――奇跡が起きた。希望が希望じゃなくなって、目の前にあった。でも、それで終わりじゃない。エンディングなんてないのが現実。
壁を乗り越えれば、今度は前より高い壁。逃げるか、登るか、登る途中で落ちて終わるか。
……………でも、もし立ち止まれるなら。一度、休むのもいいかもしれない。
祠堂 圭
学園生活部によって助けられた美紀と圭は学園生活部の部室に増やされた椅子に座っていた。圭が下座、美紀は今まで開いていたゆきの隣に。その二人を慈は見て、改めて微笑みを見せた。
「一昨日はごめんなさいね。ちょっと体調を崩してて、冷静さを失ってたの」
「い、いえ、私もあんなんでしたから」
既にモール脱出から二日が経過していた。昨日の晩まで慈は熱が収まらず、彼女が倒れている間に圭と美紀は部長である悠里にこれまでの経緯を伝えていたが、改めて慈に挨拶をするようにと言われていた。
その悠里も同席しており、胡桃は要安静のため隣室の放送準備室で待機し、ゆきも退屈している胡桃についていた。
「改めて。私が学園生活部の顧問の佐倉 慈です。祠堂さんと直樹さんはまだ授業を受けたことがなかったかしら?」
いつぶりかの、教師らしい挨拶。一昨日の一件でとうとう悠里にすら怒鳴られて引きずられたせいかだいぶ、慈の中における教師たらしめていた部分が壊れていたが、新たな生存者である美紀と圭の存在によりかろうじでそれは生きていた。
「えっと、2年B組の直樹 美紀です。佐倉先生、初めまして。そして、先日はお世話になりました」
慈が最後に見た姿は焦って転落した場面のせいか、冷静で表情があまり変わらない美紀にちょっとイメージしていた人物像と齟齬が出たが修正する。
「同じく、2−Bの祠堂 圭です。佐倉先生のお話は聞いたことがあります。優しい先生だって!」
逆に、圭は明るい、笑顔で華のある子だと慈は感じた。実際は圭の戦略だったが、まだ疲れのある慈は気がつかない。悠里はなんとなく、今時の子だなと自分のことを棚に上げて思っていたが。
「それで、だいたいのことはゆうりさんから聞きましたか?」
「はい。学園生活部のことと…………」
「あとは、ゆき先輩についても」
どうやら自分が寝ている間に多少の説明は済んでいると見て良さそうだ。慈からすれば特にゆきのことを伝達済みというのが大いに助かる。彼女の問題は複雑だが、完全にあぁなった部分は表向きには「不明」だ。
下手に勘付かれて探られては危険だ。
「そっか。……ゆきさんのことはごめんなさい。あの子に合わせてあげてくれると助かるかな」
「……………………」
慈のその言葉に、圭は特に何の変化も見せなかったが、美紀はとても苦々しい表情をしている。その様子に慈は首を傾げたが、悠里は顔を少しだけ伏せた。
「あなたも、そう言うんですね」
「あなた、も?」
美紀がまるで失望したかのような言い方をして、慈をまっすぐと見る。その目は厳しく慈を責めるような顔だ。
「同じことを昨日も言われましたよ、若狭先輩に」
「えっと……………」
「なんで、彼女を治そうと思わないのですか?」
はっきりと美紀が告げた。
治す?何を?慈は混乱したが、何が言いたいのか理解した。ゆきの存在が異質だと美紀は認識している。それは正しい。けれど、間違っている。
矛盾が矛盾を呼ぶ。そう形容して間違いない状態に慈の心が陥る。
「このままじゃダメだと思わないんですか?」
「ダメって……………」
「依存することがダメとはいいませんよ。……私もそうです。でも、いつまでもあのままじゃ、ゆき先輩が可哀想じゃないですか!」
可哀想とはなんなのか。何が可哀想なのか。慈には理解できない。いや、わかってはいる。わかってはいるが――
「あのね、直樹さん。ゆきさんは「学園生活部に欠かせない子って言うんですね」え、なんで」
美紀が慈の言葉に重ねる。まるで、知っていたかのように。事実、美紀は前日に、慈と同じことを悠里に言っていた。そして、悠里も同じように返していた。
「そうやって甘やかすから、治るものも治らないのでは?」
「あなたね!昨日も同じことを言ってたけど、先生は!」
美紀の責めを聞いていられないと悠里が机を叩いて立ち上がったが、サッと圭が美紀と悠里の間に割り込む。邪魔はさせない。そう言わんばかりに。
「…………なんのつもり?」
「若狭先輩。少し、静かにしてもらえませんか?今、美紀は佐倉先生と話しているんです」
圭の顔は澄ましたものだった。悠里は何も言えず静かに着席した。話は続く。
「昨日言っていましたよ、ゆき先輩が。めぐねぇはいい先生だって。わたしに優しくしてくれるって。でもそれはあの人の主観だ。本当は逆だ。生徒で在り続けてくれるあの人にあなたは甘えているんじゃないですか?本当の教師なら、もっと早くゆき先輩を治そうとしたはずだ」
「それは……………」
既に、慈は何度か図書館で精神医療に関する本をいくつか読んでいた。学園生活部が出来る前から幻想を幾度か作り出していた由紀のために、慈も最初はどうにかしようとしていた。
でも、結局は彼女の純真な生徒として在り続ける姿に依存し、状況に甘えていた。
そうして、いつの頃からか治そうとするのはやめた。丁度、その時からゆきと由紀を彼女も行き来していたから。
あぁ、そうか。と慈は理解した。私は由紀を知っているから、ゆきも認められて、支えてくれる由紀がいてくれるから、ゆきに癒されて。由紀とゆき。もう慈の中ではその二人がいるのが日常になっていた。
それが普通になっていた。もう変える必要がないと思っていた。悠里と胡桃の共依存とは違う。
いつの間にか、慈は学園生活部で二人の由紀/ゆきを護ろうしていたのだ。
「……………なんとか言ったらどうなんですか」
「そうね………………直樹さん、あなたの言う通りだと思う」
「佐倉先生…………!?」
「なら、早くあの人を助けて「でも、ごめんなさい」はい?何を」
慈が席から立ち上がり、外を見る。相変わらずの“彼ら”が闊歩する世界。これがゆきにはいつも通りに見えている。ゆきなりの“いつも”が“日常”が。
「助けるとか、治すとか。そういうことじゃないのよ。もうね、ゆきさんはそこにいるのよ。ゆきさんは生きているの。………これは全て、私の罪で、責任。あの子を生み出したのは私。だから、“殺せない”」
最後の言葉の部分だけは嫌に感情が籠っていた。顔だけを振り向かせた慈の顔が陽で陰り、ブラウンの瞳が怪しい雰囲気を湛えている。その様は一種の狂気すらも美紀に感じさせる。
生み出したから、殺せない。まるで母親のようなことを言うこの教師はなんなんだ。美紀は余計に頭がこんがらがる。いつまでもゆきが幻想を見続けてはいつかそのツケが来る。そうなる前に学園生活部を正常な状態に戻した方がいい。美紀はそう思っていた。
しかし、そもそもその考え自体が大きくズレている。だって、学園生活部は、
「学園生活部はゆきさんのために作られたの。いつものように授業をして、学校で、みんなで協力して過ごす。ゆきさんがいなかったら学園生活部はないし、私たちもきっと、生きてはいられなかった」
ゆきがいなければ、学園生活部はなかった。
ゆきがいなければ、終わらない悪夢と悲劇に全員が参っていた。
ゆきがいなければ、慈は教師としていられなかった。
ゆきがいなければ、慈が押しつぶれ、悠里も続けて状況に耐えられなかった。
ゆきがいなければ、胡桃はきっと護りたい日常もありはせず、戦い続けられなかった。
そして、由紀がいなければ慈は前を向いて走れなかった。
由紀とゆき、二人がいなければ何もかもが始まらず、終わっていた。
もはや、美紀の思う“正常”というものが“異常”なのだ。慈たち各園生活部にとっては。それは手遅れとは違う。壊れた時計が、上手く壊れて普通に動く分には何の問題も無いような。
そんな、奇妙な状況だった。
「………………堂々巡りですね。結論を言うと、あなた方はゆき先輩を治すつもりはないと」
「そうなるかもしれないわね」
「なるかもしれない?なんなんですか、さっきから。教師で、顧問で、リーダーとも言うべきあなたがそんな姿勢だから、あんな、あんな風に。終わったものに縋り付いて、一体なんになるって言うんですかっ!?」
それは正論だった。慈も、悠里も、それに圭だってその言葉は理解できるし、納得もできる。美紀は怖かった。あんな儚いものが壊れてしまったら、どうなるのか。
学園生活部を正常に、ということに加えて。
ゆきだけが過去に置いていかれている。置いていかれているのだ、仲間たちから。
「いつか、いつかきっと、取り返しがつかなくなります!時計だって、完全に正確に合わせ直すのは大変なんです!ましてや人なんです!なにも知らずに、置いていかれるなんて…………」
置いていかれる。悠里はこの言葉を聞いてようやく美紀がここまで言う理由がわかった。悠里は圭から一度、美紀を置いていこうとしたことを聞いていた。
きっと、幻想の中で生き続けるゆきが現実を生きる学園生活部の三人に置いていかれているような気がしていたのだろう。
慈も事情は知らなかったが、なんとなくわかっていた。事実として、ゆきは置いていかれている。朦朧とする意識の中で憶えていた、美紀と圭がモールで呑まれたときゆきは由紀になっていた。いや、既に途中からゆきと由紀が混ざっていたかもしれない。
慈が前へ前へと進む度に、ゆきが由紀になる頻度は多くなっている気がする。もう壊れている時計は治り始めている。
では治った時、ゆきはどうなるのか?きっと、置いていかれ、消えるだろう。由紀として、彼女が前に進みだした時に。
「…………優しいのね、美紀さんは」
「佐倉、先生?」
「あなたの言うことは正しい。だからこそ、もう少しだけあの子のことを待っててあげて。もう一度言うけど、“私たち”は治す気はないの」
これも逃げなのかもしれない。それでも、
「ゆきさんも、あの子なりにわかっているの。だから、もう一度お願いするわ。ここにいる間は、あの子に合わせてあげて」
実に美紀と圭にとっては三度目の言葉。真意は、わからない。ただもう美紀はこれ以上のことを言うのはやめた。………もっと深く、ゆきのことを知るべきだと美紀は思った。
これで最後だと言わんばかりに、慈は口を開いた。
「だから、ゆきさんが卒業するまで――どうか、一緒にいてあげて」
卒業。ゆきがこの学校の全てだ。彼女が去るということは、この学校の本当の終わりを意味する。幻想の住人たちが、皆、ゆきと共に卒業していく。
そのときまでに、学園生活部の皆が前を向ければいい。ゆきから与えられた猶予、終える前に終わった学校生活から学んで、修めて、卒業する。それが出来ればきっと、ゆきを見送ることができる。胸を張って、佐倉 慈も教師としての責任を終えることが出来る。
もう、佐倉先生と呼ばれずに、めぐねぇとして、ただ一人の大人して。
「………私、なんとなくわかりました」
「圭?」
唐突に、圭がそんなことを言った。
「先生。飛び級って、出来ますか?」
「え?そ、そうねぇ。海外の学校になら出来たかも………」
「なら、私、飛び級目指して学園生活部にまずは仮入部します」
「圭!?何を言って………」
困惑する美紀に、圭は肩を掴んで美紀の顔を見つめる。
「美紀、私もう逃げるのはやめたの。あのときは美紀の前から逃げ出そうとして、それからは生きることから逃げ出そうとして。でも、もう逃げない。まだ、学園生活部が何なのかはよくわかってないけど、部活なら仮入部しないと」
直感的に圭は理解しかけていた。ただ、前を向くために。遠回りして色々と複雑なことを言い合ったが、結局肝心なのはそこだと思ったのだ。
「………………圭、私は……!」
美紀は圭の手を振り解いて、部屋から出て行ってしまった。それを圭は止められなかった。
「みきちゃん、怖かったのね」
美紀が出て行った部室内で、悠里がそんなことを呟いた。
「ごめんなさいね、けいちゃん。昨日はあんな酷いこと言ってしまって」
「いえ、いいんです。………美紀が“置いていかれる”ことにあそこまで固執するのは私のせいなんですから」
観察していたからこそわかった。圭には慈たちがとても狂って見えた。だが、同時に必死に足掻いているのもわかった。失われた日常を維持してでも、彼女たちは前に進んでいく。
それに、ゆきのあの幻想に縋っているだけならそもそも外に行こうとなどしない。そう思った時に圭は学園生活部が悪い物ではないと思った。
ただ、その中でも違和感があったのは間違いないが。
「前へ向くための足踏み、私は悪くないと思います。めぐねぇ」
「けいさん。めぐねぇ、じゃなくて佐倉先生ですよ」
「はーい」
圭にとって、ゆきは何になるだろうか。まずは逃げないこと。それが最初の前へ向いていくための“ゆき”から学ぶことだろう。
部室から飛び出した美紀は三階の廊下をある程度走ったところで立ち止まっていた。
彼女が止まったのは中央階段。屋上へと続く、古戦場だった。
「こ、これは………………」
「お?やっぱ驚いたな、みーくんよ」
「っ!?」
壮絶な光景が広がる階段に絶句していた美紀に胡桃が後ろから声をかけた。「よっ」と手を挙げた彼女はそのまま美紀の隣に立つ。湿布を貼っているのか、つーんとした臭いが美紀にはした。
「恵飛須沢先輩ですか」
「あんだよ?わたしじゃ不満か?それと、帰りでも言ったがくるみでいい」
「なら、くるみ先輩。私のことも美紀と」
「じゃ、美紀。どうしたんだ?」
美紀は胡桃のことは嫌いではなかった。直接助けてくれたのは胡桃だ。圭と一緒に身を挺して庇った由紀に続いて恩義を感じている。何よりも、まるで物語のヒーローのような強さを兼ね備えた彼女に美紀は憧れに近い物を抱きつつあった。
「…………いえ、少し。学園生活部のことで、その、昨日と同じことを」
「ふーん。まぁ、無理もないと思うがな。わたしが言うのもおかしいが」
「くるみ先輩はどうしてそんなに客観的に見られるんですか」
「そうだな、簡潔に言うと“責任”があるからな」
「……………責任?」
「そうだ。今、目の前にある真っ赤な階段。それがわたしの責任だ」
真っ赤な階段、というにはいささか黒ずんでいるがそれが何なのか美紀にはわかる。しかし、これが責任とはなんなのか。
「学園生活部であいつらをヤったことがあるのはわたしだけだ。最初に介錯したのも私だ。これからも、未来永劫そうするつもりだ。わたしが止まらない限り」
今、彼女はとんでもないことを言っていないだろうか。美紀は昨日、この学校の制圧状況も悠里から聞いていた。二階まで。全員でやっていたのなら、何を悠長なことをと思っていたが、胡桃の言うことが本当なら話が違ってくる。
「まさか、くるみ先輩が今まで一人で?」
「あぁ、そうだ。学園生活部で戦ってるのは私だけだ。めぐねぇにスコップ持たせたのは自衛のためだ。あの人は本来、戦う人じゃない」
たった一人。美紀はモールのあの広い一フロアを制圧するために五人が投入されて時間がかかったことを憶えている。直接戦闘もこちらは全員が出来ていた。
だが、ここは違う。直接戦うのは胡桃一人。他がサポートだとしてもまともではない。生きていられるはずがない。それでも事実として胡桃は美紀の目の前にいる。
「そんな…………!あなた一人にそんなことを任せて――」
「そこだよ、美紀」
美紀の言葉を途中で胡桃が遮る。人差し指を美紀の唇に当てて。
「そう、これがわたしに任された責なんだよ。デカ過ぎて、いつも両手であぶれそうだけどな」
多すぎて困る、と胡桃は呆れたように言う。
「でもな、ゆきがいなけりゃわたしはそれを課せなかった。ただの衝動で、殺人で終わってた。あいつがわたしの代わりに泣いてくれた。まるで、“あたし”のせいじゃないって」
胡桃の一人称が変わっていた。
「ゆきのは確かに幻想で、逃げだ。いつかは終わらさなくちゃいけない。でも、あそこにあたしたちは生きていたんだ。それを“わたし”は護る。ゆきの幻想の先に、追いかけたい“何か”があるから」
その何かはわからないと胡桃は付け加えたが、美紀はわかった。
未来だ。前へ進む限り、未来は逃げていく。それを追い続ける。ゆきが時計を止めている理由が美紀にはわかり始めていた。
「時間は巡る。前へ進む。その度に、わたしたちは前を見直す。わたしも、りーさんも、めぐねぇも。それに、ゆきだっていつかは。時計だって、基準となる時計が無いと直せないだろ?」
時計が全て間違っていたら、治すことはできない。でも、一つを除いて全て治ったら?治せる。
壊れていることに気がつかなかった時計を治すためにわざと壊れた時計。そんなイメージが美紀の頭に出来上がっていた。なるほど、と美紀は口元を緩めた。
基本的に指揮をとっているのは慈だという。彼女は先ほどの話を聞く限り最もゆきに近く、依存し、危険だ。だが、まるでその姿は表裏一体だ。
前へ進み続ける時計と時を止めた時計。もしかしたら、慈が最初に“壊れていること”に気がついたのかもしれない。一つが治れば後は順番に治していくだけだ。
あぁ、恥ずかしい。自分がただ空回りしていただけじゃないか。美紀はようやくわかった。
「逃げても、よかったんだ」
「……………逃げ過ぎはよくないけどな。急に走ると、躓いちまう。だから、一歩下がって足下を見るといい。すごいヤツは足下を見ないというが嘘だよ、ありゃ。下を見て、今いるところを理解して、上を向くんだ」
時には一歩引く。それは当たり前のことだ。今までは後ろが崖だった。でも学園生活部は違う。後ろに地面があって、一人だけだけど受け止めてくれる人がいる。
「…………わかった気がします。めぐねぇも、りーさんの気持ちも。それに、ゆき先輩のことも」
「おっ、それは嬉しいな。だったら、美紀も入部するか?」
「いえ、仮入部で」
「え?なんで?」
「入る前に、もう一度。ゆき先輩と話したいんです。私はまだ、何も知りません。だからこそ、もう一人の先生であるあの人に」
自分ももう一度前を向くことができるかもしれない。今ある物だけではなく、ここより先に。ここで暮らせば、何かが見つかるかもしれない。そう、思いたい。
この日、学園生活部に二人の仮入部員が増えた。
<今回の変更点>
「合流後」
めぐねぇに訴えかけるみーくん。一人理解するけーくん。こんな光景はまずなかった。
「錯綜するそれぞれの思考」
実は書いている本人もこんがらがっていた。
「壊れた時計と壊れたことに気がつかない時計」
多数決は時にとんでもない方向にいってしまう。みんなが異常だったらそれが普通。なら、そんな異常な普通から見ても異常なら、異常な普通がおかしいことに気がつく。
ただし、根本的に壊れ方が違う(りーさん)場合は除く。
「もう一人の先生」
彼女が作り出した幻想には失われた全てが詰まっている。特に、めぐねぇの次に“彼女”は鮮烈に記憶されている。
「責任」
誰かが一緒に背負ってくれる。それだけで救われるもの。めぐねぇもくるみも、容量があるのだから。
前話でくるみがめぐねぇにスコップを持たせたのも責任があるからこそ。後のことまで考えてのことだった。