虚・女神転生   作:春猫

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更に会話が増えてしまいました(;^ω^)


An Encounter

 

「「うわぁぁ~…………」」

 

「ひくな、後ずさるな、そんな目で見るな!」

 

「いや、無いわ~! やっぱ、それは無いわ」

「タケル……うん、頑張ったね……」

 

 階段をえっちらと上って、フロアの様子を窺いつつ進んだ先でタケルたちは初の戦闘を終えていた。

 

「思っていた以上にブロンズの花瓶で殴り掛かる姿ってのはヤバいな」

「壁使って上手く叩き潰してたし、初めての戦闘にしては上出来だよ」

 

 ブロンズの花瓶でゾンビドッグの頭を壁とサンドイッチにする様に叩きつけたところ、クリティカル扱いなのか、一撃で頭部が破壊され、その後も順調に花瓶を振り回して戦闘に勝利はしたものの、アキラとフィーネからドン引きされていたタケルであった。

 

「俺だって花瓶なんか振り回したくねえよ! でも初期装備がこれなんだからしょうがねえじゃん!」

「何故に鈍器を選んだし……」

「刀とかうまく使えそうも無いし、銃とか金がかかりそうだし……」

「VRとはいえ、補正がかかるしスキルもあるんだから気にしなくて良かったんじゃねえの?」

 勝利したはずなのにタケルはがっくりと肩を落としている。

 フィーネがその頭を「よしよし」と撫でているのを見て「いい子だなぁ、やっぱサマナー羨ましいぞ」とアキラまで落ち込んでいる。

 

 

「落としたのは魔貨だけかぁ……」

「まあ、あいつらが傷薬とか落としても使う気がしないけど」

「あー、かえって怪我悪化しそうってか、ばい菌入りそうだよな」

「経験値も入ってるな……鈍器のレベル、なんで上がってんの!?」

「頑張って振り回してたからなぁ(笑)」

「いや、アキラだって木刀振り回してたじゃん!」

「最初の一匹でクリティカルっぽいの出したせいじゃね? 上手く攻撃したり、効果的に魔法使ったりすると、普通にやるよりレベル上がり易いとかありそうじゃん?」

 まだ戦闘は一回だけ、しかも雑魚相手ということもあって、職業レベルは当然上がっていないのだが、何故か鈍器のレベルが上がっていたタケルは首を傾げている。

 

「タケルは凄いんだね、流石フィーネが契約したサマナー!」とフィーネは嬉しそうにタケルの周囲を飛び回っている。

 

 

「うわっやべ、五月蠅くしてたから警備員来ちゃった!?」

「待て、アキラ! あれ、悪魔だ!」

「うげっ、マジだ、腐ってやがる」

「ゾンビガードマンだね! さっきは暴れられなかったから私から行くよ! ジオっ!」

「うしっ感電来た! ラッキー!」

「良くやった、フィー! おらっ!」

 またも花瓶で殴り掛かるタケルを見て「どう見ても見つかって開き直って警備員に襲い掛かる窃盗犯だよなぁ」と思うアキラであった。

 

 

 

 

「一応、ドロップとしては『当り』なのかね?」

「装備は出来るみたいだけど、見た目以外はブロンズの花瓶以下だ、これ」

 その後もゾンビドッグ、ゾンビガードマン、ポルターガイスト、ガキといった悪魔との戦闘をこなし、今またゾンビガードマンとの戦闘を終えてアキラがレベルアップしたところで、一休み。

 ドロップしたアイテムは警棒。

 しかしながら数値的にはタケルのコメント通りの品物である。

 

「じゃ、俺が貰っていいか? 木刀折れた時の予備に」

「うん、いいよ。この花瓶、そうそう壊れなさそうだし」

「それが壊れる相手って今のレベルじゃ相手に出来ないよな」

「だよねぇ~」

「タケル、タケル、この階臭くて嫌い! 別の階に行こ!」

「あー、会話自体無い悪魔ばっかだしねぇ」

「凹っても気が咎めない相手ではあるんだが……」

 戦う相手としては気楽というか、負担にならないダーク系の悪魔だが、戦うだけがメガテンではない。

 ダーク系でもアプリを入れれば会話は成立するものの、好んで仲間にしたい相手ではない、特に低レベルのダーク悪魔は。

 タケルたちはフィーネの勧め通り、別の階に向かうことにした。

 

 

 

「きゃあ、久しぶり、元気だった~?」

「えへへ、今の私にはフィーネという名前があるのだ、名前で呼んでくれたまえ!」

「うわぁ調子乗ってるー!」

「もう、ノリノリに乗ってるよ、調子! 帰ったらアイスだし!」

 

 メガテンの悪魔会話、サマナーと相手悪魔だけで、仲魔や他のキャラクターが絡んでこないのは何故なんだろう、などとタケルは思っていたのだが、目の前の光景を見て、その理由を納得した。

 

「「キリがねぇ~」」

 

 フロアを移ってフィーネの同族、ピクシーたちと遭遇したタケルたちだったが、最初こそは有り勝ちな会話だったものの、フィーネがしゃしゃり出てきて御覧の有様である。

 

 既にアキラもフィーネに対して、AIだのプログラムだのといった意識が無くなっている。

 だから、こういう女同士の会話に下手に口を突っ込むとろくなことにならない、という現実に即した対応になっているのだ。

 

「普通のゲームだとグラフィック使いまわしだけど、全員個性あるなぁ」

「まあ、ゾンビドッグも色々と犬種居たしなぁ……」

「ブルドッグはともかくボルゾイのゾンビは怖かったな」

「ピクシーだけ集めまくる奴とか居そうだなぁ」

「シルキーを『俺の嫁』とか言う奴も出るな」

「くそっ、やっぱポイント貯めてサマナー技能取ってやる!」

「デビ○マンでサマナーかよ、意外と無かったな、そういうの」

「あえて言えば人修羅か?」

「今ならまだ始めたばかりだから、作り直した方が早くね?」

「なんか負けた気がするから嫌だ!」

 

 そうこうする内にフィーネたちの話も終わったのかピクシーたちが寄ってくる。

「私たちの仲間、大事にしなさいよ!?」

「今度会ったら私にもアイスちょうだいね!」

「なんだったら、私も仲……んー、なんでもない」

「サマナーと契約するとアイスが貰える、ピクシー覚えた……」

「その子泣かせる様な真似したら女王様に言いつけるからね!」

「あ、ああ大事にするから……」

「えへへへ……大事にされちゃうから!」

「「「「「じゃあね! バイバイ!」」」」」

 

 タケルの頭に寝そべりながら、嬉しそうに手を振るフィーネ。

「なんか、高校の時のクラスメイトが、同じクラスの彼女の友だちに囲まれて似た様なことを言われてたなぁ」などと思っているアキラ。

「ピクシーたちに話が広まって、サマナーにアイスを請求する様になったらどうしよう?」などと考え、「後でこっそりと交流掲示板でも見てみよう」と思っているタケル。

 

 なんとはなく、戦闘のテンションが切れてしまったため、タケルたちはサンプラザを後にすることにした。

 ピクシーたちとの会話で日常寄りの感覚になってしまったのだ。

「むふふふ~」と上機嫌のままのフィーネからも特に異論は出なかった。

 

「結局、レベルはお互い2ずつ、俺が剣レベル1上がって、タケルが鈍器2上昇。タケルって鈍器の才能あるんじゃね?」

「鈍器の才能ってなんだよ……」

「ファンタジー風ならハンマーとか、メイスとかで鈍器でも恰好つくんだけどな」

「せめてバールの様なものをくれ」

「バァルの様なもの?」

「それ合体事故」

「パールの様なもの?」

「それBB弾じゃね?」

「まあ、ともかく、今日はお疲れっした!」

「もつかれ~!」

「また時間が合えば一緒に行ってみんべ」

「そうだな、慣れて来たら遠征とか?」

「電車に乗って?」

「電車に乗って……チャリですらポイント必要なんだもんな」

「バイクとかスキルも要るし、値段も高いし……」

「「「じゃあな(ね)」」」

 

 アキラと別れたタケルはいまだ上機嫌で上の空のフィーネをコンプに戻してホームに向かう。

 どこかの家から料理の臭い。

「こんなトコまでリアルなのかよ」とかなり驚く。

 路面も意識すれば微妙な凹凸があったりと、普段の仕事などよりもよっぽどリアルだ。

 接客ユニットを使って応対しているバイトのコンビニの客も、この世界の住人よりよっぽど人間味が無い。

 ましてやフィーネとは比較にもならない。

 

「仲魔がみんなこんな感じだったら、俺、悪魔合体とかさせられないんじゃね?」少なくともフィーネに関しては間違いなく無理だ。

 

 目いっぱい、この世界を楽しみ、気に入りながらも、そんな先行きに不安を感じたりもするタケルであった。

 

 




VRだと仲魔への愛着も強くなると同時に悪魔合体に抵抗が出るという弊害も生じると思うのです。逆に親しみを持って接してくれるのに「ごめん、ちょっと勘弁」となる仲魔もいそうで不憫です(アジ……じゃなかったアズミのおばちゃんとか)。伝承で「不快な臭い」とか特徴付けられている悪魔も不憫枠かな?

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