笑って嗤う彼女と女神達   作:トゥーン

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短いけど苦労しました


考える者

んん〜、今日も眠い朝だねぇ〜。けれど寝る訳にはいかないんだ、これが。学生って生き物である以上は迂闊に寝ちゃ目を付けられちゃうかもしれないしね。実の所僕には関係ないけれど。

見慣れた金髪が見えたので声をかけて見る。

 

「やあ、おはよう絵里」

「おはよう榛那。あなたあの三人に何か入れ知恵した?」

「いきなりなんだい?何かあったか気になるねぇ」

「やる気に満ちていわよ、とてもね。朝から講堂の使用許可を取りに来たわ」

「へぇ、そいつは面白い。あぁそれからさ、もしかして理事長に阻止計画を提案したりしたかい?」

「……踏み込まないで、榛那」

 

そう言われては流石に踏み込めないね。僕は自分を結構アレだと思っているけれど割とその辺りはやっぱり……まぁそう簡単に変わる筈もないか。

 

「ごめんね、不躾だった。君にはこの話題は出さない事にするよ。そこまで言われちゃあね」

 

でも、君の前だけだけどね絵里。この話題を出さないのは、君の前だけ。希にでも聞くさ。あるいは向こうから相談でも飛んでくるかな。あぁ本人に聞くのもありだね。

 

「私はまだやる事があるから、じゃあ」

「うん、頑張ってね絵里」

 

それにしてもあの三人が講堂の使用許可を……何があるんだろうね、実に楽しみだ。多分ライブだろうけど……早すぎやしないか?いや、廃校阻止を掲げる以上この程度当たり前だよね。遊びでやってるならあぁも熱意を見せてくれる筈がない……ふふっ、面白くなってきた。やっぱり物事はこうでなくっちゃ。予想できて予想できない、それが物事の本質。それ自体も楽しいけれど、やはり物事が招く人の心の揺れもまた───それ以上に求めているものもあるけど、流石にあんなものはそうやすやすとお目にかかれないだろうね、見れたらめっけもんみたいな感じさ。正直あれはねぇ……我ながら無茶苦茶だよ。

でも

 

「色々と面白そうな事がいっぱいで僕も嬉しいよ」

 

とても恍惚とした声の独り言のおかげで、オレンジのショートカットの一年生がギョッとした表情でコッチを見てきた時、僕は思わずニヤリと笑ってしまった。なんかごめんね、色々と。

まぁその子とは後々関わるんだけどさ。

 

 

 

「ポスター……?あぁ、ライブのか」

 

しばらくして、掲示板に見慣れないポスターが貼ってあった。コテコテに気張ったものではなく、身近なもので作られた親しみを覚えるポスターだった。下にはグループ名募集中……いや、募集中ってそれどうかな……あー、でもネーミングセンス皆無な僕が言えた道理じゃないか。

 

そして少し廊下を歩いていると、ライブ告知のポスターを食い入るように見つめている子が。

 

「へぇ……」

 

思わずつ呟いてしまう程、彼女は熱心に見つめていた。その視線にある熱意と好意は紛れも無い本物。これはこれは、なかなかどうして、こういう人間がいるものだね。これが冷やかしに変貌しなければ、彼女はあの三人にとってかなりの存在になるだろう。ファン一号の座は僕のものだけどね、ふふっ。

しかしグループ名募集中かぁ。僕もなにか考えてみようかな?……やっぱやめとこ。

 

 

そして今日もまた学校が終わり、一人でぼんやりと帰っていた時だ。

 

「はーるちゃんっ」

「なんだい一体」

 

後ろからのぞみんにのしかかられた。君はその胸部装甲が大きいんだからちょっと重いんだよこの焼肉スキーめ。

 

「もー、つれないやん」

「いやつれないもなにもどう反応しろって言うんだい。あと重いんだから退いてくれ」

「女の子に重いとか禁句だよ。はるちゃんも分かってるクセに」

「女の子だからさ。重いなら重い、軽いなら軽い、別に僕は男の子じゃないからねぇ。そんな気遣いはしないから、まぁそのつもりで」

 

ぶーぶー言う希を無視して歩き出す。それにしても、こうして希と帰るのは久しぶりだね。昔はよく一緒に帰ってたけど。

 

「ねぇ、はるちゃんはさ。あの三人、本気だと思う?」

 

……はぁ?

何言ってるんだろ、この子は。

 

「その栄養は頭に届いてなくて胸にばかり行っているのかい希。君バカだろ、いやバカだ」

「はるちゃん?」

「君と僕の感性は違う。僕が本気だと思っていても君とって本気でないかもしれない。君と感性の似ている人間に聞けば君の望む答えが出てくるのに、なんで僕に聞くんだい。君が欲しいのはあの三人が本気であると言ってくれる人だろう?絵里は認めていないからダメ。君の言っていたアイドル好きの子はどうかは知らないけど、消極法で僕かい?実に愚かだ」

 

ここで一息つき、また言葉を続ける。本心を包み隠さず、そのままで、言葉に乗せて。

 

「どうして自分の感性を信じる事が出来ないんだい?自分の疑問だろう、他人に答えを求めないでくれ。他人から得られるものが答えなら仕方ないと思うけどさ、こういう問題は自分で見つけなきゃ意味ないだろ。自分を信じて見てやればいい。本気かどうかを決めるのは他人じゃないだろう?それは君が見て、君が判断する事じゃないか」

「あのさ、はるちゃん……ウチ、そういうんやなくて……その、はるちゃんがどう思ってるかを知りたかったんだけど……」

「えっ」

 

……なんだって?のぞみんはそれを望んでいた?てっきり肯定が欲しいのかと……なんてこったい。履き違えちゃった……

 

「あー、そのー、ごめんね。えっと、僕がどう思ってるかだよね?もちろん、本気だと思うよ。彼女たちの行動、そして目を見ればすぐに分かった」

「そっか……ありがと」

 

その後も履き違えを希に弄られ続け、ついイラッとして胸を揉んでやった。攻められると弱いクセに、人のを揉むんじゃないよ全く。

 

しかし、今後が更に楽しみになってきたね……クククッ。




榛那の持論難過ぎィ!

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