PSO2 マイキャラ達のちょっとした日常 作:ひかみんとかカズトとか色んな名前
今回もゲスト物です。
時系列としては、前回のより前となります。アレの参加者の一部と知り合ったお話みたいなものですね。
本来のキャラと違っていたりする可能性、マイキャラの裏設定の一部がありますが前もってご了承ください<m(__)m>
「メリー…!」
「…」
遺跡エリア。
一人の悪魔が、一人の静かに佇む屍と対峙していた。
「救援要請?」
マイルームに待機していたpalseに告げられたのは、見知らぬアークスからの協力を求める声だった。
何でも、そのアークスの知り合い二人がナベリウスの遺跡エリアから戻ってこないということらしいのだが…
《アークスの…ファランディンという女性からですね。彼女の知り合いが戻ってきた様子がないとのこと。それほど難しいクエストでもないはずです。》
「…おかしいわね」
《はい。確かに、緊急的に何かが起こることは常にありますが…》
通信相手─ブリギッタ─自身も、何が起きているのかわからないと困惑している様子だった。
「…とにかく確認に行きましょうか。ブリギッタ、ファランディンさんにゲートに来るよう伝えて。」
《わかりました。》
まずは確かめなければ。
嘘であればまだ言い出しっぺの本人をシバけばいい。だが本当であれば迷うほど手遅れになる。
そう考えたpalseは準備を整えるためにゲートエリアへ向かった。
ゲートエリアで装備を整えたpalseは、腰にダブルセイバー─セイガーブレード─を下げ、ゲートエリアを見回していた。
「…どこかしら…」
「あの、よろしくて?」
palseはゲート前まで移動しキョロキョロと探していると、突然後ろから声をかけられる。
palseがそちらを向くと、茶色のロングと小さな黒い帽子に加えこうもりの羽と、全体的に吸血鬼を彷彿とさせる格好の女性がいた。
「何か…っと、貴女がファランディンさんでいいのかしら?」
「いかにも…ファランでいいですわよ。…となると、貴女が救援に応えてくれたpalseさん?」
「そうよ。…それで、早速だけど状況は?お二人の状態は?何かわからない?」
声をかけた女性は、palseに救援を要請したファランディンであった。
依頼主であるファランディンと合流したpalseは、すぐに真剣な表情で彼女に情報を求めた。
「…ごめんなさい、何もわからないの。」
「そう、なら準備が出来次第遺跡エリアに向かうわよ。」
「えっ、す、すぐにですの?」
何の迷いもなくてきぱきと事を進めるpalseに、情報を何も提供出来ずに俯いていたファランディンは困惑した。
「当たり前でしょう。今こうしてる間も行方不明者は危機にさらされているかもしれないじゃない。ゆっくりしている暇はないわよ。」
「う、わ、わかりましたわ。」
恐らく彼女は想定外の事が起きた時に弱いのだろう、経験を積んだ雰囲気はあるものの、どことなく固い反応だった。
「緊張してるなら通信に回ってもらってもいいわよ、無理する必要はないわ。」
「…いえ、私の友が関わっているんですもの。行きますわ。」
まだ固さは取り切れていないが、やはり友が心配なのか決意した表情でpalseの方を向きつつそう告げた。
palseも了解したという意図で頷き、彼女を連れてゲートを潜っていった。
遺跡エリア。
ボロボロな建物の山と複雑な地形が入り組んだかつて【巨躯】が封印されていた場所。
今もまだダーカーが沸く危険な場所となっている。
そのエリアに、palseとファランディンは降り立った。
「ファランさんはとにかく通信が繋がるまで試しながら進んで頂戴。雑魚は私が蹴散らすわ。」
「わかりまし…」
《palseさん!ファランディンさん!お二人の反応をキャッチしました!》
ナックル─ゴッドハンド─を拳に装着しつつpalseはファランにそう指示し、いざ進もうとしたとき、ブリギッタから通信が入った。
ファランディンの知り合い─アルボフレディスとメリフィリア─の反応を見つけたというのだ。
「二人はどこに?」
《最深部です!…ですが、何かおかしいです。》
「おかしい…?何があったの?」
《その反応同士が“ぶつかり合ったり離れたり”しているんです…お二人の反応で何故…》
「…!まさか…palseさん、大急ぎで行きましょう!!」
「えっ、ま、ファランさん!!くっ!」
ブリギッタの詰まりながらの言葉に何かに気づいたファランディンは、大急ぎで奥へと走り出した。制止が間に合わず出遅れたpalseもすぐに走り出し、あっさりと追いつく。
「ファランさん、急ぎながらでいいわ。…何か心当たりがあるの…?」
しかし止めることなく、二人で走りながらファランディンが焦る理由をpalseは問う。
「メリーさん…私の知り合いの一人であるメリフィリアさんは、条件が揃ってしまうと暴走してしまうんですの。」
「暴走…!?」
「ええ。…それも、彼女の過去が深く関わったものでして……もしかしたら今なってしまっているかもしれない…!」
「なら尚更、急ぐわよ!!」
ファランディンの話を聞いたpalseは更に速度を上げ、最深部を目指し走っていく。
ファランディンもまた負けじとpalseを追いかけていった。
「はぁっ…はぁっ…!」
「…」
場所は変わり、最深部───
そこには、消耗した一人の女性と静かに佇む女性の二人がいた。
どちらも特徴的な外見をしており、片や悪魔の翼や角を生やし露出も多めの服をきた、魔王を彷彿とさせる消耗した女性。
片や白い髪に白い肌、右目からは何かの力が漏れてるかのような黒い靄、カースドコートを纏った無言の女性であった。
消耗している女性は回復する手段がないのか、はたまたその隙がないのか。傷だらけであっても回復する素振りを見せず、ただ無言の女性を警戒していた。
無言の女性の方も傷跡のように服が所々破れてはいるものの、持っている武器─セイガージャベリン─の性能が発揮されているのかダメージは残っているようには見えない。
と、無言の女性が突然武器を振るい、衝撃波を繰り出してきた。パルチザンのフォトンアーツ、スピードレインである。
「ふふっ、普段なら嬉しいはずですけどね…こうもピリピリとしていると…っ!」
痛みを訴える体を無理矢理動かし、何とか5つの衝撃波を避ける消耗した女性。だが、その回避した先にセイガージャベリンの矛先が迫る。
「ぐぅっ…!!」
「…」
「ああっ!」
消耗した女性は辛うじて自分の武器─スレイブクロス─で受け止めたものの、勢いまで止めきれずそのまま押し切られ、吹き飛ばされた。
心なしかビクンビクンと震えたようにも見えるが、無言の女性はそんなことお構いなしにゆっくりと歩み寄る。
そして、首もとに向けられるセイガージャベリンの矛先。
「…まだっですよ…!」
スレイブクロスでセイガージャベリンを弾く。だが、それも悪足掻きにすぎなかった。
無言の女性はそのままジャベリンを振り上げ…
「ラストネメシス。」
「…!」
突然放たれた、別方向からの矢の狙撃。
本能が察したのか、それをヒラリと避ける無言の女性。
そのまま、ジャベリンを倒れている消耗した女性へと振り下ろした。
ガキィィィン!
と武器と武器が勢いよくぶつかり合う音がエリア内に響く。
「間に…合ったわね…!」
二人の間に乱入したpalseがセイガーブレードで防いだのであった。
「アルビィさん!」
「ファラン!?貴女どうして…ぐっ…」
「ファランさん、彼女を連れて下がりなさい!」
palseが無言の女性と鍔迫り合いをする中、先ほどラストメネシスによる狙撃を行ったファランディンが消耗した女性─アルボフレディス─へと駆け寄る。
アルボフレディスもファランディンを見て驚くが、余程消耗していたのだろう。立ち上がることすら難しい様子だった。
「さ、早く。」
「んぐっ…ありがとですよ…!」
「礼は後ですわ!…少し任せますわよ、palseさん!」
「早めに頼むわね…!」
ファランディンはアルボフレディスに肩を貸し、一時的に戦線から離脱する。
残されたpalseは、目の前でセイガージャベリンを持つ無言の女性─メリフィリア─を観察した。
「(傷があったと示す服の破れ具合からみて相当殴られたはず…セイガージャベリンの力もあるとはいえ相当なタフさね…!)」
「…!」
一度間合いを取るため、力を込め思い切り押し切り無理矢理距離を離させる。
メリフィリアもそれを察知したのか、勢いを受け流すようにバックステップしていた。
「(…ここはナックルの単発火力の方がいいかもしれないわね…)」
(…おい、palse…)
「(何よ。)」
セイガーブレードを収めてゴッドハンドを拳に装着しつつ、突然話しかけてきたDistrustに対応する。
(こいつは一体…何なんだ?)
「(…はぁ?)」
(はぁ?じゃねぇよ。…こいつ、ただの人間じゃねぇ。)
「(いつもの直感?)」
(ちげぇ。…今鍔迫り合いをしたとき…奴から人のようなものの意志をいくつも感じた。)
「(…なるほど。)」
静かに佇むメリフィリアの出方を警戒しつつ、palseはDistrustの声に耳を傾ける。
そのDistrustの言葉に、palseはある予測を立てた。
「(ここで先ほどのアルボフレディスさんと共に何かに襲われ、“本来のメリフィリア”の意識が薄れた。それをいいことに彼女の中にいたいくつもの意識が彼女を脅かしている。つまり今のこの状態は彼女なりの防衛本能…ということかしら…。)」
(予測としちゃそんなもんだろ。だが、多分こりゃ話聞きたくねぇガキと同じで耳を塞いで殻に籠もっちまってんな。)
「(…その“殻”が、“今の状態”なのかしらね…。)」
セイガージャベリンを構え制止しているメリフィリアは、不気味なほど静かにそこに佇んでいた。
先ほどまでの行動を見て、素直に呼びかけに応えてくれそうにもない。
(とりあえず…セイガージャベリンを手離させねぇとじり貧になっちまう。…いっそぶっ壊しちまうのもありだな。)
「(最悪そうするしかないわね。)」
大ざっぱに方針を決めたpalseは、とりあえず二人が戻るまでの時間稼ぎをするため、構える。
メリフィリアも何かを察したのか、ゆっくりと突撃の体制に変わっていた。
「…来なさい。」
「…!!」
メリフィリアはセイガージャベリンを構え、勢いよく突っ込む。
palseもまた、拳を構え正面から真っ直ぐに突っ込んでいった。
「(単純な突き…いや違う、これはフェイント!)」
メリフィリアの突撃にほんの僅かな勢いのなさを感じ取ったpalseは、敢えて懐へ飛び込もうと突っ込む。
メリフィリアは突きを繰り出すが、palseはそれをひらりとかわす。セイガージャベリンの矛先は上へと逸れたが、それを待ってたとメリフィリアは上から下へ突き下ろした。
だが、palseは突撃の勢いを無理矢理殺し、体制を低くしつつ全身で回転するように矛先をかわすと、その回転の勢いそのままに右の拳を振り上げる。
「スライドアッパー…!」
全身を使って振り上げられた拳はメリフィリアの腹部を捕らえ大きく吹き飛ばし、彼女の比較的小柄な体は仰向けに地面へ叩きつけられた。
武器は手放させることは出来なかったどころか、それでも尚メリフィリアは平然と立ち上がってきた。
「(…突進の勢いを殺していたとはいえ、あれだけ勢いをつけたアッパーでも致命傷にはほど遠いか…ッ!)」
メリフィリアを見てそう考えていたpalseの頭上から落ちてきた一つの光。
パルチザンのフォトンアーツ、セイクリッドスキュア。
槍を空へ投擲し、フォトンを纏った槍が空から敵を串刺しにするフォトンアーツである。
「…ッ!?」
その光をかわした先には、セイガージャベリンの矛先が。
palseは反射的に両手をクロスさせ、ゴッドハンドの両手の甲で受け止める。
「中々…ッ!」
押され気味なpalseが苦しげに呟く。
メリフィリアの槍は完全に体重まで乗っており、かなり重い矛先となっていた。
だが、palseはそれを右手の甲で受け流すように滑らせ、そのまま体を右回りに一回転させる。
メリフィリアは槍に体重まで乗せていたせいか、完全にバランスを崩していた。
「サプライズナックル!」
そのメリフィリアの背中へ、palseは一回転した勢いで裏拳を叩き込んだ。
一撃では止めず、もう一回転し裏拳、そのまま大きく逆に体を回転させ締めの裏拳をメリフィリアの腹部に打ち込み、吹き飛ばした。
ゴロゴロと転がるメリフィリア。
彼女に追撃せんとpalseは駆け寄り大きくジャンプし、拳を振り上げる。狙いは、槍。
「クエイクハウリング!」
ドスン!と大きな地響きと共に舞い上がる土煙。それは大量に舞い、二人の姿を覆い尽くした。
「動けますの?」
「大丈夫ですよ…それよりも早く彼方に戻らないと!」
メリフィリアとpalseが戦っている近くの岩陰、そこでアルボフレディスがファランディンに見守られつつ傷を癒していた。
割と時間がかかり、大分palse一人に押し付けてしまったと二人は立ち上がる。と、palse達の方から地響きが。
「ッ!何が…!」
「急ぎますわよ!」
その地響きを感知した二人は岩陰から飛び出すと、土煙が上がっている場所を見つけた。その方向へ二人はすぐに走り出す。
二人が駆けつけると同時に土煙は晴れていく…
そこには…
「…ぐっ…!」
左わき腹をセイガージャベリンで斬られたpalseと、その槍を空へ突き上げたままクエイクハウリングに動ずることなく、ただただ無表情なメリフィリアの姿であった。
メリフィリアはそのまま起きあがるのに邪魔だと言わんばかりにpalseを思い切り蹴り飛ばす。
「がはっ…!」
「っと!大丈夫ですか!?感じてませんか!?」
「…何を言ってるのよ…貴女こそ大丈夫なの?」
「私はもう大丈夫ですよー!」
蹴り飛ばした先、駆け寄ってきていたアルボフレディスがpalseを受け止め、若干おかしな心配をする。
そんな彼女に呆れつつも、palseは自分で傷を治癒しつつアルボフレディスに確認した。
服は所々破れてはいるが、他は大丈夫なように見えた。
「…ダメね。下がってなさい。」
「なっ!何でですか!私はまだ…あひっ!」
palseは何かを見破ったかのように発言すると、アルボフレディスの先ほどまで傷口があった部分にデコピンした。
すると、アルボフレディスは痛みを感じたのかビクンと体を震わせてた。
「その状態でやりあっても戦線維持は難しいでしょう?辛いとは思うけど、下がってて頂戴。」
「えぇー……わかりましたよ。」
アルボフレディスは反論しようとしたが、palseの真剣な眼差しに渋々といった感じに了承した。それを確認すると、palseはファランディンの方を向いた。
「ファランさん」
「何かしら?」
「貴女には狙撃をお願いすることになるわ。さっき駆けつけた時みたいに。」
「…それは、お二人が殴り合う中メリーさんだけを射抜くということですわよね…?」
どことなく自信なさげな言葉を吐くファランディンに、palseは頷く。
「…いいでしょう、やってみせますわ。」
「よろしく頼むわね。」
少々固い雰囲気の返事ではあったが、palseは彼女と信用し任せることにし、メリフィリアの方を向いた。
メリフィリアは、こちら側が撤退する意志がないと見ているのか殺意むき出しのままであった。
「行くわよ。」
palseはそう呟くと、メリフィリアに向かって体制を低めにし突撃する。
メリフィリアも彼女に合わせセイガージャベリンを構えた。やや後ろに構え、フォトンを溜めている。
「(あの構えは…スライドエンド…!)」
palseはそう直感すると、更に体制を下げ突っ込む。メリフィリアは彼女が範囲に入るタイミングと同時に溜めた力を解放するようにセイガージャベリンを振るった。
メリフィリアの右側から左側へ走る強靱な一閃。palseはそれを無理矢理体制を低くすることで回避すると、下からカチ上げるように右拳を振り上げる。
メリフィリアもまた振り切ったセイガージャベリンを振り下ろし、矛先とゴッドハンドがぶつかり合う。
「シフタッ!」
「ラストネメシス。」
その二人から離れた場所から響く、アルボフレディスとファランディンの声。
メリフィリアはそれに気づくも既に遅く、左肩を強力な一射が撃ち抜いていた。
「(今…!)」
(!!待て、palse!)
左肩を射抜かれてバランスを崩したメリフィリアを見て、チャンスと判断したpalseは更に踏み込んだ。だが何かを感じ取ったDistrustは制止しようと中から叫ぶ。
「なっ…!?」
なんとメリフィリアは左肩を射抜かれ、そちら側に体制が偏ったのを利用し体を一回転、その間に持ちだしていたのか、左腕にセイガーソードを持ち回転の勢いそのままにpalseに向けて振るったのである。
すでに踏み込んでしまっていたpalseは、ゴッドハンドを盾として構えセイガーソードを受け止める。だが体制が整っていないために衝撃は体を突き抜け、大きく吹き飛ばされる。
「ぐぅっ…!」
「大丈夫ですかっ!?」
吹き飛ばされはしたものの、palseは転がりつつもなんとか勢いを殺し起きあがる。
アルボフレディスもレスタをかけようとpalseの元に駆けつけ、ファランディンも警戒するために側に来ていた。
だが、palseのゴッドハンドがほぼ直撃を受けてしまったためか損傷してしまい、メリフィリアに至っては肩を射抜かれたにも関わらず平然としていた。
「…これはもう、今は扱えないわね…」
「どうしますの?このままじゃじり貧ですわよ…?」
「そうね…仕方ない、か…ここまでてこずったのはいつ以来かしら…。」
そんな風に呟きつつ、ゴッドハンドはこれ以上使うと壊れてしまうと判断し、palseはそれを外す。
「…何をするつもりですか?」
「下がってて頂戴。今からやるのは少々危ないことよ。」
素手になってもなお前へ立つpalseに、少々不安がるアルボフレディス。だがpalseは下がる事を指示した。
そして目を瞑り、Distrustを呼び出す。
「(Distrust、あの子を呼んで。)」
(…いいのか?)
「(これ以上時間をかける訳にはいかないわ。この人達には知られるけど、きっと大丈夫よ。)」
(ったくどこからその信頼が来るんだが…)
そう呟きつつ、Distrustは奥に眠る“もう一人の魂”を起こしに引っ込んだ…と思いきや、数秒と経たない内に…
(ぱーるす♪呼んだ?)
Distrustとは違う、明るい元気な少女の声が頭に響く。
「(ええ、呼んだわ。…短時間で片を付けるには相手がタフすぎるから…少し、力を分けて頂戴。)」
(はーい♪わかってると思うけど…)
「(やりすぎないこと、程ほどにしないと体が持たないこと。でしょう?)」
(うんっ。本来はこの世界にない物だし、加減しないとタフとはいえ人ぐらいならあっさりぶっ壊せちゃうからね。気をつけてね、palse。)
「(わかってるわよ、“パルス”。)」
(ふふ♪じゃあ、行くよ…!)
palseの精神内のやりとりが済むと、彼女は目を開く。それとほぼ同時にpalseの体にある“力”が宿り、溢れる。
精神内から解放され、palseに宿った“力”は凄まじく、周囲を威圧するように風圧をまき散らす。それほど強い風圧ではないものの、身につけたアクセサリーと髪ゴムは“力”に耐えきることが出来ずに吹き飛び、塵と化した。
髪ゴムがなくなったことにより大きく広がったpalseの髪の先は、金色に染まっていた。
「どわーっ!…なっ、なんなんですかこれはー!?」
「うあっ…!何…?あの人は一体何者なんですの…!?」
突如巻き上がった風圧にほぼ同時に悲鳴を上げるアルボフレディスとファランディン。
二人の疑問を含んだ視線は、黒と金の髪を揺らす彼女へと向けられていた。
当然メリフィリアも、突然驚異的な力を目の前で解放され、そのまま準備を整わせる訳には行かないと本能的に判断したのか、セイガーソードとジャベリンを持ちpalseへと突っ込んだ。
その突撃に合わせたかのように風圧が落ち着いて行き、メリフィリアはpalseに向けて左手に持ったセイガーソードを振り下ろした。
だが、その刃がpalseに届くことはなかった。
「はぁぁッ!!」
振り下ろされたセイガーソードを、palseは高濃度のフォトンを纏った右拳を振り上げ裏拳で弾き飛ばしたのである。
先ほどまでとは段違いな拳の強さに、メリフィリアは体制を崩されたどころかセイガーソードを手から弾かれる。
バランスを崩している僅かな間に、palseは左拳でセイガージャベリンをメリフィリアの手から払い飛ばす。
いきなり立て続けに起きた二連撃にメリフィリアは驚くことなく自身の拳でpalseに殴りかかった。
「遅すぎる。」
だが、まるでそう来るのが“見えていた”かのように、メリフィリアの拳をヒラリとかわしたpalseは自身の右拳を踏み込んできた彼女へと振り上げる。
「
palseの叫びと共に、メリフィリアの胸元へ強烈な一撃が叩き込まれる。
その強さはいくら小柄とはいえ何戦もの戦いに耐え続けたタフな体を易々と吹き飛ばし、エリアに出来ていた壁へ叩きつけ、その衝撃で周囲にヒビが入るどころか一部崩れるほどに強烈であった。
「カ、ハ……」
壁に叩きつけられ、そのままずり落ちるように地面へ倒れるメリフィリア。それを確認したpalseはメリフィリアへ歩いて近づく。
だがメリフィリアはまだ平然と立ち上がり、palse達へ牙を剥こうとする。
「もう一発、必要かしら?」
指を鳴らしつつ、メリフィリアへと近づいていくpalse。だがメリフィリアも動じることなく、光ない目で睨みつけていた。
「…あれって、マズいんじゃ…」
「止めますわよ、アルビィさん!」
その二人の行動に不安を覚えたのか、少し離れていたアルボフレディスとファランディンはpalseを止めようと走り出した。
歩いて近づいていたpalseはメリフィリアの前で止まる。当然、メリフィリアも黙っていることなく右手で殴りかかる。
だがpalseはそれをあっさりと受け止め、右手を振り上げる。
「終わりよ。」
感情なき屍に無慈悲に振り下ろされる拳。
「palseさん!待っ…!!」
駆け寄っていたファランディンが大きな声で叫び止めようとした。
だが、当然止まることもなく…
パァン。
と乾いた音が響いた。
「いい加減目を覚ましなさい。貴女は貴女。例え誰がどう言おうとメリフィリアという人は貴女しかいないでしょう。」
何も纏っていない右手でメリフィリアの頬をはたき、彼女へそう告げるpalse。
「……ワ…タ、シハ………」
「…貴女を待ってくれてる人だっているのよ?」
「そうですよメリー!私をちゃんと満足させるまで変なとこでいなくなったらダメですよー!」
「メリーさん、私だってまだお付き合いしたいんですもの、貴女が貴女でなくなるのはいけませんわ!」
palseの後ろから駆けつけ、メリフィリアに呼びかけるアルボフレディスとファランディン。
その呼びかけにメリフィリアは頭を抱え、震えながらうずくまる。
「…ウ、ウゥ…ワタ、シ、は…わ、たシ、は…!!」
「メリーさ…!」
震えながらうずくまったメリフィリアに呼びかけようとしたファランディンを、palseが無言で制止する。
何故だ、とファランディンは睨むように視線をpalseに送る。
「どんなことも、過度にやってはいけないわ。もう彼女が自分を覆っていた“殻”を砕き、声を届かせた…後は彼女が、
いつの間にか先ほどまでの強大な“力”が抜け、金髪となっていた毛先も黒に戻っていたpalseが二人にそう告げる。
二人は不安な表情で、今だ呻きつつうずくまるメリフィリアを見守った。
そして少し経った。
メリフィリアの呻き声が突然止まり、震えも収まる。
palseは目を細め警戒し、二人は不安な表情のままだった。
「……ほえ?」
そんな緊張感に包まれた空間を砕いたのは、先ほどまで黙りで暴れ回っていたメリフィリア本人からの緩い声であった。
「…私は…また暴れてたのでしょうか…凄く酷い夢を見ていた気分で…あら…?」
うやむやではあるが自覚はあるらしくふらふらと立ち上がろうとするが、体のダメージは相当溜まっていたようで体制が安定せず、palseの方へ倒れ込んだ。
palseもまた、それを優しく受け止める。
「貴女の体は何度も傷を負ってるの。その状態で動ける方が凄いくらいだわ。」
「あう…なんだかすみません…。」
ぐてーっとpalseに倒れ込んだ状態のメリフィリアをゆっくりと寝転がせつつ、palseはそう告げた。
「メリー!」
「メリーさん!」
「アルビィちゃん…それにファランちゃんまで来てくれたんですか…」
寝転んだ状態のメリフィリアに近寄り、しゃがみこむアルボフレディスとファランディンの二人。
体の重みによる疲れは見えるが、ニコニコと笑顔でアルボフレディスとファランディンの名を呼ぶメリフィリアに二人も安心していた。
と、ふとメリフィリアが何かを思い出したようにキョロキョロし始める。
「そういえば先ほど受け止めてくれた…貴女はどちら様でしょうか…?」
どうやらpalseのことだったらしく、いつの間にか離れていたpalseにメリフィリアは声をかける。
「私?私はpalse。ファランさんからの救援依頼を受けてきたアークスよ。」
「あら…そうでしたか…ごめんねファランちゃん、迷惑かけちゃって…。」
「気にしなくていいですわ。困ったときはお互い様ですもの。」
palseの自己紹介で察したメリフィリアはファランディンに謝るが、彼女はほほえみながらそう告げた。
「さぁ、もう一仕事よ。私と、貴女達どちらかがメリフィリアさんに肩貸しなさい。」
少し落ち着いた後、palseはメリフィリアの上半身の方に近寄り、ゆっくりと起きあがらせる。
少し痛みに表情が歪んだようにも見えるが、メリフィリアは支えられつつゆっくりと起き、立ち上がる。
「じゃあ私が」
「アルビィさんはまだ痛むでしょう。私が貸しますわ。」
「酷い…なんて焦らしプレイ…」
ファランディンがアルボフレディスの言葉を遮りつつメリフィリアに肩を貸した。
アルボフレディスはというと、羨ましげに指を咥えて見ていた。
「ほら、何を言ってるの?早く行くわよ。」
palseはファランディンと共にメリフィリアに肩を貸しながらアルボフレディスにそう告げ、全員帰還用テレパイプへと向かっていった。
「お帰りなさーい、無事で何よりだわ~。」
四人がアークスロビーのゲートエリアに帰還すると、palseの姉、アンジュが出迎えにきた。
相変わらずニコニコとしており、マイペースさを保っているのがすぐわかる口調だった。
「アンジュ姉さん、負傷者が二人いるの。手を貸してくれる?」
「あら、わかったわ~。それじゃあ行きましょうか~♪」
メリフィリアに肩を貸すpalseはそう言い、ファランディンとメディカルセンターへ歩いていく。アンジュは真っ先にアルボフレディスの方へ近寄っていく。
「ほら、貴女も行った行った♪」
「え、な、なんのことでしょうか!?私は傷はだいじょ…Σおふっ!」
「こんな表面上だけの治癒でよく言うわぁ~…」
「や、やめ…Σあひぃん!…って引きずらないでー!!」
アルボフレディスの傷があった場所を、べしべしと軽く叩きつつアンジュは彼女の言葉を遮りつつそう言い、首根っこを掴み連れて行く。
ちなみにあくまでアンジュ本人は軽くのつもりではあるが、アルボフレディスは叩かれる度ビクンビクンと体を震えさせていたそうな。
Luxuria氏から、ファランディン、メリフィリア、アルボフレディスの三人との出会いのお話でした。ありがとうございます。
これを経て交流を重ね、前回のお話へ繋がります。
しかし、アルボフレディス(通称:魔ゾ王様)の持ち味を出そうとすると一気にギャグ風味が強くなるのが難しかった…。もし次があるなら、次はコメディ風になると思われます()
多分次は来年になると思います。
みなさん、よいお年を(速