クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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イラストブック欲しい……




門の先……

「う~ん、う~~~ん!!うわ~~ん、あかないよ~!!」

 

階段を上って次の階層を探索していた俺達は道を塞ぐ門の前にいた。

この門、サコが押しても引いてもびくともしない。

そりゃそうなんだけどね……

 

「なあ、サコ。そこにある穴ってな~んだ?」

「??……かぎあなだッ!」

 

やっぱバカだ。

 

「どっかに鍵があるはずだ。探そうぜ」

 

再び、この階の探索を開始する。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

鍵を探していた俺たち一同は、探索開始数分で立ち止まっていた。

 

「おいおい、マジかよ」

 

俺は目の前の光景に疲れが込み上げてくる。

またしても『エッグシャドウ』が現れたのだ。それも二匹。

 

「もー!まだこんなにいるの!?マジありえなーい!!」

「でも、あいつら動かないな」

「……あれ……」

「ん?」

 

こちらに警戒する動きを見せながらも行動を起こしてこないエッグシャドウの後ろを指さすアリス。

アリスが指さす方を覗くように見てみると箱のような物がある。

箱の存在を確認できた一瞬の後、箱を隠すように奴らが移動した。

 

「どうやら、あの箱を守ってるみたいだな。……探す手間が省けた」

「んなことはいいから、さっさと片付けるぞ!」

 

直後、ランが武器を構えて飛び出す。少し遅れて三人も敵に向かっていく。

 

「てやぁっ!!」

 

勢いよく降り下ろされたランの剣はエッグシャドウの肩を捉え、腕を切断した。腕は地面に落ちると煙の如く消滅する。

 

切り落としたの後、打ち出されるもう一体のエッグシャドウの攻撃がランに襲いかかる。

 

「だから、おせぇんだよッ!」

 

敵の攻撃を簡単に盾で流し、カウンターで一撃を叩き込む。

ランの強烈なカウンターで体勢が崩れたエッグシャドウ。そいつを後ろから切り裂く剣……キサラギがエッグシャドウの胴体を二つに断った。

二つに分かれた体は煙のように消え、消滅。

 

片腕を落とされたエッグシャドウはサコを狙ってきた。

サコはパンチを連打するが急所を外され、あまりダメージを与えられない。

 

「こんのっ!」

 

業を煮やしたサコが力を込めた大振りの一撃。しかし、渾身の一撃はかわされ、大きな隙を作ってしまう。

その隙にエッグシャドウは腕を薙ぐようにしてサコの体を地面に叩き付ける。

 

「ぐあっ!」

 

呻き声をあげる。痛みに悶え、動けないサコにエッグシャドウの追撃。

瞬間、

 

「消えちゃえ……ッ!」

 

エッグシャドウに向かって飛んでいく紫色の光球。着弾すると、光球は閃光と共に弾け、エッグシャドウの体をバラバラに吹き飛ばした。

 

「……倒したの……」

 

さっきの光球が発射された方には本を開き、袖が長くて見えていない手をつきだしているアリスの姿があった。

さっきのアリスの技らしい。アリスが予想以上に戦力になりそうで俺は身震いする。

 

おっと、サコの心配だ。

俺はサコに駆け寄り、様子を確認する。

サコは片腕で腹部を押さえ、立ち上がろうとしていた。

 

「どうしたサコ。どっか痛いのか?正直に言えよ」

「べ、べつにおまえにしんばいされなくても、へいきだい!」

 

そうは言っても、辛そうに痛みを我慢ている姿を見せられて、心配するなと言われる方が無理なわけで。

 

「はぁ、まったく。世話ぐらいやかせろよ」

 

俺は無理矢理サコの服の捲る。色々と見えるが全く邪な感情が湧かない。まあ、ガキだしね。

 

「や、やめろよーー!おにーー!あくまーーー!」

「だ~ッ暴れんな!……うわぁ見事に腫れてらぁ」

 

脇腹辺りが少し腫れ上がっていた。見ていてこっちが痛くなりそうほど赤くなっており、自分だったら泣き叫ぶんじゃないかと思う。……折れてない?これ?

強がりもここまですれば大したもんだよ。さて……

 

「こんなこともあろうかと、キャンプで買っておきました回復薬」

 

自分の鞄から一つ、小瓶を取り出す。小瓶には液体が入っており、後ろの説明表記には『怪我したらこれをぶっかけろ』と書いてある。なんつー適当な。

 

「ほれ」

「うひゃっ!!び、びっくりするじゃないか!」

「冷たかったか?すまんすまん」

 

謝罪の意も込めて、液体をやさしく塗ってやる。すると、みるみると腫れは引いていき、元のスベスベの肌に戻る。……スゲーなこれ。

 

「はい終わり。まだ痛むようならすぐに言えよ」

「…………ぁ」

「ん?どうした?」

「……ぁ……ぅ、なんでもないやい!」

 

突然叫んではそっぽ向いて、サコはそれ以上なにも言わなかった。

なんだかチャンスを逃した気がするが……

 

「ちょっと来てーー!箱の中に鍵があったわよーー!」

「本当か!?」

 

キサラギからの嬉しい報告に、俺は足を急いだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

キサラギが言っていた通り、箱の中には鍵があった。

他に探す場所もないし、これであそこの門が開くだろう。

 

さっさと先に進みたい気持ちは皆一緒のようで、足並み揃えて門の場所まで戻った。そのお陰で、予想以上に早く到着できた。

普段もそれくらいしっかり歩けよ。

 

「んじゃ、開けるぞ」

 

俺は鍵穴に鍵を挿し込み捻る。

ガコン、と言う音が鳴り重い扉は開かれ、これで先に進めると思った。

 

瞬間、開いた門から一匹のエッグシャドウが飛び出た。必然的に狙われるのは門の前にいた俺だ。

奴は丸太ほど太い凶悪な腕を振るう。遠心力の乗った腕が俺の腹部に突き刺さる。直前、いっぱいに伸ばされたはずの奴の腕が俺に届く前に退いていった。

 

「ちぇりぁああっ!」

 

突進で威力が増したサコの拳が、奴の攻撃が当たる前に奴を突き飛ばしたのだ。

飛び掛かってきたエッグシャドウは、そのまま地面を弾みなから転がっていき、最後には足場がない所に飛ばされて落ちていった。

あの一撃。サコがすぐに対応してくれなかったら、俺は確実にやられていたはずだ。しかし、まさかサコが助けてくれるとは……。

 

「おい、おまえ」

 

サコが俺を呼ぶ。そのくせ、こっちに顔をむけない。けれど、指は俺に向け、こう宣言した。

 

「これで、かしかりはなしだかんな!」

 

ああ、そう言うこと。前の戦いの治療のお礼ってわけ。別に当たり前のことだし、お礼はいいんだけどなぁ。

それにしても、お礼なら『ありがとう』だけでいいのに。素直じゃないなぁ。

なら、俺は素直にいこう。

 

「おう!ありがとな、助かったよ 」

「ふんっだ!つぎはたすけてやんないからな!」

 

それだけ言うと、サコは走り出して先に行ってしまった。

走っていったサコの耳が紅くなっていたことには突っ込まないでおく。

 

「……元気だね~♪」

 

サコを見失うといけないので、はや歩きで後を追う。

 

「ねえ、あんた。チビとなんかあったの?」

 

すると、途中でキサラギが隣まで近寄って来て、話しかけてきた。サコと何かあったのか聞きたいらしい。

 

「珍しく話掛けてくると思ったらそんなことか。何もないよ、ただ貸し借りしただけ」

「……ふ~ん」

 

興味を失ったかキサラギは歩く早さを遅めて後ろの方を歩く。

もっと心開いてくれないかなぁ。

そんなことを思いつつ、俺は足を進める。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

サコと合流した後、新たに発見した階段を上っていき、次の階層に到着した俺達。まだまだ、鉄だらけ監獄みたいな場所は続く。

 

「あっ見てあれ!あの女じゃない!?」

「なに!?」

 

キサラギが声をあらげ、指をさす。

俺はその方向に顔を向ける と、確かに先の方にミウの後ろ姿を確認することができた。しかし、ミウが進んで行った通路の門が閉まり、再び姿が見えなくなってしまう。

その光景に一抹の不安を感じた、その時……

 

今まで聞いたことのない咆哮が門の向こうから響いた。

 

「!?」

 

今まで出てきたクリミナルとは一線を越えた怪物の声に俺の全身の毛は逆立ち、額に脂汗が浮かぶ。

 

「おい、この吠え声……ヤバイんじゃねーのか……?」

「だめ……この先……アリス……嫌……!」

 

普段は強気な四人でもこの鳴き声には弱気になる。

 

「み……みにいったほうがいーのかな……」

 

そんな中、強がりかサコが先に進むことを提案する。が、発音は弱々しい。

 

「……そうだな、行こう。お前ら、できるだけ離れるなよ」

 

俺は安全を第一に考え固まって行動することを提案する。

答えはしないが、四人は固まって後ろにしっかりついてきた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ミウが進んでいった門に辿り着いたが、開けることは出来ずにいた。調べてみると、前の門と同じように鍵穴を確認することができた。

試しにさっきの鍵を使ってみるが、開くわけがなかった。

 

「また鍵を見つけなきゃな……皆、探しに行くぞ」

 

俺はいつもより活気がない四人。支障がでないように強めに指示を出す。

 

初めて探索する階層。的外れな場所に時間を使ってしまうが、淡々と探し回る。焦ったらダメだ。

 

「……なあ、あいつ大丈夫かな……」

 

突然ランが尋ねてきた。ただ、その声は何処と無く、質問とは別の意味を含んでいるように聞こえる。

 

「大丈夫かどうかはわからない?まあ、心配いらんでしょ」

「……」

「わかったら行くぞ」

「テメーは心配じゃねーのかよ!」

 

一変、鬼の形相で怒鳴るラン。その変貌ぶりに他の三人も驚きを隠せない。

 

「ちょっと、なにキレてんのよ?」

「黙っててくれ!アタシは今、こいつと話してんだ!なあ、なんでそんなに涼しい顔できんだテメーは!」

「おいおい、そんな言い方はキサラギがかわいそうだろ。今は無駄話してる暇ないから後でな?」

「ふざけんな!答えろよ!あいつが行っちまった先から鳴き声が聞こえても、なに食わぬ顔して!今だって不安の色一つ見せないで!少しはあいつの身を案じたらどうなんだ!」

 

息をあらげるラン。その瞳は苛立ちに満ちている。

さっきから文句言わずについてきたのはこの事を確かめるためか?

ん~、やっぱり自分の考えを伝えた方がいいんだよな……そうだな、俺から腹の中見せなきゃ皆が俺を信じてくれる訳がないもんな。

 

「……あのなラン。お前、なんか勘違いしてないか?俺は別にミウのことを心配してないわけじゃないぜ?むしろ早く助けたいと思ってる」

「じゃあなんで…」

「あのな、心配したからって状況はかわらないだろ。それより、状況を変えるための行動を起こすべきだと俺は思う。別に人の身を案じることを否定するわけじゃない。それは少なからず善良な行為だ。けど今はそれよりやらなきゃならないことがある。優先順位ってもんが世の中にはあるんだ。心配だけして、動けないなんてのはナンセンスだろ?例をあげるなら、火事の現場がそうだ。現場にいる野次馬のまずやることは消防と病院への連絡だ。次に消防車と救急車が通れる道を確保するべきだ。ああ、あと警察もいいだろ。もう、誰かがしてるだろうと考えてなにもしない奴や、それをせず写真撮ってる奴はバカだな。わかるか?」

 

ランを含め、四人は呆然とした表情で話を聞いている。

あれ?分かりにくいかな?

 

「あ~、俺はあんまり長く話すの苦手でな、うまく伝わってるのかわからないけど、そう言うことだ。それに、俺が不安を面に出さない一番の理由は俺が戦えないからだ。戦いに参加できない俺が震えてたら、なんもできないだろ?ならせめて、手本と言うか引率する先生としてお前たちの前を堂々と歩いて導いてやりたいじゃない?」

 

四人は何も言わない。

なんだか、真面目に話したのが無性に恥ずかしくなってきた。

 

「それによ!ほら、ミウって強いじゃん?仮にも地獄の管理人だし?なら、少しぐらいなら無事でいてくれるでしょうって、思って……。この答えじゃダメか?」

 

静寂。そして、ランが口を開く。

 

「……いや、いい。アタシが悪かった。正直ビビってたんだと思う。だからわけわかんねーこと言っちまった」

「そうか」

 

なんとなくだが、俺の想い、もとい考えが伝わったかな?

こうやって自分の腹の中を見せることは絆を育むのに必要不可欠だな。かなり恥ずかしいが。

 

「んじゃ、時間使っちまったし、走って取り戻すぞ!ついてこい!」

 

顔が熱い。恐らく、羞恥で紅くなってるんだろ。見られるのは恥ずかしいので、走って誤魔化すことにした。

 

「おい待てよ()()()!戦えねーんだから一人で突っ走るなよ!」

 

ん?今ランが俺をオヤジって読んだか?さっきまで、テメーとかだったのに……

まさか、「キィエエエエエ!」

「ぎゃあああああああ!!」

 

考えごとして走っていたので、クリミナルの存在に気づけなかった。

いたい!足噛まれた!

 

「あ!ちょっ、誰か助けて!」

「「「「・・・」」」」

 

助けを求めて後ろを向くが、落胆と言うか期待外れと言うか、四人の複雑な顔が目に入る。

ごめんね!カッコつけといて、こんなんでごめんね!

 

この後、俺は無事に救出された。その後、無事鍵を見つけ出し決戦の場へと向かったのだ。

 

 

 

 

 

 




想いの他、反響がよくて舞い上がってます!
頑張るんで、これからもよろしくお願いします!

感想とかがんがんしてもらっても結構ですからね~♪

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