魔法、なんか変な勘違いをしていました修正しました
感想欄での指摘ありがとうございます(;´Д`)
「タケル~、あっちからいい匂いがする~!」
「現実だとそうでも無いんだが、こっちで見ると不安感にかられるよな、ここ」
「おっきいカニさんだね、パパ」
「ハサミがカッコいい!」
今日のタケルは新宿に来ている。
女神転生Ruinaの公式HPで謎のカウントダウンが始まり、「これは全体イベント来るんじゃないか?」とアキラやエリリと都庁で強化のための攻略を行うことになっているのだ。
待ち合わせは現地集合だが、時間はまだまだ後、せっかくのお出かけだからとのフィーネたちのリクエストで少し早めに来て新宿の街をふらついてる。
新宿の場合、他の町に比べると異界と普通の場所の境界線が非常にあいまいだ。
また、最近の噂では飲み屋街にベルベットルームのドアがあるという話も広まっている。
都庁という攻略最前線を抱えているため、そちらの方が目立って、他の異界に関しては情報が少ないが、町のあちこちに中小規模の異界が存在している。
タケルたちは伊勢丹前を通り過ぎて、カニの看板で有名なカニ料理店の前に来ている。
現実の方では大阪の店では見たことがあるが、新宿などでは見かけない焼きカニの店頭販売をしており、その匂いにフィーネがひっかかったというのが今の状況である。
「カニか~」
「タケル~、食べてこうよー!」
「今ならランチの定食や御膳が頼めるか……そんなにこっちには来ないし、入ってみるか?」
「やった~、カニ、カニ~!」
「わーい、本物のカニは初めてだよ!」
キャロの言葉に思わず周囲を気にしてしまうが、特に誰も注目はしていないようだ。
確かにコンビニやファミレス、地元のお店がメインのタケルたちの場合、偽物というかカニカマの方が遭遇する確率は高いのだが、別に貧乏だったり、虐待をしている訳ではない。
むしろ仲魔に好きなものを食べさせ過ぎているサマナーでランキングを行ったら上位に入るタケルだが、中でカニを食べたことはタケルを含めて誰も無い。
中に入ると独特の臭い。
現実サイドでは外国人観光客の利用も多い店だが、VR内だと日本人の比率が高い。
外国人では無く、サマナーの仲魔たちの悪魔だけでなく、自分でどうやってかは知らないが稼いだ日本円を持って客として来ている悪魔も居る。
名前しかアナライズ出来ない、おそらく高位分霊であろうフルカスの姿も見られ「ある意味共食いなんじゃ?」と思うタケル。
カニを食べる時は皆無口になるというが、確かに料理の追加や飲み物を頼む声以外はあまり人の声はしていない。
「パパやって~!」
「こっちに貸して……道具あってもキャロには難しいよな。フィーネは大丈夫か?」
「この程度のカニ、私にかかれば大したことないわよ、この10倍は持ってきなさい!」
「ムルルは身を取るのが上手いな」
「昔だったら殻ごと食べられたんだけどね」
本当に10倍持ってこられたら困ってしまうな、などと思いながらタケルはキャロの分までカニの身を取りながら会話を続ける。
「サラダも美味しいなぁ、おまけって感じじゃなく、ちゃんとした一品だな」
「このコリコリ、ポキポキしたのおいしい!」
「コロッケ、コロッケ~!」
「熱っ、冷凍のとは違うなぁ、こう濃厚なっていうか……」
「釜飯、釜飯~!」
「お茶漬けみたいにしてもおいしいね!」
大満足の食事を終え、最後のデザートも堪能し外へ。
待ち合わせまで三十分弱、ゆっくりと散歩気分で向かえばちょうどいい。
軽く伸びをしてから足取り軽く歩き出すタケルであった。
「……βの時とこの辺全然違うのよね。その辺も踏まえて考えると、次のイベントでここが中心になる可能性が高いかなって」
「……がそう言うなら俺はイベントまでここで集中してやっても構わないけどよ……って、歩道の真ん中で仁王立ちで立ち塞がんなって、他の人の邪魔になるだろ?」
都庁近くでの高校生カップルの会話を聞くとも無しに聞きながら待ち合わせの場所に。
「どっかで見た様な?」などと気にかかるも、さして内部での知人の数は多くないタケルである。「近所で見かけたのかね?」と思考を中断し、既に待ち合わせ場所に来ていたアキラたちに声をかける。
「お待たせ~、超ハイパーピクシーフィーネ登場! エリリ久しぶり~」
「フィーネちゃん久しぶり~♪」
「アキラ髪型変えた?」
「ちょっと自衛官っぽく?」
「あー、そういうつもりだったんだ!」
ツンツン頭が気持ち短めになっているアキラだが、自衛官っぽくなっているかというと実に疑問である。
「この中ってところどころ昔の漫画のネタとかも入ってるからよ、新宿の地下にちゃっかり実銃の射撃練習場あるんだよなぁ、ここ来る前、そこで練習してた」
「シ○ィハンターネタ?」
「そ、まあ、バスターなんか向けに開放されてて、個人所有じゃないけどな」
「自衛官なら自衛隊の設備で撃てるんじゃないの?」
「ログアウト中に微妙に経験積んだことにはなってるみたいだけど、ログインしてる時には出来ないんだよなぁ」
「エリリ、メット買ったんだ」
「ネコ耳メット! それも別作品ネタじゃん」
「カラーリングまんまだけどフルフェイスじゃないし、ライダースーツじゃないからオッケーでしょ? オークションで買ったんだ!」
「まあ、ネコ耳メットって、現実に売り出されたりもしてたみたいだしなぁ……」
わいわいとやり取りしながら都庁の中へ。
一部異界化してるとは言え、通常の状態の部分がほとんどなため、普通の人たちも行き来している。
「さすがに最前線はキツいよな」
「今のウチらのレベルだと20階くらいの異界?」
「もうちょっち上でも平気だとは思うけど、イベ前にパトるのも勘弁だし、今日はその辺でいんじゃね?」
「都庁の中ってロウ・カオスお構いなしだっけ?」
「なんか争ってるっぽい感じらしいよ?」
「アンデに聞いときゃ良かったな?」
「耳がコウモリなんだって? 羨ましいよな」
「あれ、アキラ覚醒が進んだとか言ってなかったっけ?」
「タケル居ない時にソロでパトったらな……でもアンドレアルフスとかいう孔雀だぜ、孔雀! 派手な色の羽毛生えてきちまうし、口は嘴っぽくなるし、悪魔人要素晒せなくなっちまった」
「派手で騒音と一緒に現れるって珍走団みたいな悪魔だっけ?」
「珍走団は酷い、せめてチンドン屋と言ってくれ」
「あの、大して変わらないって思うの私だけ?」
「タケルタケル~、アキラってチンドン屋に転職したの!?」
「ちげえよっ!!」
会話をしながらも各々装備を確認し、アキラは銃の残弾と種類を確かめて「通常弾のままにしてバリバリ使っていくか、それとも神経弾入れといて、いざという時用にするか?」などと思案している。
タケルは相変わらずの銀の燭台だが、レベルアップに伴い力が上昇した関係で少し軽く感じる様になっている。
エリリもおニューのメットをガラス窓に自分を映して確認してはニマニマしている。
「よーし、いくよー、出発~!」
掛け声は威勢がいいがフィーネはタケルの頭に乗ったままである。
ふよふよと飛ぶムルル、キャロはトコトコと小走りになっている。
「ダンタリアンって色んな創作で色んなキャラで登場してるから『お前なんかダンタリアンじゃない!』とかあちこちで言われてるかもね?」
「メガテンだとあんまり強く無いしなぁ」
「タケル~! 真面目に攻撃~!」
「はいはい……」
「『はい』は一回~!」
横殴りに一発、返す刀(燭台だが)でもう一発。
そういう特殊効果は無い筈なのに、ダンタリアンは朦朧としている様に見える。
「やっぱタケルの鈍器はなんか違うよな?」
「あの『兄貴』って人の丸太見ちゃったからインパクトは小さくなったけど、最初見た時『なに、この人!』って思ったもん」
「手が休んでるぞ~!」
「悪ぃ、やっぱサブマシンガン欲しいなぁ、単発は効率悪い」
「このスティック、攻撃力は高いんだけど、たまに手が痺れるんだよねぇ」
「ふっふっふ、ついに覚えた私の必殺技が火を噴く時が来たよーね! いっけー、メギド!」
「おおお、さすがフィーネさんですぅ、でも微妙にHP残ってるみたいなんでザンいっときますねぇ」
「むき~、トドメを取られた~!」
下っ端口調ながら、ちゃっかりとトドメを持っていくシェーラ。
ムルルは魔法よりブロンズの花瓶での直接攻撃を選び、上に下にとふよふよ高さを変えながら脛を打ったり、後頭部を殴ったりしている。
「フィーネちゃんメギド覚えたんだ! あれ? ……ハイピクシーってメギド覚えたっけ?」
「他のハイピクシーはいざ知らず、超絶天才ハイパーピクシーの私はさらなる高みを目指すわよ!」
「まあ、実際属性関係なくダメージ入るから有り難いっていや、有り難いけどな」
「パパ、これ落ちてた!」
「ありがとな」
通常入手出来るアイテムの他にアイテムをキャロが拾ってきた。
タケルが頭を撫でると嬉しそうに身をくねらせている。
それを見たフィーネもムルルもタケルの顔の前に頭を突き出して、無言の要求をしている。
「相変わらずの仲の良さだな」
「ホント、羨ましいくらい」
「エリリちゃん、エリリちゃん、私はエリリちゃんのこと大好きですよお!」
「クマちゃんにべったりだったのに?」
「あの人は反則ですぅ、へばりつきたくなるオーラが出てるんです!」
「堕天使の次は天使か! 連戦気味だけど、MPとかは平気だよな。アキラは残弾平気か!?」
「だいじょぶ! この数ならなんとかなる!」
「ペルソナっ、そんでもって剛殺斬!」
「マハジオっ、いっけ~っ!」
「すりランラン葬らん! かっき~ん!」
「タルンダ~なの!」
会話中に出現した天使に対応して戦闘を再開する。
プリンシパリティとパワーの混成チーム。
パワーのメギドも危険だが、接近戦をするタケルにはプリンシパリティのヒートウェーブが厄介だ。
仲魔たちは躱しているがタケルは食らってしまい、キャロの世話になる。
「サンキュ、キャロ」
減った分のHPはキャロのディアで完全回復。
「お返しだっ!」
プリンシパリティの顔面に叩き込まれるタケルの燭台。
アキラやエリリは飛び散る歯の欠片を幻視した。
敬虔なクリスチャンが見たら腹を立てるだろうが、メガテン内の天使など他の悪魔となんの変わりも無い。
いや、それどころか、原典を含めた様々な作品でのロウの行動から、伝承上残虐だったり、「死」そのものだったりする悪魔以上にプレイヤーから嫌われてたりもする。
「伝承上嫌われても自業自得なマンセマットとかと比べると可哀相な気もするが、これも経験値のためっ!」
倒すのは魔法でも銃でも鈍器でも同じ筈なのに、タケルの鈍器は何故か凶悪な印象を見る人に与える。
仲魔たちはそんなタケルの攻撃に大喜びなのだが……。
「この部屋は安全地帯かな?」
「少し休んでくか」
「タケル~水筒~!」
「パパ、私もお水ちょうだい!」
「ぼくは飴だけでいいや!」
人間たちが休むより先に、仲魔たちが休憩モード。
エリリがアンを追加で召喚、アキラもオカンともう一人を召喚し、さらなる経験値稼ぎに備える。
「さて、じゃ、戦闘再開といくか!」
タケルたちは都庁内部の攻略へと戻っていくのであった。
日本に帰国すると親孝行兼ねて毎回蟹食べに行きます
一人蟹料理は難易度高過ぎですし