。といっても、特に荷物もなく、ロッカーを用意されたところで入れる物は何も無いのだが。
「(…………悠里先輩がいない?)」
ふと気がつけば、既に悠里の布団が畳まれているのを圭は見つけた。隣で先生である慈がまだ寝ているのがなんだかおかしかった。
音を立てないように布団から出て、布団のすぐ傍に置かれた制服を取る。圭の寝間着はゆきから貸してもらったものだがサイズはほぼ一緒だった。一年上の先輩のはずだが、圭はどうにもゆきのことを“ちゃん”付けで呼びたくなる。
今日はどこかでそう呼んでみよう。
ちなみに、最初は悠里が寝間着を貸そうと言っていたが、天然だったのか“ある一部のサイズ”が明らかに圭より大きく、最初は昼間のことの当てつけかと思ってしまったが、本当に善意だけで言っていたようである。
悠里の大人っぽさはかなりのもので、圭から見ても十分に見惚れる部分があるほどだ。逆に大人のはずの慈は可愛いという見た目が先行するが。
着替え終わった圭が放送室から出ると、廊下は当然のように静かだった。陽光差し込む、掃除がされた廊下を見ると、全てが夢だったのではないかと圭は思ってしまうが割れた窓ガラスが現実だと告げる。
「私たちより、積極的なのかもなぁ」
ゆきはどうだかは知らないが、全員で状況に立ち向かい、全て倒して制圧した上にここまで清掃を行い、更に日常生活もこなそうとする。モール組よりもある種ハードな生活を学園生活部はしていると圭は思った。
とてもではないが、“彼ら”を始末する傍らで授業を受けるなんて圭には難しそうだった。
悠里の姿がどこかにないかと、一度部室にも行ったが姿が無く、圭は屋上に農園があると聞いたので上がることにした。思えば、以前は校則で屋上は関係者以外立ち入り禁止だったため初めて圭は屋上に足を踏み入れた。
がちゃりと音を立てて扉を開けると、そこには朝の日差しを受けながらせっせっと土を掘り返す悠里がいた。
「あら?けいちゃん、目が覚めたのね。おはよう」
「おはようございます。先輩は何を…………」
「私は園芸部なの。だからこうして、毎朝菜園を管理してるのよ。丁度、収穫もあったしね」
「収穫?」
「サツマイモよ。明日あたりは天ぷらにでもしようかしら」
「あっ!私、サツマイモの天ぷら好きです!」
「あらそう、それはよかったわ〜」
穏やかな雰囲気で悠里は作業を続けている。剣呑な昨日までの様子とは違った悠里に、圭は改めて悠里を見直す。慈とは違う、どこか包容力を持った姿に圭は彼女がどこか学園生活部のお母さんのような気がした。
ゆきへの依存度も然程高くはなく、どちらかというと妹が心配でしょうがないお姉さんというほうが正しい。
「(姉が妹のことを悪く言われたら怒るのは当然か)」
擬似的な姉妹愛。そういったほうが近いのかもしれない。
作業を圭は手伝おうとしたが、悠里が大丈夫だと言ったため、圭は手持ち無沙汰になって屋上を見渡した。すると、菜園の一角に白い十字架があった。
「これって…………」
「ちゃんと入ってるわよ。お骨が」
「誰の、ですか?」
「くるみの大切だった人よ。“あの日”に亡くなったの」
思わず圭は口を抑えた。悠里の言葉でだいたいのことは察せたが、それがこんなところにあるとは思わなかった。学校に着いた際、裏庭から内部に帰還した時に圭は夥しい量の十字架を見ていた。全てが学校関係者のもののようで、しっかりと火葬をした上で埋葬したという。
が、ここにそれがあるのは特別な理由だ。何が特別なのかは悠里の言葉でわかった。
「失礼なことを聞いてしまって、ごめんなさい」
「それはくるみに言って頂戴。あと、出来れば拝んであげて」
「わかりました。…………お線香とかは?」
「あったかしら。後で探しておくわね」
とりあえず、圭は手を合わせておく。顔も知らぬ胡桃の想い人へ。まるでヒーローのようだと、美紀が語る彼女も自分たちと同じ女の子なのだ。
「…………ヒーローにも、休息って必要だと思いますよ」
「そうね。だから、今は。ヒロインでいてもらいましょう」
圭の言葉に悠里は同意する。誰よりも仲間想い。それが圭の抱いた悠里の印象だった。こんなお姉さんがいたら、なんだか羨ましいと圭は思ってしまった。
農作業を終えた悠里についていくと、圭は悠里の朝食作りを見ることになる。その手捌きは洗練されており、まさにお母さんそのものだ。てっきり慈が作っていそうだなと思っていたがこの様子を見る限り違うらしい。
「先輩、慣れてますね」
「そりゃ、こうなってからずっと料理担当だもの」
「他の子はできないんですか?」
「くるみは炒めものとかがいけるわね。でも、めぐねぇは料理をしばらくやってないし、ゆきちゃんはそもそも作ってるところを見たことがないそうよ?」
「はい?」
「ゆきちゃん、お嬢様だったみたいだから」
思わず圭は吹き出しかけた。あのゆるふわな先輩がお嬢様?とてもそうは見えなかった。
「………あぁなる前のゆきちゃんはね、今と似たような態度だったけど、少し違ったの。半分作ってたというか、言い方を変えれば悪さをして注目されようとする子だったのよ」
「どういうこと、ですか?」
「クラスメイトで、遠巻きからでしか見ていなかった私が言うのもどうかと思うけど、ゆきちゃん、クラスで孤立してたのよ。お金持ちの一人娘で、ちょっと子供っぽかったから」
その姿を圭は上手く想像できなかった。まだ、一日しか見ていないがゆきの底抜けの明るさを目の当たりにしている圭はてっきり元の気質も明るく、ムードメーカーだったのだろうと思っていたが違うらしい。
「先生たちも扱いになんだか困ってたような様子で、それがきっと生徒にも波及してたのね。………そんなゆきちゃんと、しっかり向き合ってたのがめぐねぇと、神山先生だったの」
「神山先生って、確か英語の」
「そうよ。めぐねぇみたいに、友達として隣にいてあげるんじゃなくて、神山先生は大人としてゆきちゃんをしっかり見てくれていたの。だからかしら、神山先生のご遺体を見たあたりから、ゆきちゃんはちょっと幻覚を見る頻度が上がったのよね」
ゆきの幻想の中ではもしかしたら、神山先生やめぐねぇのおかげで立ち直れた“最良”の形で学校が続いているのかもしれない。
それがとても痛ましかった。
「私たちは最初ね、屋上に立て篭ったの。その時に屋上の扉を封鎖して、感染した人たちが“彼ら”に変わるまで見捨てた。めぐねぇが言うには神山先生の最期の言葉が屋上の封鎖だったそうよ」
「少なからず、神山先生のおかげでもあるんですね、今は」
「そうね。いい、先生だったと思う。だからこそ、あんな大人がいてほしかったのかもしれないわね、めぐねぇも」
慈の親身になり過ぎている先生の姿を無理矢理、矯正するような探索時の思考と判断はどことなく、神山先生を意識してのものなのかもしれない。
「それにしても、朝食からパスタですか?」
「ミートソースよ。ダメだったかしら?」
「そ、そんなことないです!」
話題を変えた圭だったが、悠里にそう言われて慌てて手を前にして否定する。そもそも昨日、久しぶりに食べたまともな料理に圭と美紀は涙を流すほど感動して味わっていたため、悠里の料理ならなんでも歓迎だ。
「そういえば、昨日はまさかあんな漫画みたいな反応されてびっくりしちゃった」
「だって、本当においしいんですも、悠里先輩の料理!」
「“食は士気を保つ重要な要素”くるみがそういうのが好きだから言われたことなんだけど、案外本当ね」
そういうのが何だか圭はわからなかったが、少なくとも“あの日”以前は絶対にこの国で使われることがないような言葉だろうと思った。
尚、胡桃が言ったときは割と本気であった。
「それに、私たちが残されたときって固形食料ばかりで気が滅入ってしょうがなくて」
「ここならそれも少ないわよ。たまに乾パンで節約するけどね」
パスタを茹でる悠里の言葉に、圭は本当に感謝が尽きなかった。生きていて、本当によかった。心底、そう思った。
「さて、そろそろ皆も起きだすわね。けいちゃん。盛りつけ、手伝ってもらえる?」
「はい!」
食事のために仮入部員含む六人が部室に集合したが、再び悠里の料理を食べた圭と美紀がいわゆるヘヴン状態になっていた。
「「おいしい…………」」
「おいおい、そのまま召されんなよ」
あまりにその様が可笑しかったのか、胡桃が笑いながら茶化していた。一方で慈は相変わらず朝に弱いのか、とうとう食事の場では着替えずにモールで回収したパジャマのまま出て来ていた。遠足での疲れが未だに残っているのかもしれない。
「めぐねぇ、パジャマ可愛いね」
「めぐねぇじゃなくて、さくらせんせいですー」
寝ぼけた様子でパスタをすすりつつ、慈は言う。なんだかまるで学生が背伸びしているようなその姿に全員がクスクスと笑っていた。
食事を食べ終えると、それぞれがそれぞれの仕事につく。悠里は食後の片付けや家計簿の整理、今日はもうしないが日によっては農作業も加わる。
胡桃は暇な時間を見つけては見回りでバリケードの確認…………をしていたが、既に二階までほぼ制圧されているためやることがあまりない。それに、怪我はまだ治っていないのである。しばらくは安静と部室に残った。
ゆきはいつも通り“授業”のため部室にいない。
「めぐねえ、そろそろ着替えて来たら?」
「うん、そうするわね………」
胡桃に促され、慈も一度着替えに部室から出て行く。残されたのは圭と美紀含む四人だった。
「……………えっと、私たちは何をすれば?」
美紀の問いかけが部室内に流れ、胡桃がそれに反応した。
「うーむ。代わりに見回りって言っても、今はあんまり必要ないし………」
「あら、それならこっちをみきちゃんか、けいちゃんに手伝ってもらおうかしら」
やることがないと胡桃は思ったが、どうやら悠里は手を貸してほしいようだ、圭がそれにすぐ食いついて、悠里の隣に座る。
「家計簿ですか?」
「そうよ。六人になった上に、くるみが色々と持って帰ってきたから見直さないと」
「なるほど〜」
圭がちらりと見てればとても綺麗につけられており見やすかった。ただ、内容に“車 一台破棄 一台入手”というあまり見られないような記載があったが。
「おっと、圭はとられちまったか。んじゃ、美紀」
「はい」
「遊ぶか」
「はい?」
そんあことを唐突に言い出した胡桃が美紀の手を引いて部室から出た。そのまま美紀は一度、部室の前に立たされると胡桃が放送室へと入り、すぐに出てくるとその手にはスコップが握られていた。
「…………何をするつもりですか」
「遊ぶって言ったろ?ほれっ」
「うわっ!」
いきなり美紀にスコップを放った胡桃。美紀はなんとかキャッチした。スコップは新品で、胡桃が使用しているものとはまた別のものだった。
「なんですか、これ。これでどう遊ぶんですか」
「それ、背負えるようになってるだろ?」
「そうみたいですけど」
美紀に渡されたスコップは肩にかけて背負えるようにベルトからバンドで固定され、必要な際には簡単にバンドが外れて引き抜けるようになっている。
促されるままに美紀はそれを背負った。
「で?どう遊ぶんです?」
「鬼ごっこだ」
そう言って、胡桃も何やら足に巻く。どうみても重りだった。よくみれば上履きも底が厚い。
「うっし。丁度いいな。昨日まで寝てたせいで調子が狂ったからな」
「二日間だけですよね?」
「それが致命傷だ。そういうわけで美紀。ゆきと遊ぶ前にわたしと遊べ。お前はそれを背負ったまま私から逃げてみろ。使っていいのは二階まで。そこから下は敵勢力圏だからな」
「えぇ!?スコップを背負ったままですか?」
「そうだ。聞けば、お前は今まで軽装で戦ってたらしいな。ツーマンセルを組んで。けど、ここじゃあちょっと鍛え方が足りない。というわけで、まずはスコップに慣れてもらう」
「他に何か武器はないんですか?」
「あるが、お前はそいつのほうがいい。わたしのカンだ!」
無茶苦茶を言う胡桃に美紀は早くもテンションだだ下がりだが、軽いストッチを胡桃が始める。
「というか、安静のはずでは?」
「左肩だけな。他は大丈夫だ。……………あぁ、それと、逃げなくていいのか?」
「え?だって準備運動をしてるんじゃ」
「おいおい。じゃあ、“あいつら”が同じことをしてたらお前は待ってるのか?」
「え?」
ゾクりと美紀は胡桃から何かを感じ取った。途端に、美紀は駆け出す。背負ったスコップが少し重い。それなりに足は自信があったが、これでは体力が持ちそうになかった。
「よーし!ちょろっと鈍ってるからウサギ狩りだ!いくぞォ!」
ドヒャア、と擬音がなりそうなスタートダッシュを胡桃は決めていた。ちらりと後ろを見た美紀はあまりの早さに驚く。無駄が無い洗練されたフォーム。重りをつけているはずなのに、そんな様子がまったく感じられない。
「ほら逃げろ逃げろ!ゲームの強化ゾンビはこんぐらいの早さだぞー!」
現実のゾンビがある意味、イージーモードだと美紀が感じた瞬間だった。
ドタドタと走り出した美紀と胡桃が放送室の前を過ぎ去り、直後に慈は着替え終わり部屋から出ていた。早くも馴染み始めたのだろうか、だとしたら喜ばしいことことだと慈は思う。
美紀はとても優しい子だ。たった一日。その一日でゆきと触れ合って、翌日にあの糾弾である。圭の何も見逃さないという眼も凄まじいが、美紀のあの敏感なところも慈は好ましい。あの二人はきっと、遠くないうちに入部してくれるだろう。
そういえば、と思った慈は駐車場の見える教室へと入る。窓から駐車場を除けば“彼ら”が入れないように簡易バリケードが築かれており、慈の車が止まっていた場所には少し凹み傷のあるワンボックスが止まっていた。
胡桃が言い辛そうに「車は置いて来た」と言っていたのは本当だったようだ。
ショックも大きいが、それ以上に圭と美紀の二人を救えたことのほうが大きい。父には申し訳ないが、そのときが来たら謝ればいいだろう。今はまだ、後悔をしている時間はない。
「さて、と」
今後の方針を悠里と話し合わなければならない。美紀と圭。この二人の新たな戦力をどう使うか。冷静な思考に切り替えて、慈は考える。まずは彼女らが何を出来て、何に向いているのか。それを見極めなくてはならない。
なら、何をすべきか。直接的に言うのもなんだか芸がない。
が、そこまで思ったが慈は無理に何かを言う必要は無いと考えた。
「仮入部期間なんだから、そこで色々やらせてみればいいか」
あとの細かい適正は現場の悠里と胡桃に任せ、自分はそのために動きを補助してあげればいい。見たところ、美紀は胡桃やゆきと、圭は悠里とまずは組ませてあげた方がいいかもしれない。
特に、美紀はゆきのことを本気で思いやれる子だ。あんな子が近くにいれば、ゆきに少しはいい変化を与えられるかもしれない。
つくづく、クラスに美紀のような優しい子がいればと慈は思った。
駐車場の見える教室から出ると、同時に学園生活部の扉がガラリと開いた。
「あっ!めぐねぇ、じゃなくて、佐倉せんせー!りーさんが来てほしいみたいです!」
「え?何かしら」
圭が元気よく慈を呼ぶ。扉を一度閉めて外に出て来た圭は「私はお邪魔みたいなんで、美紀のところにいってきます」と言って行ってしまった。
なんなのだろうかと思いつつ、部室内に入ると悠里が顔を上げて言う。
「あ、先生。みきちゃんとけいちゃんの歓迎会をやろうと思うんですが」
「え?そうね。いいかもしれないわ」
パーティ後に壊滅したと、悠里が帰りの車で聞いた二人からの聴取を記録した報告書を受け取って知っていた慈は二人を安心させる意味でも歓迎会はやってみるべきかもしれないと判断した。
「では、準備にとりかかりましょう」
「えぇ」
悠里がそう言って準備のために動き出した。
それを見届けつつ、慈は報告書の一部内容を思い出す。最も気になったのは“男土の夜の再来”、“店長の射殺死体”。前者は調べておくべき事件だが、後者は間違いなく『機密保持』のためだろう。
「…………先生?」
「あ、なんでもないわ。手伝うね」
今はとにかく、明るいことに意識を向けるべきだ。新たな仲間を歓迎するために。
<今回の変更点>
「鬼ごっこ」
みき は にげだした!
しかし まわりこまれてしまった!
「予備のスコップ」
実はわりと多くある。今回は胡桃の予備仕様。状況によっては二本装備のためのモノ。
以前、慈が使用したものは慈専用に胡桃が用意したもの。角型で正確にはシャベル。
「参謀候補 圭」
まずは悠里の攻略にとりかかったようです。
本当に圭が参謀になった場合、慈と悠里の負担が減る。
「パスタ」
アニメ版第1話。つまり本編開始。ただし、OPは最初からぞんぞんするんじゃ^〜
「サツマイモ」
確か、原作の時期が秋だった気がする。
「聴取の報告書」
キッチリと書類を作成できる悠里さん有能。胡桃はボイレコ派。