「何だよ…この状況…」
織斑一夏は自分の置かれている状況が理解できずにいた。
まず、彼の着ている服は受験するはずだった藍越学園のものではない。
さらに、彼が今いる場所はというと―――
女。
前を見ると女、横を見ても女、後ろに振り向いても女。
何処を見ても女しかいない。
それもそのはず、此処はIS学園で一夏が着ているのはIS学園の制服なのだから。
なぜ一夏がIS学園にいて制服まで着ているのか。
数週間前―――
ISを起動させた直後、政府の人間に見つかってしまい二人は保護という形で連れて行かれることになった。
その後は、なぜあの場所にいたのかなどの質問とこれからのことについての説明をされた。
だが、一夏は状況が飲み込めておらず困惑していたため、質問については大谷が受け答えした。
そして、二人は言われるがままIS学園の入試を受け、見事教官を倒してしまった。
こうして二人はISを起動させた男性として、世間を大いに賑わすこととなった。
現在―――
(刑部~何処行ったんだよ~)
一夏は独り途方に暮れていた。
ISを起動させられるのは女性だけのため、IS学園は生徒・教員・その他要員全員が女性である。
周りが女性だらけなのはまだいいが、問題はその女性徒たちから視線を向けられていることだ。
女性しかいないIS学園に突然、男性の一夏が入学してくれば注目されて当然である。
さらに、一夏と共にIS学園に入学するはずの大谷であるが、一夏が家を訪ねると朝早くにで勝て言ったらしい。
そのため、一夏は一人でIS学園に向かうことになった。
(うぅぅ…、視線が…)
一夏が周りからの視線に耐えきれなくなってきたその時、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そんな所で突っ立って案山子の真似ごとか? 一夏」
「!?」
後ろを振り向くと、そこにはIS学園の制服を着た大谷が立っていた。
「刑部!?」
「何をそんなに驚いている、間抜け面がさらに間抜けなっておるぞ」
一夏は嬉しさ半分、怒り半分といった様子で大谷に駆け寄った。
「お前! 何処行ってたんだよ、家に言ったら出かけてるって言うし! お前の行きそうな場所さんざん探したんだからな!?」
「知らんな。何故われがぬしを待たねばならぬのだ?」
「このっ…、はぁ…まぁいいや。とりあえず、教室に行こうぜ」
「そうだな」
二人は教室に向かったが、一夏は大谷と合流出来て有頂天状態のため気付いておらず、大谷は気にしていないようだが、周囲の女生徒からの視線がさらにきつくなっている。
ほとんどの女生徒が全身を包帯で包んだ大谷の姿に驚いているようだ。
教室に着いた二人は自分の席に座る。
だが、またしても教室中から視線を向けられる。
有頂天状態が解けた一夏は再び居心地が悪くなる。
一方、大谷は相変わらず我関せずといった様子で静かに座っている。
しばらくすると、メガネをかけた緑色の髪の女性が教室に入ってきた。