クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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さあ、ボス戦です。




最初の強敵

禍々しい気配が漏れる門の前。

再び辿り着いた俺たち一行。

今の俺たちには、前ここにいた時とは違うところが二つある。

一つは、この門を開ける鍵を持っていること。

もう一つは、四人の心構えだ。

 

後ろを振り向くとキサラギ、アリス、サコ、ランの姿。

皆、前回とはうって変わって、やる気に満ち溢れた顔つきをしていた。

こいつらならやってくれる。そう確信できる。

 

「開けるぞ」

 

俺は手に入れた鍵を差し込む。すると、巨大な門はゆっくりと開き、進むべき道が現れた。

 

「行くぞ」

 

悪魔の口を思わせる門をくぐり抜け、ミウが向かった場所へと足を急いだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

門の先は、今までと違い壁が天井まで伸びており、前の場所よりも窮屈に感じる。

 

門を抜けて進んだすぐのことだ。

 

「キャア!」

 

確かに聞こえた短い悲鳴。

少しの間一緒にいただけなのに今でも耳から離れない、あの鬼教官ミウ、その人の声だった。

 

「皆!走るぞ!」

 

俺は急いで走り出す。後から四人分の足音も聞こえる。

誰も遅れることなく走っていると、遂に目的のものが、小さくだが見え始めた。

 

通路から広いスペースへと代わり、そこで目にしたのは、巨大な怪物の姿と血を流しながら座りこんでいるミウであった。

 

怪物は俺の伸長を遥かに越えており、その大きさに恐怖を煽られて少し足が震える。

 

「ねぇ、今さらだけど、本気でいくの?」

「キサラギ、今さらだぜ本当。腹くくらなきゃなんないだろ?」

「うぅ~、死にたくないな~……」

「誰も死にゃしねーよ。……たぶん」

「いきなり情けなくなったなオヤジ」

 

なんて無駄話しをしたら、ミウの所に到着した。むだ話のお陰か俺の足の震えは止まっていた。

リラックスできたみたいだ。

 

「で、でっかいぞー……」

 

最初に口を開いたのはサコだ。敵の見た目に呆気を取られている。

奴を一言で表すなら『恐竜』だ。硬そうな歯、鋭利な爪、力強そうな顎。それに加えて、捻曲がっている角、身体中を拘束するように巻かれている鎖を身に付けている。

そして、捕食者特有のギラついた眼で俺たちを見ており、その全てが俺の恐怖心を煽る。

「くっ……」

「おい!大丈夫か!」

 

傷の痛みに呻くミウに駆け寄るラン。

血は額から流れており、小さな傷も体の所々に見付けられた。さらに、息遣いも荒く、顔も青くなっており、かなり疲弊している様子だ。

そんな状態でも俺たちを見るなり、表情がキッとなり叱責が始まる。

 

「あなたたち……待ってろって言ったじゃない!!どうして言うこと聞けないのよ!!」

「スミマセンね。俺が許可しちゃったんですよ。まあ、固いこと言わずに、ね。今はそれどころじゃないですし」

 

ガオオオオオオオオ!!

 

巨大な恐竜型クリミナル──『オーバーイート』の咆哮。明らかな敵意。

 

「ねぇ!襲ってくるわよ!どうすんの!?」

「……戦うしか……ないの……!」

「その通りだ!皆、ちゃんと指示は出す。だから死ぬなよ!」

「おっしゃーー!やるぞーー!」

「心配なんざ必要ねーよ!」

 

皆気合は十分。それぞれの武器を構える。

 

「さあ、戦闘開始だ!」

 

俺の言葉を合図に両者一斉に動き出す。

 

奴は圧倒的な歩幅であっという間に詰め寄って来た。

そして、その凶悪な牙を見せ付けるように口を大きく広げて噛みついてきた。

四人はそれを左右にバラけて回避する。

 

見たところ、オーバーイートの攻撃は大振りで、避けにくいことはない。が、あの巨体から繰り出される攻撃は一撃でも当たれば戦いが辛くなるだろう。

防御面が優秀なランは兎も角、身体能力が低いアリスが避けきれなかったら……不味いな。

 

俺は考えをまとめて、四人に指示を飛ばす。

 

「お前ら!防御優先で奴の周りを走って翻弄しろ!絶対に一撃でももらうんじゃねーぞ!」

 

四人は一瞬だけこっちに視線を向けて元に戻す。

伝わったな。

 

と思った次の瞬間、サコがオーバーイートに飛びかかった。

 

「おりゃあーー!」

 

側面からのパンチ。攻撃されたオーバーイートは、よろめくがすぐに踏みとどまり、鋭い爪をサコへ振るう。

サコは空中で体を捻り、紙一重でかわす。が、少し掠めたのか、受け身を取らずに地面に落ちた。

 

「あのバカッ!」

 

俺は治療の為に走り出す。

治療と言っても薬ぶっかけるだけなんだけどね。

 

先程のサコの攻撃が切っ掛けでキサラギ、ランも攻撃に移っていた。

なにやってんの!?

 

「お前ら指示通りやれよ!」

「指示?そんなの知らないわよ!こっちは忙しいのに騒がしいなって思ってたけど、あれって指示だったの、ねッ!」

 

キサラギは俺と会話をしながらも、オーバーイートの懐に潜り込み、剣を振るう。オーバーイートの腹に作られる斬撃痕。

奴は苦しむように呻く。

 

「防御なんてまどろっこしいもんは攻撃される時にやりゃーいいんだよ!ダメージ与えねーと、そもそも勝てないんだしな!」

 

ランもキサラギ同様、走り回りながら俺と話す。

隙を見て近付いては切りつけて離れる。を繰返し、少しずつダメージを与えている。

 

「確かにその通りなんけどさ!命かかってんだぞ!?」

「……もう死んでる……のッ!」

 

答えたのは、紫の光球の魔法攻撃の準備をしていたアリス。喋った最後に魔法を飛ばす。

光球はキサラギとランに注意がいっているオーバーイートの顔面にて炸裂する。奴は今までで一番の悲鳴をあげる。

攻撃を当てたアリスの顔は満足気だった。

……本当に血の気が盛んなやつらばっかだな。

 

「わかったよ!もう、好きにしろ!そんでもってやっつけろ!回復はすぐにやってやるよ!」

 

やけくそ気味に叫ぶ。

もうどーにでもなーれ♪

 

俺のサコのすぐそばまで来て、薬をぶっかける。

 

「おい、大丈夫か!?」

「う~、さっきのはけっこーいたかった」

「大丈夫そうだな。なら、やり返せるか?」

「おう!」

「んじゃ、行ってこい!ボコボコにブチのめせ!」

 

背中を押すとサコは弾丸のような勢いで走っていき、戦闘に参加した。

 

戦いはこちらの優勢で進んだ。

さっきも言ったが、オーバーイートの攻撃は大振りで避けやすい。たまに命中したとしても、俺が全力ダッシュして回復させればそこまで支障はでなかった。

 

これは勝てる。そう確信した時、異常が起きた。

今まで単調な攻撃しかしてこず、メチャクチャに動き回っていたオーバーイートが突如、動きを止めた。

 

「そうとう効いてるみてーだ!畳み掛けるぞチビ!」

「おっしゃー!」

 

それを見て勢い付いていたランがサコを引き連れ一斉攻撃を仕掛ける。

 

違う。ダメージが溜まっているのは確かだ。でも、この感じは……嫌な予感がするッ!

 

「今すぐ攻撃を止めろーーー!!ヤバイのが来るぞ!」

 

緊迫した声で叫ぶ。

今までとは感じが違うとわかったのか、キサラギとアリスは後ろに退く。しかし、勢いのついたランとサコは止まらない。

 

次の瞬間、今まで動かなかった分を爆発させるように、オーバーイートは高速回転しながら強烈なタックルを繰り出した。

 

ランとサコは激突。

二人は弾かれた独楽の如く綺麗な放物線を描き、吹き飛んだ。

被害はそれだけでは止ま らず、奴が回った時に発生した突風が、後ろに退いていたキサラギとアリスも吹き飛ばす。

 

「みんな!」

 

危険を感じ取っていた俺は攻撃が始まる前に匍匐前進の如く、体勢を低くして移動していたので吹き飛ばされずに済んでいる。

危ない時は身を縮める。何時かの訓練で習った教訓だ。

 

少しして、奴の回転が止まった。

目が回ったのか体と頭が別々に、ぐわんぐわんと揺れている。

今のうちに!

 

「キサラギ!アリス!大丈夫か!」

 

近くに倒れてい る二人に急いで近付き、二人に回復薬をぶちまける。

さすが回復薬、小さな傷がみるみるうちに治っていく。

 

「うぅ……いたた……。なんなのよもうッ……!」

「……痛いの……やなの……」

 

二人とも、相手のパワーに意気消沈のご様子だ。

これは不味いな。……ん?

 

「二人とも、少し休んでろ。いいな?あとキサラギ……」

 

二人に休むように指示し、キサラギには更に一言告げてら俺はその場から離れた。

全速力でサコの元に走って近寄る。薬ぶっかけてから、担いで回収。さっさとその場から去り、次はランの元へと急ぐ。

 

「おいラン!しっかりしろ!」

 

回復薬をランに使う。俺持っている最後の回復薬だ。

これで、この戦いの間、俺は治療ができなくなった。

 

「くっ、ん……オヤジ、か。心配すんなよ、アタシは大丈夫だ」

「そうか。ならちょっと今から頼みたいことがある。今回は真剣にやってくれよ。勝つためなんだからさ」

「……聞いてはやるよ」

 

俺はランに耳打ちをして自分の考えを伝える。

 

「なるほどな」

「頼むよ。俺じゃ言うこと聞いてくれないしね」

「わかったよ。勝つためだ、その案に乗ってやるよ」

「まかせた」

 

作戦成功のビジョンをイメージしているのか、愉快に笑うラン。

 

「ほらチビ、起きろよ」

「いたいっ!」

 

持っている盾でサコの頭を小突く。

意識が完全に回復したサコは恨めしげにランを睨む。

 

「ほら、やられっぱなしじゃカッコ悪いぞ!反撃だ!」

 

ランはサコを掴んでオーバーイートの向かっていった。

 

「キサラギ!アリス!そろそろ頼むぞ!」

 

休んでいる二人にも戦うことを促す。

声が届き、二人とも渋々だが立ち上がり戦いを再開する。

オーバーイートも回復したようで、体はフラフラと揺れていない。だが、ダメージは溜まっている。

もう一度、奴の必殺技とも言える、あのタックルが来れば……。

 

四人の戦いは先程より慎重になっていた。

しっかりと安全なタイミングを見計らって攻撃する。ヒット&アウェイと言うやつだ。

学習したと言うよりもトラウマとして頭に残ってるように見える。それもあって、奴の攻撃に対する反応が速くなっており、危なげなく避けることができている。

怪我の功名ってな。

 

俺は始まって僅かしか経ってない試練の途中で気付いた発見が幾つかある。

その内の一つに、クリミナルの精神構造が人間と酷似していることがあげられる。簡単に言うと、クリミナルは人間と同じようにバカにすれば怒るし、調子に乗れば油断をするなど感情があるのだ。

ただ単に、見つけた獲物を襲うだけの化け物ではないと言うことだ。その内、言葉を話すクリミナルも現れるんじゃないかと俺は思っている。

 

まあ、その話は置いといて、感情があるって話だ。どういうことかと言うと、こうやって四人がオーバーイートの攻撃を完全にかわしきっている状態が続くと、オーバーイートは痺れを切らすはず。

そうなればオーバーイートは、唯一の大打撃となった、あの攻撃が出るはずだ。それを待つ。

 

と思った矢先、オーバーイートの動きが止まった。

 

「ラァアアアアン!!」

 

作戦開始。成功の願いを込めてランに叫ぶ。

ランはわかってると言う風な顔を見せると行動を開始した。

まず、攻撃を止めてサコを回収。急いでキサラギの元へ向かい、こいつも無理矢理回収。

オーバーイートから一番距離を取っていたアリスの所へ急ぐ。

 

成功しろ!と心の中で祈りながら、一人全速力でオーバーイートから離れる俺。

今の俺は回復薬もないので完全な役立たず。

今の俺にできることはあいつらを信じることだけだ。

 

「気分はどう?」

 

俺はミウが体を預けている壁際まで到着する。ついでに、ミウに声をかけてみた。

 

「……なに考えてるのよ」

「見てればわかる」

 

強気な態度で答えるとミウはイラッとした表情を見せたが何もしてこなかった。

まあ、怪我してるからね。動きたくないでしょ。

 

ミウからラン達に意識を代える。

ちょうど四人は話終えたようだ。

四人はオーバーイートに向かって、ランを先頭にキサラギ、サコ、アリスの順に並び、身を屈める。

 

「一体なにをするきなの?」

「あいつの攻撃を真正面から受け止める」

「は!?」

 

ランは自分とオーバーイートの直線上に盾を両手でしっかりと構え、その背中をキサラギ、サコ、アリスが支えるように体を寄せる。

 

「四人が勝つか、奴が勝つか。それだけです」

「あんた頭おかしいんじゃないの!!」

「はい。小学生の頃は『狂人』って渾名でした」

「ああああーーー!!」

 

ミウはそれっきり頭を抱え込んだ。

そんなことより四人だ。頑張れよ。本当は俺も協力したいんだが、走り回ったせいで足が痛い。情けないなぁ……自分の生徒が頑張っているってのに。

自分の無力さを噛み締めながら、ただ四人の行く末を見守る。

 

四人の顔は真剣そのもの。

緊張のせいか額に汗が浮かんでいる。

まだそんなに時は経っていないのにこうして構えているのが長く感じていた。

そう思った刹那、不動のオーバーイートは動いた。

一気に回転はトップスピードにまで高まり、そして……

 

四人に向かって一気に突撃する。

 

「くるぞ!全員ガード!!」

 

ランの言葉と同時に全員は力を込め、迎え討つ。

強風を撒き散らす一撃と結束の盾がぶつかり合った。

瞬間、接触地点を中心に周囲に拡散される重い衝突音と体が吹き飛びそうな衝撃波。そして、盾に頭をぶつけたまま、止まっているオーバーイートの姿。

 

「やった!」

 

ミウが喜びの声をあげる。が、すぐにその声は凍りつくことになる。

止まったように見えていたがじりじりと、まだ動いているようで、そのあとすぐにオーバーイートの回転は再開。四人はまとめて吹き飛ばされた。

 

「ああ!」

 

ミウは悲鳴にも似た絶望の声をあげる。

彼女達は頑張ったが圧倒的力の差の前に作戦は失敗した。そう思ったからだ。

 

だが、ミウより彼女達の身を案じているはずの彼は……

 

隣で不適な笑みを浮かべていた。

 

そう、作戦が失敗した時とは全く異なる意味を持つ表情をしていたのだ。

そして、彼はその表情のままこう呟いた。

 

「はいっ勝ち~♪」

 

同時に、放物線を描きながら吹き飛ばされていた四人の内の一人……キサラギが自分の服の中をまさぐり、一本の小瓶を取り出した。

キサラギは小瓶の蓋を開けて中身の液体を周りにぶちまける。液体は四人の体に掛かり、体の傷を癒していった。

 

「回復薬!いつの間に持っていたの!」

「さあ?いつでしょうね」

「一体どういうことなの!キミ!説明しなさい!」

「へいへい」

 

ユウはマジックの種明かしするような、悪戯っ子ぽい顔で話始める。

 

「簡単なことですよ。今回の目的は二つ。

ダメージをできるだけ抑えることと、四人が奴の必殺技を受けたとき、まとまっていることです。

一つ目の目的の理由は回復力です。ミウさんはこのヨミガエリのシステムを熟知しているからわかると思いますが、回復薬は二種類に分けられます。一つが一本全部使って一人を回復させるタイプと、一本で複数を回復させるタイプです。この二つの違いは……」

「回復量……」

「正解♪一本で複数回復させるタイプはもう一つのと比べて回復力が低い。なので、ダメージをできるだけ抑える必要がありました。

二つ目の目的の理由は一つ目と少し繋がっています。

複数回復させるタイプ……面倒なので『全体回復薬』と名付けますね。全体回復薬は効果が出る範囲があります。だから四人には固まっていてもらいたかった。

その二つの目的を達成するために四人で固まってガードすると言う方法を取ったと言うわけです」

「……キミの考えていたことはわかったわ。でも、一つだけ腑に落ちないことがあるの。どうしてあの子は回復薬を持っていたの?」

「ああ、キサラギですか。あいつ、盗んだみたいですよ。あのデカブツから」

「え!?いつの間に……」

「さあ?俺が気がついた時には持ってましたから。まあ、そんなこんなで作戦成功。勝負はこっちのもんですよ」

 

喋り終えたユウは視線を前に向けた。

釣られてミウも同じ方向を見る。

そこには、傷がみられない四人がそれぞれの武器を構えている姿とその先で回り疲れてフラフラと覚束ない足取りで揺れているオーバーイートの姿だった。

 

「行くぜッ!」

 

ランの掛け声に合わせて、四人は敵に向かって走り出す。真っ先に敵に近付いたのは足の速いサコ。

 

「おかえしだーーー!!」

 

懐へ潜り込み、膝を曲げて身を縮める。そして、身体全体を勢いよく伸ばして真上へ弾丸の如くジャンプ。勢いの乗った強力なパンチを繰り出す。

拳の先はオーバーイートの顎。

 

”メシッ!!”

 

骨の砕けるような音がサコの拳が突き刺さった辺りから聞こえる。

その威力にオーバーイートは頭から後ろへ引っくり返る。

 

「どうだ!!」

 

サコは満足気に叫ぶが、当然オーバーイートは答えない。

オーバーイートが背中から地面に倒れる。その直前、背中と地面の間に滑り込むように放たれた紫の光球。

アリスの魔法攻撃だ。

 

「……消えちゃえ……ッ!!」

 

光球が爆発し衝撃波がオーバーイートの背中に激突する。

地面が簡単に破砕される威力。後ろへ倒れかけていたオーバーイートは背中を押される形で、今度は前へと倒れていく。

 

「来るぞキサラギ……準備はいいか?」

「バッチリよ、ラン」

 

二人はオーバーイートの前に並んで剣を構える。二人が立っている場所は倒れてくるオーバーイートの首の根辺り。

二人の目前に迫るオーバーイートの頭にタイミングを見計らい、剣を振り抜く。

 

「オラァーーーーッ!!」

「ハアーーーーーッ!!」

 

二人の気合いの咆哮と共に剣は肉を掻き分けて突き抜け、オーバーイートの体と頭を切り離すのに至った。

 

音を響かせて地に落ちたオーバーイート。一瞬の静寂の後、その大きなクリミナルは煙のように消滅した。

 

「やった……」

 

誰かが呟いた瞬間、糸の切れた人形のように四人は倒れた。その表情はとても満足気で気持ちのいい寝顔だった。

 

「……気絶したか。労いの言葉ぐらい掛けたかったな」

 

その後すぐのことだった。向こう側にある鋼鉄の門が開いた。開いた門の先には階段が見える。

次の試練はこの先ってことか……ん?

開いている門を眺めていると門を潜る一つの人影が目にはいる。あれは……

 

「ミウ……?……え!?いつの間に!?」

 

隣で一緒に壁に凭れていたはずのミウが門の先に歩いて行ってしまったのだ。

酷い怪我だったのに。ムチャだろ……。

俺は重い体に鞭を打って立ち上がり、ミウの後を追おうと門の向こう側に向かって走り出すが途中で足を止めた。

 

「あ~、こいつら置いてくわけにもいかねーよな……はぁ」

 

地面に突っ伏して寝ている四人を見回し、俺はタメ息をついた。

 

ん?これは……いいもん見っけ♪

 

ミウは階段へ。

俺は四人を引きずってキャンプへ戻った。

 

 

 

 




どうもDAMUDOです。
ゲームして、三つも小説書いて、仕事もして、遊んで……。
遅れても首を長くして待ってくださいね!

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