大変間が空いてしまい、申し訳ありません。
それでは第十三話です。
「ま、まさか……一次移行!? 初期設定だけの機体でここまで戦っていたって言うの!?」
「漸く終わったか」
「よっしゃぁぁっ! ここからが本番だぜ!」
(やれ騒々しい……)
安堵の息を漏らす一夏達とは対照的に、セシリアは狼狽えていた。
「そういうことでしたの。ずっと反撃せずに逃げ回っていたのは、フィッティングが終わるまでの時間稼ぎ……」
「何分急かされて出てきたのでな。では、そろり反撃と行くか」
そう言うと、大谷はセシリアの側面へと回り込む。
「ふふっ」
「……」
先程まで狼狽えていたセシリアが笑った。
「残念ですけど、そんな武装ではわたくしを倒すことは出来ませんわ」
「おお何と、それは困った」
「その減らず口もここまでですわ! お行きなさいっ! ブルー・ティアーズ!」
そう叫んだ瞬間、四方からのレーザー攻撃が大谷を襲う。
「はっ!」
大谷は急いで後方へと回避し、レーザーが放たれた方向を見た。
そこにはセシリアの周囲に浮かぶ四機の砲台。
恐らく、あれが資料にあった“ブルー・ティアーズ”レーザビット及びミサイルビットからなる長距離遠隔攻撃システム。
「先程スターライトmkⅢの攻撃を防いだのには驚きましたが、このブルー・ティアーズを起動した以上、同じようには行きませんわよ?」
依然として大谷にとっては厳しい状況が続く、大谷の数珠はブルー・ティアーズと同類の長距離遠隔攻撃に適しているが、数珠とブルー・ティアーズでは勝負にならないとほとんどの人間はそう思う。
セシリアも、あの数珠では障壁を張る以外は精々ぶつけることしかできないだろうと思っている。
この時点で大谷の数珠がセシリアのブルー・ティアーズに対抗できると思っているのは三人。
一人は大谷自身、後の二人は織斑姉弟である。
「刑部の珠があんなのに負けるかよ!」
「おりむーあれ知ってるの~?」
「ん? ああ、俺が知ってるのはあれより一回り小さいのだけど」
「へ~」
セシリアは四機のブルー・ティアーズを動かし、大谷を包囲する。
「やれ藪を突いて羽虫が出てきおった」
だが大谷は動かず、障壁も張らない。
「諦めましたの? ではそろそろ……お別れですわ!」
四方八方から閃光の雨が降り注ぐ。
「羽虫が……パラパラと群がるか」
次の瞬間、大谷は僅かに動く、すると三本のレーザーが大谷に命中するギリギリのところを通過する。
そしてまた大谷が僅かに動くと、レーザーが命中するギリギリのところを通過した。
「なっ!?」
その後も大谷は必要最低限の動作でレーザーをかわし続け、ついにブルー・ティアーズによる全方位からの集中砲火が止んだ。
「あ、あなた……いったい何を……」
セシリアは信じられないといった表情で大谷を見る。
「何も、ただこういった物の扱いではわれに一日の長があった。それだけのことよ……」
「そ、そんな……」
「ならば証明しよう。ほれ、今一度やって見せ」
「こ、このっ!」
再びブルー・ティアーズがアリーナ内を縦横無尽に動き回る。
ふと大谷はアリーナのとある方向を指差し、数珠の一つがその方向へと移動する。
ガンッ!
「なっ!?」
大谷の飛ばした数珠がアリーナ内を動き回っていた一機のブルー・ティアーズに衝突した。
(ま、まぐれですわ……あんな事、もう二度と起きるわけ……)
大谷はさらに別の方向を指さし数珠を飛ばす。
ガンッ!
またしても大谷が数珠を飛ばした方向とブルー・ティアーズの軌道が一致し衝突する。
「ま、まだですわ!」
残り二機のブルー・ティアーズは大谷を死角となる背後から狙い、既に発射態勢に入っていた。
(これなら!)
「ヒッヒッ……」
大谷が小さく手を降り下ろすと、ブルー・ティアーズと衝突して上へ弾け飛んだ二つの数珠が、二機のブルー・ティアーズ目掛けて急降下。
ガンッ! ガンッ!
そのまま衝突、銃口は下を向き、レーザーは大谷に届く事無く地面に命中した。
「そんな……どうして!」
「ぬしの考える事などお見通しよ」
「!? ……くっ!」
セシリアは一旦全てのブルー・ティアーズを戻し、スターライトmkⅢを構えレーザーを放つ。
「ふんっ」
だが簡単にかわされる。
「一つ尋ねるが……まさか、その大筒か羽虫、どちらか一方しか使えぬわけではあるまいな?」
「……っ!?」
「いや何、ぬしが態々羽虫を全て戻してから大筒を放つのでな。不思議に思い聞いてみたのだが、そうか図星か」
「このっ!」
ブルー・ティアーズを展開し、て全方位からの集中砲火を浴びせるが当然、これも全てかわされる。
「それで仕舞いか? ならばわれの番だな」
「……っ!」
セシリアは急いで距離を取る。
「無駄よ……『
大谷がそう呟くとドーム状の障壁が現れ、徐々に拡がっていく。
「な、何ですの、これは!」
やがて、ドーム状の障壁は大谷の前方全てを覆い尽くしてしまうほどに拡大し、セシリアもその中にいた。
(閉じ込められた!? それとも何かの攻撃!?)
セシリアは咄嗟に身構えるがドーム状の障壁は突如消え去る。
「?」
周りを確認してみても何処も、何も変化していない。
「ふ、ふんっ! 単なる虚仮威しだったようですわね!」
セシリアは気付いていない、自分の頭上に奇妙な印が浮かんでいることに。
「さて、それはどうであろうな、ヒッヒッ……」
「……っ!?」
次の瞬間、何故かセシリアの体が突如仰け反り動かなくなる。
「止まったな? 『
大谷が両腕を交互に前に突き出すと、それに連動して背後の数珠がセシリア目掛けて放たれる。
「キャアアァァァッ!」
仰け反ったせいで回避が出来ないセシリアは放たれた数珠を全て受けることになった。
数珠は大谷の背後に戻って行くが、まだ攻撃は終わっていなかった。
「こ、今度は何ですの!?」
セシリアの体は本人の意に反して上昇して行き、静止した所で青い珠が出現してセシリアを追撃する。
「なぁっ!?」
青い珠はセシリアにぶつかると消滅し、漸くセシリアは自由に動ける様になる。
「こ、の、ブルー・ティアーズ!」
ブルー・ティアーズを展開して反撃に出ようとするが、ブルー・ティアーズにも例の印が浮かんでいた。
セシリアはブルー・ティアーズに指示を出す、だが射撃同様、明らかに動きが乱れていた。
結局、また軌道を読まれ数珠に弾かれるだけだった。
「……くっ!」
急いでブルー・ティアーズを戻してスターライトmkⅢでの攻撃に切り替えようとするが―――
「ど、どうしましたの! ブルー・ティアーズ!?」
ブルー・ティアーズはセシリアの下には戻らず、それどころか吸い寄せられて行くかのように大谷の方へと向かって行く。
「フッフッ……『戻るな
先程の青い珠が出現し、大谷は数珠と青い珠をブルー・ティアーズに放つ。
四機のブルー・ティアーズは数珠と青い珠に挟まれ潰れた。
「そんな……わたくしのブルー・ティアーズが……」
セシリアは悪い夢でも見ている様な気がしてきたが―――
「ヒヒッ」
不気味な笑い声で現実に引き戻される。
「その顔……ぬしのその顔が見たかった」
「ま、まだ、まだ終わってませんわ!」
セシリアはまだ諦めてはいない、それでも大谷は嘲笑う。
「それで良い。それ、悪足掻きをして見せよ、われはそれも見たい」
戦いの主導権は大谷に移った、いやそもそもセシリアがこの戦いの主導権を握った事など一度も無い。
始めから、セシリアは踊らされていた、大谷の掌の上でずっと―――
「フッフッ……」
大谷は開始前と同じく、不敵な笑みを浮かべてる。
更新頻度が安定せず申し訳ありません。