(む…、朝か…)
大谷はふと目を覚ました。枕元に置かれた時計を確認する。時刻は午前3時、まだ日も昇っていない時間である。最近、こんなことがよく続いている。原因は、この頃頻繁に見る夢のせいだ。
(また…、あの時の夢か…)
大谷が見たのは以前、自身が少年としての大谷吉継ではなく、戦国武将だった頃の夢だ。それも、自分が死んだ、関ヶ原での光景ばかり。そのせいで、こんな時間に目が覚めてしまう。
(ふむ…流石にこのままだは身が持たんな…)
コンコン、大谷が考え事をしていると、誰かが自分の部屋のドアをノックするのが聞こえた。
(…こんな時間に…一体誰だ…?)
両親は一階で寝ているので、階段を上ってくる音でわかる。だとすれば、残っているのはただ一人。ベッドから起き上がり、ドアを開けた。
「こんな夜更けに何用だ…”
「えっと…あの…」
ドアを開けた先の廊下に立っている竹と呼ばれた少女は、どこか心配そうな目で大谷を見ていた。
「兄さん、うなされてたみたいだから…心配になって、大丈夫?」
そう、この少女の本名は
「…我にその様な気遣いは無用だ、そんなことを気にしている暇あるなら、早う床に就け…」
遠回しに、『自分のことは気にしなくていいから、早く寝なさい』と言いたいのか、それとも、本当に余計なお世話だと言っているのかは不明。だが、どうやら竹は前者の方に解釈した様で、少しだけ安心した様子だ。
「うん…でも、何かあったら言ってね…おやすみなさい、兄さん」
「ああ……」
竹はそう言って自分の部屋に戻っていき、大谷も短く返事をして、部屋に戻りドアを閉めた。そして、ベットに座り込み、これからどうするかを考えた。もう一度床に就きたいが今日は早朝から用事があるためそれはできない、そういえば、うなされていたせいかのどが渇いた、とりあえず一階のキッチンで水を飲むことにした。部屋を出て階段を下り、キッチンへ向かった。そして、棚からコップを取り出し、水道の蛇口を捻り、コップに水を注いだ。
「……フゥ…さて…」
水を飲み終え、大谷は本日の予定を確認する。本日の予定は―――
高校入試である。
にじファンでご覧になった事のある方ならご存じかも知れませんが、次回一夏登場です。