PSO2 マイキャラ達のちょっとした日常   作:ひかみんとかカズトとか色んな名前

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今回またS氏にキャラをお借りしました!ありがとうございます!



捕らわれたpalse達

「ここは…一体…?」

 

そう呟き周囲を見渡す一人の女性、palse。

その視野には、赤黒い世界が広がっていた…

 

 

 

 

 

 

 

何故こんな事態になったのか、少し前に遡る。

 

「タイムアタックを?」

「うむ。各惑星の地理を生かしたコースが用意され、ゴールまでの時間を競う…。俺の腕を試すのもあるが、君のも見てみたいのだ。」

 

palse達のマイルームにて。

部屋を訪ねてきた赤莟がpalseに提案した、タイムアタック。

アークスが時折腕試しとして行う物であり、連携や技術といった早さ以外の能力も試される。

 

「うーん…私、タイムアタックは時間に拘らないけれど、いいのかしら…?」

「構わない。確かにクラスや個人の違いはあるだろうが、参考にしたいのだ。」

「…うん、いいでしょう。」

 

赤莟の頼みを聞き入れ、立ち上がるpalse。

ちょうど白蓮もアンジュもシャイナもいないため、暇潰しにはなるだろう。

そう思い、赤莟と共に部屋を出た。

 

 

 

「いいかしら?」

《うむ、大丈夫だ。…済まないな、ブリギッタ君。狭いだろうが…》

《だ、大丈夫です…。》

 

場所は変わって、palseはキャンプシップ内でファイター武器を持ってアップ中。赤莟はモニターから観戦するためオペレーターの方へとお邪魔していた。

 

《 では、準備が出来次第ゲートへ向かってください。》

「ええ。」

(…。おい、palse。)

「(何?今から集中したいのだけど…)」

 

ゲートへ向かい、いざ開始しようとした時、palseのもう一つの人格、Distrustが彼女に中から話しかけてきた。

 

(注意しろ、何か起こりそうだ。)

「(何かって、何よ…)」

(わからん。だが、なんかいつもとズレてる感覚がする。)

「(仕方ないわね…少し多めに補充しておきましょうか…)」

 

メイト系を普段より多めに持ち、ゲートへと立つ。そして、スタートのカウントダウンが始まる。

 

3

2

1

 

「…?」

 

開始のGOという音声が響かず、ゲートも開かない。palseが故障かと不穏に思った瞬間であった。

キャンプシップ内がアラートと共に赤い光で満たされる。

 

「ッ!?」

「き、緊急連絡です!!キャンプシップ周囲にダーカーの反応!異常重力源に引き寄せられています!!」

「このタイミングで…!?」

「palseさん!接触の衝撃に備えてください!!」

 

唐突すぎるダーカーの急襲。

なす術なく、palseを乗せたキャンプシップは異常重力源へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

《…!…!!palse!!》

「うっ…?」

 

意識を手放していたpalseを起こしたのは、赤莟の声であった。

だがノイズが強く、かなり掠れた物になっていた。

そして冒頭に至る。

 

《よかった、通信は辛うじて通じてますね…》

 

何とか連絡は取れることに安堵するブリギッタ。

だがすぐに緊張を含んだ声に切り替わる。

 

《どうやら、キャンプシップがダーカーに強制転送されたようです…通信状況は悪く、映像はほぼ入らないため、そちらがどのような場所なのか不明です、報告願えますか?》

「…そうね、ここはまるで…ダーカーの巣…みたいね。」

《ダーカーの巣…?そんな報告は今までなか…………》

 

 

ザザザザッというノイズ音と共に遮られる通信。恐らくジャミングが強いのだろう。仮に通じたとしても連絡をとりつつ進むのは無理と言える。

それにキャンプシップも強制転送のせいか墜落し、ほぼ使い物にならないだろう。

 

(…palse。そのまま道なりに進め。)

「(…道なり?どうして?)」

 

突然、Distrustから指示が出され、palseは何故だと問う。

 

(同じくここに捕らわれた奴らがいるらしいからな、合流出来るならしておくといいだろう?)

「(何故わかるの?)」

(お前…アタシは人から生まれたとはいえ、仮にもダークファルスだったんだぜ?こんなダーカーまみれの所に来たらそら色々鋭くなるさ。)

「(そう…。戻る道は絶たれてるし、進みましょうか。)」

 

Distrustとの話を済ませ、ダーカーの巣窟の不安定な道を進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり巣窟とだけあってダーカーは勿論、彼らの罠もそこら中に配置されていた。palseは武器をうまく変えて対応しているが、不規則に残った足場と毒沼という組み合わせは彼女の進行を大きく阻害していた。

palseは時折、タイムアタック用にセットしておいた移動用ジェットブーツに切り替えつつ移動していく。

 

「(Distrust、まだかしら?)」

(…いや、近いな。だが誰だかまではわからん、警戒しとけ。)

「(相変わらず大雑把ね…)」

 

道なりに進んでいくと、道が3つに別れている場所に辿り着く。

中央に少し出っ張った足場があったため、palseはそこへ移動し周囲を見渡す。

 

自分が通ってきた道と奥へと続く道の他に、二つのルートがあった。だが不規則に曲がっているために奥まで見ることは出来ない。

 

「(…ふむ…待ってもいいけど、ここでダーカーが来るとマズいわね…)」

(一旦端に移動しとけ。カルターゴとかが遠くに出てくると面倒だ。)

「(そうね。)」

 

Distrustの提案を受けて一旦来た方の道へ戻り、周囲を警戒するpalse。

すると、周囲から声がし始めた。

 

「お兄ちゃん大丈夫かなぁ…」

「大丈夫よ、貴女のお兄さんでしょう?」

「まぁ、そうなんだけど…」

 

女性二人の声。palseから見て左の道から僅かに聞こえてくる。

その一人の声に、palseは聞き覚えがあった。だが、念には念を。姿が見えるまで道の角に隠れていることに。

 

「うぅん…でもなぁ…」

「…!止まって、シャレット。」

「えっ、何ーー」

「そこにいるのは誰です?」

 

声がはっきり聞こえるほど距離が近くなった時、知らない方の女性から警告とも取れる発言が飛んでくる。

 

「(…これは黙ってるとマズいかしらね。)」

 

迷いのない言葉。自身の存在がバレているのなら迂闊に時間を稼ぐのは得策ではないと判断し、姿を現した。

palseの視界に入った女性は、片方は青く長い髪と目が特徴的なお嬢様のような人、もう一人はーー

 

「……アレ?」

「あら、やっぱりシャレットちゃんじゃない。」

「……あぁ!palseさん!お久しぶりです!!」

 

過去に一度アークスシップの町中で出会い、半日ほど行動を共にした少女、シャレットであった。見慣れた執事服に長い金髪、それに護衛用であろうトンファーも背負っていた。…当の本人は直前まで思い出せてなかったようだが。

シャレットはpalseの事を思い出すと、嬉しそうに駆け寄り両手で彼女の手を握ってぶんぶんしていた。

 

「お元気そうで何よりですよぉ~。」

「ふふ、シャレットちゃんもね。…ところで、彼女は…シルフィさん?」

「ふぇ?あ、そうですよー…何故わかったんですか?」

「シャレットちゃんが前に会った時に、話してくれたじゃない。お嬢様の執事なんですよって、ね。」

「…よく覚えてましたね…。」

「あの…。」

 

palseがシャレットとわいわいと話す中、取り残されていた青い髪の女性が割って入ってくる。

 

「えぇっと、シャレットの知り合いでいいのかしら?」

「ええ。ちょっとしたことで…私はpalse、よろしくお願いしますね。」

「あ、いえ…私はシルフィ。こちらこそよろしくお願いします。」

「ふふふ。…さて、お二人は何故ここに?」

 

テキパキと挨拶するpalseと少し戸惑った様子で返すシルフィ。palseは少し微笑みを見せ、すぐに真面目な表情で二人に問う。

 

「えっと、私はお兄ちゃんと一緒にお嬢様の護衛でキャンプシップに乗ってたんです。」

「ですが、突如ダーカーの急襲を受けてしまって…。私達が目覚めた時はキャンプシップは墜落、シャレットの兄であるレーツェの姿もなく…。ですので、レーツェの捜索も兼ねてここまで進んできました。palseさんはどのような経緯で?」

「私も大体一緒ね。私は一人でキャンプシップに乗っていたけれど、やはりダーカーの急襲を受けてここに来ていたわ。勿論キャンプシップは墜落。仕方ないから道なりに移動してきたの。」

 

いつ墜落したのか等の時間の問題はすぐには解決出来ないものの、ある程度似たような状況で、同じように急襲を受けたのは間違いないようだった。

 

(…ジャミングが浅い場所があるな…)

「…?ちょっと、ごめんなさい。(どうかしたの?)」

 

突然話し始めたDistrustに、palseは二人との話を中断し彼女の話を聞く姿勢に。

 

(この先、通信を遮断しているジャミングが薄れてる場所がある。とりあえずそこを目指すしかないだろう。)

「(罠ではないの?)」

(罠だろうな、でかい反応もある…だが、だからといって他の場所行っても同じ状態が続くだけだ。)

「(…そう、ありがと。)…ふぅ。」

「あの、何か…?」

 

頭の左側に手を添え、俯くように黙り込んだ様子は二人に心配させたようだった。その証拠に、少し不安そうな表情であった。

 

「いきなりごめんなさいね。私のもう一人の人格がかなりダーカー感知に長けていてね、この先のことを話しかけてきたの。」

「へ?palseさんって二重人格者だったんですか!?」

「ちょっと訳ありの過去があって、ね。」

「…それで、そのもう一人の方はなんと?」

 

palseの言葉に驚くシャレットと、冷静に訪ねるシルフィ。彼女の催促に、頷きつつpalseは話し始める。

 

「今通信を妨害しているジャミング、その効果が薄い空間がこの先にあるらしいのだけど、大きな反応も確認されてるの。」

「大きな反応?…ダーク・ラグネとか?」

「…いえ、わざわざこんな大袈裟な拉致をするのであれば、何かしらの目的を持って行うはず。ならそこに存在するのは…」

「ダークファルス…その内の誰かでしょうね。」

 

ダークファルス。

アークスの敵であるダーカーの幹部と呼べる存在。各ダークファルスがそれぞれの種族のダーカーを眷属として率いている。

その力を最大に解放した時は卓越したアークスが集団でかかっても苦戦を強いられるほどであり、とてつもない強さであることが伺える。

そのダークファルスの内一人が力を抑えた人間形態(ヒューナル)だとしても、三人ではかなりキツい相手である。

 

「…少々、面倒ね…」

 

palseがそう呟いた、と同時に瞬時に腰に下げていたゴッドハンドを右手に装備、“いつの間にか迫ってきていた”気配に向けて裏拳を振るった。

その本人も、気づかれた事に気付いたのか自身の得物でその拳を防ごうと構え…そして、止まる。

 

 

そこにいたのは、執事服を着てカタナを持った青年の姿が。

 

「早いわね。」

「お互いにな。」

 

そう短くやりとりした、直後。

 

 

「あーーーっ!!お兄ちゃん!!」

「レーツェ!無事だった!?」

「…うるせぇなぁ、無事に戻ってきたろ…。お嬢、ご心配をおかけした。」

 

シャレットの叫びで場が緩み、シルフィが安堵の表情でレーツェと呼ばれた青年にシャレットと共に駆け寄る。

レーツェはシャレットをめんどくさそうに相手すると、シルフィに礼儀正しく頭を下げた。

 

「…そんで、あんたは?…あの反射速度といい、そこらの並のアークスじゃねぇようだが…」

「レーツェ、この人はpalseさん。少し前にシャレットがお世話になった方よ。」

「前?……………あぁー。」

 

再び警戒の姿勢に入ったレーツェに、シルフィが警戒を解くよう促す意味を込めて紹介した。レーツェは顎に手を当て少し記憶を遡り、思い出したように手をポンっと叩いた。

 

「なんだがウチの妹が世話になったらしいな。お嬢と一緒に話を聞いたから知ってはいた。あと、さっきは突然仕掛けてすまなかった。」

「ん、お気になさらず。それほど警戒を要する立場なのでしょう?例えば、執事長。」

「…鋭いな…あんたほんとに何者だよ。」

「ただのアークスですよ。少し尖った能力の、ね。」

 

自分の立場を見破った彼女に驚くレーツェと、微笑みを崩すことなく返すpalse。

 

「…と、とりあえず合流は出来たけど…お兄ちゃんの方はどうだったの?」

 

少しピリピリとした空気になったが、シャレットがうまく誤魔化すように話題を振り、少し和らいだ。

 

「俺の方はここまで一本道だ。通信は不可能、キャンプシップからも離れちまってたからな。んで、適当に進んでここに着いたら見知らぬ人物が二人といたから、試すついでに仕掛けたのさ。で、お嬢達とpalseさんとやらの方はどうだったんだ?」

 

話を振られたレーツェは自分のさっきまでの状況を語る。やはり三人と同じ状況でここまで来たらしく、一時帰還という手は絶たれた。

その後、三人の状況も話した。

 

 

 

 

「…なるほどなぁ。てなると、palseさんのもう一人の人格の指示に従うしかねぇな。」

 

レーツェの言葉と共に、全員奥へ続く道をみる。先ほどからその前に全く敵の気配なく、静かに待ちかまえていた。

 

「Distrust…もう一人の人格は詳しく索敵出来ないみたい。…大きな反応と…別の反応が四つ?」

「となると合計五体ですか…。」

 

palseがDistrustの得た情報を三人に伝え、シルフィがその内容に表情を曇らせる。

 

「ダークファルスも厄介だが、気になるのはその四つの反応だな…」

「ふえ?なんで?」

 

しかしレーツェが着眼したのはダークファルスではなく、残りの四つの反応だった。

首を傾げるシャレットに、レーツェは呆れた口調で返す。

 

「なんでってお前…雑魚は基本的に寄られてから沸いてくるだろう?だが、ダークファルスが直々に率いてるような反応ってことは、だ。」

「それ相応の敵、でしょうね。」

 

レーツェの意見に付け足すようにうなずくpalse。なるほど!と手を叩くシャレット。

 

「しかし、進まないことには始まりません。」

「ですね。このメンバーならなんとか出来るでしょう。最悪、ジャミングが薄い場所へ辿りつき、救助の通信を送りましょう。」

「そうだな。」

「はーい!」

 

palseの提案に兄妹が返事し、四人は不規則な足場を渡り先へと進んでいく。

 

途中にやはりダーカーが現れたものの、四人にとっては大した敵ではなかったためにどんどんと蹴散らしていく。

 

 

 

 

 

そして、少し進んだ先の目的の場所、その前。

五つの反応があった場所へと辿り着いた一行を待っていた者は…

 

 

「…【巨躯】…!」

 

そう、【巨躯】(エルダー)の人間形態、ファルス・ヒューナルが待ちかまえていた。

しかし、今回はそれだけてはなかった。

 

「…!あれは…私!?」

「お嬢様だけじゃない!私までいる!!」

「…なるほど、“クローン”ということね…」

 

そう、今回捕まった四人の“クローン”が作り出されていたのである。

喋り出す様子はなく、表情が変わるわけでもない“人形”のようであるものの、武器や服まで精密に模している辺り面倒な相手であることは予測出来ていた。

 

「…どうする、か…クローンとはいえアレの相手をしつつダークファルスとやりあうのはちとキツいぞ?」

「そうね…誰かが【巨躯】の気を引きつつクローンを殲滅。そして四人で【巨躯】を撃退する…というのはどうかしら。」

「でも、それだと【巨躯】の相手をする人が危険すぎるよ!」

「シャレットちゃん、今は危険がどうこう言える場合じゃないの。ただえさえ救助がこない状況だから、正面衝突の持久戦には持ち込めない…わかるわね?」

「うぐ…」

「…では、その役を誰がするのです?」

 

palseの説明に唸るシャレット、その後にシルフィがpalseへと聞いた。

その危険な囮を、誰がするのかと。

 

「俺が」

「私がするわ。」

 

真っ先に進み出たレーツェの言葉を遮り、palseが言う。

 

「しかしpalseさんよ、それは…」

「…この中では、私が一番呼吸が合わない可能性があるから。三人が息を合わせてくれればただの人形くらいなんとかなるはずよ。」

「むう…」

 

当然レーツェから反対されそうになるが、palseは自分の意見を言いレーツェを黙らせる。

 

「………任せて、よいのですね?」

「お嬢様!?」

「お嬢!?」

 

そんな中、シルフィがpalseへと確かめるように聞いた。突然のことに執事二人は驚いたように声を上げる。palse自身も驚いたが、すぐに真剣な表情で返した。

 

「勿論ですよ。…さぁ、始めましょうか。」

 

palseは腰に下げていたゴッドハンドを拳に付け、シャレットはトンファーを、レーツェもカタナを構える。シルフィも護身用のカードを構えると、相手もそれらに応えるように構えていた。

 

 

 

一瞬の間が過ぎる。

 

 

 

先に踏み出したのは、【巨躯】とサシでやりあうつもりのpalse。

それに応じるように、【巨躯】も拳を振り上げて迫る。

 

「りゃあァァァァァァ!!!!」

 

palseの右ストレートと【巨躯】の拳がぶつかり、周囲に衝撃が走る。palseの後に続いた三人は、palseと拳で押し合っている【巨躯】をスルーし、遅れていたクローン達へと向かう。

 

 

「あなたは私と殺りあってもらうわ…【巨躯】!」

「…!」

 

右の拳を振り払い、左の拳を【巨躯】顔めがけて振るう。ひらりとかわされ、逆に相手の左拳が迫る。

だが、palseは体を回転させそれを右足で蹴り上げるように吹き飛ばし【巨躯】の体制を崩す。

その隙を逃すことなく、もう一度左のストレートを【巨躯】の胸のコアへと叩き込んだ。

 

「フハハッ!」

「ちぃっ…」

 

だが、それをもろともせずに【巨躯】はpalseの腹をめがけて左足を突き出す。

それを右手で受け止めつつ、後ろへ飛ぶことによって威力を減衰させた。

 

「流石に、コア直撃一撃ぐらいじゃびくともしないか…」

 

思ったよりキツそうだ、と思いつつpalseは次の攻撃に備え、構えた。

 

 

 

 

 

「はあぁぁッ!」

 

素早い抜刀とともに振り下ろされるレーツェのカタナ。それを防ぐクローンのレーツェ。

だが、オリジナルのレーツェと比べれば動きは遅すぎる。

レーツェはそのまま連撃し、クローンレーツェの武器を弾き飛ばす。

 

「えぇい!」

 

そこにシャレットがトンファーを振りかぶり、殴りかかる。

 

ドゴォッ

というムゴい音と共に吹き飛ぶクローンレーツェ。普通ならこれで致命傷であるが…

 

「…お、起き上がってきた…!?」

 

そう、何事もなかったかのようにゆっくりと立ち上がったのである。殴られた箇所からはもくもくとダーカーの粒子が漏れてはいるが、大したことはなさそうだった。

 

「どうやら不死身のような物みたい…他も燃やしてるけど…」

 

シルフィが二人の背に近寄り、言う。兄妹二人がそちらを見ると…

 

シルフィが放ったラ・フォイエの炎の中、体が燃えても何一つ表情を変えないシルフィとシャレット、palseのクローンがいた。

 

「…頭を狙ってみるか。」

「頭?」

「お嬢、アレのどっちかの頭をラ・フォイエで吹き飛ばせないか?」

 

レーツェが突然呟き、シャレットが聞くがそれをスルーしシルフィへと頼む。

シルフィはコクリと頷くと同時にチャージを始める。だがそれを察したのか、クローンの四人は突然走り出し、距離を詰めてきたのである。

 

「へっ、どうやら当たりみたいだな…シャレット!」

「わかってる!」

 

レーツェとシャレットはそれぞれ、真っ先に突っ込んできた自分自身のクローンの突撃を止める。

次に突っ込んできたシルフィのクローンが、オリジナルのシルフィへと向かう。

 

「ラ・フォイエ!」

 

だが、チャージが完了したシルフィのラ・フォイエが頭へと直撃。首から上が消し飛んだ状態で倒れ、さらさらと粒子になって消えた。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

レーツェもクローンレーツェの首を切断、頭を真っ二つに切り裂いた。

 

「たあぁ!」

 

シャレットはクローンシャレットの顎を下から思い切り殴り、頭を吹き飛ばした。

 

「うわ、相変わらずロックベアだな…」

「お兄ちゃんのも吹き飛ばそうか?」

「勘弁してくれ、よっ!」

 

残っていたクローンpalseの不意打ちの拳をレーツェが弾き、シャレットが腹を殴り、シルフィが頭を消し飛ばす。

palseのクローンも消え、クローン体はすべて消えてなくなった。

 

「残るは…【巨躯】!」

「急ぐぞ!」

 

 

 

 

 

「はぁっ…はぁっ…」

「…これで終わりではあるまい?」

 

【巨躯】との一対一を続けていたpalseだったが、腐っても相手はダークファルス。

一人では力不足は否めなかった。

 

「くっ…」

(…お前、なんで“あいつ”の力使わねーの?)

「…あれは、そんな簡単に、振るえる力じゃないわ…」

(…まぁ、向こうも片付いたみてぇだし、無理にとは言わねえけどよぉ。)

 

Distrustの言葉を適当に流しつつ、palseは自身の傷を癒やしつつ構えていた。

体の所々にある殴打痕をレスタで治しつつ、【巨躯】が殴りかかってくればそれに対応する。

そうして時間稼ぎをしていた。

 

「(…次はどう出る…?)」

 

警戒しつつ傷を癒すpalseに、【巨躯】はのしのしと歩き距離を詰める。

そして、【巨躯】が一気に距離を詰めようと構えた瞬間、一枚のカードがpalseの前へと投げられる。

 

「ラ・グランツ!」

「むぅ…!」

 

投げられたカードはpalseの前で止まり、そこから一筋の強い光のテクニックが【巨躯】を襲った。

突然の攻撃に【巨躯】も怯み、少し下がった。

 

「palseさん!大丈夫!?」

「ん、なんとかね…」

「全く、無茶する人だ。少し下がってな。」

 

傷を負ったpalseを下げ、シルフィが彼女の傷を治す手助けをし、レーツェとシャレットが前に出る。

【巨躯】も次が来たかと楽しみな様子なのか、手をバシバシと打ちつけて待っていた。

 

「…相っ変わらず戦闘狂だなこいつ…」

「palseさん、相当殴ったみたいだけど…」

 

確かに【巨躯】の体の所々にも殴られた痕はあった。だがそれでもまだピンピンしている彼はやはりダークファルスであることを改めて認識させた。

 

「シャレット、palseさんの体制が整うまで時間を稼ぐだけでいい。わかるな?」

「うん、わかってる。」

 

二人は仕掛けることなく、【巨躯】の出方を伺うように待ちかまえた。

来ないとわかると、【巨躯】は踏み込み距離を詰め、拳を振るう。シャレットはその拳をトンファーで弾き、レーツェは上からカタナを振るう。

 

「ゲッカザクロ…!」

 

空中から振り下ろし、そのまま振り上げる。

【巨躯】の右肩に二回とも当たるが、致命傷にはほど遠い。

 

「でえぇい!!」

 

肩を切られ、僅かに気が逸れた【巨躯】の腹をシャレットが思い切り殴り飛ばす。

 

「フハハッ!」

 

吹き飛ばされた【巨躯】は楽しそうに嘲笑い、そして、背中に備えられた自身の大剣を抜き放つ。

 

「来たか…っ!」

 

そして先ほどまでとは段違いの早さで接近し、その大剣を振るう。

レーツェはそれを受け止めるが、やはりカタナでは勢いを殺せずに押し飛ばされる。

 

「オオオオッ!!」

 

そして【巨躯】はその大剣にオーラをまとわせ、巨大化させる。

大剣を装備した時に放たれる、オーバーエンドのような広範囲攻撃をしようとしているのだろう。

すぐに地面へと衝撃波と共に攻撃するパターンと、縦振り、横振り、そして前者の攻撃へと繋ぐパターンの二つがある。

中でも後者の横振りは回避が困難であるため、そう易々と振らせる訳には行かなかった。

だが、運悪く兄妹二人の距離は【巨躯】から離れており、止めるのはほぼ無理であった。

 

「(最悪防御するしかねぇか…!)」

 

諦めずに駆け寄ろうとするが、ほぼ無理だとわかっている上に近寄ればまともに食らうと容易に想像出来るためか、早さはなかった。

だが、“後ろから走ってきた人”はためらいもなく突っ込んだ。

そして…

 

ガキィィィン!!ベコォッ!!

 

金属同士がぶつかり、地面が砕けるような音が響きわたる。

なんの音かと【巨躯】の方を見れば、治癒がなんとか間に合ったpalseが、ゴッドハンドをクロスさせて【巨躯】の大剣を受け止めていたのである。

 

「ぐっ、かはっ…!」

「palseさん!?」

「…早くっ!!!」

 

あまりの衝撃に吐血したpalseにシャレットが叫ぶ。がpalseは聞かずに三人へと怒鳴った。

 

「グレンテッセン!!」

 

まずレーツェが突撃し、【巨躯】のコアを切り裂く。

 

「とぉりゃあぁッ!!」

 

ひるんだ巨躯へシャレットが空中から【巨躯】の脳天めがけてトンファーを思い切り振り下ろす。

 

「グランツ!!」

 

よろめいた【巨躯】へシルフィが光テクニックを放ち追撃。

 

「…バックハンドスマッシュ!!」

 

その隙に懐へ飛び込んだpalseがコアめがけて全力の裏拳を叩き込んだ。

 

「ぐおぉ…クク…よき闘争であったぞ…」

 

四人の一斉攻撃に【巨躯】は膝をつきかけるがふんばり、そのまま消えていった。

 

「…終わった…?」

 

シルフィが呟く。

周囲からはダーカーの気配はせず、ここでの戦いはもう終わったと見ていいだろう。

そうわかると、palseはがくりと座り込んだ。

 

「ぱ、palseさん!大丈夫でした!?」

「ぐっ…ちょっと無理があったかしら…」

 

そう言いつつpalseはゴッドハンドを外す。その下の手の甲は酷い痣となっており、とてもではないが無事とは言えなかった。

 

「そりゃああの攻撃を根本で受け止めたんだ。…むしろ肉体が無事だったのがすげぇと思うぜ…。」

 

レーツェはpalseのあの時の行動に呆れていたが、無事でよかったと安堵な感じもあった。

 

「シャレット、レーツェ。肩を貸してあげて。早く救助を呼びに行きましょう。」

「あいよ。…シャレット、握りつぶすなよ?」

「そんなことしないよ!!」

「んんっ…ごめんなさいね、二人とも…」

 

肉体の負担が重いpalseに兄妹が肩を貸し、なんとか通信が届く場所へと到達した。

詳細はとにかく後回しで救助を要請。その後やってきた回収挺で四人は帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、メディカルルーム。

 

四人はダーカーの巣窟というダーカーまみれの所からの帰還だったため、念のために検査を受けていた。

三人はすぐに終わったが、palseは傷の手当もあったために少々時間がかかっていた。

 

「palseさん、大丈夫かなぁ…。」

「まぁ、あのくらいならすぐに何とかなるだろ。むしろ、後処理が大変そうだ。」

 

シャレットの心配そうな声に、レーツェはそう答える。

帰還直後、palseの身内が揃いに揃って出迎え、心配だの怒りだの安堵だのの声をかけまくっていたのだ。

流石に状況が状況だったためにすぐにメディカルルームへと連れて行かれたが。

 

「ありゃ後で部屋で質問責めにあうパターンだろうな…」

「…愛されてる人なのでしょうね。」

「じゃなきゃあそこまで心配しねぇだろうしな…」

 

一部、こちらにセクハラしようとして制裁された褐色肌はいたが。

と、コツコツと近寄ってくる足音が。

 

「ふう…結構かかっちゃったわ。」

「palseさん!」

 

palseが手に処置を施された状態で歩いてきていた。その声にシャレットが嬉しそうに立ち上がり、近寄る。

 

「ふふ、心配かけてごめんね。お二人も。」

「もー、無茶はダメですよぉ?」

「なんやかんやで大丈夫そうだな。…手、行けんのか?」

 

シャレットがむすっとした表情でpalseに言い、レーツェが気になった事を尋ねる。

あの一撃に加え、palseは拳を主体としたスタイル。拳に見た目以上の負荷がかかっているのではないか?ということである。

 

「大丈夫よ。拳で戦うのには慣れてるから。」

「ならいいけどな。」

 

微笑みつつレーツェは短く返す。

 

「まあ、それでも少しは安静しろって言われたから、しばらくは休日かしらね。」

「そうですかぁ…あ!じゃあどこかおでかけしたりしませんか?」

 

シャレットはpalseの手を見て心配そうにしていたが、何かを思いついたように手を合わせる。

 

「お出かけ?」

「この間は捜索重視だったからゆっくり出来なかったけど、色々お店とか回ったりしませんか?」

「うぅん…」

 

急なシャレットのお誘いに唸るpalse。

こういった日常のお出かけが地味に苦手の彼女からすると、どうしても乗るに乗り切れない。

 

「色んなデザート食べたり、服見たり…へへ。」

「太るぞ。」

「うるさい!」

 

幸せそうに語るシャレットに容赦なくツッコむレーツェ。そして兄妹の口喧嘩が始まると、シルフィとpalseは苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ…もしよろしければ乗ってあげてください。私達の方も合わせますので…」

「…じゃあ、一日だけ付き合おうかしら。」

「ほんとですか!?やったぁ!」

 

palseの同意を聞くと同時にレーツェとの口喧嘩を放りだしはしゃぎ始めるシャレット。

そんな妹に呆れるレーツェと、苦笑いを浮かべるシルフィとpalse。

 

 

その後、palseはマイルームで身内に騒がれ、また一苦労するのであった。

 

 

 




今回はアプダクション。オリジナル風にお送りしました!
レーツェ君とシルフィ嬢が少々不安ですが絡ませられて楽しかったです(`・ω・´)

ありがとうございました!

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