虚・女神転生   作:春猫

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今回は掲示板多めです


Messenger

「お疲れさま~」

「お疲れ様です。現実のオフィスならこのあと食事にとか飲み会とか出来るんですけどね」

「あー、まあ、その分、通勤とかで苦しまないで済む訳だし……」

 

 猛の本業である倉庫管理の仕事、実作業は倉庫の各種端末へ自宅からVRアクセスするのだが、勤務管理その他のため、始業時、終業時それぞれにVROFFICEに顔を出すことになっている。

 いつもは挨拶程度で終わるのだが、今日は相手が話しかけてきたため会話となっている。

 

「浮いた自由な時間とはいってもほとんどVRで過ごすんですけどね」

「杉山さんは今何やってるんですか?」

「女神転生ってゲームのVR版です」

「あー、あの悪魔とか出る昔の東京が舞台のヤツですよね、弟がやってて勧めてくるんですけど、面白いですか?」

「ある意味現実より現実味があるっていうか、悪魔も人間味って言うと変ですけど、なんかちゃんと生きてるって感じで」

 メガテンの話に猛の舌も滑らかになる。

 

「へえ、やってみようかな? 始めたら色々教えてくれます?」

「あー、ただ、プレイして感じるのは『東京って広いな』ってことなんですよねえ。四分の一の広さに縮小されてるんですが、プレイヤーと自然とすれ違うなんてことはあまり無くて、東京のあちこちでバラバラにスタートなんですよ。だから、外の知り合いとか中に居ても会うのが大変だと思いますよ。なんせ、離島部、小笠原諸島とかそっちの方の人まで居るそうですから」

「へえ、その辺は弟は言ってなかったなぁ。中で会うのも一苦労って、フォローするとか言っときながらそれはダメだろうって話ですよねぇ」

「そうですねぇ、スタート時間ほぼ一緒でも全然違う場所ってのが検証されてますし、あ、ただ、弟さんがβプレイヤー、実際のサービス開始前にテストを兼ねてプレイする人のことです。それの場合、乗り物を自前で持ってる可能性もあるんで、それならフォロー出来ると思いますよ?」

「ふむふむ、その辺含めて弟に問いただしてみます! あ、長々と引き止めちゃってすみませんでした。ではお疲れさまでした」

「お疲れ様です」

 

 数少ない現実(とは言ってもVR越しだが)の女性とのやり取り、以前だと変に緊張していたのだが、割とスムーズにやり取り出来たのはフィーネたちと会話をしたりしているおかげなのだろうかと考える猛。

 

 本サービス開始後、順調にプレイヤー数が伸びている『女神転生Ruina』だが、VR内部から現実の掲示板などへのアクセスが可能になるバッチが当てられるという情報が正式にアナウンスされている。

 とは言っても書き込むことは出来ず、閲覧するだけなのだが、情報掲示板や攻略HP、Wikiなどへアクセス出来るのはプレイヤーとしては有り難い。

 書き込み機能の要望も根強いらしいが、セキュリティの関係上不可能とされている。

 

 VR端末を外して夕食の準備を進める。

 外食チェーンの一部が行っている冷凍宅配サービスの冷凍食品だ。

 普通の冷凍食品よりは割高だが、お店で食べる味に近いものが自宅で食べられるため、猛はたまに「自分への褒美」として食べている。

 

「まあ、メガテンの中で食うものの方が美味いんだけどねぇ」

 掲示板を見つつレンジの出来上がりを待つ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

【アクションから】封切! メガテン動画館! その6【コメディまで】

1:乃木坂の異能者

 ここは『女神転生Ruina』プレイヤーが動画を公開するスレです。

 無断転載は禁止!

 リンク先へのアクセスは自己責任で!

 煽り、荒らしは華麗にスルーしましょう

 愛情の無いコメント、貶しはNG

 和気藹々、マターリ進行でいきましょう

 

 過去スレ:封切! メガテン動画館! その1~5

 

______(中略)__________

 

 

364:高田馬場のペルソナ使い

 まあ、何も言わずに見てくれい!

 ある意味泣ける!

 https://www.dougaVR.cco.jpp/erichan/4487736

 

365:千駄ヶ谷のバスター

 これはひどい……

 

366:田無のペルソナ使い

 あー、あー、あ~あ……

 

367:荻窪の異能者

 まだ見てないけど、どんな? グロ中尉?

 

368:四谷のサマナー

 グロでは無いが笑っていいものやら、同情すればいいやら……

 

369:市ヶ谷のバスター

 俺らがさんざん笑いものにしてきた結果がこうなった、と……

 

370:中目黒のペルソナ使い

 え? なにこの変質者?

 

371:荻窪の異能者

 見て来た、これはひwwwwwwwどwwwwwwwwwwいwwwwwwwww

 

372:北千住のバスター

>>370

 しーっ! 思っててもそれは言っちゃだめだ!

 

373:葛飾の異能者

 徹はんなにしてまんねん!?

 

374:四谷のサマナー

 劣化し過ぎwwwwwwwwwwwwwwwwww

 ……で、これ、どういう状況で遭遇したの?

 

375::高田馬場のペルソナ使い

 時々報告上がってる変な扉

 都の西北で経験値稼ぎの道中で出現

 なんか、私らの前に5組くらいスルーしたらしくて、私が「よし、やろう!」って決めたら「その言葉が聞きたかった!」って向こうから扉を開けて来た(藁

 

376:新宿のサマナー

 じっと出待ちするトールさん……

 なんか、マジで泣けてきた……

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「動画撮ってたのかよ! うわ、酷え! 戦ってる最中は気にして無かったけど、こうして動画を見ると酷過ぎる!」

 食事を取りながら動画を見て、思わずツッコんでしまう。

 トールの劣化ぶりと不憫さに注目が集まって、自分たちの戦いにはあまり注目されていないことにホッとする。

 

 しかしながら、別のスレッドを見ていた猛の箸が止まる。

 

「なんだ、これ?」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

【グレイじゃないよ】造魔な生活報告所 その7【造魔だよ?】

 

1:恵比寿のペルソナ使い

 ここは『女神転生Ruina』で種族:造魔を選択してしまったプレイヤーがその日常を公開するスレです。

 スクショは歓迎ですが、リンク先へのアクセスは自己責任で!

 煽り、荒らしは華麗にスルーしましょう

 愛情の無いコメント、貶しはNG

 和気藹々、マターリ進行でいきましょう

 

 過去スレ:造魔な生活報告所 その1~6

 

______(中略)__________ 

 

64:池袋のバスター

 将来的に俺たち、ヨシツネとか成れちゃうのかね?

 

65:巣鴨の異能者

 結局、どこの町でも俺ら浮くんだな

 最近じゃ浮きっぷりを楽しんでる

 つ【スクショ】【スクショ】【スクショ】

 

66:田端のバスター

 プレイヤー以外は普通に接してくるのがシュールでね

 なんか逆に楽しくなってきた

 今日なんか山手線でグルグル回って来たし

 つ【スクショ】【スクショ】

 

67:大久保のペルソナ使い

 今の姿に愛着が出てなぁ

 Bボタン連打とか出来ねえの?

 

68;水道橋のサマナー

 遊園地行ってきた!

 楽しかった!

 つ【スクショ】【スクショ】

 お化け屋敷が異界化してたのは笑った

 中身、全部、本物wwwwwwwww

 

69:巣鴨の異能者

>>68

 ヒーローと握手してんじゃねえよwwwww

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「なんか、楽しそうだな」

 思っていたより造魔を選んだ者は多かったらしい。

 マイナス補正のため、親しくなるのは難しいらしいが、NPCである町の人たちはごく普通に接してくるのだとか。

 調べてみるとこのスレッド、書き込む者よりROMってる者が圧倒的に多い、かなりの人気スレッドらしい。

 確かにスクショを見ているだけで結構楽しい。

 

 食事を終えて冷凍食品の容器を軽く洗ってプラゴミの袋に入れる。

 シャワーを浴び、歯も磨いて準備完了。

 メガテンの世界へと旅立つ。

 

 

 ログインするとコンプがピコピコと点滅している。

 フィーネが画面に貼り付いているのでまずは召喚。

 ムルルも呼び出し、それぞれ食べ物を与えてから点滅の原因であるメッセージを読む。

 

「エリリです:事後承諾でごめんなさいですけど、この間の戦闘、動画にして公開してます! 良かったら見てくださいね! 追伸:また、一緒に異界に行きましょう!」

 

「了解、『見ましたが、客観的に見ると酷過ぎですねぇ………』っと」

 

「タケル~! ブロードウェイ行こう! ムルル連れてってあげたことないでしょ?」

 タケルの髪の毛を両手で引っ張りながらフィーネがリクエストする。

「…………♪」

 頭を撫でられてるだけでムルルは満足そうだ。

「フィーネが行きたいだけなんじゃないのか?」

「当然、私も行きたいけど、行けばムルルも気に入るはずだもん!」

「はいはい、アキラはまだログインしてないか……サンプラザ行くにしてもブロードウェイからなら近いしな、分かった、じゃ、行こうか!」

 自分の希望が通り喜ぶフィーネとお出かけで嬉しいムルル。

 ブロードウェイまでゆっくりと歩いていく。

 

「今日は生クリームマンゴーパインにする!」

「クレープ食うのは確定なのな……じゃあ、俺は小倉マロンに……ムルルはどうする?」

「クレープは柔らかいからねぇ……」

「………!」

「一口でいいって? ん~、他の店も見て何か欲しいものがあったら言うんだぞ?」

「…………♪」

 

 クレープを買い、上の階へ向かう。

 アキラからメッセージで、軽く一回ログインして連絡を入れたが、現実での用事があるので、再度ログインしてから連絡するとのこと。

 

「みんな、何してんの、これ?」

「テレビゲームだな……」

「…………? ……!?」

 ブロードウェイ内のゲームセンターではプレイヤーたちがムキになって対戦ゲームをしていた。

 

「現実のゲーセンじゃ、こういう対戦無くなっちゃったから分かるって言えば分かるんだが、ここにログインしてやることか、これ?」

 ちょっとげんなりしたタケルであった。

 

 




書いてて自分でもシュールな造魔プレイがしたくなりました

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