東京喰種 【GLF】喰種解放戦線   作:トミナカ・ビル

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Chapter1:Eureka
episode1:プロローグ


   

 人を喰らう怪人"喰種(グール)"が跋扈する東京。日常に隠れて生きる、正体が謎に包まれた"喰種"の脅威に、人々は恐れを感じ始めていた。

 

 一方、事態を重く見た政府は、人命を脅かし反社会的な行動をとる喰種に対処べく、新たな法律を制定する。それが“喰種”対策法である。

 

12条1項「赫眼および赫子の発生が確認された対象者を第I種特別警戒対象別称“喰種”と判別する」

12条2項「“喰種”と判別された対象者に関してあらゆる法はその個人を保護しない」

13条1項「喰種捜査官は住民の安全を最優先に任にあたる」

13条2項「“喰種”に対し必要以上の痛みを与える事を禁ずる」

その他:喰種を蔵匿・隠避したものには人間の犯罪者を匿うよりずっと重い罰がある。

 

 同法律を背景に、国は新たな行政機関――『喰種対策局(Commission of Counter Ghoul)』を設立する。喰種狩りに特化した専門部隊であり、彼らの活躍もあって喰種による被害は減少しつつあった――。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 東京・11区――

 

 喰種のはびこる危険な街・東京にあって唯一ともいえる、“比較的”安定した地区だ。喰種による被害は年々減少しており、場所によっては夜間に外出しても襲われない地域すらあるほど。

 

(長かった……あの忌々しい喰種共から治安を取り戻すまで、長い道のりだった……)

 

 11区方面本部長の石井は感慨にふけりながら、執務室の窓から広がる夜景を満足げに眺めていた。

 

 方面本部ビルの最上階から望む、夕暮れの11区。ビルやマンションの立ち並ぶ市街地には、色とりどりのネオンが煌びやかに輝いている。その先、東京湾の埋め立て区域には工業団地が立ち並び、さらに奥には眩い光を放つ不夜城――羽田空港が圧倒的な存在感を醸し出していた。

 

「――石井警視正、CCGの和修様から通信が入っております」

 

 デスク上のモニターから聞こえてきた音声に、石井は目を顰める。

 

「……通せ」

 

「――かしこまりました。回線をお繋ぎいたしますので、しばしお待ちください」

 

 通信が途切れると、石井はふぅと大きなため息をついた。

 

 CCG――喰種対策局は既存の警察組織にとって、ある種のライバル的な存在だ。喰種の脅威を盾に、警察の管轄の土足で上がりこんでくる成り上がり者……それが石井の認識だった。

 

『喰種対策局長の和修です――』

 

 通信がつながり、一人の男が画面上に映し出された。和修 吉時……新しくCCG本局の局長となった英才で、総議長の息子でもある。和修家とは、独自の技術で喰種討伐を生業にして来た、一族で『CCC』の創立者でもある。

 和修吉時の父親、常吉(つねきち)が現総議長。

 

「蒲田署長の石井です。――要件は何でしょうか」

 

 11区は大規模な警察署だ。石井の階級も警視正と、警察では4位に当たる高い地位にある。たとえCCGの局長いえども、下手に出る必要はない。

 

「やはり、喰種関係でしょうか」

 

『そうだ。近々、喰種によるクーデターが予定されているという情報がある』

 

 和修の話を聞いても、石井は驚かなかった。似たような話は何度も耳にしている。

 

「信頼できる情報なのですか? とても正気の沙汰をは思えませんが……」

 

『既に証拠は押さえてある。先日の調査で蒲田駅周辺にあった喰種のアジトから、大量の武器弾薬が見つかった』

 

 その言葉を聞いて、石井の顔が青ざめた。もし和修の言葉が真実なら、とんでもない失態をしでかした事になる。

 

「そっ、そんな事が……!」

 

『事実だ。CCGはこれを、喰種による大規模なテロ事件の前触れだと見なしている。そこで地元警察にも協力を要請したいのだが……何か喰種関係で思い当たる節はあるか?』

 

 和修の問いに、石井は首を横に振る。

 

「いえ……なにせ私の管轄区域ではここ数年、喰種による被害などほとんど無かったものですから……」

 

 石井が11区方面本部長に抜擢されたのは4年前。着任直後から「家族連れにも安心な街にする」と宣言した石井は、「割れ窓理論」として知られる理論を応用しての治安対策に乗り出した。

 

 これは「たとえ軽犯罪であっても放置せず、厳重に罰して全体のモラルを向上させる」というもので、石井は落書きのような軽い犯罪でも徹底的に取り締まった。警察官を大量動員してのパトロールや、各種軽犯罪の厳罰化、喰種の餌食となりやすいホームレスの強制収容などを4年にわたって執行した結果、蒲田区の犯罪件数は3年前の半数に減少したという事になっている……。

 

『そうか』

 

 モニターに映った和修の顔は、僅かに歪んでいた。

 

『では……これがどういう事か説明してもらえないだろうか』

 

 モニター上に、新たなウィンドウが表示される。

 そこに映っていた映像を見て、石井は悲鳴をあげた。

 

 とある料亭で、酒を飲む石井の写真――問題は、その反対側の席に移っている女性だ。

 

 柔らかそうな栗色の髪、透き通る様に綺麗な褐色の瞳、はっきりとした眉に長い睫、高く通った鼻筋。齢は20前後、といったところだろうか。目鼻立ちのはっきりとしたその女性には、何処か異国の血が流れている様だった。

 

 

「アリサ――指名手配中の、Bレート喰種だ」

 

 

 次の瞬間、署長執務室の窓ガラスが粉々に砕ける音がした。

 

 特殊部隊よろしく窓から部屋に突入してきたのは、一人の偉丈夫。側頭部の毛は剃られ、胸元には鳩を模した胸章――喰種捜査官だ。

 

「動くな!」

 

 有無を言わさぬ強い声で叫ぶと、慣れた動きで容疑者を確保。茫然としている石井に手錠をかけ、モニターの前で報告する。

 

「第一容疑者・石井警視正、喰種対策法違反の容疑で逮捕いたしました」

 

 和修は「うむ」とだけ頷くと、そのまま通信を切った。後は容疑者をCCG本部まで連れてこい、というのだろう。

 

「さて、一仕事終わったな」

 

 篠原はそう言って、石井を立たせようとする。すると窓の外からもう一人、別の男が入ってきた。胸には同じく捜査官の紋章――同僚の上等捜査官・丸手斎だ。

 嫌味な性格で、部下たちからも、あまり慕われてはいない。彼の所属する、対策Ⅱ課は、分析や作戦立案など、『CCG』のブレインを務めている。

 

「なぁーにが“一仕事終わり”だ。正門から普通に入ればいいものを、相変わらずハデにやらかしやがって。誰がコレの後処理をするんだと思ってんだ?」

 

 丸手は呆れ気味に、滅茶苦茶になった部屋を見回す。調度品は粉々になり、机は真っ二つに割れている。どれも篠原が突入した際に発生した被害だ。

 ……ちなみに丸手はというと、縄梯子を垂らして地味に入室している。

 

「捜査令状は持ってんだ。いくら警察とは仲が悪いからって流石に妨害はされないだろ」

 

「そう言われてもなぁ……逃げられないようにするにはコレが一番確実かなぁ、なんて」

 

 困ったように、ぽりぽりと頭をかく篠原。必死に弁解する同僚にため息を吐きつつ、丸手は携帯を手に取った。

 

「――丸手だ。今から容疑者を車に乗せて本部に向かう。警戒も怠るなよ」

 

   




 基本的にアニメの情報を元にしております。

 テロリストのテンプレみたいな題名の作品ですが、気楽に楽しんでいただけたら幸いです。

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