一般人は毒を吐く。   作:百日紅 菫

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男三人寄らば一人はハブられます。

巧side

 

謎のISが侵入して来た週の土曜日。俺は一夏に連れられ、一夏の中学時代の友人である五反田弾の家へと遊びに来ていた。家と言っても定食屋を経営しているらしく、一階は厨房と客席しかなかった。

店の外で顔合わせをした後、弾の部屋へと案内され、『IS/VS』というテレビゲームをしながら、学園の事を話したりしていた。

 

「で、もう一人は何つったっけ?相楽?」

「佐倉だよ。佐倉真理。口は悪いけど、すげぇ良い奴なんだ」

「へー。今度連れて来てくれよ」

「そのつもりだよ…あっ!お前それは卑怯だろ!」

「いや、これは公式のハメ技だ。卑怯じゃない」

「あっはっはっは!これで俺と巧に五連敗!一夏は弱ぇな」

「お前等が強すぎんだよ」

 

一夏が席を立つ。五連敗したら外の自販機でジュースの奢りというルールだからだ。ちなみに俺と弾はほぼ互角で、二勝二敗だ。

 

「で、だ」

「ん?」

「学園に可愛い娘はいるのか?」

 

顔は良いのにこいつに彼女がいない理由が分かった気がする。

 

「弾って本当に残念だな」

「何だとぅ!?」

「はぁ。可愛い娘はいっぱいいるよ。むしろ可愛い娘しかいない」

「いいなぁ!うらやましぃー!」

「でも可愛いのと彼女が出来るかは別物だぞ?俺はともかくとして、いつも女子に囲まれてる一夏でさえ彼女がいないんだから」

 

学園での一夏の隣にはいつも篠ノ之さんとオルコットさんがいる。俺が一夏に話そうとすると、すげぇ睨まれるし。ちなみに昼休みと放課後には凰さんも混ざる。けどまぁ、篠ノ之さん達よりかは全然話し易いし、なんというか、男友達感が強い。凰さんがサッパリした性格なのと、一夏に惚れているという事が分かっているからかもしれない。

 

「佐倉って奴はどうなんだよ。つーか一夏に彼女が出来てたら天地がひっくり返るぜ」

 

一夏は鈍感だしな。でも、真理か……。

 

「正直、真理に関してはわかんねぇな」

「仲いいんじゃねぇの?」

「俺等は仲良くなりたいんだけどな…。あ、でもアメリカ人の金髪でスタイルの良い可愛い娘が良く真理の所に来るな。名前は教えないけど」

「かぁー!結局皆良い思いしてんじゃねぇか!羨ましいぜ、クソ!」

 

真理は多分、学園の誰にも心を開いていない。

俺は真理のおかげで、自分という人間がどういう奴なのか理解することができたし、本当の自分で周りに接するようになってきた。でも、真理は違う。真理の心の内は分からないが、心を覆ってる殻も、その中身も、他者を拒絶している気がする。

しかし、その拒絶をも無視して突撃しているのがティナだ。素直に羨ましいと思う。いや、腐った意味ではないが、あの学園に男子が三人しかいない以上、友達として仲良くしたいのだ。その内の一人は今パシられてるが。

 

「おーい。これでいいか?」

「おかえりパシリ」

「パシリじゃねぇよ!罰ゲームだよ!」

 

腕の中に三本の缶ジュースを抱えた一夏が帰って来た。弾の言葉に過剰に反応しつつ、缶を手渡ししてくれる。俺のはオレンジジュースだ。炭酸は腹に溜まるからな。もうすぐ昼だし。

 

「なんの話してたんだ?」

「学園には可愛い人がいっぱいいるよなって話だよ。あと弾に彼女が出来ない理由が発覚した」

「ええ!?なんで!?」

「がっつき過ぎだ。顔は良いんだから、もっと感情とか欲望を抑えたらモテると思うよ」

 

マジかー!なんて叫んでいる弾を横目に缶のプルタブを開ける。カシュッと音を鳴らしたそれを口元に運び、程よい酸味を味わっていると、もの凄い勢いでドアが開かれる。開けた、というより蹴破ったという表現の方がしっくりくる位の勢いだ。そして、ドアの向こう側に立つ人物の恰好を見る限り、まさしく蹴破ったのだろう。蹴ったであろう右足を降ろしながら、弾と同じ赤毛を持つ少女が口を開いた。

 

「さっきからお昼できたよって何回も言ってるでしょバカ兄!」

 

短パンにタンクトップ、髪は弾がしているものと似ているバンダナで上げている少女は随分怒っているようだ。

 

「おっ、蘭じゃないか」

「え?い、一夏さん!?」

 

そして、一夏を見た時のこの反応。頬を赤らめ、動揺し、自分の恰好を隠すように手で覆い隠す。

 

「…あの娘は?」

「俺の妹。名前は蘭。お察しの通りだ」

 

また一夏か。

まあ一夏じゃなくても、知り合いやら知らない男の前にオシャレとは無縁な位ラフな恰好で出てくれば恥ずかしいだろうな。いやそれより、俺の知っている限り一夏に惚れている人間が多過ぎな気もする。中学から弾とつるんでいるなら、多少は弾に惚れている人もいそうな気もするけどなぁ。

 

「……お前本当に彼女いないの?」

「挑発か?挑発してんだなこの野郎」

「いや、なんでもない」

 

中学からこれじゃあ一夏に惚れるのも無理はないな。弾はなんというか、友達関係が限界そうだ。ギャルゲーとかで主人公への好感度とかを確認するためのキャラ、みたいな。

 

「え、えっと、そちらの方は…?」

「ああ、自己紹介してなかったね。澵井巧。一夏と同じでIS学園に通ってる。また遊びに来ると思うから、よろしく」

「は、はい。あ、えっと、五反田蘭です。お兄がお世話になってます?」

「あはは、お世話してます。じゃあ一夏、俺たちも昼飯買いに行こーぜ」

 

一夏に案内してもらって近くのコンビニにでも行こうと腰を上げかけると、胸に手を当てた蘭ちゃんに呼び止められる。可愛いんだけど、一夏狙いなんだよなぁ。

 

「あの、一夏さんと巧さんさえよければなんですけど、お昼ご飯ご一緒しませんか?」

「え、でも俺たち昼持って来てないんだけど…」

「大丈夫だと思うぜ?じいちゃんにお前等が来ること言っておいたから、余りモンになっちまうけど昼飯はある筈だ。あ、巧は良いトコの出らしいし口に合うかは分かんねぇけど」

「良いとこって…。別に食ってるもんは変わんねぇよ。毎日キャビア食ってる訳じゃねぇし。とりあえず、用意してくれるならごちそうになるよ」

 

確かに前は月一くらいで高級店に食事は行ってたけど、普段は普通の飯を食ってたし、学園に来てからはカップラーメンとか色々食うようになった。それに、次に会社に戻った後は二度と行く事はないだろうし。

あれ?そうなったら俺の専用機って没収か?いやでも真理も専用機持ってないし、大丈夫だろ。うん、大丈夫大丈夫。

 

「じゃあ行くか。早く行かねぇとじいちゃんに皿下げられちまう」

「おお。厳さんの飯美味いから楽しみだぜ!」

「あれ?蘭ちゃんは?」

「さあな。とりあえず片して行こうぜ」

 

ゲーム機やら飲み干した缶やらを片付け、弾を先頭に階段を降りる。昼飯時を外しているからか、食堂にはテーブルに数人の客がいるだけだった。

しかし、カウンター席に一人だけ、店の雰囲気に合わない服装をした少女が座っていた。正直店の雰囲気的に少女がいる事自体合っていないが、オシャレをしている事でさらに浮いている。いやまあ、蘭ちゃんなんだけど。

 

「あれ?蘭、出かけるのか?」

 

流石は一夏。蘭ちゃんのオシャレの意味を全く理解して無いどころか、怒らすとは。一回脳の検査をした方が良いかもしれない。

 

「違いますっ!」

 

そらそうだ。もうこの2人はほっとこう。

俺と弾は蘭ちゃんから席一つ分空けてカウンターに座る。一応蘭ちゃんの隣に一夏が座るように誘導しているのだが、一夏はそれを無視して蘭ちゃんから一番離れた席につこうとしやがる。

俺と弾は無言で一夏の襟首を掴み無理矢理座らせる。何だこいつ。マジで脳みそから恋愛関係の言葉とか抜け落ちてんじゃねぇの?

 

「何だよ、2人揃って」

「別に。それより、じいちゃん。こいつ等の飯は?」

 

弾が厨房に聞くと、筋骨隆々の壮漢な顔つきの男性が二つの皿をカウンター越しに渡して来た。一つは小さめに作られている事から蘭ちゃんの分だと判断し、隣り合っている一夏と蘭ちゃんに皿を廻した。そうしていると俺と弾の間から二つの料理が盛られた皿が差し出されていた。振り向くとそこには奇麗な、それでいて可愛さを含んだ妙齢の女性がいた。弾の姉か?

 

「弾、お前三人兄弟だったの?」

「いや、あれは…」

「あらあら。貴方が澵井巧君ね?嬉しいんだけど私は既婚だからね?」

「あ、そうなんですか。弾、お前お義兄さんできたの?」

 

弾は顔を手で押さえながら妙齢の女性を指差して言った。

 

「あれ、うちの母さん」

 

妙齢の女性、もとい弾の母親を二度見した後、驚愕の事実に叫び声を上げたのは言うまでもないことだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弾の祖父、厳さんの紹介と孫娘への溺愛っぷりを見せつけられつつ昼飯を食べ終える頃、蘭ちゃんが一夏の周囲の事情を聞き、IS学園に入学すると言い出した。

一夏のような朴念仁も困るが、蘭ちゃんのように恋愛脳なのも困りものだな。

 

「おい蘭!兄ちゃんは反対だぞ!大体、学園の入試って筆記だけじゃねぇんだろ?巧」

「そうだな。実技試験で実際にIS乗って教師と戦うし、それ以前にIS適性が少なくともD、いやCは必要だな。男なら反応するだけで入れてもらえそうだけど、多分もういねぇんじゃねぇかな」

「ほれみろ!」

 

弾が蘭ちゃんに詰め寄ると、今度は蘭ちゃんがポケットから出した紙切れを弾の目前に突き出す。

 

「あ?……簡易IS適性検査?」

 

弾の肩口から一緒になって覗いてみると、そこには弾が読み上げた通り、紙の上の方に『簡易IS適性検査』と書かれており、その下には評価の欄がある。これは男性一斉検査のときの紙と一緒だな。そんなことより、欄ちゃんのIS適性は『A』。受験には問題ないどころか優秀すぎる成績だ。だが受験をやめさせたい弾にとっては地獄への切符のように見えるだろうな。

 

「適性A?凄いな蘭。俺よりも上だぞ」

「ありがとうございます!もし私が入学したら色々教えてくれますか?」

「別にいいけど、巧の方が教えるの上手だと思うぞ」

 

このバカは…。

いや、それよりも蘭ちゃんの入学は正直俺も反対だ。学園の人達も基本的には欄ちゃんと同じ事を考えていると思うが、それはあくまで入学した後から考えている事だ。入学する前はIS操縦者、もしくはISに関連する仕事に就く為に三年間勉強しようと決意して来ているのだ。恋愛目的で来ている生徒はほぼいない。

さて、それをどうやって蘭ちゃんに伝えるか…。

直接伝えたら泣かせちゃいそうだし、泣かせたら厳さんが怖いしなぁ。

………真理だったら、どうしただろうか。

それを考えた瞬間、今までの思考がまるで無駄だったことを理解した。新しい友人の妹が、危険性を理解せずに危険地帯に飛び込もうとしているのだ。それを注意するくらいで何をビビっているのだ。

 

「…教えるどうのより、まず学園への入学を考え直した方がいい」

「え?」

「巧…」

 

蘭ちゃんと弾の呟きが重なった瞬間、厨房からかなりのスピードでお玉が飛んで来た。首を傾げてそれを避け、投擲した本人を見る。うわっ怖。織斑先生に匹敵する怖さだよ。

必死で表情を殺しながら、厳さんと睨み合う。

 

「おめぇ、蘭の決めた事にケチ付けんのか?あ?」

「蘭さんが傷ついてもいいってんなら辞めますけど?」

「ああ?どういうこった」

 

蘭ちゃんが傷つくというワードを聞いてか、話を聞く姿勢になる厳さん。

 

「ISってどういうものか、ご存知ですか?」

「スポーツに使うモンだろ?テレビとかでもよくやってんじゃねぇか」

「表向きはそうですね。シールドエネルギーと絶対防御による安全なスポーツ」

 

とは言ってもシールドが出ても衝撃は消せないし、痛いもんは痛い。でも、蘭ちゃんの入学に反対している理由はそれだけじゃない。

 

「ではこんな話はご存知ですか?ISが発表された二年後。ISを保有している全ての国が軍にISを配備し、その年に紛争をたった一機のISが終わらせたそうです」

「……!」

 

厳さんや蘭ちゃんは首を傾げているが、弾は俺が言いたい事が分かったようだ。まあ元々蘭ちゃんの入学を反対するのにも、ISに対して危険であるという意識があるからだろう。

 

「わかりますか?ISとはたった一つで国を落とす事が出来る兵器なんです。それを使用できる操縦者は計り知れない価値を持つ」

「…でも今はナントカ条約ってので軍事利用は禁止されてんじゃねぇのか?」

「そんなものは建前に決まっているでしょう。戦争になれば躊躇なくISは利用され、その搭乗者達は常に命の危機に晒される。悪い言い方をすれば、攫われたり、その先で慰みものになる可能性だって無くはない」

 

蘭ちゃんや厳さんもようやっと話を理解し、俺の言葉に蘭ちゃんは自身の体を抱いている。

IS学園にいる人達がそこまで理解しているかは分からない。むしろここまで深読みしているのは俺や真理くらいだろう。だが、少なくとも危険であるという事くらいは理解している筈だ。この前の騒ぎに巻き込まれた人達なんかは実体験がある分、余計に感じているだろう。

 

「……やっぱり、私、考え直します」

「そうした方が良い。考え直して、それでも来たいって言うならもう止めはしない。その時は勉強も見てあげるし、入学してからは一夏が実技を教えるよ。ただ、入学するならこれだけは覚悟して欲しい。家族と離ればなれになること。そして、誰かの家族を奪う事を」

 

勿論、そんな覚悟をしている人は学園に一割もいないだろう。でも、弾や厳さん、弾のお母さんの蘭ちゃんの溺愛ぶりを見て、この暖かな家族を壊したくないと思った。

 

「…ありがとうな、巧」

「俺は思った事を言っただけだ。お前にお礼を言われる筋合いはねぇよ」

「…男のツンデレは需要ねぇよ」

「うっせぇ!」

 

俺と弾の会話を皮切りに、蘭ちゃんは笑顔に戻り、弾のお母さんと厳さんは仕事に戻った。

その中で唯一、一夏だけが沈黙したままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ俺等はそろそろ帰るか。…おい一夏?」

「え?あ、ああ」

「どうした?昼くらいからぼーっとしてるぞ、お前」

 

昼飯の後、男三人で近所のゲーセンや大きめのデパートなんかを歩き回り、日が傾いて来た頃。弾の家の近くで帰寮しようとした時に、弾が一夏の状態を指摘した。確かに三人で歩いている時もいつもより会話の数は少なかった。

 

「いや、まあな。じゃあ帰るか」

 

腑に落ちないけど、まあいいか。

 

「またな、弾。今度は真理も連れて来るよ」

「おう。楽しみにしてるぜ」

 

手を振って弾と別れ、一夏と2人で帰路につく。

歩き始めて十分程経った頃、ずっと無言だった一夏が口を開いた。

 

「ISは兵器、か」

「ん?どうした」

「いや、俺たちは普通に使ってるけど、ISって兵器なんだよなって思ってさ」

 

昼からずっと考えてたのはそれか。

 

「…昼間も言ったけどさ、ISってのは国を落とせる最強の兵器だ。でもそれはISの一側面に過ぎない」

「うん。俺もずっとその事を考えてた。ISを作った束さんは知り合いで千冬姉の親友なんだけどさ、あの人がIS作った理由は宇宙に行きたいからなんだよ」

 

そういやそうだったな。俺も篠ノ之束の昔のISに関する論文を読んだ事がある。宇宙に行ける夢のパワードスーツ。当時の俺はこんな世界にしてくれてありがとうだなんて不謹慎な事を考えていたものだが、今ではISを兵器にしてしまった人達に憤りすら感じる。

 

「でもさ、やっぱり俺は皆を守れる力としてISを使いたいんだ。そりゃ宇宙にも行きたいとは思うよ。でも、この前みたいな奴らがいるんだって思うと、束さんには悪いけど俺は力としてISを使いたい。こういう考えって駄目かな?」

 

人によっては一夏の考え方を否定するだろう。その人の考え方だって間違っちゃいない。でも俺は一夏の考え方が好きだ。

 

「いいんじゃないか?作ったのは篠ノ之束だけど、それをどう使うかは人次第だろ。ま、守るどうのってのは俺とかセシリアに勝ってから言えよ」

「分かってるよ!それに、真理にも勝たなきゃな」

「真理かぁ。アイツにはまだまだ勝てそうにねぇなぁ、俺」

「そうなんだよ。この前も皆を避難させてたんだろ?俺じゃ無理だったと思うし」

「それに真理の空間把握能力と計算スピードすげぇぞ。跳弾しても危なくない所とか一番でかい音が出る所とか一瞬で見分けるし」

「マジかよ。そういや客席からISの頭に物干竿投げてたな。あれも狙ってやったのかな?」

「客席から!?いや、あの距離だったら偶然だろ。そんなんできたら織斑先生とタメ張れるぜ」

 

その時の俺たちは、真理の実力を本当には理解できていなかった。いやだって客席からアリーナの真ん中までどんだけ距離があると思ってんだよ?百メートルとかそんなレベルじゃないよ?

その後、真理が織斑先生と決着の着かない試合を繰り広げるのを見るまで、俺たちが真理の実力を真に理解する事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、明日の準備を終え、晩飯も食べ終わった頃。目の下にうっすら隈が出来ている山田先生が部屋に来た。なんでも、明日から転入生が2人も来るらしく、しかもその内の一人が男子らしい。そこで、本来2人部屋であるこの部屋を一人で使っている俺と同室にするらしい。

 

「それは構わないんですが、一夏が部屋の調整いつになるんだって言ってましたよ」

「すみません、私たちも忙しくて…。が、学年別トーナメントが終わる頃には調整も着きますから!」

「あ、いや、無理にとは言いませんよ。まあ、一夏には伝えときます」

「本当にすみません。では、また明日」

「はい、おやすみなさい」

 

にしても、男子か。この時期にってのはおかしな話だが、まあ外国の事だろうし、色々あるんだろう。一夏に言ったらすぐに口を滑らしそうだし、噂が広まったら先生達も困るだろうから言うのは辞めとくか。あ、真理なら大丈夫かな。真理なら誰にも言わなそうだし、一応言っとこ。

真理に電話を掛けると、数コールの後に出た。

 

『佐倉です』

「もしもし、真理か?」

『なんか用?』

「ああ。なんか明日転入生が2人来るらしくてな」

『その内の一人が男子だって話か?』

 

なんで知ってんだ!?

 

『そんだけ?じゃあな』

 

プツッと通話が切れる。いや、なんで知ってんだよ怖いわ。

あ、生徒会だったっけ。もしかしたら学園の説明とかでもう会っているのかもしれない。真理の驚く声が聞いてみたかったのに残念だ。今度その新入生と一夏と協力驚かせてみようかな。

そんなことを考えていると、今度はパソコンの方にメールが来ていた。

 

「なんだ?」

 

メールボックスを開き、その送り主を見て眉を顰めてしまう。書かれている名前は『澵井 亮介』

俺の、父親からだった。

 

 

 

 

 

 

波乱の一ヶ月が幕を開ける。


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