「先生、疲れてるの?大丈夫?」
「大丈夫だ心配するな。気持ちの切り替えってのは得意なんだ」
サコ達のおしおきで既に疲弊し切っている俺をユコが心配してくれる。
ありがたいが、今度はユコのおしおきの番だ。手を抜くつもりは毛頭ない。
「さて、さっそくだが始めるぞ。用意したものは着ているな」
「う、うん……」
ユコが着ているのはスクール水着。
彼女は恥ずかしいのか顔をほんのりと紅く染めてそわそわと落ち着きなさそうに体を揺らしている。
そんな姿に、俺は思わずガッツポーズ。
「よし、それでは始めるぞ!」
「わ、わかったよ」
「んー?今日はやけに素直だな。何時もなら、やめようよー!とか言うのに」
「ゆ、ユコ、今回は頑張るって決めたもん!」
まさかユコがこんなに成長しているとは!?俺、感動で涙出そうです。
「だからね、痛くしないで。優しく、優しくだよ」
なんだ、そう言う思惑があったのか。
いやいや、それでもユコが自分から頑張るって言うなんてスゴいことじゃないか。
まあ、別に痛いおしおきじゃないからいいだろ。
「おお、わかったから。始めるぞ」
「お、お願いします!」
俺がユコに液体をかけ始めて、おしおきは始まった。
「うわわわわわん!冷たいよ~~~!!」
こうなる予想はしてた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、次こそ難関トモエである。
「ん~センセ、これちょっとキツいんやけど、そこもセンセの趣味やの?」
白と黒の大人っぽい競泳水着しかトモエのサイズに合いそうになかったのでこれを選んだのだが……胸がぱっつんぱっつんである。
おしおき中にポロリとかされたら洒落にならん。俺の命ががが。
「センセ、まだなん?」
「お、おお。悪いな」
「……もしかして、スケベェなこと考えとるんかなぁ?」
「……そんなことは、ないぞぉ」
「うふふ、隠し事へたやねぇ。でも、センセのそう言うところがうち好きやわ」
「あんまからかうなよ。言っとくけど、手加減してはやらないからな」
「あらあら残念。でも、からかったつもりはないんやけどなぁ」
なんだか好意的な言葉が多い気がする。
これは……試されてるのか、軽くみられているのか。
「あのな、そんな格好でそんなこと言うと色々とあれだからやめておけ」
「ふ~ん……センセにそんな度胸あるん?」
これは!?試されているのか!?誘っているのか!?
「お、言ったな。あれだからな、おしおき中になんかあっても知らないからな!」
「……まあ、事故なら仕方ないよね?」
「おお、どんな事故が起きても俺は知らんからな!」
こうしておしおきは始まった。
……事故は起きませんでした。
すみません。そんな度胸ありません。
おしおきが終わった時、トモエがぼそりとこう言った。
「センセのへたれ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「着替えたわよ!ど、どうかしら?」
「シンさん……着痩せするタイプなんですね!!」
「変態!」
シンの番。水着は白が主の競泳水着。
ここ、競泳水着多いな。
「で、こんな格好させてなにさせる気なのかしら?」
「そりゃ、水着を着ているんだ。濡れるんだよ!」
「濡れるって……ッ!!?まさかあんた!」
「このヌルヌルの液体をぶっかけます」
「~~~ッッ、ま、まあそうよね」
「どしました?もしかしてエッチなこと考えてましたか?秀才を気取ってる割には頭ん中結構ピンクなんすね」
「……(ぷるぷる)」
「お?どしたどした?お顔が真っ赤で……ッ!?」
調子に乗り過ぎた。そう気が付いた時には手遅れで、シンは今にも決壊しそうな量の涙を眼に溜めながら、真っ赤な顔で俺を睨み付けていた。
「フーッ、フーッ……」
ただ、呼吸音から我慢の限界が近づいていることがわかり、このままだと本気泣きされるか、キレられるか、はたまた両方か。
どう転ぶかわからないが、このままだと非常に不味いのでなんとかしたいと思う。
「あのー……し、シンさん?」
「なぁ、ん……なによ……?」
あかん。声がめっちゃ震えてる。これは両方のパターンですよ。
義務とは言え、罪悪感がスゴい……。と言うか、シンはこれぐらいのちゃかしは大丈夫だった気がするんだが。
「ねぇ、シンさん。……お、怒ってます?」
「当たり前でしょ!!」
「ひぃッ!」
「こっちはこんな恥ずかしい格好させられてんのに、それを私の好きこのんで着たみたいに言って。怒らない方がおかしいわ!」
喋り続けて興奮したシンは勢いそのままで、バシバシと叩いてくる。
「痛い痛い!!ごめんなさい!」
「謝んな!せっかく教官の為にと思って素直に着た自分がバカみたいじゃない!」
「え?そうなの?通りで潔く着たわけだ。ありがと」
「あッ、ば、バカァ!!」
「ッッッ~~~!!」
顔を真っ赤にしたシンの蹴りが俺の股間に命中。
男にしかわからない痛みが芯に響き、悶えながら倒れる。
「ホントにッ、貴方ってッ、人はッ!」
畳み掛けるように何度も蹴りを浴びせてくるシン。
「シンさん、やめて、今はアカン……!」
「うるさいうるさい!!もうなんなのよ!」
「ホントにやめて、なんでもするから!」
突然、シンの蹴りが止まった。
「ん?今なんでもするって言ったかしら?」
「え?言ったけど……なにか?」
「その話、飲むわ。さっさと終わらせましょ」
「え?え?」
「ほら、はやく!」
「は、はいっ!」
シンのお願いを聞き入れると言う形でその場は治まり、おしおきは無事終了した。
あれだけ興奮していたシンがクールなるほどしてほしいことってなんなんだ?ちょっと怖いな。
そう思いながら俺はおしおき部屋の後片付けをして部屋を出た。
それにしても、水着少女に罵られながら蹴られるって人によっちゃ美味しいシチュエーションだったかもな。
《おしおき完了》
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
おしおき部屋を出た俺も待ち構えていたのはシンのお願いだった。
お願いと称してなにをしてくるのか不安だった。しかし、そのお願いとは……
「私の手柄だから最初は私が選ばせてもらうから。そうね……お腹、使わせてもらうわ」
「ユコはやっぱり腕がいいな♪」
「じゃあサコもおなじがいいぞ♪」
「アリスは……もう片方の腕……♪」
「うちは、センセのお顔を。……ふふふ、間違ってキスしてもうても事故やねぇ」
「アタシとキサラギは……」
「脚しかないんじゃない?太ももなら大きさ的にちょうどいいし」
「それもそうだな」
少女達が寝るときに何時も使っている巨大円形ベッドの中心で、怪人の改造手術を行うような大の字で寝かせられている俺。
そして、その周りを俺に添い寝して囲んでいる少女達。
なんだこれは!?天国か!?
シンのお願い。それは『これからはみんなで一緒に寝る』だ。
旅を始めたときから俺は壁に凭れたり、机に突っ伏して寝ていた。男女が一緒に寝るとか問題でしか無かったし、なにより彼女達は俺を嫌っていたからだ。
それを今になって一緒に寝ようとは……遂に心から慕ってくれたってことだよな。だからみんな、おしおきのとき素直だったんだな。
疑問がスッキリと晴れたことで自然と笑顔になる。
「センセ、嬉しそうに笑ってどしたん?」
逆さまになって頭を此方に向けて寝ているトモエが話しかけてくる。
因みに、少し視線を上にすれば綺麗な満月がお二つあるわけです。
「どうせエロいことでも考えてたんでしょ。ほっときなさい」
俺の腹に頭を乗せているシンが答える。
声の感じからしてリラックスしているようだ。
「いや、ほっといたらダメだろ。……オヤジ、変な気は起こすなよ?」
そう言ってランは俺の左脚を絞める。
痛いけど柔っこいものが……。
「そんなの気にしなくってもいいじゃん。ユウにそんな度胸あるわけないし」
もう片方の脚に頭を乗せているキサラギがあっけらかんと言う。
言ってる割りにさりげなくつねるのは信用されてないってことなんですかね?
「お前ら、その変にしておけ。アリス達はもう寝てんだから」
サコは俺の右手に頬を擦り付けるようにして寝ており、ユコは二の腕を枕にしながら俺の服を掴んで穏やか表情で寝ている。
アリスは左腕を抱き枕にして寝ている。
「お前らもさっさと寝ろよ。あと、変なことはしねぇから」
「そうやね。センセの言う通りに寝ようかな。センセ、おやすみ……」
トモエはそう言うと、俺の頬をついばむように唇を当てると目を閉じた。
「……おやすみなさいのキスってやつか」
「オヤジ?なんか言ったか?」
「いや、なんでもないおやすみ!」
「おう、おやすみ……」
こうして俺達は眠りにつき、平和な一時が過ぎていった。
目覚めた時、手足に血が送られにくかった為、しばらく動けなかったのは言うまでもない。
またせたなDAMUDOだ。
これにて長かったぬるぬるおしおきの章は終わり、次は決戦アイスデザイアの章になります。
……はい、アホな話は終わりましょう。
え~、今回は原作で氷の試練での合流イベントから少女達からデレ始める感じを出そうとしたわけですが……主人公の抱き枕ENDでしたね。
ユウ、そこ代われ。
さてさて、これを書き始めて一年が経過しましたね。
後は……四つ目の試練やって、天辺探索して、ラスボス倒して、裏ステで薬集めて、二人仲間に加えて、裏ボス倒して、ちょっとオリジナルで後日談やって……更に一年かかりそうですね。
わたくし、DAMUDOは更新が遅くなることも多々ありますが、死なない限りクリミナルガールズを完結させるために全力を尽くすことを誓いますので、よろしくお願いします!